◆2-b◆中学3年生のバレンタイン〜特別
数多くの女の子からチョコを貰っても。
全然嬉しくない。
心が埋まらない。
その数多くの女の子からチョコを貰っても、満たされない心。
そんな心を埋めてくれるのは、幼馴染かつ本命、蘭からのチョコだけ。
「…ありがとう」
「…っ! じゃあっ!!」
彼女は恥ずかしそうに、屋上を出て行く。
その後姿を眺めながら、受け取ったチョコを開けてみる。
トリュフから漂う甘い匂いは、俺を少しげんなりさせた。
甘い。
甘過ぎる…
正直言って、甘いものは好きなワケじゃない。
嫌いでもないけど、蘭が作るものなら食べれる。
1つ、2つ、3つ。
口に広がる味を1つ1つ確かめるように、食べる俺。
気持ちが伝わる。
悲しい、切ない、片思いの味。
同じ境遇だからこそ、分かる味。
両思いの奴になんかぜってーわかんねー味。
4つあったトリュフは、あっという間になくなった。
美味しいわけでもないし、不味いわけでもない。
ただ1つ、言える事は。
片思いの心がしみこんだチョコを食べたから、苦しい。
蘭に、伝えたいのに。
いい加減に、伝えたいのに。
早く、結ばれたいのに。
もどかしさを感じながら、俺はフェンスに寄りかかる。
「モテモテね、新一」
何処からともなく聞えた、聞きなれた声。
新一と呼ぶ、その女。
「蘭…!」
「さっきの子、1年女子のスターよ? アンタの机も下駄箱も、きっとチョコで埋め尽くされてるわね…」
「あのさ…」
「義理チョコ、今年も欲しい?」
突然変えられた話題に、俺は頷く。
「今年は…あんまり、美味しくないかもしれない」
「何で?」
「ちょっとね、分量間違えちゃって…」
オメーの作ったモン=ぜってー美味しいっていう方程式があんだけど。
俺は内心思いながら、気にしないといいチョコを受け取る。
蘭はいつのまにかいなくなっていた。
開けてみると、昨年と同じ、トリュフ。
皮肉にも、先程の1年と似たようなラッピング。
1つ、口に含む。
全然違う。
コイツはやっぱり俺を分かってくれる。
少し控えた甘み。
やっぱり、蘭は凄い。
そして、やっぱり蘭が好きだ。
俺は、色々食べたけど、蘭からのチョコが一番上手かった。
だって、本命チョコが特別に感じる事ってあんだろ?
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