ローランドの妹 王子殿下目線
王子殿下目線です。
俺の昼寝に最適な薔薇の樹の影に彼女は突然現れた。
シルバーブルーのストレートの髪の毛をハーフアップにした美しい女性。
瞳の色は灰色で大きく、綺麗に上向きにされた睫毛に縁取られている。
友人であるローランドの妹だと気が付くまでに数秒を要した。
彼女は俺を無視して魔道具を薔薇の木に突き刺すようにセットしていた。
記録用魔道具だと解る。
どうやら池を記録するようだ。
最初はそう思った。
彼女は俺にシーっと人差し指を口にあてて黙るようにうながした。
まあ、黙るが。
直ぐに彼女が記録したかったのが、これまた俺の友人のラモールとその彼女らしき女性だと解り驚いた。
しかも、いつのまにかラモールがローランドの妹と婚約していたというのも驚いた。
俺は友人ではあるがラモールが苦手だ。
頭が悪すぎて会話にならない時があるからだ。
ローランドは頭が良すぎて怖い時があるがローランドの方が実になる話が出来る。
そんな頭の良いローランドがラモールなんかを大事な妹の婚約者にするとは思えなかったのだ。
しかも、ラモールが居なくなるとローランドの妹は無礼な態度を詫びてきた。
常識もちゃんとあるようだ。
俺にたいして媚びを売らない。
さらには舌打ちをする。
舌打ちの弁解が〝つい〟って何だ?
綺麗な女性なのに残念だ。
あの二人の記録を撮っていた理由を聞けば不思議なことを言った。
未来が解るような……で、預言書と言って出してきたのはふざけた題名の女性用の小説だった。
ふざけているのかと思ったが、良いからさっきの場面だけでも読めと言われて読むとさっきの場面と同じような描写が書かれていた。
これが本当に預言書だと言うのか?
彼女は信じなくても良いと言うが一応信じることにした。
それなのに、彼女は俺を自分の人生の中で重要な人物では無いと言いやがった。
よくよく聞けば、俺は雲の上の人だから害がないと言いやがった。
その話を聞いて彼女の人生に関わりたくなった。
だから、無理矢理友人になる約束を取り付けたのだった。
ローランドは、白銀の髪に灰色の瞳が銀縁眼鏡の中に隠れた知的な印象の男だ。
俺の学友にして親友といって良い。
そんなローランドに彼女と友人になったことを話してみた。
「あの子と友人に?」
「お前の妹は面白いな」
「そうでしょう。あの子は美しく聡明で自慢の妹です」
ローランドはめったにしない満面の笑顔を作った。
「まさか、ラモールと婚約しているとはな」
「………あの子は頭が良すぎるんですよ」
ローランドはさっきまでの笑顔を消して呟くように言った。
「ラモールの家は我が家の財産目当てにあの子との婚約話を持ってきたんです。僕も父も大反対しました。けれどあの子はラモールの家の爵位があれば外交をしやすくなるって言い出して………」
ローランドは悔しそうに眉をよせた。
「利益がでるならこの婚約を受けるとあの子が言い出した時は心臓が潰れるかと思うほどショックでした」
彼女の顔が一瞬浮かんだ。
冷たく見られそうな美しい顔に似合わない舌打ちをしている彼女の顔だ。
「ラモールに何か問題があれば直ぐさまこの婚約を破棄させるのに……」
「ああ、だから記録していたのか?」
「はぁ?」
俺はローランドに彼女がラモールの浮気現場を記録していたことを話した。
ローランドの顔色が真っ青だ。
「い、妹はどんな様子でしたか?」
「ああ………なんて言うか………」
悪巧みをしているような悪い顔をしていた。
「元気そうだったぞ」
色々飲み込んで声にだした。
「ラモールを殺そう」
「待て待て、お前の妹はラモールの思い通りにならないように資料を集めていると言っていた。お前も妹の思う通りにさせてやれ」
ローランドは頭を抱えてうずくまると叫んだ。
「僕は妹の幸せを一番に考えているのに~」
ローランドがこんなに取り乱すのをはじめて見た。
それだけ妹が可愛いのだろう。
「ローランドの妹、美人だもんな」
「………手を出したら殿下であろうと容赦はしません」
「ラモールには婚約までさせたのにか?」
ローランドは悔しそうに叫んだ。
「あの子が嫁にいくなら我が家の役に立つ家が良いと言ったから~」
ローランドのシスコンぶりに思わず笑ってしまったのは仕方がないと思ったのは言うまでもない。
お兄様の取り乱した姿が可愛い。