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「うううッ!!くうッ!!――――――はあっ」

創造主のいきむ声が、「それ」が聞いたこの世界の最初の音であった。

 ポチャン

そして、先人が着水する音、それが二番目の音であった。
 カサカササッ
そして三番目、「それ」が紙に付着する音が、果てしない流れの始まりの合図であった―――
注・食事中の人は読まないで下さい。
作:帰ってきた高浜ゆかり



「それ」は人から生み出された。

紙についた「それ」は、思考した。

 「何故この世界に生まれてきたんだろう、このまま流されるだけでいいんだろうか――」

「それ」が付着した紙は、白い世界の中に貯められた水に溶けていく。
 白い世界の中で「それ」は水の中に溶け、共に流れていた固体も形を失っていく。
 横を流れ消えゆく同胞を見つめ、「それ」は思考した。

「どれだけ大きくても流れには逆らえずにやがて消える、私のように小さくても――やはり消える、私には意味があったのだろうか」

白い世界から放逐された「それ」は既にもとの形を失い、水とほぼ一体の存在となった。周囲には自分と同じ境遇である存在が多く漂っている。

「おい、お前には、なぜ自分が生まれてきたかわかるか?」

「それ」は隣を漂う同胞に問う。
すると同胞は、少し沈黙した後に答えた。

「私も何故生まれてきたのか、これからどうなるかは知らない、形を失った我らはもう元には戻れない、このままなのだ…‥」

同胞の言葉を聞くと、「それ」は。

「そうか、やはり…‥流されるだけの存在なのか――我々は」

「それ」は自嘲気味に言う。
すっかりと意気消沈した「それ」を見兼ねたのか、同胞は言う。

「だがな、それはこの世界の全てのものに言えることなのだ――流れの中でしか、存在が許されない」

同胞の言葉を聞き、「それ」はこの世界の真理を悟った。
 
「そうなのか、そうするしかないのか――」

流れの中でしか存在出来ない超絶対的宿命を前にした「それ」に向かって、今度は同胞が質問した。

「どうする、お前は?――この流れの中で」

少し黙った後に、「それ」は答えた。

「まあ、とりあえず――この流れを楽しんでみるか」

悲しんでいても流れは止まらない、ならば同じ流れを楽しんでみよう――そう思うと、流れの中を漂う「それ」は少しずつ近くなっていく音を聴いた。


 それは、暖かな春の日の河原のせせらぎであった――


――終わり――




皆さんも、この世界の流れを楽しんで下さい。













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