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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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冒険者ギルド 四

 翌日、宿を発って以後、朝一で冒険者ギルドへやって来た。

 昨日に掲示したパーティー募集票を確認する為である。

「……なんか書いてある」

 俺が貼り付けた羊皮紙に何やら記載が増えていた。


【パーティー募集票】
 クラス:後衛(回復)
 ランク:F
 備考:初心者です
 名前:タナカ(三十代後半)

 応募:ホワイトライン(パーティー)


 応募欄が増えている。これは募集に対する回答があったと理解して良いのだろうか。一頻り頭を悩ませたところで、やっぱり分からなくて、大人しくカウンターへ向かう。

 そこに立つのは例によってスキンヘッドの店員マッチョだ。

「すみません」

「あぁ? またテメェか。今度はどうした?」

「パーティーの募集に対してお返事を頂戴したんですが、どうすれば良いでしょうか? 何かこちらから連絡を取る手段などあれば、窺いたいのですが」

「あー、あれか。それならちょっと待ってろ」

「ここでですか?」

「アイツらなら、ここんところ毎日ギルドに顔を出してるからな」

「それはホワイトラインさんでしょうか?」

「そうだ。っていうか、お前、回復魔法なんて使えたのか?」

「ええまあ、多少は……」

「はぁん? その年でとなると、神官くずれか何かか? 言っておくが、ギルドに面倒だけは持ち込んでくれるなよ? 何か起こったら憲兵を呼ぶからな」

「いえ、そういう訳ではないんですけど」

 何やら勘ぐられている様子。

 回復魔法が使えては問題なのだろうか。

「まあいい、しばらく待ってろ。そうすりゃじきに……っと」

「はい?」

「噂をすればなんとやらだ。来たようだぞ」

「え?」

 マッチョの視線がギルドの出入り口へと向かう。

 カランコロン。西部劇のバーのドアみたいな、観音開きのそれを越えて、今まさに店内へ入ってくる者の姿があった。数にして三名。恐らくは彼ら彼女らが、俺に返事をくれたホワイトライン一行。

「わ、若いですね……」

「そりゃ低ランクパーティーだからな。確か全員同年代で十六だったか」

「……なるほど」

 女性が二人と男性が一人。

 男はイケメン。身長は俺と同じくらい。百七十五、六といったところ。金髪碧眼でモナコの王子様系な顔立ちをしている。白人の圧倒的な美しさというか、素材の良さというか、なんか、そういう感じ。

 装備はと言えば、全身皮まみれの俺とは違って、要所要所に金属プレートの付与された、準金属装備。盾は持っていなくて、代わりに大きな剣を背中に背負っている。ロープレの主人公っぽい。格好いいじゃんよ。

 そして彼に準ずる形で、女の子二人もまた外見に頗る優れる。一人は金髪ロングで真っ赤な瞳のお嬢様系美少女。十六にしては小さくて、身の丈百五十ないんじゃなかろうか。本当に冒険できるのか甚だ疑問。

 装備は白銀の全身金属鎧で、腰には片手剣。盾は持っていない様子。猛烈な成金臭がする。ギャルゲの剣士系ヒロインにありがちな出で立ちだ。釣り目がちな眼差しから、ツンデレの気配を感じる。

 もう一人の女の子は、打って変わって地味系。頭から足先までをスッポリ覆うローブ姿である。髪の毛の色も窺えないほどに深くフードを被っている。間違いなく後衛の魔法使いだこれ。

 ただ、フードの先に僅か垣間見える顔は、間違いなく美少女で、その顔面偏差値の高さにオジサンちょっと興奮しちゃう。こういう大人しい系の少女って可愛いよね。猛烈に好みじゃないの。

「おい、お前らっ! こっちだ!」

 なんて勝手に品評している俺の脇、マッチョが声を上げた。

 大きく手を振って、若者達を呼び寄せる。

 彼ら彼女らは素直に応じて、こちらへとやって来た。

 都合、手を伸ばせば触れ合える距離で向き合う形となる。

「コイツが例のタナカだ」

 マッチョが俺を顎で指し示しては言う。

「は、初めまして……」

 イケメンと可愛い女の子のセットを相手に少しばかりどもる。

 他方、相手はスラスラと挨拶を述べてみせる余裕の態度。

「初めまして、我々、ホワイトラインのメンバー三名です」

 先んじて声を掛けて来たのはイケメンだった。

 爽やかな笑みを浮かべて、手など差し出してくれる。

 これにおずおずと握手を返すのが無様な俺。

「どうも」

「いやぁ、こうしてすぐに会えて良かったです」

「あ、いえ、こちらこそ」

 なんかキラキラとした星とか飛んで来そうな笑顔だ。

 一方、その隣に立つ金髪美少女は至極不満そうな表情である。

「……本当にその男なのかしら?」

「ええ、マスターの言葉に従えば彼が正真正銘、タナカさんですよ、エステル」

「なんだってこんなのと私が……」

 露骨に嫌悪感を晒された。

 まあ、いつものことだ。

 この顔と向き合って数十年、流石に慣れている。

 どうということはない。

 そう、なんてことないのさ。

「すみません、彼女、少しばかり機嫌が悪いようでして」

「ああいや、別に気にしませんので、どうぞ」

「……気にしなさいよ」

 またボソリ呟く金髪ロリータ。

 これを無視して、イケメンは言葉を続ける。

「ありがとうございます。あ、それでですね、早速ですが、自己紹介を」

「あ、はい」

 これを確認して、いつの間にやら店員マッチョは引っ込む。自分の領分は終わったとばかり、いつの間にやら傍らより消えていた。気付けば横に長いカウンターの先、他に訪れる客の相手に回ったようだ。

「あっと、その前にとりあえず席に着きませんか? 立ち話もなんですし」

 その人差し指が指し示す先には四人掛けの席。

「あ、はい」

 何かを喋るとき頭に、あ、って付けちゃうのは日本人の性だと思う。



◇◆◇



「なるほど、アレンさんにエステルさん、それにゾフィーさんですか」

「どうぞ、よろしくお願い致します。タナカさん」

 互いに自己紹介を終えて一段落した。

 イケメンがアレン。

 ツンデレもどきがエステル。

 フードっ子がゾフィー。

 覚えやすくて大変に助かる。

「元々は四名で活動していたのですが、先の仕事で一人、後衛の回復役が負傷してしまいまして、その補充、というと言葉は悪いのですが、こうしてタナカさんとお会いする運びになりまして」

 話の進行はイケメンが一手に引き受けている様子。

 女の子二名は黙って事の成り行きを眺めるばかり。

 特に内一名、金髪ロリからは非難の眼差しがひしひしと。

 彼女に関してはあまり乗り気でないらしい。

「なるほど」

「よろしければ、我々のパーティーに加わっては頂けませんか?」

「あ、その、自分なんかで良ければ、是非ともお願い致します」

 他方、俺は全力で乗り気。

 若い女の子と一緒に冒険とか、最高。

 そう長く組んでいられるとは思わないけれど、異性経験皆無な自分ですから、ここは素直に頷いておきましょう。だって、パッと見た感じ中学生くらいの白人美少女と仕事を共にするとか至福。

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」

 朗らかな笑みと共に応じて頷くイケメン。

 どうやら同パーティーの進退は彼が多くを握っている様子だ。

 リーダー的立ち位置にあるんだろ。

「でも、本当に良いんですか?」

「というと?」

「あの、かなり歳の開きがありますが……」

 ただまあ、一応、自己弁解はしておくべきだろう。

 流石に罪悪感がある。

 だって相手は十代の若者。対する俺はアラフォーだ。

 ヤバいよ。加齢臭ヤバい。

「いえいえ、冒険者に年齢は関係ありませんから」

「そ、そうですか……」

 それほどまでに回復役というものは、需要に対して供給が足りていないのだろう。でなければ、彼らのような若人が、自分みたいなキモいオッサンを仲間に加えるなど有り得ない。ということで理解しておく。

 少なくとも、自分が同じ立場だったら避けて通ること間違いない。

 回復チート貰って良かった。ちょっと嬉しい気持ちになったよ。

「それで、いきなりで申し訳ないのですが、仕事の話を良いでしょうか?」

「え? あ、はい。お手数ですが、どうぞ、よろしくお願い致します」

 仕事。仕事の話、来た。

 相手が年下とは言え、今に対する少年少女三名は、この場において自身とイーブンな関係の取引相手。パーティーとなったとは言え、所詮は利害が一致したに過ぎない。結局は他人。現に金髪ロリなど露骨に金持の娘感をぷんぷんと臭わせている。

 故に、まさかタメ口など叩ける訳もない。長年に渡る社畜に育まれた精神は、相手が誰であろうと、自動的に丁寧語を生成して並べる。二十代で年商百億ベンチャーの代表取締役とかざらだ。どんなときでも誠意と名刺は忘れてはいけない。

 僅かなミスが後々の致命傷となる。

「あ、いえ、そこまで畏まらなくても……」

「いやいや、お気になさらずに。お願い致します」

 笑顔に応じると、少年は渋々といった様子で言葉を続けた。

「それではなんですが、実は我々、翌日に仕事を控えておりまして……」

 続けられる言葉を耳とする。

 曰く、どうやら彼らは既に仕事を受けているようだった。そして、できることなら、俺にもこれに参加して欲しいとのお話である。

 なるほどなるほど。確かに新人のスキルセットを確認は早い内にやっておいた方が良いだろう。切るなら切るで早いほうが双方共に得である。

 下手な委託先に入れ込んで、土壇場で裏切られた時のダメージと言ったら、目も当てられない。とても理にかなったお話だ。

「あ、はい。分かりました。では、明日の早朝に南門ということで」

「大丈夫ですか? 流石に急だとは思うのですが」

「ええ、他に予定もないので」

 イケメン少年の言葉に頷いて、俺は明日の予定を決定した。

 やったぞ、明日は美少女と冒険だ。

 彼と今後を巡り話を進める間、一度として女性二名とは言葉を交わせなかったことに一抹の不安を抱きながら、それでも喜びを噛み締めるのがアラサーってやつだ。こういう機会でもなければ、十代の子と一緒に活動するなんて不可能だもの。

「案件としては、近くの村に出没するようになったオークの討伐なんですが」

「あ、はい、大丈夫です」

 オークがどんなものだか知らないが、自分の役目を思えば問題はないだろう。後ろの方から回復魔法を飛ばすのが精々だという認識。なので頷いておく。

「……うわ、最悪ね」

 これに金髪ロリ子ちゃんは酷く嫌そうな表情を見せる。

 嫌悪百パーセント。

 眉にシワが寄っている。

 ただ、それでも、だけれども。

「よ、よろしくお願いします」

 俺は答える。

 嫌悪されていると理解して尚も、その相手が美少女であるのならば、どうにもこうにも嬉しいのだ。もしかしたら、道中、お話とか出来ちゃうかもと思って、そう、申し訳ないけれど、嬉しいじゃないですか。

 ロリロリだ。ロリロリ。

「本当ですか? ありがとうございます」

 彼女たちのような若く可愛らしい子と時間を共にできるという事実は、何事にも代えがたいものなんだよ。四十を目前に控えて、切に思うところ。若い人と一緒の時間を過ごせるというのは、それだけで掛け替えのない財産だ。

 間違いない。

 だから、彼女たちには申し訳ないけれど、この場は頭を下げてお願いするさ。

「いえいえ、こちらこそお誘い下さりありがとうございます」

 是非ともご一緒したいです。

 どうぞ、よろしくお願い致します。

 本当にありがとうございます。

 すると、イケメンはこれに笑顔で応じてくれた。

「いや、こちらこそですよ。タナカさん」

 うれしい。

 有り難い限りだ。

 そんなこんなで明日の予定が決まった。



◇◆◇



 ホワイトラインの人たちと情報共有を終えて以後、冒険者ギルドを後とした。

 向かった先は雑貨屋である。場所は街の通りを歩む幼女に銅貨を数枚ばかり握らせて聞き出した。この街の幼女は俺なんかとも話をしてくれる。

 あっちに行ってぇ、そっちに行ってぇ、すこーし歩くとあるよ? 

 そんな酷くアバウトな指示は、けれど、素直に従ってみたところ、妙に理にかなっており、数分ばかりを歩むと、目的とする雑貨屋っぽいところへと到着した。

 この街の幼女はスペック高い。グッド幼女。

 と言うわけで、カランコロン、鈴の音と共に入店。

「すみません、冒険者が利用する道具で、ロープとか寝袋とか食料とか、そういうのを一セットまとめて貰うことってできますか? あ、出来れば魔法使い向けっぽい感じでお願いしたいんですけれど」

 店内に設けられたカウンター越し、店員へと伺いを立てる。

「セット? まあ、適当に見繕って良いのなら、揃えることはできるけど……」

 相手は三十代後半と思しき女性。

 何故に雑貨屋かと言えば、一重に明日の支度を調える為だ。

 老害的に考えて、自分が若人の足を引っ張るのは目に見えている。そもスタミナからして違うだろ。という至極当然な思考の帰着が下、これを少しでも緩和するため、便利グッズを買いに走ったのが今の自身である。

 どれだけ気を巡らせても、準備をし過ぎることはない筈だ。

 過去、登山を始めようと大枚を叩はたいて、靴からウェア、リュックまで用具一式を揃えたことがある。翌週に高尾山へ一回登って、以後、二度と山に登ることはなかった。それで尚も今回、こうして雑貨屋へ向かうくらい、何事も形から入る人間だ。俺は。

「あ、じゃあそれでお願いします」

「はいよ」

 店員のおばちゃんにお願いして一セットまとめて貰う。

 彼女は小さく頷いて、カウンターの奥へと消えていった。

 在庫を漁りに行ったんだろう。

「バッグは自分で買ったヤツとゴブリンから貰った革袋があるから大丈夫」

 段々と私物が増えてゆくことに喜びを覚える。裸一貫でやって来た手前、こうして生活雑貨の揃ってゆく展開は心嬉しいものだ。モノを所有することが、こんなに嬉しいものだとは、日本に居たときは思わなかった。

 少しばかり店内など眺めながら待っていると、おばちゃんが帰ってきた。

「これでいい?」

 カウンターの上に物品が並べられる。

 ナイフ、ランタン、金属製の食器具、水袋、毛布、包帯、薬草、何だかよく分からない液体の入った小瓶、食料、あれやこれや。パッと見た感じ、キャンプ用品っぽい色々が所狭しと並べられた。

「あ、はい。幾らくらいになりますでしょうか?」

「そうだねぇ。まとめて銀貨三枚ってところかね」

「あ、はい。了解です」

 値引きなどして相手の機嫌を損ねるのは怖い。素直に言い値で支払うこととする。ついでに購入した品を入れる為の革袋を差し出す。ゴブリンから貰ったヤツだ。

 すると、彼女は袋に品を詰めながら、何気ない調子に尋ねてきた。

「ところでアンタ、魔法使いなのかい?」

「ええ、まぁ」

「ふぅん? 人は見かけによらないものだねぇ」

「そ、そうですか」

「どういう魔法が使えるのかね?」

「回復魔法と、あと、炎関係が少々といったところで……」

「へぇ、回復魔法かい」

「え、えぇ……」

「回復魔法と言ったら、もしかして教会や学校の出身なのかね? その歳になってまで、冒険者みたいな格好をして、冒険者みたいな買い物をするなんて、なかなか物好な人間だよ。大抵はもっと安定した良いところに収まるものじゃないのかい?」

「そういうもんですかね?」

「そりゃそうだろう。若い子ならまだ分かるけどさ、せっかく回復魔法が使えるのに、アンタくらいの歳の人間が、そんな安装備で冒険者をしてるなんて、自分は駄目なヤツだって言ってるようなもんだろう? 少なくとも世間様はそう見るよ」

「……なるほど」

「まったく勿体ないねぇ。それとも腕が悪いのかい? なら仕方ないけど」

「いやまあ、色々と事情がありまして……」

 勝手な推測になるが、回復魔法を使えるということは、この世界においてある程度の社会的地位を補償するものらしい。ギルドで回復役に対する募集が突出していた点も、こうした背景があってのことだろう。

「まあ、一発当てたら大きいから、三十くらいまではアリだと思うよ。けど、あんまり夢ばかり追いかけていると、最後は碌なことにならないと私は思うけどねぇ。さっさと教会にでも収まっちまうのが得だよ」

「はぁ、そうなんですね」

 この国の就職事情が如何ほどのものかは知れない。

 ただ、こうした市井の悩みは世界を異にしても大差ないもののように感じた。

 それからしばらく、おばちゃんとお話をして後、雑貨屋を出た。

 会話以外、取り立ててイベントが発生することなくお買い物は終了だ。

 屋外へと出て空を見上げれば、太陽的な何かが空の高いところに。そろそろ昼食の時間だろうか。あちこち歩き回ったことで、良い具合に小腹が減ってきた。

「…………」

 今日は他に予定もない。素直に欲求へ従い食事とする。

 しばらく大通りを歩んで、繁盛してそうな飲食店へ入店だ。

「……おぉ」

 店内へ入って即座、何故に同店が繁盛しているのかを理解する。

 所狭しと並べられたテーブルの合間を忙しなく行き来するウェイトレス。これが非常に美しい。エロい。ヤバい。とんでも美女。客の大半はこれを視線に追っている。俺の視線も入店早々釘付け。

「お一人様ですか?」

「あ、はい」

 店に入って直後、こちらへとやって来た。

 近くで見ると更に美しい。

 顔はモデル級。腰下まで伸びた長めの金髪を高い位置で一纏めにポニーテール。更にエプロンメイド姿で倍ドン。年齢は二十歳くらいだと思う。いや、十代の可能性もあるか。いずれにせよ若い。可愛い。

 そして、顔の出来も然ることながら、肉体もまたヤバい。

 スタイルが非常にエロい。尻は大きめの安産型。スカートの上からでも形が分かるほどにムッチリとしている。更に胸は巨乳。Hカップくらいありそうな予感。加えて、腰には十分なくびれ。腹は引き締まっている。

 堪らん。

 セックスしたい。

「こちらのカウンターへどうぞ」

 彼女は快活とした振る舞いで、俺を席へ案内してくれる。

 笑顔が眩しい。

 俺は素直に頷いて着席。

 これは良い店だ。料理の味を確認せずとも分かる。

「注文はお決まりですか?」

 ジッとこちらを見つめては問うてくる。

 釣り目がちな目元に青い瞳がクリクリと動く様子は、まるで人形のよう。

「あ、オススメとか日替わりとかあったら、それでお願いします」

「はーい! 日替わり一つっ!」

 元気良く注文を口とする。

 あいよー、とはキッチンの側から聞こえてきた返事。

「それじゃあごゆっくりー」

 かと思えば、彼女は一言を残して早々のこと離れて行った。

 そこまで広くない店内、一人でフロアを担当しているようだ。

 とても忙しそう。

 自分を案内したかと思えば、別の客に呼ばれて駆け足に向かう。

「……これは通うしかないな」

 その後ろ姿、プリプリの尻を目に追いながら決意する。

挿絵(By みてみん)

 今晩はオナニーが捗りそうだ。

 そうした具合、しばらくお尻を視界の隅に追いかけていると、不意に耳に届く声があった。同じ店内、カウンター席とは別に用意された二人掛けのテーブルで、食事を摂る男性客たちの会話である。

「やっぱり、俺は魔法騎士団のシアンちゃんの方が好みかなぁ」

「んだよ、このロリコン野郎が」

「女の価値は胸や尻の大きさだけじゃ決まらないんだよ」

「小さい子が好きなだけな癖して、偉そうなこと言うんじゃねぇよ」

「女は中身さ。外見なんて飾りだ」

「だったら、この店のソフィアちゃんだって十分に良い子だろう?」

「確かにそれは否定しないが……」

 どうやら異性の好みで語らい合っている様子。

 話の具合から察するに、件の美女ウェイトレスはソフィアちゃんという名前のようだ。もう一つ出てきたシアンちゃんというのが気になるが、そちらもまた同店舗のウェイトレスだったりするのだろうか。

 ちなみにこの男性客二名、テーブルの傍らには、各々の持ち物らしき槍やら金属ヘルムやらが置かれている。アンダーウェアが同一デザインの鎖帷子である点から、仕事の合間、昼休みに食事を取りに来た国仕えの兵士と思われる。

 同じような姿格好の兵士が、街の要所や出入り口に立っているのを見た覚えがある。数日前、俺を城の牢屋へぶち込んでくれたヤツも、彼らと同じ格好をしていたので、これは間違いないだろう。

「けど、シアンちゃんは凄いんだぞ? 十代で第二師団の副団長なんだから」

「そんなこと言ったら、ソフィアちゃんは街一番の飯屋の看板娘だぜ?」

「ぐっ……ち、近いうちに団長になるって噂を俺は聞いたぞっ、それなら……」

「まあ、昼飯くらい楽しく喰おうぜ。シアンちゃんもいいけどさ」

「あぁ、本当にどうしちゃったんだろう。ここ数週、全然見ないんだよなぁ」

「どっか仕事に出てるんじゃないのか? 俺たちみたいな一兵卒とは違うんだよ。なんたって第二師団の副団長様なんだぜ? 貰ってる給料だって相応なもんだ」

「そうだけどさぁ、やっぱりファンとしては心配な訳よ」

「お前が心配してどーするよ」

「心配なものは心配なんだから仕方ないだろ?」

「お前のそういうところ、俺は割とキチガイだと思ってるぜ?」

「好きに言っとけよ」

 とても仲の良さそうな二人だ。

 その年齢が二十代中頃とあって、まさに青春な気配。

 ちょっと羨ましい。

 彼らの語らい合いを耳としながら、俺は一人で淡々と食事を摂った。

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