表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
レフィとユキ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/613

閑話:幼女達の一日《1》



「おっ、お主のせいで、結局昨日ほぼ眠れなかったんじゃぞ!お主が寝付いた後も、寝ながらずっと儂の翼に指を這わせておったせいでな!!」


「ほら、あれだ。寝ている時ですらずっと触っていたくなるような、そんな最高の肌触りだったんだよ、きっと。むしろそれだけ素晴らしい翼を持っているんだって、喜ぶべきだな」


「ぬ、そ、そうか――って、誤魔化されんからな!?」


「おにいちゃん、おねえちゃん――って、うーん、聞いてないや。レイラおねえちゃん!お外遊びに行ってきます!」


「いってキマス!」


「ほら、エンちゃんも!」


「……ん。行って来る」


 イルーナに促され、つい先日ダンジョンの新たな住人となったエンが、無表情でそう言う。


 そんな幼女達の様子に、レイラは微笑ましい思いで言葉を返した。


「うふふ、はい、いってらっしゃいー。草原から先に出てはダメですからねー?」


 レイラの言葉に、イルーナとシィが元気よく返事をし、エンが小さく頷いて、そのまま幼女達は真・玉座の間から城へと出て行った。



   *   *   *



「……おー」


「ふふ、すごいよね、おにいちゃんのお城!」


 城を一望出来る正面に出て、城の方を見上げたエンが、無表情ながらも感嘆した様子を顔に浮かべる。


 そんな彼女の様子を、イルーナはちょっとだけ得意げな表情で見詰める。


 今日は、エンに城の案内をするため、彼女達は草原エリアへと出て来ていた。


 エンはよくユキに連れられて外に出て行くが、しかし武器のその大きさと、鞘が無かったが故に、持ち運ぶ時は大体いつもアイテムボックスに入れられており、ダンジョン内部の様子を見たことがなかったのだ。


 最近はユキが鞘を作ったので、アイテムボックスに入れずに手で持ってそのまま持ち運ぶことも多くなったのだが、しかしそれでも見える範囲はユキが動いた範囲だけ。


 せっかく自身でどこにでも行ける身体を得たのだから、色々案内してあげてくれ、と、ちょっと前にユキから言われており、勿論、この中で自分が一番おねえさんだと思っているイルーナがそれを断るはずもなく。

 ユキが外に出る用事が無いと言っていた今日、こうして彼女を連れて城のある草原エリアへと出て来たのだ。


 無言で魅入っている少女の横で、イルーナもまた、首が痛くなるぐらい曲げないと上が見えない、眼前に広がる巨大な城を見上げる。


 彼女が兄と慕う人物は、本当にすごい人だ。


 こんな、おとぎ話に出て来るようなお城を、一日で建ててしまうのだから。


 そして――それを手伝った、彼女の三人いる姉の中で、最も慕っている少女も。


 あの二人が、他の人達とはちょっと違う、ということは、幼いながらイルーナもよく理解していた。

 ……彼らの、ヘンな人具合も含めて。


 似た者同士さんなんだな、とイルーナは常々思っている。


 今朝なんて、彼らは同じ布団に入って遅くまで寝ていたから、仲良くて羨ましいなぁ、とイルーナは思っていたのだが、二人が起きた時に始まったのは何故か口喧嘩だった。


 一緒の布団に入って寝るぐらいなんだから、イルーナの父と母がしていたように、ずっとニコニコと顔を見合わせて仲良くしていればいいのに、と疑問に思うことの多かったイルーナだったが、博識で、のほほんとしていてとっても優しいレイラおねえちゃんと、ちょっとおっちょこちょいだけど、元気で一緒に遊んでいると楽しくなっちゃうリューおねえちゃんに、


「あれはあれで、お二人は仲良くしているんですよー」


「愛の形は色々あるんす!」


 と言われ、そう深く理解した訳ではなかったのだが、まあ確かに二人が仲が良いというのは見ていればわかることなので、そんなものなのだろうとなんとなくで理解している。


 と、イルーナが自慢の兄と姉のことを考えていると、エンを真ん中に挟んで反対側にいたシィが、何かに気が付いたように突然横を向き、声を上げる。


「アッ、レイ!ルイ!ロー!」


 同じ方向へイルーナが顔を向けると、そこにいたのは、半透明で(・・・・)、ふよふよと浮いている、イルーナよりも幼い見た目の三人の少女達。


 彼女達は、シィと同じでイルーナの兄が不思議な力を使って生み出した、レイスという種族の三人姉妹の子達だ。


 初めて会った時は、お化けっ!?とビックリしてしまったのだが、しかし皆楽しく良い子達で、今では外に出て来た時はいっつも一緒に遊んでいる。


 でも、ちょっといたずら好きで、よく驚かそうとしてくるので、油断は禁物だ。


 もう、何度驚かされて、そのまま追いかけっこに発展したことか。


 ちなみに三人とも、姉妹というだけあって顔立ちはほぼ見分けが付かないのだが、個々の性格は結構違っていたりする。


 長女のレイはおねえさんらしくしっかりしていて、頭も良く、二人のまとめ役のような存在なのだが、しかしよく妹二人も巻き込んだ計画的で壮大な犯行(いたずら)を行っている。

 次女のルイは勝気な性格で、よく得意げな顔をしているのだが、一番まともで他の二人のいたずらにあたふたすることが多い。

 そして末っ子のローは、エンと似て少しボーっとした子なのだが、実は三人の中で一番いたずら好きであり、レイとルイですらビックリするような、突拍子もないいたずらを時々やらかしたりする。


 このように、姿は似ていても全く違う性格をしているため、見分けること自体は然して難しくないのだ。

  

 余談だが、三人同時に召喚したはずなのに、どうして長女次女末っ子と別れ、性格にこんな差が出ているのか、とイルーナの兄がいつも首を捻っているということを、彼女は知らない。


「エンちゃん、この子達はレイスのレイちゃん、ルイちゃん、ローちゃんだよ!皆、この子はエンちゃん!仲良くしてあげてね!」


 レイスの子達は言葉を喋れないが、しかし大体何を言いたいのか、ということはわかる。


 新たな住人となった少女に「よろしくね!」とでも言いたげに、彼女の周りを囲んで、楽しそうな笑みを浮かべる三人娘達。


「……ん。よろしく」


 エンもまた、歓迎されていることがわかったのか、表情に変化は感じられないが、ちょっとだけ嬉しそうに三人娘達に挨拶を返す。


「今ね、エンちゃんにお城のこといっぱい教えてあげるところなの!だから、皆も一緒に案内してしてくれる?」


 この子達は、ずっと城の内部で暮らしている。イルーナも一時期城の探検をしていた頃があったが、しかし多分、今ではこの子達の方がこの城のことには詳しいだろう。


 何と言ってもこの城は、日々彼女の兄の手で拡張が為されている。


 一日経てば、昨日無かったはずのところに廊下が増え、部屋が増え、そして建物自体が増えていたりするのだ。


 城の外に関しても、何もなかったはずの場所にいつの間にか綺麗な庭が出来ていたり、花畑が出来ていたり、池が出来ていたりする。


 さながら、日々変化する迷路のようなものだ。まだまだ子供である彼女達からすれば、楽しくて仕方がない。


 そのイルーナの問いかけに、彼女達は交互に上下にピョコピョコと跳ねながら、「もちろん!」とでも言いたげな表情を浮かべる。


 そのまま三人娘と一緒に、仲良く城の内部へ向かおうとしたイルーナ達だったが、ふとその時、三人娘の末っ子、ローが小さく笑みを浮かべたのを、イルーナは目敏く気が付いた。


 あ、これは何かやるつもりだ、と思った次の瞬間、唐突にローがエンの後ろに回り込み、そして半透明の身体を利用してエンの身体を貫通する。


 そのままローは、エンのお腹の辺りからぬぽっと顔を出し、「ばあ!」とでも言いたげな手ぶりでエンを下から驚かした。


「きゃぁっ」


「……おー」


 何かするつもり、ということはわかっていたのに、突然のことに驚いてしまうイルーナ。


 対しエンは、驚きはしなかったが、自身の身体を他人が貫通している様子に、面白そうな声を漏らす。


 いたずら自体は不発に終わったローだったが、それでも楽しそうな様子でエンの身体をすり抜けると、そのまま彼女は城へ向かって中空をスライドするように逃げ始めた。


 逃げた理由は簡単だ。


 何故なら、追い掛けられることがわかっていたからだ。


「もうっ、わたしの方がびっくりしちゃったじゃない!まてー!」


 そう言ってイルーナは、何故か一緒になって逃げ始めたレイとルイ、そしていたずらの実行犯であるローを追い掛け、同じように城の中へと向かっていく。


 実際のところ、三人娘達の身体は半透明であるため、追い掛けても捕まえることは出来ないのだが……しかし彼女達はそれを気にすることはない。


 楽しければ、それでいいのだ。


「フフ、エンちゃんも、イッショにいこ?」


 その場に残ったシィが、隣でぼーっと成り行きを見ていたエンの手を取り、彼女を追いかけっこに誘う。


「……どう、すればいい?」


「ミンナを、オイカケルだけダヨ!でも、きっと、タノしいから!」


「……ん、わかった」


 二人もまた、そうして走り去って行った皆を追う。


 そのまま彼女達は、お城の案内という本来の目的を忘れ、全力で追いかけっこを始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 作者がロリコンで草
[一言] 幼女の戯れ…アレは良いものだ……byマ・クベなんてなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ