野望へと至る道:魔力増幅への足掛かり
「リュー?私、洗濯物干すのをお願いしますって言いましたよねー?それなのに、何をどうすればそんな時間が掛かるんですかー?」
「ち、違うんす!こ、これは不可抗力的な、抗えないどうしようもない魅了の魔法に掛かったようなもので、ウ、ウチは悪くないんす!!しゃ、釈明の余地を要求するっす!!」
「却下しますー」
「ひぃっ!?まっ、待つっす!!話を聞いてほしいっす!!ほ、ホントに凄かったんすから!!」
まともに家事をしていなかったことがレイラにばれ、怖い笑顔を浮かべる彼女にどこかへと連れて行かれたリューを苦笑いで見送り、俺は枕に顔を埋めていたレフィへと声を掛けた。
「コホン、あ、え、ええっと……な、なあ、レフィ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ふぇっ、あ、う、うむ……な、何じゃ。儂に答えられる範囲であれば、答えよう」
ちょっと動揺した様子で視線を狼狽えさせてから、努めて平然とした様子を装い、そう言うレフィ。
「え、ええっと、その、魔力を増やしたいんだ。何か鍛える方法とか知らねえか?」
俺が玉座の間に戻ったのは、そのためだ。原初魔法でミニチュア造りを続けていたら、滅多に尽きない魔力が珍しく尽きてしまい、今の段階で魔力が尽きてしまうようなら実際の城を建てる時に、とてもじゃないが魔力が足りないだろうなと考え、レフィへと聞きに戻って来た訳だ。
まあ、草原エリアでシィと遊んでいたらしいイルーナが途中で寄って来て、リューと一緒になって歓声を上げる彼女のために、女の子が喜びそうな感じのミニチュア――まあ、シ〇バニアファミリーだな。それをいっぱい作ってあげていたから魔力が尽きてしまったのだが。
すっごい喜んでくれたから良しとしよう。
「む?お主の魔力総量は常人よりかなり多いぞ?禁呪の魔法でも使いたいのか?」
「いや、そんな物騒な響きの魔法を使うつもりはないが、今の魔力だと、ちょっとやりたいことがやれなさそうなんでな。順当にレベル上げするのもいいけど、魔力を重点的に鍛えられる術があるんなら、それをしておきたくてさ」
筋トレすればステータスが伸びるんだから、同じように魔力を伸ばす魔力トレがあるんじゃないかと思うのだ。
「ふむ……まあ、何をするつもりなのかは知らんが、一時的でいいのであれば、儂からお主に魔力を貸して、お主の魔力を増やすことだったら可能じゃぞ」
「へぇ?そんなことが出来るのか?」
「うむ。いつかお主に魔法を教えた際、二人で魔力を循環させたじゃろ?あれを循環させず、儂から一方的にお主へと流し込めば、魔力を貸すことが出来る」
あぁ、あの失敗すると頭がパーンてする可能性のあったヤツか。
……ホントに、今更ながら恐ろしいことをしていたと思うわ。
「それって、例えば俺からでも出来たりするのか?」
「お主じゃまだ無理だな。儂の体内で相手の波長に合うよう、魔力を少し変質させてから相手に流し込んでおるからの。ま、儂程とは言わずとも、もっと魔力の制御が上手くなればユキにも出来るようになるんじゃないか?」
ちょっと調子が出て来たようで、「ふふん」とドヤ顔しながらそう話すレフィ。
うむ。それでこそレフィだ。
「うーん、そうか……まあじゃあそれは、必要な時が来たらお前に頼むことにしよう」
「どーなつで請け負うぞ」
あなたも好きね、甘い物。よくそんな食って飽きないよな。
ちなみに、レフィは甘い物全般が好きだが、特に好んでいるおやつは一番最初に俺があげた板チョコだ。どっかの甘い物好きな名探偵のように、ちびちびと齧っている。
「それ以外で、となると、そうじゃな……やはり、全部使い切って空にするのが効率が良かろう。お主の魔力は多いから、毎日大規模魔法放って使い切れば、徐々にだが増えていくと思うぞ。何じゃったか、あれ。お主のよく使う魔法」
「水龍か?」
正しくはお湯だが。いまだ温度調整と水を龍の形にするという操作の両立は上手く行っていない。殺傷力を増すため土魔法で砂も混ぜている訳だから、難易度もひとしおだ。
「そう、それじゃ。あれぐらいの魔法をバンバン放って、同時に操作の練習をすれば、魔力総量も増えるし魔力制御も上手くなるぞ」
「なるほどな……」
確かに今まで、魔力を使い切ったりってことはしてこなかった。水龍の練習をしていた時も、そんな何匹も何匹も出現させて、ってことはやってなかったしな。
よし、それならそう難しいことじゃない。今日はもう使い切ってしまったので何も出来ないが、明日からは魔力を夜までに枯渇させることを日課に加えるとしようか。
……いや、というより、今日みたいに原初魔法の土でミニチュア制作しまくっていればいいのか。
そうすれば造り上げたい城のイメージもさらに強固になり、たまに息抜きでシ〇バニアファミリーを増やしてあげればイルーナも喜んでくれるしで、一石二鳥どころか一石四鳥ぐらいである。
「ありがとな、レフィ。助かった。また何かあったら聞くよ」
「う、うむ。その、なんだ。……ユ、ユキの役に立てて良かった」
そう言って、ちょっとはにかみながら微笑んだレフィは――正直、狂おしい程に愛らしかった。
デレフィ。




