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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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アウフシュタイナー家 三

活動報告を更新しました。
 元カノは元カレだった。

 幸福は根底から覆されて、童貞野郎は元カノという単語を飲み会で用いることが不可能となった。性差という絶対の規則は人と人との関係を容易に断ち切り、そこには二本の悲しい棒だけが残った。

 未だ自らが立つ場所は町長宅の執務室であり、傍らにはゴンちゃんが立ち、正面には元カレの姿がある。他の面々から向けられる視線も然り。刺激的な発言の連なりは殊更に皆さまの注目を集めて思える。

 状況は継続している。

「ああそうだ、事前に伝えておくが、俺はそっちの気はないから勘弁してくれよな? ただまあ、それだけだとあれなんで、ここだけの話、クランの連中には幾らばかりかいると伝えておくけどよ」

 朗らかに語ってみせるスキンヘッドな彼は、伊達に数百人と人を率いていない。性の向かう先には大らかな価値観をお持ちである。おまけで頂いた情報は、思い起こせば以前も耳とした覚えがあるぞ。きっとゴンちゃん自身も気を使っている話題なのだろうな。

「しかし、なんだ? あの跳ねっ返りだったアーシュを、数日でここまで自分の色に染めちまうとは本当に大した男だぜ。改めて尊敬するわ、タナカさんよ。おかげで俺も随分と楽しませてもらったぜ」

 だがしかし、セーフだ。

 ギリギリセーフだ。

 思い起こせば一昨日、醤油顔は飛空艇で演じたばかりである。

 この身はJC改めDCにとっては兄の仇であり、それ以外の何者でもないと。

 今この瞬間、一昨日の自分を褒め称えたい。

「ご勘違いのなきようお願いします、ゴンザレスさん」

「勘違い? そりゃどういうこった?」

「私は彼にとって家族の仇であり、それ以外の何者でもありません。幸いロックさんはご無事でしたが、過去の行いに変わりはありません。そもそも自分のような老い先短い中年が、将来有望なアウフシュタイナー家の方の行く先を遮るなど、まさか許されません」

 普段は憎いばかりの歳の差が、今この瞬間、極めて頼もしい。

 きっと二回り近く、離れているんじゃなかろうか。

 などと考えていたところ、不意にショタチンポが吠えた。

「オ、オッサン!」

「なんですか?」

 今度はなにを語ってくれるつもりだろう。

 緊張から胸が痛いほどに高鳴っているわ。

「……それって、あの……も、もしかして、なんだけど」

「もしかして、なんですか?」

「オッサンが私に近づいたのは、り、利用する為とかじゃなくて、その、なんていうか、私の為だったんじゃないのか? 自惚れかもしれないけど、部屋で色々と教えてくれたオッサン、凄く優しかったし。そもそも貴族でない私に利用価値なんて皆無だし……」

 それは出会って当初の君が女の子だったからさ。

 オマンコを装備していたからさ。

 あと、猛烈に勘違いを生みそうな言い回しは止めて頂戴。

「だから、兄貴の件では挑発的なことを言ったりして、最後は憎まれ役で……」

「まさか? 私はそこまで器用な人間ではありませんよ」

「で、でもっ、むしろオッサンはそういうの好きそうな気がするっ!」

「…………」

 些か引きが強いけれどいける。この感じならいける。

 当人が生きていてくれたからこそ到れる不謹慎ではあるが、フックの野郎が一回死んでくれていて、心の底からありがとう。現場でペンダントをサルベージした過去の己を褒め称えてやりたい。低LUCなんてとんでもない。

 まさか初めてがメンズホールだなんて、そんなの嫌だからな。

 できる限り仇キャラを駄目出しさせて頂く。

「アーシュの為ってのは、どういった話なんだ?」

 アウフシュタイナー家の人間が家族に見せる思いやりの心は大したものだ。早々にゴンちゃんまでもが食らいついてきた。入れ食いである。ならば千載一遇の好機、申し訳ないが、狂ってしまった交配事情を正す為に利用させて頂こう。

「学園での彼女は少しばかり元気がありませんでした」

「ん? そうなのか? 随分と活躍していると聞いていたが」

「詳しいところは彼女自身の口から直接窺ってください」

「まあ、それもそうだな。分かった」

 男は駄目。

 男は駄目なんだよ。

 盛るならフックの野郎と兄弟で近親パコリンコしてなさい。

「だが、それにしちゃあ随分と入れ込んでるみたいだが……」

「弟さんの格好に関して言及しているのであれば、私が学園都市を訪れて以前より、このような姿をされていたみたいですよ。これは私の勝手な推測ですが、恐らくは粛清を恐れてのことではないかと」

 いつぞや学園の廊下で耳とした単語が、不意に脳裏をよぎった。

 そう、思い起こせば正解は最初から与えられていたのだ。

 どおりで出会って当初は避けられまくっていた訳である。あれこれ過去のシーンを振り返ってみると、エステルちゃんの姿を目の当たりとして逃げ出したこともあったよな。あれは全力で貴族なロリビッチに危機感を覚えていたのだろう。

 今ようやっと、全てが一本の線の上に繋がった。

「あぁ、そういうことか」

 一連の弁明を受けてはゴンちゃんも納得のご様子。

 よし、逃げ切ったな。

 なんて甘っちょろいことを考えておりました。

「そ、それでも、私は愛してる! オッサンのことを愛してる! 大好きだ! オッサンの為なら、なんだでできるっ! ずっと、ずっとオッサンと生きていきたいっ! 子供だって、その、な、なんとか頑張るからっ!」

 唐突にも吠えるショタチンポ。

 頑張っても無理なことって、沢山あると思うんだ。

「その想いは大変に嬉しく感じます」

「オ、オ、オ、オッサンのチンポ、しゃぶりたいっ! 凄くしゃぶりたいよっ!」

「いえ、あの……それは……」

 マジかよ。

 これ絶対にピーちゃんの影響だ。

 悪影響っていう単語、これほどまで強く意識したの今日が初めて。

「頑張るからっ! 絶対に、絶対に頑張るからっ! 飲むし!」

 絶対に頑張るな。

 飲むな。

「思い出してください。私は貴方が傷つく姿をただ眺めていた愚か者ですよ?」

 つい数日前、ピーちゃんの暴走を巡る一件がここで良くも悪くも生きてくるわ。

 ここ最近、回復魔法の恩恵に預かってばかりで、いかんせん肉体へのダメージに対して寛容なところがある。思い起こせばショタチンポが足首を切断されたシーン、普通だったら即座に飛び出してしかるべきだったろう。割と大怪我だ。

 それを幾ら相手の成長を思うだなどと大義名分を掲げたところで、なにもせずに眺めていたというのは、今更ながら人としてどうかと思わないでもない。まさかこのような形で回復魔法のデメリットが出てくるとは思わなかった。少し感覚が歪んできている。

 ただ、今この瞬間に関しては最高のメリットだ。

「学園都市での貴方は、私をピーコックさんの魔手から守ってくださりました。私たちの食事に毒が混入されている事実を知って、自らの立場も顧みず、貴方は目上の相手に対して果敢にも挑まれました」

「…………」

「そんな貴方の奮闘する姿を、私は卑しくも影から眺めていたのです。右足が失われて、更に左足が失われて、身を崩して。それでも私のような愚か者の為に歯を食いしばり必死となる貴方を、私はただ何をするでもなく眺めていたのです」

「そんなの全然気になるもんか! それにオッサンは、さ、最後は助けてくれたじゃないか! もうダメだって思った瞬間、駆けつけてくれたじゃんか。身を挺して私のことを助けてくれたじゃんかっ!」

「随分と遅い救出でした」

「違うっ! それは絶対に違うっ!」

「いいえ、違いません」

「あのタイミングで出てくるなんて、ずっと私のことを見守ってくれてた証拠だっ! 私が自分の足で立ち直るのを見守ってくれていたんだろっ!? 普通に止めるより難しいじゃんか! めちゃくちゃ嬉しかったっ! あの夜、私はオッサンで自慰したっ!」

 ごめん、そういうの知りたくなかった。

 しかしながら、素直にホモは嫌ですとは言えない。同性愛は極めて歴史の長い性癖であり、いつの時代も老若男女の垣根を超えて普遍的に存在している。これを否定することは、同時に人類の数割を敵に回すことと等しい。下手な宗教団体より強大だ。

 当然、ゴンちゃんからの心象も良くないものとなるだろう。当人の趣味はさておいて、彼もまた性に関しては大らかなところがある。身内の感情を巡り、その行いを性差から一概に否定してしまっては、今後の関係に少なからず支障を来すのではなかろうか。

 それに自分自身もまた、レズ大歓迎。

 故にこうなったら残すところは限られる。

 嘗てのロリビッチを振り切った台詞をリフレイン。

「ですが、すみません。私は既に心に決めた方がおりますので」

「っ!?」

 これだけは譲れないだろ、生物的に考えて。

 ノー・マンコ、ノー・ライフ。

「貴方は何一つとして失ってはいませんでした。どうか、これからは愛するお兄さんと共に、穏やかな日々をお過ごしください。私はそうして前向きに努力される貴方の姿を、とても好ましく思っています」

 少しばかり本音を混ぜて言動の信憑性向上を試みる。

 ちらり視線を向けた先にはフックの野郎が然り。

 なんかムカつくし、後で回復魔法して腕のフック治してやるわ。

 フックアームとか地味に格好良いんだよくそう。

「今の貴方は自らの足で立ち、どこまでも歩んでいけることでしょう。少しばかり寂しい事実ではありますが、私のような得体のしれない輩が傍らに立つ理由は、もう一つとしてないのですよ、アシュレイ・アウフシュタイナーさん」

「え? あ、ち、違うっ! 違うぞっ!? 兄貴とはべつにそんなっ!」

 なにを勘違いしたのか、大いに慌て始めるショタチンポ。

「わ、私が一つになりたいのはオッサンのであって、兄貴はぜんぜん関係ない! 第一、男同士でとか気持ち悪いじゃんか! そういうのは変だろっ!? 私だって別に、だ、誰のでもしゃぶる訳じゃないんだぞっ!?」

 なんでしゃぶること前提なんだよ。

「私も男なんですが」

「オッサンは別なんだよ!」

「…………」

 今一度、フックの野郎を窺えば、今まさに無言で一歩を後ずさる。

 そこは歩み寄れよブラザー。

 さっきはギュッと抱き合ってたじゃんか。

「あの時、私の舌を迎えてくれたの、嬉しかったっ……」

 ちょっと待てよ。

 なにしれっと当時の咥内事情をカミングアウトしてるんだ。

 確かに舌先でツンツンされたから、唇とか開いちゃったけれど、でも、それは仕方がないではないことだと思います。だってファーストキス。三十路越えて初めてとか、そりゃもう何が起こっても不思議ではないだろうさ。

「今の貴方は自らを冷静に見つめられていないようですね。このような歪な形ではなく、正しい形でご自身の幸福を追い求めるべきです。それがアウフシュタイナー家の方々に求める、私の一番の願いです」

 やばい、脇の下が湿ってきた。

「だから言ってるだろっ!? オッサンと一つになるのが私の最高の幸せなんだよっ! そして、多分、これからも活躍するだろうオッサンを影から支えられたらなんて、そ、そ、そういうのが、私の一番の願いなんだっ!」

 無理だよ。

 それは大腸菌が介在しないアナルセックスほどに不可能な言い分だ。

「私のどこにそれだけの魅力があると? この小汚い中年に」

「全部だよ! 全部ッ! オッサンが出したものなら何だって口にできる!」

「…………」

 やばいな。

 いつぞやのエステルちゃんを髣髴とさせるラブ具合だ。サキュバス属性が今まさに本領発揮だろうか。しかも今回は中古ビッチを通り越してソーセージ仕様。流石にこれをお迎えする度量はございません。

 しかしまあ、ここへ来てまさかの二人目サキュバス。

 エステルちゃんの件もあるし、過去、ペニー帝国で何かあったのは間違いない。人の営みに紛れ込んだエッチなサキュバスが、当時の貴族連中を相手にパコりまくった結果、現代においても生まれる子供が稀に先祖返り、なんて自然と妄想される。

 思い起こせば魔道貴族もちらっと漏らしていた。フィッツクラレンス家にはたまに魔力を多く持った子供が生まれるとかなんとか。それがサキュバス由来だとするのなら、まさにドンピシャじゃないか。

 ただ、大切なのは過去ではない、今だ。

 どうにかしてショタチンポエンドを回避しなければ。

 自分が贅沢を言える立場にないことは十分に理解している。選べる立場にないことも把握している。なにより目の前に立つ相手は、限りなく女に近い外見をしている。というか、下手な女の子より遥かに可愛らしい。

 けれど、どうしても同姓は嫌なのだ。

 この身が最初に欲しているのは、今も昔も変わらない。

 そこだけは譲れない。

 膜付美少女がいいんだ。

「まあ、アーシュもそこまでにしておけ。タナカの旦那も困ってるじゃねぇか。お前が入れ込む気持ちは分からないでもないが、こういったことは相手の気持ちを無下にするもんじゃねぇだろう?」

「で、でもっ……」

「それでも我慢ならないっていうなら、これから努力するんだな」

 どうやらこちらの意を組んでくれたらしい兄貴分から救済の手が伸びた。実兄にまで言われては、流石のショタチンポも幾分か落ち着きを見せる。決して全てを否定せず将来に託すあたりが彼らしい立ち振舞だろう。

「タナカの旦那も、まさか入れちまった訳じゃねぇよな?」

 でもさゴンちゃん、それ生々しすぎる。

 それとなくソフィアちゃんの様子を窺えば、めっちゃ興奮した表情でこっち見てる。まさかそのようなこと、ある筈もなかろうに。もしも知らずにベッドの上で迫られれば、乳首くらいなら容易に舐めていたとはもうけれど。

「すみませんが、私は異性経験がありませんでし……」

 あ、しまった。

 極限状態が所以、口が滑った。

「おいおいおい、流石にこの流れで嘘はよくねぇぞ、タナカさんよ」

「え、ええ、そうですね。申し訳ありません」

「ったく、くだらねぇところで下手な嘘を吐くんじゃねぇよ」

「ええ、まったくです。申し訳ない限りですとも」

 危ない、危ない。

 会社の飲み会でお酒の勢いから童貞告白したときの二の舞いとなるところだった。

 あの時はヤバかった。完全に場の空気が固まったもの。それ以降の社会生活もヤバかった。職場でのトークが完全に別世界だったもの。誰に対してもタメ口だった上司ですら敬語になった。まさかオチンチンの使用回数で人生が動くとは思わなかった。

 当然転職したけどな。年収が少しだけ上がったよ。

「肉体的な関係はございません。本人にご確認して頂いても結構です」

「おう、それなら話はここまでだ。アーシュもいいな?」

「うぐっ……」

 チラリ、ショタの視線がこちらに向かう。

 めっちゃ潤んでる。

 見た感じ、完全に恋する乙女の眼差しだから性質が悪い。

 男だなんて信じられない。

 ただ、ゴンちゃんに睨まれたところで、続くところ彼の言葉は失われた。

 いや良かった。本当に良かった。

 万が一下の具合を確認せずにしゃぶらせていたりしたら、目も当てられない状況となっていただろう。有無を言わさず、しゃぶりしゃぶられ、ショタチンポ地獄に陥る羽目であった。そういうのはもうピーちゃんとブス教授の交尾だけでお腹いっぱいだ。

 エディタ先生のパンチラでお口直ししたい気分だぜ。

 まだ見ぬゴッゴルちゃんの下半身、シャドウより先に挑むのも良い。

「それならゴンザレス、ひ、一つだけ言うこと聞けよっ!」

「ああ、なんだ?」

「私、ここに残るからなっ!」

「学校はどうするんだ?」

「休学届を出してきた。もともと飛び級で入学したし、進級も他のヤツらより二年くらい早いから、一年や二年くらい留守にしたって問題ないんだよっ! なにより、あそこで学ぶより、オ、オッサンの隣にいるほうが、遥かに勉強になるんだからなっ!」

「あぁ? 休学届? ちょっと顔を見せるのにどうしてそんなもんを……」

 ヤバイっ、そういえば手続き云々、話をしたような気がする。このまま学園都市まで送り届けて一件落着するつもりだったのに、そのこと完全に失念していたわ。しかもショタチンポの方から言い出されると辛い。

 今この瞬間、孕んだ彼女に堕ろせ宣言するクズ野郎の気分だわ。

 自己嫌悪が半端ない。

 流石に学園へ帰れとは言えないぞ。

 少なくとも衣食住と身の安全は保証しなければ。

「別にどうだっていいだろっ!? いいよなっ!?」

「言っておくが、お家取り壊しの前に出家した俺やロックと違って、お前は未だにアウフシュタイナー家の人間だ。少なからず危険が伴うことを理解しているんだろうな? 言っておくがペニー帝国の貴族は容赦ねぇぞ?」

「と、当然だろっ!」

「納得しているなら俺は構わない。男なら自分の身は自分で守れ」

「当たり前だっ! 私は、も、もっともっと強くなるんだから! いつかはオッサンのことを守れるような、そ、そんな男になりたいっ……」

 そこは嘘でも女になりたいと言って欲しかった。

「とは言え、この街に関するところで許可を出すのは俺じゃねぇ」

 呟いてゴンちゃんの視線がこちらに向かう。

 大丈夫だよ。分かってるよ。

「ゴンザレスさんが身元引受人ということであれば、私はこれを否定することは致しません。この街にいる限り、貴方に対する理不尽な暴力は、領主として決して許さないことをお約束しましょう」

 一応、後でロリゴンにもお願いしておこう。

 あの最強ドラゴンの庇護下にあれば、手出しできるのはそれこそ魔王くらいなものだ。

「だってよ。良かったな?」

「っ……」

 カァっとショタチンポの頬が赤くなる。

 そういうの止めなよ。

 反応に困るからさ。



◇◆◇



 学園都市を巡るあれこれが一件落着。

 同日、我々は首都カリスへの出発を一日ばかり延期したところで、ドラゴンシティに宿を取ることと決めた。これといって急ぐ仕事もなし、ショタチンポを学園都市まで送る必要も失われた為、少しばかりゆっくりしてゆこうという算段だった。

 なんだかんだで元カレとなってしまったJCではあるが、彼のことは人として決して嫌いではない。出会って当初を思い起こせば、生意気なショタチンポであったけれども、ピーちゃんとの一件を経て以降、その在り方は尊敬できるものだ。

 長旅の疲れをドラゴンシティのお風呂で存分に癒やして頂けたら幸いである。

 一方の自分はと言えば、お風呂に浸かることも忘れて、食事も適当なまま、お布団へ向かう。肉体こそ回復魔法でどうにかなっても、精神的な披露はいかんともしがたい。ここ連日の疲弊を癒やすべく早めの就寝に挑むこと今まさに。

 と、いざ目を瞑ったところ、部屋のドアがノックされた。

 コンコンコン、乾いた音が物静かな室内に響く。

「はい、すぐに参ります」

 誰だろう。

 もしかしてショタチンポだろうか。

 だとすれば全力でお引き取りなのだけれど。

「おまたせしまし……」

 錠を落としてドアを開ける。

 すると、そこに立っていたのは完全に想定外の相手であった。

「ソフィアさん、このような時間にどうされましたか?」

 まさかのメイドさん登場だ。

 首都カリスの学園寮でゲットして以来、いつの間にか彼女の普段着となったメイド服。これを着用の上、静かに廊下へ佇む姿は可愛らしくも麗しくあり、窓より差し込む月明かりに照らされて、後光に輪郭を薄ぼんやりと輝かせる姿は極めてベロチューしたい。

「タ、タナカさんにお渡ししたいものがありまして……」

「私に渡したいものですか?」

 なにそれ凄く気になります。

 改めてソフィアちゃんの様子を伺えば、両手を背後に回して、なにやらモジモジとしていらっしゃる。何かしら手にしているのは間違いないだろう。もしかして、ラブレターだろうか。それ、最高に嬉しいんですけれど。

「こ、こちらですっ」

 意を決した様子で、幾枚かの紙面を差し出された。

 手紙か。

 手紙なのか。

 いいね。

「……こちらは?」

「エステルさまのお部屋にあったものです」

「彼女の部屋に?」

 なにそれ気にならない。

 勝手に持って来ちゃっていいのだろうか。小物極まるソフィアらしからぬ行いである。家主の留守中に部屋のものを持ってきてしまうなど、プライバシーの侵害も甚だしい。尚且つ、それを醤油顔に渡すなど言語道断。

「はい!」

「であれば、すぐに元在った場所に戻してきてください」

「どうか、ど、どうか目を通してください!」

「駄目ですよ。親しき中にも礼儀ありというやつです」

「それでもどうか、み、見てくださいっ!」

「…………」

 珍しいこともあるものだ。

 ソフィアちゃんがここまで必死になるなんて。それとなく様子を伺えば、脇の下など完全に衣服の生地が色を変えて、胸回りにまで広がるほど。意識するまでもなく鼻腔を擽るのは凡そ少女らしからぬスメル。

 何が彼女をここまで掻き立てるのだろうか。

 ふと疑問に思ったところで、いつぞや学技会の折に、この平たい黄色の為に命懸けで奮闘してくれたのだという彼女の働きが思い起こされた。他者の口から窺った限りではあるが、その誰もが口を揃えて褒め称えるのだから、なるほど。

 もしかしたら、今この瞬間の彼女は、自分以外の誰かの為に動いているのかも。居るよね。自分の為にはからきしだけれど、他人の為だと妙に大胆となる人って。ヤバイ。やっぱりソフィアちゃん大好き。

「……分かりました。拝見いたします」

「あ、ありがとうございます!」

 ソフィアちゃんから紙の束を受け取る。

 際してはお互いの指先が少しだけ、ちょこんと触れ合って充実。コンビニでお釣りを渡されるとき、手を握ってくれるタイプの店員さんを思い起こす。あれ相手が女の子だと普通に惚れる。心が躍動する。

「…………」

 居室の側から漏れる照明に照らして紙面を眺める。

 すると、そこには記憶を失う前のエステルちゃんが書き記しただろう、赤裸々なる欲望が延々と連なっていた。なんとなく想定していたけれど、こうして実際に目の当たりとすると、悦びよりも罪悪感が先立つ。

「…………」

「…………」

 メイドさんは紙面を舐める醤油顔を黙って見つめている。

 ペラリ、ペラリ、一枚一枚を丁寧に捲ってゆく。そこらかしこにシワが走っているのは、勝手な想像だけれど、元々丸まっていたものを彼女が正したのだろう。そう考えるとボツ原稿の可能性が濃厚だろうか。

 ややあって、最後の一枚をペラリ。

「……あの、タ、タナカさんっ」

「ソフィアさんが訴えるところは十分に伝わりました」

「な、なら、あのっ! エステルさまをっ……」

「ソフィアさんにお伝えすることが遅れたところ申し訳ありません。今のエステルさんは、この手記を窘めた彼女とは別なのです。とても悲しいことですが、当時の記憶を失ってしまっているのです」

「……え? き、記憶、ですか?」

「はい。子細は省きますが、現在の彼女には私や貴方の記憶はありません。ただ、純粋に知識として自らの書いた手記の内容から、その存在を把握してはいるのでしょう。本日、貴方が入れたお茶に躊躇なく手を伸ばしたのも、そういった背景からです」

「そんなっ……」

 思い起こせばソフィアちゃんにはお伝えしていなかった。

 この様子だと今日の今日まで知らずに過ごしてきたのだろう。

「だからこそ、彼女にとって本当の幸せとは図るべくもありません。アレンさんと一つになり、フィッツクラレンス家を盛り立ててゆくことです。私という存在は、既に過去のもの、存在しなかったものなのですよ」

「っ……」

 五、六枚目くらいに書いてあった。

 エステルちゃん、アナルビッチだったらしい。

 少なくとも日記を書いていた時点においては、驚いたことに膜持ちであったらしい。なるほど、確かにそれは素晴らしい。アレンのようなイケメンを前として、膜を保持し続けた精神力は褒め称えるに値する。

 あの人の良いロリビッチのことだ、アレンの生命を気遣ってのことだろう。万が一にもリチャードさんに膜無しだとバレてしまったのなら、その相手が判明してしまったのなら、どれだけ取り繕ったところで彼のイケメンの進退はお先真っ暗である。

 っていうか、過去の経緯から考えて、十中八九で死刑である。

 実録、フィッツクラレンス家。

 ゾフィーちゃんが気持ちよさそうに膣をズコバコされている傍ら、指を加えて眺めながら、自らは直腸ファックで我慢していたのだろう。そう考えると、なんかちょっと可愛いような気がしないでもないけれど、いいや、駄目だ。騙されてはいけない。

 リアルは自分が妄想するより生々しく非情なものだ。

 童貞よ冷静になれ。

 肉体には幾つも穴が空いているけれど、心にはたった一つしか開いていない。

 これが埋まってしまった時点で、如何に膜が残っていようと、その事実にはなんの価値もない。童貞ノスタルジックを満たすことはできない。青春というなの不良債権を回収することは叶わないのだ。

 オマンコは生まれた時からファイナルエディションなのだ。

「ありがとうございます。また一つエステルさんを理解することが出来ました」

「あ、あの、タナカさん、それならエステルさまをっ……」

「ソフィアさん。貴方であればきっと、以前と同じように彼女と友情を育むことができるでしょう。こうして私の下を訪れて、尚且つ、その意思に反してまで、彼女の手記を差し出したことが、何よりの証拠です」

「っ……」

 今更ながら、サァと顔色を悪くするソフィアちゃん可愛い。

「ありがとうございます。とても、助かりました」

「え? あの、それは……」

「今日のところはもう遅いので、このくらいにしておきましょう」

「あ……」

 名残惜しいがドアを閉じてバタン。

 ソフィアちゃんとお別れする。

 しばらくを待っていると、ややあってカツカツと、足音の遠ざかってゆく音が廊下に響いては室内まで。これが完全に聞こえなくなったところで、今一度、自らの歩みはベッドの下まで向かう。たぶん、これが正しい選択なのだ。

 ロリビッチの恥ずかしい日記は、途中で破いてゴミ箱へ。

 こんなものを見知らぬ自分から読まされたら、確かに不安にもなるだろうさ。



◇◆◇



 翌日、朝一でゴンちゃんの部屋に呼び出された。

 すわお兄ちゃんを味方につけたショタチンポの逆襲が始まるかと、少なからず心を引き締めて向かったところ、同所にはスカルマッチョの他にフックの野郎が待っていた。まあ座ってくれやと促されたところで、ソファーに腰を落ち着けて二人と向き直る。

「……彼を仲間に、ですか?」

「ああ」

「ですが私は彼の船を落としていますが……」

 曰く、フックの野郎を仲間として迎え入れてやって欲しいとのこと。

 如何に空賊仕様とはいえ、飛空艇一隻は決して安い買い物ではないだろう。幾ら自らに非があるからといって、それを落とした相手に仲間入りの打診とは滅多でないお話だ。何かしら企んでいるのではと危惧してしまうよ。

「こいつ自身が言い出したことだ。詳しいところは本人から来てくれ」

「お、おい、ゴンザレス」

「勘違いするなよ? 俺は紹介するところまでだ」

「っ……」

「そこから先は自分の言葉で説明しろ」

 少なからず墜落事故がトラウマとなっているのだろう。ゴンちゃんから冷たくあしらわれて直後、寂しそうな表情となった。頼れる兄貴分が一歩を引くのと同時、幾分か慌てた様子でフックの野郎がこちらに向き直る。

「先の件、申し訳ないと感じているのは本当なんだ」

「だとしても私はペニー帝国に領地を構えた、フィッツクラレンス派閥の貴族ですよ。貴方にとっては仇以外の何者でもない」

「分かっている。その点は十分に承知している」

「では何故でしょうか?」

 訳あり採用の面談でもしている気分だ。

「腹を割って話すと、こんな俺でも慕って付いてきてくれる仲間がいる。そいつらを露頭に迷わせたくはねぇ。それにここならゴンザレスのヤツも一緒だ」

「なるほど」

 御社の社風が気に入ったとか、事業に対する姿勢にこだわりを感じるとか、捉えどころのない理由を語られるよりは、余程のこと安心できる言い分だろうか。しかしながら、彼の場合は生い立ちに色々と難ありだ。

「なんでもやる、努力する、だからどうか、少しの間でも構わない、ここへ俺と俺の仲間たちを置いてはくれないか? どうか、このとおりだ」

 思ったより素直に頭を下げてるフック氏。

 とはいえ、流石に即答は難しい。

 こちらもまた他に大勢、人を巻き込んでしまっているのだ。

「素直に応じることは難しいですね」

「っ……」

 多分、襲撃は自分たちが初めてじゃないだろう。

 アウフシュタイナー家発のSランク冒険者が空賊なんてやってたんだ。そりゃもう、そこいらの貴族のお船を落としまくりだろう。これを場末の男爵が囲うというのは、非常にリスキーなお話ではなかろうか。

「私も私を慕ってくれる方々の安全を守るという義務がございます」

「空賊には二度と手を出さないと約束する!」

「とは言われましてもね……」

 さて、どうしたものか。

 ゴンちゃんの手前、適当な落とし所を用意したいところではある。

「ではこうしましょう」

「な、なんだ?」

「ロック・アウフシュタイナーの飛空艇は墜落、乗組員一同を含めて全員が死にました。貴方は今日からただのロックです。二度とアウフシュタイナー家を名乗ることは許されません。公の場に出ることも同様です。と言ったら如何しますか?」

 流石に厳しいだろうか。

 何だかんだでお家を大切にする家柄っぽいじゃんね。しかし、こちらとしても今挙げたところが限度である。万が一にもタナカ男爵が空賊の黒幕だったなんて噂が流れた日には、自分のみならずリチャードさんの進退も危うい。

「これを飲めるのであれば、我々も一歩を譲ります」

「……それだけで良いのか?」

「これまでの過去全てを捨てて貰うことになるのですよ?」

「そう大した人生を歩んできちゃいない。それくらい当然の代償だ」

「なるほど」

 まあ、そこまで言うなら良いか。

 相応に悪いことをしているのだろうが、その手の話ではきっとリチャードさんを筆頭として、他の貴族連中も大したものだろう。規模を考えたのなら、むしろ後者のほうが被害は大きいのではなかろうか。

 なによりゴンちゃんの身内だしな。

「分かりました。そこまでおっしゃるのであれば、我々は貴方たちを迎え入れます」

「……本当にいいのか?」

「先の約束は絶対ですよ?」

「あ、ああ! 当然だっ!」

 思ったより簡単に話はまとまってしまった。

 一連の流れはゴンちゃん的にも想定外であったようで、ただでさえ怖い顔を驚きから殊更に怖くして、彼はこちらに向き直り訪ねてくれる。目元の入れ墨が、表情筋の強張るに応じて動く様子が、最高にアウトローじゃんね。

「俺が尋ねるのもなんだが、本当に良かったのか? 旦那よ」

「ゴンザレスさんの家の方、というのが私の中では非常に大きな要因です」

「そこまで持ち上げられると、なんつーか、申し訳ねぇ気分になるな」

「これまで色々とお世話になってきましたから」

 持ちつ持たれつってやつじゃんね。

「すまねぇ、本当に助かった。コイツのことは俺が責任を持ってちゃんと面倒を見る。こうまで男気を見せてくれたタナカの旦那に、まさか迷惑は掛けられねぇ。アウフシュタイナーの名に賭けて誓う」

「ありがとうございます。そう仰っていただけると安心できます」

 互いに承諾を得たところで、良かった。無事に交渉は完了だ。

 しかし、そうなるとあれは返したほうが良いだろうな。評価額を知った後では、少し惜しい気もするけれど、今後の友好的な交流を思えば出し惜しみはしない方が良いと思われる。将来への投資というやつだ。

「ゴンザレスさん、本日中でなくとも結構ですので、頃合を見てロックさんを西地区の三番倉庫までご案内してください。そこには彼にとって大切なものが収められております。お引き取り頂けると幸いです」

「あぁ? 西の三番倉庫っていやぁ……お、おいおい、本当に良いのか?」

「もともとは彼の持ち物でしょう」

「いや、そうは言っても、コイツは旦那に挑んで負けたんだ。その時点で全てはアンタのものだ。乗組員共々、奴隷として売り払われたとしても、文句は言えねぇ立場だろうがよ。こっちがどうこう言うのは筋違いじゃねぇか」

「私が持っていても、売り払って資金の足しにするのが精々ですので」

「本当にいいのか? きっと後悔するぜ?」

「なに、あの程度であれば、いつでも調達することは出来ますので」

「……まったく、相変わらずな人だぜ」

 疑問から首を傾げるフックを尻目に、眩しいものでも見つめてくれるスカルマッチョ。いつぞや討伐したレッドドラゴンのそれを思い起こせば、決して嘘というわけでもない。最悪、キモロンゲのワープ装置を使って暗黒大陸まで飛ぶという方法もある。

 こんなところでセコい真似をするのは、百害あって一利なしってやつだ。

「ああそれと、その特徴的な腕と隻眼は治しておくべきですね」

 痛いの痛いの飛んでゆけ。

 フック野郎のフックなところに治癒魔法をプレゼント。応じて失われていた肘から先がこんにちわ。これまで嵌めていた特徴的な義手が、ゴトリ、音を立てて足元に落ちた。流石に手首から先が金属製っていうのは人目につくと思うんだ。

 流石に眼帯の奥までは分からないけれど、たぶん、治っている筈だ。

「なっ……」

「流石に目立ちますからね。眼帯も以降は外して下さい」

 ところで、落下の衝撃から床が凹んでしまったの、ショックだわ。

 想定した以上に義手が重く硬かったみたい

 ちょっと格好つけすぎた。

「ま、まてっ、この腕と目は魔族にやられて以降、どれだけ上等な回復魔法を掛けても、まるで反応がなかったんだ! 薄皮一枚ほども治らなかったのだっ! それがどうして、む、無詠唱で数秒を要せずに癒しきるなどっ……」

「大人しく素直に喜んどけ。コイツはそういうヤツなんだ」

「っ……」

 回復魔法で治せないっていうのは、もしかして呪いの類だろうか。

 自然と思い起こされたのは、ガラス管の中に見たエディタ先生の生スージー。

 あれは一生モノだわ。

「再び異常が現れるようなことがあれば、気軽に声を掛けて下さい。貴方の腕には呪いの類が掛けられていた可能性があります。患部が腐り始めるようなことがあれば、他に手を打つ必要が出てくることでしょう。もちろん、そうでない可能性もありますが」

「……な、なるほど」

 流石に詳しいところは分からない。

 もしかしたら呪いではないかもしれない。レベル幾つ以上の回復魔法じゃないと治せない、みたいな怪我も可能性としては考えられる。同じ魔族であるキモロンゲに確認したら、なにか分かるかもしれない。

「ではゴンザレスさん、後のことはよろしくお願いします」

「分かった、しかと任されたぜ」

 いずれにせよ当面は、患部の様子を見て、ということになるのだろうな。

「私はこれで失礼しますね」

 適当を語ったところでゴンちゃんルームを後とした。



◇◆◇



 ゴンちゃんのお部屋を後としてしばらく。

 自室へ戻るべく廊下を歩んでいると、なにやら人の声が聞こえてきた。曲がり角の向こう側から、二人ばかり、立ち話などしているようだ。その声色は共に覚えのあるもので、方や金髪ロリムチムチ先生、方やショタチンポといった組み合わせ。

 学園都市ではレポートの作成を巡り、顔を合わせる機会も多かった彼女と彼であるから、同所で雑談などしていても何ら不思議ではない。ただ、後者の発するところ、前者に対する問い掛けには決して油断ならない響きが伴う。

「性転換の薬だと?」

「そ、そういうのがあるって、どこかで聞いたことがある!」

「たしかに無い訳ではないが……」

 なんということだ。

 ショタチンポのやつ、そんな恐ろしいことを企んでいたとは。

 それならまだエステルちゃんの使い込まれたアナルにイートインされる方がマシだ。

「レシピがあるなら、お、教えてほしいんだっ! 頼む!」

「それを使ってどうするつもりだ?」

「オッサンと結婚するには、やっぱり、この身体も、お、女じゃないと……」

「…………」

 これはあれだな。

 偶然を装い、なにも聞いていない体で乱入して、なし崩し的のこの場のトークを解散させるべきだろう。確か以前、エディタ先生の著作で見た記憶がある。私と元カレ。性転換のお薬を飲んでしまった元カレは、今も風俗街で女の幸せを楽しんでいるのだとか。

 恐ろしい。

「……駄目だな。仮に知っていたところで、貴様には教えられない」

「な、なんでもするっ! 努力するっ! だからどうか教えて欲しいんだっ!」

「他のレシピならば、まあ、教えてやってもいい。だが、貴様が欲するところを知りたいというのであれば、自らの力で辿り着くことだ。でなければ、あの男も貴様に振り向くことは決してないだろう」

「っ……」

 おっと、まさか先生の方でお断り。

 グッジョブだ、先生。

 ジッと真面目な顔つきでショタチンポを見つめる眼差しは、穏やかな中にも厳しさを併せ持つ、まさに先生ですよ先生。素晴らしい。おかげで醤油顔はこのまま何も見なかったことにして場を去ることができます。

「分かったか?」

「……分かった。そ、そうだよな。確かに……アンタの言うとおりだ」

「話はそれだけか? 私は他に急ぐ用事があるんだよ」

「う、うん。ありがとう。でも、やる気は出てきたっ!」

「そ、そうか? それはなによりだっ」

 そういうのは出さなくて良いと思う。

 ピーちゃんの一件以来、なにかと前向きになってしまったショタチンポだ。最高にポジティブシンキングしてる。たまには諦めるという選択肢も、一つくらい手元に併せ持っておいた方が、人生をより有意義に過ごしていけるとご提案したくなる。

「ありがとうなっ!」

 ニコリとショタチンポの顔に笑みが浮かぶ。

 踵を返した彼は、ツインテールを元気に揺らしながら駆け足で去っていった。ご丁寧に丈の短いチェック柄のスカートをヒラヒラとさせてのこと。咄嗟、視線が裾の先に垣間見えた純白へ向かいかけたところ、危ない、童貞の性欲とは恐ろしいものだな。

 他方、その背を眺めてボソリ呟かれたのが先生である。

「くっ、一人減ったと思ったら、また一人増えてしまった……」

 なにやら呟いておられるが、まあ、これ以上の長居は禁物だ。

 盗み聴きしていたことがバレないよう、早々に去らせて頂こう。
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