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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫
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大聖国 十二


 聖女様宅の中庭には、先生とソフィアちゃん、醤油顔の三名が残った。

「お疲れ様です、エディタさん」

「あ、ああ、そうだな……」

 お声掛けさせて頂いたところ、チラリ、こちらを眺める先生はぎこちない。自らの過去を巡っては、色々と思うところがあるのだろう。どことなく余所余所しいような、それでいて構って欲しそうな、なんとも微妙な表情をされている。

 ここは男である自分が話題をリードするのが正しいと見た。

「こうして無事に再会できて嬉しいです。怪我などはされてませんか?」

「え? あ、あぁ、当然だっ! 今の私は最強だからなっ!」

 先生、それはもう十分に聞いたので、大丈夫です。

 十分に最強だと思います。

「それではペニー帝国の宿に戻るとしましょう。下手にこの場へ残っては、大聖国の方々より要らぬ誤解を受けてしまいかねません。クリスティーナさんやロコロコさんもお待ちです。皆さん、エディタさんのことを心配していますよ」

「……お、おい、聞かないのか?」

「というと?」

「いや、その、なんだ? ほら、どうして私が最強で無敵で全能なのかとかっ!」

「お尋ねした方がよろしいですか?」

「べ、べべべ、別に、そういう訳じゃないのだがっ! 別にっ!」

 めっちゃ聞いて欲しそう。

 ウズウズしている先生いじらしい。

 だから、敢えて聞いてあげないのが、正しい先生の味わい方だ。

 これを醤油顔はちゃんと理解している。

「行きましょう、こちらです」

「あ、おいっ! ま、待てよっ! おいっ!」

 ソフィアちゃんと先生を伴い、他の面々の下に戻ることとした。

 先生の語りたいところも含めて、詳しい状況共有は落ち着いた場所で行うべきだろう。今後の予定に関しては、キモロンゲやロリゴンなど、有識者の知恵や助力も必要不可欠になると思われる。

 そう、なんせ最悪の教育状況で、魔王さまが蘇ってしまったのだから。



◇◆◇



 飛行魔法に身を飛ばすこと、訪れた先はペニー帝国所有のリゾート施設。

 聖女様と喧嘩してしまった為、まさか大聖国のお屋敷には戻れない。膜確ノーパン修道女からの御持て成しは至極惜しいが、断腸の思いでさようならしてきた次第だ。さようなら、処女、こんにちは、非処女。

 そんなこんなで我々は、同所でも一等に広いリビングで顔を合わせている。

 メンバーは醤油顔の他、ソフィアちゃん、エディタ先生、ロリゴン、ゴッゴルちゃん、縦ロール、キモロンゲ、それに西の勇者様といった塩梅だ。皆々、ひとっ風呂浴びて、衣服を着替えて、小奇麗になったところでのお打ち合わせである。

 何故ならばソフィアちゃんが臭かったから。

 おかげで湯上がりロリータみんな可愛い。

「早速ですがエディタさん、お伺いしたいことがあります」

 対面、ソファーに腰掛けた主賓に問い掛ける。

 湯上がり金髪ロリムチムチ先生は髪の毛がツインテール仕様で超かわいい。

「う、うむ」

「先代の勇者さまと魔王に関してです」

 この件に関しては、先生が一番に詳しいことだろう。

 聖女様とキモロンゲのトークが正しければ、彼女こそ当事者なのだから。

「……その、なんだ? 決して騙していた訳ではないんだ」

「エディタさんに騙されるのであれば本望ですよ」

「ぅ、うむぅっ……」

 ちなみに先生の他、皆々の配置はといえば、醤油顔の左隣に縦ロール。その背後にソファーの背凭れ越しに直立するキモロンゲ。一方で右隣にはロリゴン。部屋の出入り口にほど近い位置に西の勇者様。そして、例によって部屋の隅に体育座りのゴッゴルちゃん。

 ソフィアちゃんは、そうした面々に対して、今まさにお茶のご用意など。

「どうぞ、続けて下さい」

 勿体ぶられても面倒なので、サクサクとお話を進めよう。

 さらり促したところ、先生は神妙な面持ちで語り始めた。

「お、お前たちがどこまでを知っているか、私は知らない。だから、私が知っていることに関して、一通り話そうと思う。そこの魔族やエンシェントドラゴンなどは長生きだ。私などより多くを知っているかもしれないからな」

 ごほん、咳払いなど一つ。

「その上での話となるのだが……」

 小心者迸る前置きと共に先生は語りだした。

 曰く、キモロンゲや聖女様が語ったとおり、先生は先代の勇者さまパーティーで魔法使い枠を務めていたらしい。ちなみに当時のパーティー編成はと言えば、勇者、戦士、僧侶、魔法使いの四名であったらしい。素晴らしきは様式美。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、みたいな。

 途中で多少人の出入りはあったものの、基本的にはこれら四人が中心となり、打倒魔王の旅を続けていたのだという。また、最終的に至った勇者様と魔王の関係も、キモロンゲの供述通りらしい。愛する勇者を失い、怒り狂った魔王さま。これを先生が封印したのも史実だという。

 感覚的にはあれだ、ほら、最終的には先生がボーカル兼ギター兼ベース兼ドラム。

 大忙しだよな。一人チンドン屋状態。

 その代償として魔力の大半を失ったそうだ。先生の魔力は魔王の転生体とやらを宝石の中へ封じ込めるのに利用されていたらしい。ちなみに魔王を封印して当時は、醤油顔が出会って当初より、尚のこと弱っちかったことが判明した。

 おかげで魔王城から地元へ帰郷の最中、先生は聖女様に殺され掛けたそう。十中八九で口封じの為だろう。事実、先生の活躍は史実から消えている。こうして確認してみると、当時から不遇の人生を送ってきたことが窺える。不幸な先生哀れ可愛い。

 結果として金髪ロリムチムチ先生は、各地を転々としながら、数百年に渡る隠居生活に入ったのだという。そうした最中にも、先生の存命を知る聖女様からは、度々アプローチがあったというから大変だ。例の呪いに関しても、原因は聖女様であったらしい。

 ただ、それも封印が解けたことで、元の力を取り戻したとのこと。

「一つ一つ語っていては時間が掛かる。不要な情報も多いだろう。より詳しいところは、そちらから質問をよこして欲しい。それに応える形で、私からは説明させてもらう。場合によっては、そこの魔族の方が詳しいかもしれんが」

 ツラツラと語ったところで、チラリ、先生の視線がキモロンゲに向かう。

 それなら早速、クエスチョン。

「先生とゲロスさんには面識が?」

「あったのかもしれんが、私は覚えていない」

「なるほど」

 どうやら一方的にキモロンゲが知っているだけっぽい。

 そもそも数百年前のこととか、よく覚えているよな。長生きな種族だと、記憶の作りから違ったりするのかもしれない。魔法などという不思議パワーが存在するのだから、生物の中身がダーウィンに喧嘩を売るような仕組みになっていてもおかしくない。

 あれこれ考えていると、キモロンゲが言い難そうに口を開いた。

「当時、私が魔王さまと行動を共にしていたのは事実だ。だが、その頃の私は今ほど魔力に優れていた訳でもない。宮仕えのようなものだったのだ。一方、そのエルフは前線で杖を振るっていた。故に私は決戦に際して、少しばかり視界に捉えた程度だ」

「そういうことですか」

 どうやら当時の彼は雑魚だったよう。

「それよりも、ほ、他には何かないのか? 例えば、わ、わ、私のこととかっ」

「そうですね……」

 期待しているところ悪いけれど、どちらかというと魔王系の情報が欲しい。

「当代の魔王に関して、なにか知っていることはありますか?」

「……いや、転生後の魔王に関しては何も知らない」

「なるほど。では先代以前の魔王に関してはどうですか?」

「そもそも私が知っているのは、先代の魔王が唯一だ。勇者に連れられて旅をしている最中、先々代の魔王に関する情報を漁ったことはあったが、大した情報は得ていない。それ以前の魔王に関しては、そこの魔族やドラゴンの方が多くを知っているのではないか?」

 少し不機嫌となった先生。ムッとした表情が愛らしい。

 その視線がキモロンゲとロリゴンに向かう。

「如何に私が魔族とはいえ、先々代より以前は、そう多くを知ってはいない。先刻に貴様らへ話したところが精々だ。また、それ以上を知っていたとして、何でもかんでも素直に教えると思ったか?」

『…………』

 たしかに仰ることは御尤も。

「クリスティーナさんは何かご存知だったりしますか?」

『……しらない』

 一方でロリゴンにはプイとそっぽを向かれてしまった。

 なんだろう、その反応に違和感を感じる。

「本当ですか?」

『……ほんとうだ』

「我らがドラゴンシティにとっても、決して他人事ではないのですが」

『っ……』

 一瞬、ピクリと耳が震えたのを醤油顔は見逃さなかったぜ。

 コイツ、絶対に何か知っているぞ。

 そうこうしていると、逆に先生からお声掛けを頂戴した。

「お、おい、それはどういったことだ?」

「皆さん揃ってから伝えるつもりでした。そうですね、この場でしたら、居合わせた方々は全員いらっしゃいますので、改めて私の方から共有事項があります。実は封印から解かれて直後の魔王と言葉を交わす機会に恵まれまして……」

 聖女様のお屋敷の上、当代の魔王さまとのトークを赤裸々に。

「当代の魔王は、人類に対して極めて敵対的です」

「そ、それはどういったことなんだ? その魔族の話だと……」

 速攻で先生からご質問を頂戴だ。

 当然の流れである。

「封印されている最中も、当代の魔王は外界の光景を目にしていたようです。聖女様の傍ら、その行いを知覚していたようなのです。結果として、当代の魔王は人類という種を一方的に見下げており、排除すべき対象として認識しています」

 すると、皆々の表情の変化はと言えば、三者三様。

 主に人類勢はと言えば、ふーん? それで? みたいな表情をしている。元より魔王は人類にとって脅威という認識があった為だろう。特に勇者さまやソフィアちゃんなどは、実感が薄いようだ。その反応は微々たるもの。

 一方でエディタ先生を筆頭として、キモロンゲ、ゴッゴルちゃんといった人外勢は、少なからず緊張した面持ちである。恐らく本来の魔王に対する知識を相応に持ち合わせているのだろう。ゴッゴルちゃん、実年齢は幾つなのか、ブサメンとても気になります。

 そして、最も顕著な反応を見せたヤツはと言えば――。

『ド、ドラゴンはどうなんだ!? 特にエンシェントドラゴンとかだ!』

 ロリゴンである。

「……なぜにそのようなことを?」

『ぐっ……』

「どうしました」

『ぐるるるるるるる』

「唸ってないで答えてくださいよ」

 やたらと落ち着きをなくして、そわそわし始めた。

 めっちゃ気になる。

 ほっぺのお肉とか、ピクピクと緊張に震えてる。

 普段ならふんわり柔らかなのに。

 そんな具合だから、他の面々もまた自然と彼女に注目する。皆々の視線がクリスティーナの元に集まった。総勢七名からの注目は、互いに少なからず交流を持った間柄と在って、確実にロリゴンへプレッシャーを掛けて思える。

『…………』

「クリスティーナさん?」

『……なんだよ?』

 右を見て、左を見て、殊更にぐるるると周囲を威嚇し始める。

「今し方の質問が意味するところを確認させていただきたいのですが」

『いやだ』

「…………」

 嫌だってなんだよ、嫌だって。

 しかも即答。

 たまに飛び出す、やたらと素直な言葉遣いに、胸キュンだこの野郎。

「……クリスティーナさん?」

『…………』

 醤油顔の顔をジッと、挑むような眼差しで見つめてくれる。

 これはあれか、もしかしてロリゴンのやつ。

「もしかして魔王が怖いので……」

『ま、負けただけだっ! 負けただけっ! 別に怖くないっ!』

「負けた?」

「三代前の魔王に、喧嘩を売って……負けた」

『…………』

 なるほど。

 ロリゴンのさっきの態度は、それが原因か。

『だ、だが! 良いところまでいった! あと少しで追い払えた!』

「そのような過去があったのですね」

 三代前というと、キモロンゲ曰く、人類に味方した魔王さんだ。

 自分から喧嘩を売って、追い払うことさえ出来なかったとか、ラブい。

『貴様っ、し、信じてないなっ!?』

「いえ、決してそんなことは……」

『本当だぞっ!? 腹をえぐってやった! 腹をっ!』

「それは頼もしいですね」

 必至に言い訳を並べるロリゴン。

 そんな彼女の言葉に続けるよう、キモロンゲが口を開いた。

「三代前の魔王さまは百五十年ほどを生きたところで討たれた。仮に当代の魔王さまが五百年の歳月を既に経ているとすれば、その力はこのドラゴンが打倒した魔王さまとは比べ物にならないほど強力なものとなっている筈だ」

 さっきは語ってやらないとか言っておきながら、速攻で三代前の情報を流出である。もしかしたら魔族としての立場云々ではなく、単純に、個人的に、醤油顔のことが気に入らないだけなのではなかろうか、なんて思う。

『っ……』

 応じてロリゴンはといえば、肩を揺らしてビクリ。

 どうやら本格的にトラウマっぽい。

『わ、私だって時を経て強くなった! なんら問題ないっ! 余裕っ!』

「魔王さまと話をしたとのことだが、既に成体されていたのか?」

 吠えるロリゴンをシカトして、醤油顔に問うてくるキモロンゲ。

 マジぐぬぬ状態のクリスティーナ、顔が凄いことになっている。

 目元が怖い。

「何を持って魔王が成体であると判断するのですか?」

「どの程度の知恵と力を有していたのだ?」

「そこまで具体的に確認する機会はありませんでした。ただ、少なくとも聖女様は一撃でしたね。回復魔法を掛けておいたので、恐らく存命とは思いますが、腕の一振りで完全に圧倒しておりました。会話のテンポから知恵もまた相応に」

「なっ……」

 そこまでを語ったところで、ようやっと勇者様が声を上げた。

 身近なものさしが傍らに並んだところで、ようやっと実感が湧いたのだろう。個人的には西の勇者様が聖女様の実力を把握していたことが意外である。あぁ、だからこそ彼は彼女の存在に、疑問を抱けたのかも知れない。

「あの聖女を一撃となれば、どうやら少なからず成長していらっしゃるようだ」

 魔王様の強さにお墨付きを与えるキモロンゲ。

 おかげで慌てる羽目となるのが、同魔王さまより狙われた人類勢だ。

「あ、あのっ、タナカさん、それじゃあ我々は魔王さまにっ……」

 速攻、ガクブル系メイドさんが声を上げた。

 手にしたお盆を胸元に抱いて、膝をガタつかせている。

 様呼ばわりが彼女の心情を素直に現して思える。

「注意は必要でしょうね」

 あのステータスを見た後だと、適当なことは言えない。

 大聖国のお膳立てが、現行の魔王に対しては、何ら役に立たないと知れた昨今。これは本格的に対策を考えるべきではなかろうか。少なくとも自身の目に届く範囲くらいは、守って余りあるだけの力が欲しいと切に思う。

「ところでゲロスさん、魔王は無事に復活されたようですが、貴方は彼女の下へ向かわなくて良いのですか? あれほど切望されていたにも関わらず、何故か今この瞬間、貴方が我々の前にいることに疑問を感じます」

 こうして新しい奴隷候補生が控えているのだ。

 古株は席を譲っても良いのではなかろうか。

「……たしかに貴様の言葉は尤もだ」

「そうでしょう」

「だがしかし、復活より間もない頃合いとあっては、魔王様も一人の時間を欲していらっしゃることだろう。それを我々の都合で奪うなど、その存在を崇める立場として、決して無理強い出来るものではない」

 コイツ、魔王様より縦ロールとのプレイを優先しやがった。

 一人の時間が欲しいって、誰の言葉だよ。

 意味が分かんねぇよ。

「魔族は今、これといって危機的状況に在るわけでもない。元より魔王さまを回収する意図は、転生後、魔族以外に与した魔王さまが、我々に不利益を与えるような状況を回避する為の意味合いが非常に大きい」

「私は魔王と聞くと、世界を征服するのが仕事かと思っていました」

「人の世を征服して、我々魔族に何の得がある? 意味が分からん」

「そう言われてしまうと、こちらとしても返す言葉がないのですが」

 意外と淡白だな、魔族め。

「魔王さまが五体満足、十分な力を伴い復活為された。更に人を恨んでいるとあらば、我々としても焦ることはない。いずれ熱りが冷めたところで接触し、有効な関係を築くのが最善だろう」

「その言葉だけを聞くと、まるで魔族こそが勇者のようですね」

「ということで、しばらくは変わらずだ。ご主人の手前、まさか文句などないだろうな? 我々はペニー帝国に囚われたプッシー共和国の捕虜なのだ。その扱いを放棄するなど、人の世には決して許されぬ行いだろう?」

「ええまあ、もう好きな様にして下さい」

 この魔族は、放っておいても良い気がしてきた。

 縦ロールと一緒なら、きっと大丈夫だわ。

 完全に平常運転の主従である。

 一方で陰鬱な表情を顕わとしているのが西の勇者さまだ。

「しかし、そうなると勇者とは一体、なんだったのだろう。聖女様のお告げを信じて、ここまで歩んできた。まさか全てが全て真実であるとは決して思わない。ただ、全てが全て嘘であるとも思わなかったのだが」

 完全に憂鬱入っている。

 ナイーブなところには触れず、適当に返すのが良いだろう。

「確かに先代の勇者様は気になる存在ですね」

 これに反応して下さったのが、当時を知る金髪ロリムチムチ先生だ。

 誰が問うでもなく、ボソリ、自ら呟かれる。

「……先代の勇者、か」

「お聞きしても?」

「そうだな……」

 しばらく考える素振りを見せたところで、先生は言葉を続けた。

「昔のことなので、忘れているところも多い。それで尚も覚えている印象はと言えば、あぁ、臆病で意気地のない女だった。そこの娘と大差ない年頃に出会い、数年ほどを共に行動したのだが、最後の最後まで、その性根は変わらなかった」

 先生の視線が指し示したところは縦ロール。

 先代の勇者様が活躍されたのは十代から二十代に掛けてということだ。

「才気に満ち溢れた女であった。ただ、如何せん心が弱くてな。周りに流されるまま、凡そ勇者と称されるには憚られる振る舞いばかりしていた。だからだろうか、我々もまた別れられず、ズルズルと最後まで付き合ってしまった訳だが……」

 遠い目をするエディタ先生、昔を思い起こすお婆ちゃんの気配。

 ロリでムチな外見とのギャップがイカしてる。

「そんな女であったから、碌に戦うことも考えず、常日頃から頭を下げてばかりであった。戦っている姿より頭を下げている姿の方がシックリくる。まあ、結果的に和平へと話は流れ流れて、被害は最小限で済んだのだから大したものだ」

「なるほど」

「そもそも勇者という存在に対する保証など、何一つ存在しない。ただ、その神輿をどれだけ多くの者たちが共に担いだか、その一点に尽きる。そういった意味では、奴に惚れた戦士が良い男でな。勇者云々はその男から発したと称しても過言ではない」

「そうなると大聖国が発していた、お告げ云々に関しては……」

「眉唾だ。しかし、当時もまた神輿は同じようにして担がれた訳だが」

「そうだったのですね」

「しかしながら、ヤツの実力は本物だった。少なくとも腕力であの女に敵う者は、同じ人間は当然として、亜人、果ては魔族までを含めても、誰一人いなかった。それこそ先代の魔王であっても、腕力ただ一点においては押されていたほどだ」

 魔王に腕力で勝つとか凄い。

 あのステータスを見た後だと、普通に勇者認定したくなる。

 おかげで西の勇者様の表情が、殊更に覚束ないものへ。

「聖女様を一撃で屠るほどの相手に腕力で勝るのかい。正直、僕にはまるで想像がつかないよ。しかし、勇者と称されるからには、それくらいは為して然るべきなのだろう。今の今まで、お告げ一つでその気になっていた自分が惨めでならない」

 語るところも酷く気落ちして思える。

 それでもイケメンな彼だから、まったくもう。

「それでも私にとって、貴方は間違いなく勇者でしたよ、スターさん。貴方の勇気ある行いに救われた人は、決して少なくないと思います。身近なところでは、例えば私やエディタさんのように」

「……ありがとう。そう言って貰えると、とてもうれしい」

 このイケメンは既に勇者として、大規模な広告を打たれた後である。本人の意志はどうあれ、勇者、或いは元勇者という肩書を否定することはできないだろう。それだけのお金が掛かってしまった後だ。

「貴方には出来ることが沢山ある。気落ちしている暇はありませんよ」

「ああ、そうだろうね。それに気落ちなど、僕らしくない」

「仰るとおりです」

 そして我々はといえば、結果的に彼を抱き込んだ予感。

 大聖国の聖女様と不仲になってしまった都合、このイケメンとの交友は醤油顔にとって、非常に心強い命綱となるだろう。ドラゴンシティの今後を思えば、担ぎ手として四天棒あたりを任せて頂ければ幸いだ。

 マブダチ目指して頑張ろう。



◇◆◇



 魔王さま復活のお知らせを受けては、まさか悠長にリゾートなどしていられない。

 我々は急遽、ペニー帝国に帰還することとなった。

 こんなことなら事前に十分、バカンスを堪能してから大聖国へ向かうべきだったと思わず後悔してしまいそう。それもこれも自らのLUCの低さが原因だとするならば、いよいよ退っ引きならないところまで至って思える。

 往路に同じく、復路もまた飛行魔法での移動と相成った。長距離を飛べる者は自走し、そうでない者は例によってロリゴンの背中といった塩梅だ。ちなみに今回、彼女の背には常連であるソフィアちゃんの他、西の勇者様がご同乗となった。

 そんなこんなで辿り着いた先は、我らが本拠地ドラゴンシティである。

「な、なんだい、この巨大な壁の連なりはっ!」

「どうぞ、こちらです。勇者さま」

「それにあの塔はどうしたことだっ! 先が見えないほどに高いっ!」

「興味があれば後ほどご案内しますので」

『ま、待てっ! それは貴様が先だっ! 貴様がっ!』

 初見の勇者様が慌てる様子を眺めつつ、我々の歩みが向かった先は町長宅。

 例によって全員で、同宅の応接室に詰めかける運びとなった。

「むっ、帰ったかっ!?」

 ドアを開いて室内に一歩を踏み出したところ、早々に声を掛けられた。誰から声を掛けられたかと言えば、魔道貴族である。その隣にはリチャードさんやゴンザレス、ノイマン氏、更にはアレンの姿まで見受けられる。

「これはこれは皆さん、お揃いのようで……」

 アレン、なんでここに居るんだよ。

 エステルちゃんと一緒に首都カリスへ帰った筈なのに。

「タナカさん。すみませんが一つ、急ぎの頼みをお願いできませんか?」

「急ぎの頼み、ですか?」

 帰宅から早々、挨拶さえすっ飛ばして醤油顔の下まで駆け足のリチャードさん。親しき仲にも礼儀ありを重んじる彼らしくない振る舞いだろうか。自然と身構えてしまう。いったいどんなお願いが飛んでくるのかと。

「娘を、エリザベスを助けていただきたいのです……」

「お話が見えてきませんので、最初から説明をお願いします」

 エステルちゃん関係のイベントって定期的且つ突発的に発生するよな。

 なんていうか、非常にロリビッチらしいと思うよ。
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