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小説を少し

短めです。

マチルダさんの小説を少しだけお楽しみ下さい。

 〝はなの咲き誇る東屋で涙を流す伯爵令嬢を見かけた。

 自分の昼寝場所なのに邪魔だと最初は思った。

 その頃の自分は、自分の想い人に仲むつまじい男が居て、自分がいくら頑張っても報われる気がしなくて歯がゆい想いをしていた。

 それと同じ頃、東屋で無表情に涙を流す伯爵令嬢が自分の想い人と仲むつまじい男の元婚約者なのだと聞いた。

 自分と同じ境遇の彼女。

 気まぐれに話しかけようと決めた。

 何時ものように東屋で声を出すことも忘れたように無表情で涙を流す彼女に話しかけた。


「君は人形の様に泣くんだな」


 彼女はチラリと自分に目をうつすとすぐにもとのように戻ってしまった。

 次の日も、また次の日も、何日も同じように声をかけた。

 もう、何日目かも忘れた頃彼女が口を開いた。


「殿下、私になど構わないでください」


 彼女のはじめて発した言葉に、声に

柄にもなくトキメいてしまった。

 なんて綺麗な声だろうか?

 自分はそれからも毎日彼女に話しかけた。

 鬱陶しそうにしていても視線を合わせてもらえるようになった。


「殿下、殿下もあの娘の事が好きなんでしょ?私は殿下が話しかけてくるたびにあの子の事を思い出して辛いのです。だからほうっておいて」

「君は気がついているかい?今日が今までで一番長く、君の声を聞けることが出来た」

「殿下は気が付いていないのですか?私は殿下が愛するあの子を虐げていた女なのですよ」


 自分は思わず笑っていた。

 彼女の声が聞けて嬉しくて仕方がなかったのだ。


「自分だって、侯爵家の長男に無理矢理仕事を押し付けたりするさ。あの子と一緒に居るのを見て殺してやりたいと思ったこともある。好きとはそう言う感情の先にあるものだろう?」


 自分は彼女を抱きしめ、頭をポンポンと軽く叩いて笑った。


「君だけじゃない。自分も一緒だ」


 自分の言葉に彼女ははじめて声を出して泣いた。

 彼女の泣き声を聞いて自分は思った。

 彼女を守りたい。

 あの子の事は手に入れたいという物欲であったと今なら解る。

 彼女は自分が幸せにしてあげたいと心から思う。

 暫く彼女を抱きしめていたが、彼女に言われて離れた。

 彼女は恥じらうように顔を赤らめていた。

 普段冷たい表情しかしない女性の恥じらう姿はなんて可愛らしいんだろうか。

 自分は彼女を見詰めて呟いた。


「もう、大丈夫だろうか?」

「はい殿下。本当にありがとうございます。殿下のお陰で気持ちを切り替えようと思えそうな気がしてきました。殿下のように優しい男性が世の中には沢山いらっしゃいますよね?先を見据えて生きていきたいと思います」


 彼女は涙でボロボロになってしまった顔をフワリと笑顔に変えた。

 その顔を見た瞬間、自分は右手で己の目を覆った。

 自分は勘違いをしていたんだ、自分はあの子に恋なんてしていなかった。

 おもちゃを惜しがる子供と一緒だっただけなのだ!

 今目の前に居る女性を何が何でも助けたい、守りたい、愛しい。

 この感情が本当の恋……… 〟



 


「マチルダさん、これだと王子が薄情な人間のような感じになりませんか?」

「何をおっしゃいますお嬢様!女性とは好きな女にフラれたからってすぐに次の女を好きになる男なんかにトキメいたりしないのです!だから、あの女を好きだと思ったのは勘違いで本気で愛せる女性を見つけた設定にするのです!」


 力説されたが私には世間のことはよく解らないからマチルダさんの書きたいように書かせるのが一番だ。


「そうなの。続きも楽しくなりそうね」

「お任せくださいお嬢様!私がお嬢様を幸せにして見せます!」


 ええ、マチルダさん、この話も売れそうな匂いがプンプンするわ。

 これで売り上げアップも間違いなし!

 売り上げアップってことは私に幸せがやって来るってことよね?

 私とマチルダさんは一緒に不敵な笑みを浮かべあったのだった。

読んでくださりありがとうございます。

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