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預言書とは 王子殿下目線

3/20の日刊ランキング1位になってました!

ありがとうございます!

 ユリアスは俺についてきてくれた。

 俺用に用意された仮の執務室に案内されるまま入ってきてくれた。

 中にはすでにローランドもいて、俺がユリアスを連れてきたのを驚いた顔で出迎えた。


「王子殿下の出会いのシーンは二巻です」


 彼女が出したのはやはりふざけた題名の小説で、俺はそれをうけとるとパラパラとめくった。

 よくよく読めば震え上がりたくなった。


「俺はこのままではヤバイのか?」

「ヤバくは無いですよ!ちょっと彼女とイチャイチャするだけです………いまのところは」


 俺の顔色が最悪なのをユリアスは解っていない。


「俺はこんな所で、昼寝しない」

「そこは私が直していただきました。だって、地べたに寝転ぶ王子殿下なんて庶民的過ぎるでしょ?」


 なんだか悔しい気がする。


「何の話をしているんです?」


 ローランドが気になったようで聞いてきた。

 そりゃそうだろ。

 俺が、この国の王子であるこの俺がこんな恥ずかしい小説を読んでいるんだから。


「これに、ローランドのことも書いてあるのか?」

「勿論!お兄様は顔が良くて頭が良くて誠実で自慢のお兄様ですから」

「君もブラコンか」


 俺は違うページをパラパラしてユリアスを見た。

 

「ローランドの話は?」

「一巻の後半です。まあ、お兄様は伯爵位なので直ぐに圏外になります」

「ローランドだけ助けようとしたのか?」

「………違いますよ~」


 ユリアス、目が泳いでいるぞ。

 ローランドはキョトンとした顔だ。


「何の話をしているんです?」

「お兄様、噴水に足を浸している女性を見かけませんでしたか?」

「ああ、居たな~その日は妙に忙しくて見てみぬフリをしたけれど?」

「………お兄様、顔は覚えてますか?」


 ローランドは少し考えてからユリアスに笑顔をむけた。


「顔は覚えてないな。髪は金髪だったが」

「忘れちゃって良いんですよ」

「関わらない方が良いってことか」


 俺は思わず呟いてしまった。


「何故俺には教えてくれなかったんだ」

 

 それを聞いたユリアスは悪びれる訳でもなく返した。


「面白いと思って」


 なんて質が悪い返しなんだ。


「この小説の中で王子殿下とラモール様は恋敵ですから」


 怖!

 どうしてこんなことに。

 ラモールと抱き合っていた女が今朝がた俺にぶつかってきた。

 瞳をキラキラさせながら、ごめんなさいと言った彼女を見て背中がゾワリとした。

 俺は『気にするな』とだけ言っておいたが直ぐにユリアスの持っていたあの預言書を読まなくては自分がヤバイと思った。

 何か得体の知れないものが働いていると思った。


「この預言書は誰が書いているんだ?」

「マチルダさんです」


 俺は耳を疑った。


「マチルダって俺の乳母の?」

「はい」

「うわ~マチルダはバンシーの血を受け継ぐ女性だぞ」

「バンシーとは主の死を告げる妖精ですわよね?」


 知らないで書かせているのか?


「バンシーは預言もするんだ。その力がこの小説をリアルな預言書のようにしている」


 俺が説明をしているのにユリアスは聞いていないようで呟いた。


「だからマチルダさんはいつまでも若く美しく、あの年なのに王子と同い年の息子が居るんですね!羨ましい」


 何が羨ましいのか解らん。


「マチルダさんの息子さんも美形で働き者ですもんね」


 何だ?マチルダの息子に惚れてんのか?


「マチルダの息子のマイガーに惚れてるのか?」

「えっ?」


 ローランドの顔色が悪くなった。


「そうですね!マイガーさんは私がデザインなどをしている下町のお店で働いてくださっているのですが、顔が良いので下町のお嬢さん達は彼目当てに私のお店にお金を落としていくんですよ!素晴らしいです!彼には長く勤めていただかなければ!それに衰えない美貌を持っているなんて美味しい。従業員としては惚れずにはいられないですよね!」


 何故だろう。

 見ちゃいけないものを見た気がする。


「兎に角、マチルダにこれを書くのを止めさせてほしい」

「………絶対に嫌です!」

「何故?」

「売れ筋ナンバーワンの作品だからです!」

「金か?」

「私にとっては、金が全てです!」


 ああ、もうダメだ。

 彼女の気持ちを変えるなんてできる気がしない。

 ………いや、待てよ………


「俺を圏外にするのにいくら出せば良い」

「………えっ?」


 彼女の瞳がキラキラしだした気がした。


「えっ、でも………いや、売り上げ云々考えたら王子殿下が出なくなるのは致命的………無理です!」


 彼女は本当に頭が良くて困る。


「だが、俺をフッてラモールとくっつく方が権力に左右されない主人公と共感が持てる」

「………王子、これを書いているのはマチルダさんです」


 俺は机に突っ伏した。


「まあ、王子殿下が当て馬になりたがっていたとだけマチルダさんに伝えておきます」

「………助かる」


 俺にはこれしか選択肢が選ばせてもらえないのだと、その時理解したのだった。


次はお兄ちゃんがいっぱい出たら良いな。

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