クリエイティブ魔王1
前回のリルとの狩りでわかった。
俺には武器がない。
今までは何とはなしに異世界だからという理由で剣を使っていたが、残念ながら俺には合わなかった。
であれば、何か他に良い武器がないかと今、DPカタログを見ているのだが……。
「うーん……」
いつもの如く玉座に胡坐を掻いて座り、頭を悩ませる。
やはり一番オーソドックスであるためか、カタログに載っている武器は、剣が一番多い。
まあ、今まで使っていたのは安物だったので、この中の一本ぐらい、もうちょっと性能の良いヤツを出せばもしかしたら合う物もあるかもしれないが、一本一本出していって調べるような勿体ないことは流石に出来ない。
これに載っている剣以外の武器では、槍や弓、刀もある。ただ、この辺りは剣が合わなかったのと同じ理由で、俺にとってはあんまり使いやすく無さそうだ。
面白いところだと、鋼糸や大鎌のようなロマン満載の武器もあるのだが……こっちは合う合わない以前にまともに扱える気がしないからなぁ。俺、器用値は高いはずなのだが、武器の扱いにはあんまり関係ないみたいだし。
それに比べて、鉄筋は扱い易くて結構良かった。基本的にぶん回すだけだからな。
メイン武器にするなら、あんな感じに、力でごり押しな感じのヤツがいい。
……棍棒?
……いいな、候補には入れておこう。
ただまあ、棍棒を振り回す魔王ってどうなのよ。他にいいのがなかったらそれでもいいが、贅沢を言うともうちょっと魔王チックな、RPGのラスボスが使ってるような武器がいい。
というか、ラスボスって何を使っていたっけか。やっぱり剣か?
……いや、大概のラスボスは人間の形してなかったな。だったら俺も、化け物に変化するようなスキル覚えるか?多分、そういうのもある気がする。
……ちょっといいな。怪物っぽい感じに変身して、獣染みた咆哮とかあげてみたい。
待て待て、落ち着け、早まるな。もっと真面目に考えよう。
とにかく、技術の乏しい俺には剣のような技で敵を倒す武器じゃなく、一撃必殺、腕力と重量で叩き潰すタイプの武器がいいだろう。モン〇ンで言うなら双剣とか片手剣じゃなくて、大剣とかハンマーとかそっち系の武器。
……そうか、大剣か。
ふと思い付いたその考えに、DPカタログへ指を滑らす。
一応剣ではある訳だから『剣術』スキルの効果もあるだろうし、今まで使っていた剣や鉄筋よりは重量があって威力もあるだろう。
それに何より、カッコいい。
カッコいいという基準は大事だ。モチベーションの維持に繋がるからな。
得てして訓練というのは面倒臭いもので、そういう些細なところで気持ちを盛り上げる何かが無ければ、長続きさせるのはなかなか難しいものだ。そう、だから決して俺がガキっぽいということではない。
「――お、よし、あったあった」
俺はリストの内の一つをタップして大剣の一本を出現させ、その柄を掴む。
これはいくつかあった大剣の中で、俺が手を出せるDPギリギリのものだ。そこそこ高い。
「お、何じゃ、お主とうとう、あのお遊戯はやめて、別の武器を使うことにしたのか」
と、その時、俺に一度も勝てないからとイルーナに勝負を持ち掛け、そして幼女にオセロで勝ってドヤ顔を浮かべているレフィが俺の様子に気が付き、声を掛けてくる。
「お前、いつか俺のお遊戯剣技で龍形態の時の鱗剥いでやるからな」
「ほう、神鉄鋼を超える硬さを誇る儂の鱗をか。楽しみにしておこう」
余裕そうな表情でニヤニヤ笑うレフィにちょっとイラッとするも、気を取り直して握った大剣の取り回しを確認する。
……軽いな。
ダメだ、これだとまだまだ全然軽い。
流石に鉄筋よりは重さがあるが、個人的にはもっとこう、腕にズシッと来るような、岩も叩き斬れそうなぐらいの重さが欲しい。前世じゃ逆立ちしても無理だが、今の俺であればそれだけ重量があっても余裕で振るうことが可能なはずだ。
それに、何と言うか……刀身が細っこい。
俺が想定しているのは、モン〇ンに出てくるような肉厚で幅広な刀身の大剣だ。どちらかというとこれは、前世にあったツヴァイヘンダーとか、クレイモアとか言われている武器の形状に近い。岩なんか叩き付けた瞬間、刀身がボッキリとイってしまいそうだ。
……恐らくこれは、人間用に造られた武器なのだろう。大剣という、かなりの重さを持つ扱いにくい武器に実用性を持たせようと、ある程度のデカさがありながら、その重量を少しでも軽くしようとする工夫が見られる。
だが、今の俺にはその工夫はいらない。むしろもっと重くして欲しい。
しかし、これより高いグレードの武器となると、二つも三つも桁が違ってきてしまう。ついこの前、『飛翔』の固有スキルを得るために散財したばかりだし、ちょっと手がだせない。
かといって、これより安いの出しても意味が無いし……。
――いや、待てよ?
そういえば、前にカタログを眺めていた時、こういう時に使えそうなのが……。
俺は再びカタログへ目をやり、一覧をどんどんスクロールして目当てのものを探す。
――あった。
やがて俺が見つけたのは、一つのスキル。
その名も――『武器錬成』。
説明に書いてある効果は、素材を用意し、造り出したい武器の形状を想像しながらスキルを発動して魔力を流し込むと、素材を任意の武器に仕立て上げるというもの。
素材の質、想像の強固さ、魔力の量、それら三つの要素に比例し、作成する武器の質が上がるようだ。また、スキルレベルが上がるにつれて、使う素材や魔力量が乏しくても高品質で作成可能になる仕様らしい。
そう、武器が無いのであれば、自分で作ってしまえばいい。
自分の武器すら自分で作る――万能系クリエイティブ魔王になればいいのだ。




