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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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アウフシュタイナー家 一

 新しい朝が来た。リア充として過ごす朝だ。

 当初の予定であれば、本日は図書館へ発毛剤の材料、縦ロール曰くハイグレ草とやらの調査に向かおうと思っていた。けれど、彼女ができてしまった今となっては、そんなもの不必要である。この身体と時間は愛しい人を支える為に存在しているのだ。

 頭髪など不要である。毛根ごとくれてやろう。

 だってハゲてても好きだって言ってくれたし。

 起床してすぐに洗面所に向かい、姿見の前で身だしなみを整える。普段より幾らばかりか入念に。然る後に歩みは居室へ向かった。すると、そこにはいつの間にやらエディタ先生とゴッゴルちゃんの姿があった。共にいつものポジショニングである。

 先生はソファー。ゴッゴルちゃんはベッドの上。

「エディタさん、ロコロコさん、おはようございます」

 気持ちの良い朝だ、自然と挨拶の声も弾む。

 絶対的充実感。圧倒的充足感。究極的満足感。

 これ以上の幸福は無いと奥歯に噛み締めるだけの喜びを全身に感じて、ふと眺めれば窓から差し込む日差しのポカポカと暖かな陽気に室内の明るく照らされる様子は、人の世の穏やかを絵に描いたよう。

 チュンチュンチチチ。やたらとスズメっぽい出所不明な鳥類を思わせる喉のが、朝の時間を殊更に柔らかなものとして演出。このまま永遠に呆けていたいと思わせるだけの何かがここには、在る。

 幸せだ。俺は今この瞬間、非常に幸せだ。

「……苛立たしさを感じさせるほどの清々しさだな?」

「なんか言いましたか?」

 ボソリ、なにやらエディタ先生が呟かれた。

 絶対に彼女なんて出来ないだろうと思っていた中年野郎に彼女ができたことで、先生の結婚願望を煽ってしまったのだろう。出会ってから本日まで、思い起こせば先生が男と一緒にいたの見たことないし。男日照りというヤツだろうな。

 大丈夫、先生なら肉便器でも引く手数多ですよ。

「別になんでもない」

「そうですか? なら良いのですが」

 ムスッとした表情も魅力的だ。

 結婚式では是非ともスピーチとかお願いしたいな。

 いや、流石に気が早いだろうか。

 でもこちらの世界なら、JCくらいの女の子でも割と結婚しているみたい。少し早いかも知れないけれど、十分に考えられる近い将来だろう。あぁ、そう考えると、結婚費用とか貯めないとな。ハネムーンに海外旅行は譲れないだろう。

 よし、頑張るぞ。沢山働いて、沢山お金を稼ぐんだ。

「なんだよ、ニヤニヤと気持ちの悪い顔をして」

「え? そうですか? すみません、すこしばかり気が緩んでいたようで」

「……ふ、腑抜けた男だっ」

「気分を悪くされたのであれば申し訳ありません」

「ふんっ……」

 今日の先生はご機嫌斜めだ。

 あまり近づかないようにしておこう。

 代わりと言ってはなんだが、早急にJCの顔を拝みたい気分である。また昨日みたいにチューしたい。ベロチューしたい。凄く気持ちよかった。天にも昇る心地とはJCとのベロチューで得られると知ったわ。

「…………」

 そう言えば、彼女はどこで寝泊まりしているんだろう。

 ペニー帝国の学園のように学生寮とかあるんだろうか。

 思い起こせば彼女はこちらの居場所を知っているけれど、こちらは彼女の居場所を知らない。どうしよう。すぐにでも会いたいのに会えないこの辛さ。やばい、やばいぞ、望めば望むほど、居ても立ってもいられない。

 気付けば頭のなかが少女漫画みたいになってる。完全にお花畑だよ。中年野郎の気持ち悪いところがうずまき始めている。よくJCはこんなキモいオッサンに惚れてくれたものだ。喜び同じだけ、申し訳ない気持ちが溢れてしまう。

 などと悶々し始めた頃合、不意に部屋のドアがノックされた。

 来たな、彼女来訪のお知らせだ。

「はいっ! ただちに参ります」

「……ぐっ」

 歩みが軽い、身体が綿毛にでもなったようだ。

 ドアを開いてお客さまをご案内。

 すると、そこに立っていたのは想定外の手合いである。

「朝早くからすまないな、タナカ男爵」

「え? あ、これはブス教授。いかがされましたか?」

 なんてこった、JCじゃなかった。

 しかもよりによってブス教授である。自然と思い起こされたのは、数日前、図書館で垣間見たピーちゃんとの濃厚なラブレボリューション。無意識のうちに半歩ばかり身を引いてしまったぜ。

「会合の件で各国の代表の下を回っているのだ」

「なるほど」

 ピーちゃん大暴走の件かと思ったけれど、どうやら違ったようだ。ちなみに先の一件に関しては、目の前に立っている人物へ、魔王云々を除いてご報告させて頂いた。つい先日の出来事である。まあ、十中八九で握り潰されるだろうなとは思うけれど。

 まさか副代表の囲っていた男子生徒が、キメラを暴走させた挙句に街を半壊だなどと、流石に笑えない。今後の市政にも良くない影響を出すだろう。事実、他には口外しないで欲しいと頭を下げられてしまった。

「会合の日程が決まりましたか?」

「いや、それがだな、申し訳ないのだが、不定期で延期となった」

「それはまたなんとも……」

「しびれを切らした参加者の幾らばかりかが国に帰ってしまってな。また、大聖国も大聖国で、なにやら昨晩、新しく予言が発せられたとのことで騒がしい。我々学園都市に至っては、街の被害対応でてんてこ舞いだ」

「たしかにその様子では会合どころではありませんね」

「申し訳ない話ではあるのだが、この度の会合はこれにて解散の運びとなった」

「いえ、お気になさらずに。学園都市側も一方的な被害者じゃないですか」

「そういって貰えると助かる」

 気の早い代表が帰ってしまったという点に関しては、まあ、そういうこともあるだろう。一方で大聖国から新しい予言が発せられたというのは、今このタイミングで発せられたとなると、非常に気になる情報だ。

 しかし、彼女持ちのリア充には、全てが関係のないお話。

 そういうのは勇者さま案件である。ツートップに頑張っていただこう。

「では、我々も国に帰るとしましょうか」

「最近は空賊の類も勢いを増していると聞く。気をつけて帰ると良い」

「色々と良くしてくださり、ありがとうございました」

「なに、こちらこそ素晴らしい講演を感謝する」

 スッと手を伸ばしてきたブス教授。

 恐らくは握手を求めてだろう。

 一瞬、マジかよと思ってしまった。ただ、今回ばかりは無下にできない。今の自分はペニー帝国の大使として同所を訪れている。どれだけ吐き気を催していようとも、飲まねばならないお酒というのは存在する。

 背中にブツブツと鳥肌が立つのを感じつつも、覚悟を決める。ピーちゃんのスティックをゴシゴシしまくっただろうそれを、ギュッと握らせて頂く。人本来の体温が、やけに生暖かく感じられるのはきっと気のせいだ。

「いつかまた足を運ぶと良い。そのときは歓迎しよう」

「はい、機会があれば是非とも」

 あの時、図書館にさえ行かなければ。

 そんな後悔と共に、学園都市での生活は終えられる運びとなった。



◇◆◇



 ブス教授から案内を受けたところで、我々はペニー帝国に向けて、帰り支度を始めることとした。居室の荷物をまとめて飛空艇の乗り場に向かったところ、同所では他に他国の人々が忙しなく行き交っていた。同様に帰り支度を進めているのだろう。

 甲板上では数日ぶりに船員の方々と再会した。なんでも会合期間中は学園都市に宿を借りて生活していたそうだ。良い休暇になったと船長さん他、乗組員の皆さんからは感謝のお言葉を頂戴した。

 そんなこんなで帰路を往く為の搬入に取り掛かることしばらく。

「お、おいっ! オッサンっ!」

 飛空艇のハッチ脇で、あれこれ指示を出している最中のことだった。

 耳に覚えのある声を聞いて背後を振り返る。

 すると、そこには愛しい愛しい彼女の姿が。

「これはこれは、アウフシュタイナーさん。このような場所でどうしました?」

「オッサンの部屋に行ったら、あのエルフがオッサンはもう国に帰ったって!」

「いえいえ、まだ帰ってはいませんよ。帰り支度はしておりますが」

「そ、そうだよなっ!」

「まさか貴方を残して帰るなど、絶対にしませんよ」

「っ……」

 ちょっと格好つけてみたところ、見る見るうちにJCの顔が赤らんでゆく。チェック柄のスカートは裾が短め。すらり伸びた太ももが、もじもじと擦り合わせられている。良いよ、もじもじ、最高だよ、もじもじ。

 なんて可愛いんだ彼女。

「約束ですからね。共にペニー帝国へ渡るのだと」

「お、覚えててくれたのかっ!?」

「当然ですよ。約束したのですから」

「オッサン、それ、め、めちゃくちゃうれしいっ!」

「っ……」

 抱きつかれた。

 JCに抱きつかれてしまったぞ。

 やばい。

 やわらかい。

 いい匂い。

 セックスしたい。

 生中出ししたい。

「そういう訳ですので、すみませんがアウフシュタイナーさんも荷造りをお願いします。学校の方で手続きが必要な場合は、私の方からブス教授にお話させて頂くことも可能ですが、いかがしますか?」

 両手に華奢な肩の左右を取って、距離を取るよう腕を伸ばしつつ語る。

 落ち着かないと。

 落ち着かないと大変なことになってしまう。

「わ、分かったっ! すぐにしてくるっ! 手続きも大丈夫!」

「そうですか? ではすみませんが、身の回りの支度が終わりましたら、私の部屋でエディタさんやロコロコさんと一緒にお待ち下さい。こちらも飛空艇の出港準備が整い次第、お声がけに向かいます」

「うん!」

 元気よく頷いて、JCは建物の連なる側へ駆けて行った。

 うん、だって。

 出会って当初の彼女とは、同一人物と思えないほどの素直さだ。

 可愛すぎる。



◇◆◇



 船着場で作業を進めることしばらく。

 どうやら会合の話は学園都市の商業関係者たちにも伝わっていたようで、都市上層部からお墨付きを得ただろう商人の姿が見受けられた。同所は学園都市中枢に設けられた船着場であり、貴族が行き交う姿も多く見られる。まさか詐欺の類ではあるまい。

 今から見知らぬ街へ下りて仕入れを行うのは手間も掛かるし危険である。そう判断したところで、多少割高ではあったが、今回は彼らを利用させていただいた。伝票はリチャードさん付けだ。タナカ男爵としての出費はゼロである。

 おかげで帰路に必要な物資は早々に補給を終えられた。船の具合も船長さんに確認したところ、いつでも出発可能ですとのこと。船員の皆さんもコンディションはよろしいようで、これといって問題なく飛空艇を出せそうである。

 一頻りを確認の後、甲板より下りて人心地だろうか。

 シャツの袖に汗を拭う。

 一仕事した感を出しつつ、桟橋から船の様子を眺めていると声が掛かった。

「あらぁ? 貴方も国へ帰るのかしらぁ?」

「おや、これはドリスさんにエリザベスさま」

 飛空艇の並ぶ界隈でエステルちゃんと縦ロールに遭遇した。おそらく彼女らも国へ帰る為、船の様子を確認していたのだろう。思い起こせばロリビッチは縦ロールの飛空艇で来国していたのだよな。

「どうしてリズとわたくしで敬称が異なるのかしらぁ?」

「さて、どうしてでしょうね?」

「ぐぬぬぬっ」

 下らないところでいちいち不服そうな表情となる縦ロールが愉快である。膜の付いている少女は可愛いなぁ。

 いや、いかんいかん、自分にはJCという彼女がいるのだ。他所の女に目移りなど言語道断である。今後は自重していかないと。

「私への貸しを呼称の変更に用いるのであれば、それでも構いませんが」

「だ、誰がそのようなつまらないことに使うかしらぁ!」

「そうですか」

「まあ? いずれにせよ貴方は一時的にとはいえ私にひれ伏すのだけれど」

「……なんの話ですか?」

「あらぁん? 忘れたとは言わせないわよぉ? 薬の件に決まっているじゃない」

「あぁ……」

 育毛剤のレシピな。

 もうそれ必要ないんだわ。

「すみません、そちらですが諸々の事情もあり不要となりました」

「……え?」

「こちらの都合で一方的に断る形となり、とても申し訳ないとは思いますが」

「ちょ、ちょっとぉ! それはどういうことかしらぁ!?」

 愕然とする縦ロールがオモシロ可愛い。

 男の魅力は頭髪の有無に関係ないとJCが教えてくれたのだ。彼女の面目を保つ意味でも、まさかこの期に及んでドリルっ子の下僕のような真似をする訳にはいかない。この身は既に一人のものではないのだ。パパとしての威厳を示さねば。

 などと適当を語っていると、脇からロリビッチが口を挟んできた。

「タナカ男爵、貴方もこれから国に帰るのよね?」

「ええ、そうなりますね」

「いつ頃に出発するのかしら?」

「他に予定がありますので、早めに出ようとは考えているのですが」

 たぶんJCの支度が整い次第となるだろう。タナカ男爵一向に関しては、着の身着のままなので、飛空艇の支度さえ整えばいつでも出発が可能である。もしも彼女に下宿先のホストファミリーなどあれば、ご挨拶に向かうのも吝かではないが。

「そういうことなら一緒に帰りましょう」

「というと?」

「どうせ向かう先、方角は一緒なのだから、その方が安全でしょう? ここ最近では、貴族の飛空艇ばかりを狙う空賊が、ペニー帝国やプッシー共和国のまわりで活動しているそうなの。気をつけるにこしたことはないと思うわ」

「なるほど、たしかにそうですね」

 仰るとおり一隻より二隻の方が、襲う方も覚悟を要するだろう。

 しかしまあ、なんだ、どこかで聞いたような話だよな。

「あっ……」

「どうしました?」

「べ、べ、別にっ! 貴方の力を借りたいから、一緒に行こうと行っているわけではないわよっ!? ただ、そ、その、船の数が多いほど、空賊も襲いにくくなると話に聞いたからであって、もしもドリスの船が襲われても、その時は無視しても良いのだからっ!」

 なにかを思い起こした様子で、酷く慌て調子に語るロリビッチ。

 いちいち細かいところにこだわる女だ。

 彼女の美徳でもある。

「ちょっとぉ! そ、その時は助けなさいよぉ? 絶対よぉっ!?」

「ええ、大丈夫ですよ。お気遣い下さりありがとうございます」

 一方で涙目に訴える縦ロール。

 割とマジ。

 君にはもっと有能な下僕が一緒だろうに。

「……それで、どうかしら?」

「そうですね。予定に都合がつけば、是非ご一緒させて頂きます」

「そうよね、それが良いわ!」

 これはあれか。

 一度は圏外に吹っ飛ばされてしまったタナカ男爵との交友関係であるが、再びエステルちゃんに認められたと考えて良いような気がする。なんとなくだけれど、その内側に入った気がする。もしもそうならば、以降はこの距離感を大切にしてゆきたいと思う。

 多分、友人としては最高の相手だと思うんだ。ロリビッチ。



◇◆◇



 そんなこんなで学園都市にさよならバイバイ。

 我々は空の人となった。

 貴族仕様の立派な飛空艇が一定の間隔で並走する様子は圧巻だろう。そのうち一方に乗り込んでいるのが、我々ペニー帝国の使者一同となる。メンバーはと言えば、自分の他にエディタ先生とゴッゴルちゃん。

 そして、我が愛しの彼女であるJCだ。

「スゲェ! ほ、本当にこんな立派な飛空艇だったのかっ!」

「喜んでいただけてなによりです」

 彼女には一番に立派なお部屋をご用意させて頂いた。飛び立ってから今に至るまで、スゲェスゲェとスゲェをスゲェ連呼するアウフシュタイナーの娘さん。キラキラと瞳を輝かせる姿に男の見栄っ張りな部分が大満足である。

 ちなみに今はそんな一等船室にJCと二人きりだ。

「っていうか、わ、私、そんなに手持ちはないんだけどっ……」

「別に構いません。私だって一銭も支払っていないのですから」

「え? そ、そうなのか?」

「こちらは私の上司の好意から出してもらっておりますので」

 実際にはお仕事と引き換えなのだけれど、その辺りは黙っておこう。

 その方が大貴族さまを顎で使ってるっぽくて、格好良いじゃないか。

「ほ、本当は凄い貴族だったんだな」

「そう大したものではありません」

「あの、ま、前に脛かじりとか言ったこと……」

「気にしてませんよ。それよりも今は旅を楽しんで下さい」

「…………」

 伊達にリチャードさん御用達の飛空艇でない。

 船室は極めて立派だ。内装も空の上に浮かんでいるとは思えない。床には毛の長いカーペットが引かれており、ふかふかとブーツのソールが埋まるほど。調度品の類もいつだかフィッツクラレンス家の応接室で眺めたものと大差ないように見受けられる。

 現代社会で自動車や飛行機がそうであったように、こちらの世界では飛空艇にお金を掛けるのが、金持ちの道楽なのだろう。そのような代物を何処の馬の骨ともしれない男爵風情に貸し出したのだから、なかなかリチャードさんは器の大きな人物である。

「ここにあるものは好きに使って下さって構いません」

「え? や、だ、駄目だろっ!? だってこれっ……」

「構いませんよ。この数日を貴方にとって良い思い出にできたらと」

「っ……」

 殊更に顔を赤くするJC可愛い。

 ああもう、死んでもいいな。

 ここが人生のゴールだわ。

「それでは何か御用がありましたら、こちらのベルを鳴らして下さい。すぐに使用人が駆けつけますので。私は他に仕事があるので、少し席を外させて頂きます」

「あ、おいっ……」

 いかん、これ以上見つめていたら、無理矢理にでも押し倒してしまいそう。

 レイプしてしまう。

 生結合してしまう。

「申し訳ありませんが、失礼致します」

 それだけはダメだ。

 最初はラブラブエッチだ、ラブラブエッチが大切なのだ。

 良い感じの雰囲気を作って、こう、食事を取った後に甲板で星空を眺めながら夜風を浴びつつ「ほら、あの星の輝きを見なよ」「まぁ綺麗」「でも君のほうが綺麗だよ」みたいな感じで「そろそろ部屋に戻ろうか、身体が冷えてしまうよ」って言う感じ。

 そういう段取りで寝室へ向かうのが正しいのだ。

 今この瞬間ではダメなのですわ。

 意識を正しく持って、船員の方々に挨拶へ向かうとしよう。



◇◆◇



 船内を歩んでいると、エディタ先生に遭遇した。

「むっ……」

「これはこれは、エディタさん。お散歩ですか?」

 空の上では行うことも限られる。特に研究熱心な先生に関しては、その手の施設も設えられていない都合、不便を強いているに違いあるまい。どうにかして心地良く空の旅を楽しんで頂きたいとは往路より感じていたところなのだが。

「……随分と機嫌が良さそうだな?」

「そうでしょうか?」

「ああ、貴様とはそれなりに時間を共にしてきたと思うが、今日今この瞬間ほど、嬉しそうな顔を眺めたのは初めてだろう。なぁ、そんなに良いことがあったのか?」

「いえ、そう大したことではありませんよ」

 マジか。顔に出ちゃってたか。

 それはよくないよな。

 こういうのは秘密にしないと。

 あれだよ、ほら、職場ラブ的な。

「っ……」

 先生の表情が殊更に歪む。

 もしかして、またも顔に出ていただろうか。

 なんてこった。

「そこまで違いますか?」

「べ、別にっ、そう大した違いではないなっ! あぁっ! 違いない!」

「そうですか。であれば良かったです」

「ぐっ……」

 バカップルは良くないよな。

 自分のみならず、彼女の品位まで落としてしまう。JCには常に人として高い位置にいて欲しいのだ。また、こうして他所様の反感を買うと、彼女にまで要らぬ被害が及ぶかもしれない。バカップルは殺意の対象以外の何物でもないからな。経験あるもの。

「復路は無事に過ぎると良いですね」

 適当に話題など振らせて頂いて、コミュニケーションに平定を。

「あ、あぁ、そうだな。これ以上、無用な面倒は避けたいものだ」

「まったくですね」

 飛空艇の船内、廊下で先生とお話。

 していると、不意に角の向こう側から人影だ。

「……いた」

 他の誰でもない、ゴッゴルちゃんである。彼女はこちらを見つけると共に、トトトと駆け足で歩み向かい、けれど、自らに続いて曲がり角から姿を現したエディタ先生の姿を確認したところ、数メートルばかり手前でピタリと停止した。

 なんだろう。その気遣い、最高に愛しい。

 ちんぐり返しで逆レイプされたい。

 いやまて、いかん、いかんぞ。自分にはJCという彼女が。

「これはロコロコさん、私をお探しですか?」

「……甲板に出る。向こうが呼んでる」

「向こう?」

「もう一隻の船」

「なるほど、ドリスさんの船ですね」

 出発から数刻ばかり、早々に面倒でも起こったのだろうか。



◇◆◇



 ゴッゴルちゃんから伝えられたとおり、甲板に出た。

 すると、我々が乗り込んだ船と並走するよう、もうもう一隻の船がこちらの左側面に付けられていた。もちろん、接触事故を避ける為にそれなりの距離を設けてのことではあるが、声を張り上げれば話くらいならできそうな間隔である。

「どうかされましたか?」

 もしかして、いつぞやのドラゴン退治さながら、向かう先にワイバーンの群れでも見つけたのだろうか。だとすれば、早急に手を打ちたいところ。我々が搭乗する飛空艇はリチャードさんからの借り物である。傷一つ付ける訳にはゆかない。

 なんて考えていたところ、ご提案は縦ロールから。

「どうせなら一緒に向かうのが良いと思うわぁ!」

「というと?」

「わたくしたちが、そちらの船に移って上げてもよいわよぉ?」

 なるほど、合点がいったぜ。

「それは構いませんが、こちらの船での散財は負担していただきますよ?」

「ぐっ……」

「いかがしましたか?」

「べ、べつにぃ? なんでもないわよぉっ?」

 フィッツクラレンス号で好き勝手に飲み食いする算段だったのだろう。

 妙なところでセコいぞ縦ロール。

 ただ、彼女の場合は他にあれこれと考えている場合もあるので、素直に信じるのは危険である。なんだかんだで、ここぞという状況に敏いのが、膜付きロリ巨乳の優れたるところであり、また、油断のならないところである。

 油断ならない膜付ロリータとか、もう、最高に可愛いよな。

 身も心も調教されてしまいたいわ。

 いやだから、いかん、いかんぞ。自分にはJCという彼女が。

「それでよければ、どうぞ、いらっしゃいませ」

 このまま声を張り上げてのトークも面倒であるし、ひとまずは移ってもらうのが良いだろう。ヤツの隣ではマゾ魔族も物言いたげにしている。エステルちゃんも、なにやら神妙な表情でこちらを見ているし。

「そ、そうねぇ。失礼させて貰おうかしらぁ?」

 なんだかんだで頷いてみせる膜付縦ロール。

 同時に巨乳ロリの身体がふわり浮かび上がる。飛行魔法だ。一瞬遅れてポヨヨン震えたオッパイが極めてむしゃぶりつきたい。一度で良いからノーブラ勃起乳首を貴族な洋服の生地越しに眺めてみたい。

 あぁ、駄目だ。良くない。

 今の自分はJCの平たいオッパイ至上主義者でなければ。

 縦ロールに続いて、またぞろ他の面々も自らの飛行魔法に飛び立ち、こちらに向かい移動してくる。いちいち船を止めなくて済むのが非常に便利である。せいぜい心地よく過ごして頂けるよう、おもてなしさせて頂こうか。



◇◆◇



 場所を移して一同が介するのはリチャードさんの船の応接室。

 広めに作られた同所は、高級ホテルのリビングを思わえる空間だ。愛しい彼女にご案内させて頂いた船室と比較しても、勝るとも劣らない。そうした只中、皆々は思い思いの場所に陣取り寛いでいらっしゃる。

 問題の位置取りはといえば、向かい合わせのソファーに片やエステルちゃんと縦ロール、後者の傍らにマゾ魔族が立つ。その対面にソファーテーブルを挟んで自分とエディタ先生。そいて、例によって部屋の隅の方にゴッゴルちゃんが立ち呆けという配置だ。

 あれ? アレンがいなくね? って思ったけれど、彼は隣の船でお留守番である。きっとタナカ男爵に気を利かせてくれたのだろう、なんて思いたいのだけれど、実際はヤツ一人だけ飛行魔法が使えずに、おいてけぼりを喰らった可能性が高い。

 だって皆が飛び立ったとき、アレン、若干だけれど寂しそうな顔してたもの。

「ペニー帝国の船も、なかなか大したものねぇ?」

「そうですね、私もドリスさんに同意見です」

 今この瞬間、タナカ男爵と同着で上から一番目に発言権のある縦ロール。

 その視線は感心したようにフロアを眺めてはあっちこっちへ。

「それもこれもエリザベス様のお父様がご用意して下さったものです」

「ふぅん? 親の方とは未だに仲が良いのねぇ?」

「リチャードさんとは懇意にさせて頂いております」

 それとなくペニー帝国の内情を探ってくる縦ロール。

 油断ならないロリータって、良いよな。

 ベタぼれしてくれるロリも良いけれど、なんかこう、隙あらば首根を狙ってくるワイルドタイプのロリータっていうのも非常に魅力的な気がする。そういう威力系のロリータとっても可愛いと思います。

「そこのお酒を貰えないかしらぁ?」

「構いませんよ。勝手に取って下さい」

 同所にはワインセラーのようなモノが設えられている。こちらの世界のお酒にはさほど詳しくないので、如何様な代物かは知れない。ただ、相応のお値段であることだけは間違いないように思える。

 ちゃんと伝票付けておかないとな。

「あらぁ? この船に給仕はいないのかしらぁ?」

「そんな改まった集まりでもないでしょうに」

「それもそうねぇ」

 どうやら本気で楽しむつもりらしい。

 ソファーより立った縦ロールは、ルンルン気分でお酒の収まる棚に向かう。綺麗に陳列されたボトルの一つ一つを眺めて、楽しそうに目を細めている。自分もヤツが飲んだことにして、後で一本適当に開けさせて貰うとしよう。

「ねぇ、この飛空艇は本当にパパが貴方に貸したの?」

 縦ロールのプリプリお尻を眺めていると、エステルちゃんからトークの兆し。

「ええ、そうですが」

「……本当にパパが良いと言ったの?」

「リチャードさんご本人に用立てていただきました」

「そう……」

 なんだろう。

 もしかして曰く付きとかだろうか。

「どうかされましたか? もしやエリザベス様の為に作られた、などといった背景があったのであれば、申し訳ありません。今回の案件に関しては陛下からの依頼という側面もあり、リチャードさんも奮発して下さったのだと思います」

 彼がそのようなことから、碌に素性も知れない相手に私財を投じるような男でないことは十分に理解している。ただ、万が一にもお伝えしたところに近い事実があったのなら、下手をすれば再びエステルちゃんとの関係がこじれかねない。

 なんて考えていたのだが。

「この飛空艇は家にあるやつでも一番に足が早い最新型よ」

「……そうなのですか?」

「規模や価値の上では他にもっと色々とあるけれど、でも……」

「そういうことであれば、帰ったらお礼をしなければなりませんね」

 危ない、セーフ。

 返却する前にエステルちゃんに教えてもらえて助かった。またリチャードさんに大きな借りを作るところだった。先んじて知れたのは僥倖。彼の性格を考えると、往路の空賊さえ、彼の手先であったのではないかと勘ぐってしまいそうになるぜ。

 適度に小さく事故らせて費用の返済に保証人を立てさせるなどテンプレである。

「ゲロスっ! グラスを持ちなさいっ! これに決めたわぁっ!」

「ははっ!」

 縦ロール楽しそうだな。

 なんだかこっちまで飲みたくなってきてしまったよ。

「エリザベスさまも如何ですか? 船の設備は好きなように利用して良いと仰せつかっております。他の誰でもない貴方の為であれば、リチャードさんも喜ぶでしょう」

「ねぇ、そのエリザベスさまというの、やめてもらえないかしら?」

「……というと?」

「エリザベスで良いわ。貴方にさま呼ばわりされるの、なんだか癪だもの」

「癪、ですか?」

 なんでだよ。

 前は様付けしろって言ったじゃん。

「いいから、わ、分かったわねっ!?」

「ご本人がそうおっしゃられるのであれば、そのように致します。エリザベスさん」

「…………」

「なにか?」

「……まあ、それで良いわ」

「ありがとうございます」

 流石に呼び捨てはレベル高いだろ。記憶を失う以前であっても、さん付けが限度であった。万が一にもアレンあたりに見られたのなら、色々と良くないところで勘ぐられてしまいそうである。

「おい、自慢の彼女が困っているぞ」

「はい?」

 ロリビッチと適当を交わしていると、先生から突っ込みを頂戴した。

 今度はなんだとばかり、顎で指し示された先を眺めれば、部屋の出入り口。少しばかり開かれたドアの向こう側から、隙間より室内の様子を窺うJCの姿があるじゃないですか。その表情はなにやら不安気なもの。

「これはアウフシュタイナーさん、どうされました?」

 ソファーより腰を上げて彼女の側に向かう。

 ガールフレンドをエスコートするのは彼氏の勤めだぜ。

「あ、あんな立派な部屋に一人なんて、落ち着かないから、だから、船員にオッサンの場所を訪ねてまわったら、この部屋にいるからって言われて……」

 醤油顔の他、居並ぶ面々を眺めて萎縮気味な彼女さん。どいつもこいつも貴族っぽい姿格好をしている為だろう。本来であれば彼女もまた、この中に混ざって然るべき家柄であったろうに。

「一人きりにしてしまい申し訳ありません。もしもお暇でしたら、ご一緒にいかがですか? そうだ、甘いお菓子を用意しましょう。紅茶はお好きですか? 実は私が好きな茶葉を幾らばかりか船に積み込んでおりましてね」

「え? あ、いや、わ、私は……」

 困惑するJC。

 これまで憎まれ口ばかりだったから、新鮮な感じが非常に良い。

 こういうの待ってた。こういう彼女生活待ってた。

「ちょっとぉ? わたくしの時とは対応がぜんぜん違うじゃないのぉ」

 棚からソファーに戻りがてら、縦ロールがグラス片手に訴える。

 傍らには同じように杯を手にしたマゾ魔族も然り。

「はて、そうですかね?」

「きぃ、くやしいわぁ。ここのお酒、飲み尽くしてしまおうかしらぁ」

「構いませんがちゃんとお代は払ってくださいね」

「ぐぬぬぬぬっ……」

 語りながらも、グビリ、グビリ、グラスを傾ける縦ロール。すぐにでも一杯を終えてしまいそうだ。もしかしたら、かなり飲める口なのかもしれない。

 などと馬鹿なやり取りに暇を潰している最中、ふいにエステルちゃんが口を開いた。その視線は今し方に現れたJCを眺めてのこと。

「ところで、どうして学園の生徒が船に乗っているのかしら?」

 たしかに尤もなご質問である。

「えっと、私はオッサンから、そのっ……」

 思い起こせばJCとエステルちゃんの接点はあまり具合の良いものではない。いつぞや学園の廊下で肩をぶつけてそのままである。相手がペニー帝国の大貴族とあっては、流石のヤンチャ娘も気後れして思える。これはお助けせねば。

「彼女と同じアウフシュタイナーの方に面会をと思いまして」

「え? 他に生き残りがいるの?」

「ええ、私も数週前に出会ったばかりではあるのですが」

 そうか、ロリビッチはゴンちゃんのことも忘れてしまったのか。

 なんだか自分のことを忘れられる以上に、他の人との交流を忘れてしまったことの方が、残念のような気がする。この様子だとソフィアちゃんとの関係も、きっとゼロに戻ってしまったのだろうな、なんて。

「……そう、それは良かったわね」

「私としても喜ばしい限りです」

 頼れる親類がいるというのは良いことだ。特にJCほどの年頃であれば、社会的にも経済的にも、なにかと要するシーンがあるだろう。自分が代わることは大歓迎だけれど、そういった敏感なところは血の繋がりこそ大切だと思う。

 そして、ゴンちゃんならば間違いはない。

 ヤツの男気は本物だ。

「どうぞ、こちらへ」

 今の今まで自らの座っていたソファーへご案内。

 それとなく座面を叩いて埃を落とすことも忘れない。

 中年野郎の体温で温まった革張りとか申し訳ないしな。

「あの、それで、そ、そのことなんだけど……」

「なにか?」

 ソファーの傍ら、腰を落ち着けることなく、JCがこちらに向き直る

 もしかして部屋の隅のゴッゴルちゃんが気になるのだろうか。

 いつの間にやら体育座りにフォーメーションをチェンジしている。

 あれは良いゴッゴル族だから、どうか許容して貰いたいのだけれど。

「部屋でこれを見つけたんだ」

「……それは」

 差し出されたJCの手にはペンダントが載せられていた。

 それは学園都市へ向かう道すがら、途中で退治した空賊より回収した品である。本丸である魔石は飛空艇の格納庫にしまってある。ただ、小物であったペンダントは、居室のテーブルの上に出しっぱなしであった。

 もしかして珍しい品だったのだろうか。

 だとすればめっけものだ。

「オッサンが言ってた知り合いって、ロ、ロック兄ちゃんだったんだなっ!」

「……え?」

「このペンダントっ! ロック兄ちゃんのペンダントだよっ!」

「…………」

 なにそれどういうこと。

 ロック兄ちゃんで誰だよ。

 ちょっとオジサン、お話についてゆけない。

「ほら、ここっ! こうすると中にっ……」

 JCの指がペンダントを弄る。

 すると、ロケットの要領でそれは二枚に割れた。合間には僅かばかりの凹みが設けられており、そこには紋章のようなものが描かれている。もしかして、家紋というやつだろうか。我々が登場するこの船の側面にも、フィッツクラレンス家の家紋が入っている。

「……こちらはもしや」

「アウフシュタイナー家の家紋ね」

 傍らより覗き込んで、エステルちゃんが呟いた。

 なるほど、アウフシュタイナー家の家紋ですか。

 これはまた偶然ですね。

 私の彼女もアウフシュタイナー家の人なのですよ。

「オッサン、ありがとう! 本当にありがとうっ! またロック兄ちゃんと会えるんだなっ! 私、ずっと、ずっと会いたかった。いちばん私に優しくしてくれた、最高の兄ちゃんだったんだ! まさか、また生きて会えるなんてっ……」

「すみません、そのロック兄さんという方は……」

 感極まった様子で、涙すら眦に浮かべる我が彼女。

 心の底から嬉しそう。

「い、家が取り壊される前に出家しちゃったから、ずっと会ってないんだけど、隻眼のSランク冒険者って、オッサン、聞いたことないか? 私もそんな兄ちゃんに憧れて、魔法を勉強しようと思って、今の学園に入学したんだよっ!」

「……なるほど」

 どこかで見聞きしたような人物像だな。

「だから、あの、オ、オッサン、本当にありがとう! わたし凄く嬉しいっ……」

 どうしよう。

 どうしよう。

 ガールフレンドの兄ちゃん、殺しちまったよ。
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