プロローグ
その町の異変に町の人達が気づいたのはつい最近のことだ。町の人達が町から外に出ようとしても、町に戻ってしまうのである。
不幸中の幸いながら、電話は滞りなく繋がり町の外の人間とも意思疎通を図ることはできた。
それでも、外に出られない不安は募る中、一週間が過ぎた。
いつまでも食料が持つ訳ではない。この狂った町で一体どのくらい生きればいいのかも分からない。
何もかもが分からないこの状況。発狂する者も出てきた。
その町に一人“ピエロ”の格好をしている者がいる。
“ピエロ”は微笑みもせず、ただじっと周りを見ていた。周りから不審な目で見られても、“ピエロ”はただじっと周りを見ていたのである。
やがて“ピエロ”は手に持っていた包丁で自分の腹を割いた。中から臓物が出てくる。
周りは何がなんだか分からないまま、“ピエロ”が死に行く様を見ていた。
“ピエロ”は死んだ。だが誰も彼を気に留める者はいない。
この狂った町で誰が狂いだしてもおかしくない。町の人達は彼もその一人であると考えたのだ。
ところが、ちょっと町の人達が目を逸らした隙に“ピエロ”の死体は消えてしまっていた。
町の人達が次に“ピエロ”の姿を見たのは、町の外であった。死んだはずの“ピエロ”が、町の外に立っていたのだ。
自分達の住んでいる町とそれ以外には絶対に越えられない境界線がある。彼はそのルールを崩して、境界線を越えたのだ。
彼が何故生きているのかそんなことはどうでもいい。
町の人達はこぞって町から出ようとするが、やはり結果は同じであった。
そんな時、“ピエロ”が初めて微笑んだ。微笑んだと言うよりもあざ笑ったのかもしれない。
お前達は決して出られない。出られないまま惨めに死んでいけ、と言うような目をしていた。
そして彼は踵を返して町を後にしたのだった。
それから一週間して町の電話も通じなくなった。町と外との外交手段は完全に途絶えてしまったのだ。
時を同じくして、その町の隣の町に四人の若者が現れた。彼らは一部の人間から“道化師”と呼ばれている存在であった――。