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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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フィッツクラレンス家 六

MだSたろう先生が描くビッチーズの超絶美麗イラストがpixivで公開されております。

追記:
 リンク先にR18相当のタグが付与されているとのご指摘を頂戴した為、リンクの掲載を取り下げました。
 ぺんたくんさん、ご連絡ありがとうございます。
 究極完全心理療法士ゴッゴルちゃん診断の下、ロリビッチの病名が判断した。

 曰く、記憶喪失。

「そ、そう、なのですか……」

「……そう」

 パパさんの問い掛けに、コクリ、小さく頷いて応じる褐色ロリータさん。

 その診断を信じるのであれば、ここ数ヶ月の記憶が、エステルちゃんの意識から完全に失われてしまっているのだという。故にパパやママのことは覚えていても、醤油顔のことは全く覚えていないのだそうな。

 当然、ドラゴン退治の経験や、フィッツクラレンス子爵としての活躍も。

「……パパ、どうしたの?」

「いえ、な、なんでもありませんよ。リズ」

「本当? なにか変な感じがするわ」

 ちなみに一連の聞き取りはパパさんにより実施。

 これを傍らにゴッゴルちゃんがリーディングする形で進められた。

 自身は完全に蚊帳の外である。

「そうかい? 少しばかり疲れているのかもしれないね」

「本当? それなら今日は早めに休んだほうが良いわ」

「ああ、そうだね。それが良いかもしれません」

 父と娘、朗らかな会話を交わす様子を眺めて、さて、どうしたものか。

 今のエステルちゃんの目には、まるで自分が映っていない。視線の向かう先にはパパさんと、幾らかの疑念と共にゴッゴルちゃん。そこに醤油顔の付け入る隙はない。

 自然と言葉を掛けるタイミングも失われて、ただ延々と他の皆様のやり取りを、外野から眺めて過ごすばかり。なんかちょっと寂しい感じ。

 しかしまあ、なんだね、ゴッゴルちゃんってば優秀だわ。ドラゴンシティを出発して以降、あれやこれやと活躍の連続である。

 戦闘能力も高いし、特殊能力も有能だし、小回りも効くし、なんだかんだで自分なんかに付き合ってくれるし、本当に良い子じゃないか。

「……それならもっと話をする」

「ええ、そうですね。今晩は沢山お話をしましょう」

「本当に?」

「本当ですとも」

 催促まで覚えちゃって、オジサン嬉しいよ。

 ここ最近は心が負傷する機会が多いから、ゴッゴルちゃんが一緒に居てくれるの凄く嬉しい。こうして一緒に居てくれるだけで最高に癒やされるの。ロリビッチから誰この平民扱い、想像した以上にダメージ入ったぽい。

 痛恨の一撃だった。

 画面揺れたよ。

「ところで、パパ教えて。どうして平民が私の部屋に居るのかしら?」

 おうふ、二連撃。

 やっと視線がやってきたかと思えば、なんか温度感ヤバイし。

「本当に覚えていないのかい? タナカさんのことを」

「知らないわよ。平民の知り合いなんてアレ……、ひ、一人もいないわっ!」

 今、全力でアレンって言いそうになったよな。

 くそう、くそう、アレンに負けた。

 やっぱりイケメンには勝てなかったよ。

 もしも誰よりも早く君と出会っていたのなら。

「リズ、それは本当かい? パパに嘘はいけないよ?」

「そ、そうよっ! 平民に知り合いなんている筈がないでしょうっ!?」

 想定はしていたけれど、考えていたより胸が痛いぞ。

 こうなったら今晩は、エディタ先生のところに転がり込んじゃおうかな。だって、学園の寮でゴッゴルちゃんと二人きりになったのなら、切なさに耐え切れず、手を出してしまいそうだし。流石にそれだけは避けなければ。

 大切なのは膜付ロリータとの相思相愛の先にあるラブラブセックス。

 相思相姦。

 でも今の自分は、兎にも角にも温もりが欲しい系ミドルエイジ予備軍。

 マジでクライシス。

「リチャードさん。私はこれで失礼させて頂きます」

「タナカさん、ま、待ってください。もう少し回復魔法を掛けて頂いても……」

「……それはできません」

 それでも状況は自分とリチャードさんにとっては最良に転んだ。少しばかり童貞野郎の心が欠けた限りで、他は全てが罷り通るルートだ。リチャードさんもきっと、同じことを考えているに違いない。

 今回の記憶喪失が外傷に因るのであれば、回復魔法を連発すれば、もしかしたら癒えるかもしれない。ストレスが主要員だったりしたら分からないけれど、でも、状況的には五分五分といったところ。少なくとも一度では癒えなかった。

 だからこそ続けさせて頂く。

「全てが丸く収まったではありませんか。違いますか?」

「…………」

「らしくないですね、リチャードさんが口を噤むなどと」

「そう、ですね……」

「はい」

「……素直にお伝えすると、確かに私は心の内で喜んでいます」

 ゴッゴルちゃんの接近を許した手前、素直に頷いてみせるパパさん。

 律儀にも娘に寄り添う形で、彼もまた今この状況下ではマインド丸裸だ。

「それは子を持つ親として、決して恥ずべき想いではありませんよ」

「…………」

 これ以上、エステルちゃんを見ていたら心が壊れてしまいそうだ。

 童貞の心は異性関係に対して酷く脆いのだから、大切に扱って頂けると嬉しい。

「パパ、どうしたの? もしかして、あの、へ、平民じゃないとか……」

「たしかに彼は平民ではないね」

「っ……、ご、ごめんなさいっ! そのような格好をしていたからっ」

 エステルちゃんが伝えるとおり、今の醤油顔は平民スタイルだ。

 貴族の格好はピチピチのスーツでも着ているようで疲弊も甚だしく、人目がないところでは旅人の服に着替えさせて頂いている。そうした日々の生活習慣が、今この瞬間、非常に悲しい方向へ働いてしまった。

「彼は私が子として抱え込んだ貴族の一人、タナカ男爵だよ」

「え? ぱ、パパの!? そんな、でも、パパは公爵でっ……」

「はじめまして、タナカ男爵と申します。エリザベス様」

「あ、え、えぇ。失礼があったこと、謝罪するわ。タナカ男爵」

「勿体なきお言葉にございます。どうかお気遣いなさらないよう」

 この場にアレンが同席していなくて、心底から良かったと感じている自分がいる。二人のイチャつく姿など見せられたのなら、衝動的にセルフキルしてしまいそう。早いところ荷物をまとめて、首都カリスから脱出しないと。

 当面は学園都市とやらで傷心旅行に決定だ。王様もなかなか良い案件を回してくれたものである。学園都市で清楚なJKとアバンチュールしてやるわ。学園指定の制服はチェック柄のミニスカで内巻きマシマシお願いします。

「今日のところは失礼させていただきますね。支度の方、お願い致します」

「……承知致しました。それでは明日、またお待ちしていますね」

「はい、色々とご対応をありがとうございます。リチャードさん」

 ロコロコちゃんと一緒にお部屋を後とする。

 フィッツクラレンス家にさよならバイバイだ。



◇◆◇



 向かった先は癒しの殿堂、エディタ先生宅である。

 いつぞやに同じく、玄関のドアをノックすることコンコンと。しばらくして、ドタタタタと階段を下る賑やかな音が聞こえてきた。ややあって、ギィ、少しばかり開かれたドア口から家主のエルフさんがこんにちは。

「こ、こんな時間になんだよ?」

 傍らにゴッゴルちゃんの姿を確認してだろう。問い掛ける先生には若干、警戒の色が見て取れる。それでもこうして会話の場を下さる先生は心の広い方だ。ロリゴンだったら即座に腹パン余裕である。

 正直、それで良いのかと思わないでもない。

「もしよろしければ、一晩、泊めて頂けませんか?」

「っ!?」

 呟いて即座、先生の身体が震え上がった。

 見開かれた瞳が、ギョロリ、こちらを見つめている。

「やはり難しいでしょうか?」

「なっ、ちょっ、そ、いや、ま、ままま、まっ……」

「難しいようであれば、他を当たりますが……」

 アレンのところとか、案外居心地が良いかもしれない。あのイケメンは面倒見が良いからな。一緒にお酒でも飲みながら、ボードゲームの類など遊んでみたら、二人でもそこそこ盛り上がれそうな気がするんだ。

 いやでも、奴を見ているとエステルちゃんを思い起こしてしまう。ここは一つ趣向を変えて、魔道貴族宅とかどうだろう。今ならオッサンのうんちくを延々と聞き続けるのも、良い気晴らしになるような気がする。

「待ってろっ! ぜ、絶対に他へ行くなっ!? 絶対に待っていろっ!?」

「え? あ、はい」

「っ!」

 バタン、玄関のドアが勢い良く閉じられた。

 同時にズダダダダダと激しい足音を立てて、階段を登ってゆく先生の気配。間髪置かずに、ズッタン、バッタン、騒々しいまでの物音が聞こえ始める。急な来客に掃除をしていることは想像に難くない。

 理路整然とした著作から鑑みるに、極めて几帳面な性格かと思いきや、ご自宅では案外ずぼらな生活を送られているのかもしれない。先生みたいな合法ロリが汚部屋で酒瓶に囲まれて酔っている姿、かなり好物だわ。

 後ろからギュッてしたくなる。

 ややあって、再びズダダダダダという音が響いた。

 かと思えば、すぐに先生がドアから現れた。

 今度は我々を招き入れるよう、表に向かい全開きである。

「い、いいぞっ! 勝手に上がればいいっ!」

「あの、彼女も一緒で……」

「いいからさっさと上がれよっ! ほらっ!」

「すみません、ありがとうございます」

 やっぱり先生は素敵な人だ。

 先導して階段を上がるとき、後ろからローレグTバックが丸見えなんだもの。

 色は真っ白な肌を際立たせる魅惑の黒。

 段差を一つ上るに応じて、その生地がムチムチ太ももと続く尻肉により、右から左から交互に隠される様子が、荒んだ中年野郎の心を暖かく包み込んで癒やしてくれる。ムチッ、ムチッ、ムチッ。音が聞こえてきそうなほどに尻肉の擦れ合う様子が涎を誘う。

 一ミリたりとも視線を逸らすことができない。

 遺伝子が欲している。

 ミトコンドリアも隣で賛成している。

 エディタ先生、大好きです。愛しております。



◇◆◇



 エディタ先生宅にお邪魔すること早々、リビングでトークタイム。向かい合わせのソファーの一つに先生が腰を落ち着けたところ、自身は対面に座らせて貰った。その間には足の短いテーブルが設けられて、卓上にお茶が並ぶ。

 ちなみにゴッゴルちゃんは自主的に距離を置いて、部屋の隅で体育座り。どこぞの民族衣装を思わせる衣服のミニスカートの先、抱えられた太ももの奥に窺えるのは薄暗がりがばかり。白は未だ窺えない。今の自身の眼力ではこれを確認できない。無念。

「それで、な、なんの用件だ?」

「それはその……」

 腰を落ち着けて問われたところは来訪の理由。

 当然といえば当然だ。

「どうした?」

「なんというか、その、色々とありまして……」

 流石に申し上げにくい。

 エステルちゃんとさよならしてきました。寂しいです。中年寂しいです。ゴッゴルちゃんと二人で自宅に戻ったら、寂しさからレイプしてしまいそうです。生中出ししてしまいそうです。責任は持つつもりです。

 そんな理由、口が裂けてもお伝えできない。

「なんだよ? もしかして言えないようなことか?」

「いえ、そういう訳ではないのですが……」

 ただまあ、両者のステータスを鑑みれば、実際には逆襲を喰らう可能性の方が遥かに高いのだけれど。純粋な腕っ節勝負であれば、自分は彼女の足元にも及ばない。きっと良いように組み伏せられてしまうだろう。

「だったらなんだよ?」

「実はそのですね……」

 何気なく先生の下半身に視線を向けると、普段なら全力でパンチラする先生の足が、今日は固く閉じられている。街のパンチラ屋さんはいつになったら営業を再開してくれるのだろうか。綺麗に揃えられた膝から先が切ない。

 しかしながら、そのようにご提案させて頂いたのは自分自身だ。

 先生にもご納得を頂いた。

 いつか自らの魅力で、これを再び開かせてやるのだと、心に決めたのだ。

 そう考えると、先ほど階段を上がるに際して垣間見た、見事な食い込みTバックは、完全なラッキースケベだと考えられる。先生は一つのことに夢中となると、他のことをコロッと忘れてしまう典型的な研究者タイプだ。

「……早く言えよ。私をじらしているのか?」

 ということで、ここは一つ適当に話を流させて頂こう。

 本日は話題に幾らか手持ちがあるのだ。

「実は近いうちに、首都カリスを発とうかと思いまして」

 近々の予定を告げたところで、一転して先生の顔には驚愕が。

「な、なんだとっ!?」

 ソファーより立ち上がると共に、声も大きく唸ってみせる。

 随分と俊敏な反応だった。

 おかげでオパンツを窺う隙もなかった。

「発つというのは、ど、どこへ出かけるんだっ!?」

「学園都市に向かう予定です」

「なっ……学園都市へ行くのかっ!? あそこへっ!」

「はい」

 どうやらご存知のよう。

 思えば以前、先生の口から聞いたこともあった。

「どういった用件があって行くんだ? 貴様は学園の生徒なのだろう? わざわざ遠くまで足を運ぶ必要があるのか? たしかにあの都市の技術レベルは高い。しかし、貴様はこの国の学園に入学したばかりではないのか?」

「学園とは別に用件ができまして」

「……な、なんだよ、用件って」

 質問の連打である。

 もしかして危険な場所だったりするのだろうか。

 そんな馬鹿な。

「貴族としてのお仕事というやつです。残念ながらお断りできませんでして」

「そう、なのか……」

「ですので一度、エディタさんにはご挨拶をと考えて、お邪魔させて頂きました。事前の連絡もなく、いきなりとなってしまい申し訳ありません」

「いや別に、そ、それは構わないけど……」

 チラリ、先生の視線がゴッゴルちゃんに向かう。

 見つめられた側は相変わらずの体育座り。

 ピクリとも動かない。

 微動だにしない褐色ロリータの可愛さ置物級。

「もしかして、そのゴッゴル族の女と共に向かうつもりか?」

「ええ、その予定です。彼女とは約束がありまして、当面は離れる訳にはいかないのです。都合、色々と迷惑を掛けてしまってはいるのですが、まあ、そのような形で」

「…………」

 流石に距離が離れてしまっては、約束したお話ができない。ゴッゴルちゃんには申し訳ないけれど、今回の旅路は共に歩んで貰おうと思う。自分の留守中に他の面々と騒動があっても、それはそれで問題だろうし。

 決して常に心を読んでいて欲しいというマゾ心からの選択ではない。

 セクハラが楽しいなんて滅相もない。

「……楽しくないの?」

「…………」

 おっと、体育座りちゃんからツッコミを頂戴した。

 ごめんなさい。嘘です。楽しいです。

 この世で最も楽しい遊戯でございます。

 こうしてたまに突っ込んでくれるの、凄く嬉しいんです。

 もっと構ってやって下さい。

「…………」

「…………」

 いかんな、これはいかん。

 エスエルちゃんの件も手伝い、段々とゴッゴルちゃんに依存しつつある自分を発見だ。このままだと逆に自分がゴッゴルちゃんを追いかける未来が見えてきてしまいそうだ。そうなっては本末転倒である。童貞的には追いかけるより追いかけられたいんだよ。

 あれこれ考えていると、唐突にもエディタ先生が吠えた。

「行く!」

「……これから何処かへ出掛けられるんですか?」

 酷く唐突なお出かけ宣言だ。

「違うっ! わ、私も行くぞっ! 学園都市っ!」

「先生もですか?」

 出不精な先生が自発的にお出かけを主張するとは珍しい。

 しかも随分と意を決して思える表情だ。

「……わ、悪いか?」

「いえ、先生が一緒であれば、これほど心強いことはありません。ですが、良いのですか? こちらでの生活もあると思いますし、製本作業だって……」

「本はどこでも仕上げられるっ!」

「よろしいのですか?」

「よろしいのだ! だ、だから私も一緒に行くぞっ!?」

「分かりました。ではそのように支度させて頂きます」

「うむっ!」

 なんだかんだで金髪ロリ先生が、学園都市行きのパーティーに加わった。



◇◆◇



 同日深夜、エディタ先生宅。

 食事と入浴を終えて、おやすみなさいのご挨拶を交わしたのが数刻前。照明を落としたリビングのソファーで横になっていると、不意に人の気配があった。何者かと身を起こしたところで、視界に入ってきたのは夜の闇に紛れるような褐色。

「……貴方には三階の客間が与えられたと思うのですが」

 ちなみにここは二階のリビングだ。

「今日の分のお話がまだ」

「なるほど、確かにそうですね」

 あれだけセクハラされて、それでも更にお話したいとか、ゴッゴルちゃんのセクハラ耐性は想定したより高そうだ。ソフィアちゃんだったら即日で逃げ出しているだろう。エステルちゃんであっても耐えられるかどうか怪しいぞ。

「はやく起きる」

「ええ、起きますよ。起きますとも」

 ゆっくりと上半身を起こしてソファーに腰掛ける形だ。

 すると、ゴッゴルちゃんはすぐ隣に座ってきた。

 肩と肩が接するほどの距離感。

 一番の読心ポイントだ。なんというプレッシャー。

「そう言えば、一つ確認したいことがあります」

「……なに?」

 出会って間もないゾフィーちゃんに一発、気持ち良いのをくれてやった点についてである。如何に姫ビッチの心が汚れているからといって、いきなり手を出すというはゴッゴルちゃんらしからぬと感じた次第にございます。

「どうでしょうか?」

「言葉にして伝えて欲しい」

「すみませんでした」

 意外と音声通話にこだわるのよね、この子。

「どうしてゾフィーさんをぶっ飛ばしちゃったんですか?」

「…………」

 言われたとおり問うてみると、続くところを失うゴッゴルちゃん。

 ここで黙るということは、やはり生理的に合わないとか、そういうのだろうか。

 なんて考えていたところ、ボソリ、お返事が。

「あの貴族の男より、よほど貴方を利用するべく考えていた」

「あぁ……」

 なるほど、上には上がいるって、そういう意味か。

 そうなると姫ビッチが貰った一発は、彼女に対するというよりは、やはり、醤油顔に対する警告的な意味合いであったのだろう。

 ゴッゴルちゃんには読んだことを喋らないで欲しいとお願いしている。そのシワ寄せとして、ゾフィーちゃんに魔法が炸裂してしまったのだ。

「…………」

「意外と良い線いっていると思うのですが、違いますか?」

「……違わない」

 やった、正解だ。

 相変わらず幸薄い感じのゾフィーちゃんが良い仕事しているぜ。

「気を使わせてしまいましたね。ありがとうございます」

「よかったの?」

「ええ、事情が知れたので安心しました」

「……かなり酷かった」

「それでも私は彼女が嫌いではないので」

「……膜がない」

「そ、それでも嫌いではないので」

 ゴッゴルちゃん、意外とシモネタいける口なんだな。

 嬉しいような、寂しいような。

 それとも意識してこちらに合わせてくれたのだろうか。

 ちょっと分からないな。

「彼女に救われたこともあります。今日まで上手くやって来ました」

「……そう」

「ええ、そうなのです」

「わかった」

「ご理解くださり、ありがとうございます」

「…………」

 ゴッゴルちゃんにはお伝えしていなかったが、付き合い上での実利を数えれば、魔導貴族に次ぐ貢献をしてくれているのがゾフィーちゃんである。

 彼女は自身の利益を考えると共に、相手の利益も踏まえて行動してくれている。

 更に夜のおかずとしても、出会って当初よりトップランカーであるから、今後とも末永く、仲良くやってゆきたいと思っている。

「でも、貴方の望む幸せとは程遠い」

「そう容易に絆されることはありません。彼女と私の距離感は、実は程々に理想的なところにあるのではないのかと、個人的には考えているのですけれども」

「……本当に?」

「ええ、本当にそう思います」

 いつかは激しいセックスしてやるんだから。

 生中出ししてやるんだから。

「……本当に?」

「意外とこだわりますね」

「…………」

 心配してくれているのだろうか。

 だとすれば、これほど嬉しいことはない。

「あれこれと面倒を見て下さり、ロコロコさんには感謝しています」

「別に……」

 一方でそれほどまでに心配させるゾフィーちゃん恐るべしといったところか。

 まあいいや、姫ビッチのお話はこれくらいにしましょうよ。

 それよりも今日はゴッゴルちゃんの好きな料理に関して、色々とご確認させて頂きたい。二人の距離感を縮める為にも、相手の趣味嗜好を理解するのは大切だ。もしも自分で作れるものがあったら、ご賞味頂くというのも悪くない胃袋コミュニケーション。

「ロコロコさんは……」

 そんなこんなで深夜のゴッゴルタイムは穏やかに過ぎていった。



◇◆◇



 エディタ先生宅で一晩をお世話になり翌日。

 やって来たるはフィッツクラレンスのお屋敷だ。昨日に約束したとおり、出発の支度を確認すべく訪れた次第。正門前で出会った案内役のメイドさんに連れられて歩んだところ、辿り着いた先は同邸宅が誇る幅広な中庭であった。

 そこには既にリチャードさんの姿がある。

「おはようございます、タナカさん」

「おはようございます、リチャードさん」

 我々が見つめる先、中庭には飛空艇が停泊していた。

「いきなりですが、こちらはまさか……」

「今回の旅路に用いて頂けたらと思いまして。我が家が所有する飛空艇になります。ファーレン卿が運用しているものと比較すると、幾分か型は落ちてしまいますが、乗り心地は保証させて頂きますよ」

「よろしいのですか? 非常に高価な代物だと伺っておりますが」

 保険とかちゃんと入っているのだろうか。

 万が一にも墜落させたら、それこそ奴隷市場一直線である。

「私なりの誠意です。どうか乗って行って下さい」

「……分かりました」

 なるほど、きっと対外的にも必要性を感じての判断だろう。この醤油顔男爵が本当にフィッツクラレンス派閥の人間であることを、国内の貴族たちへアピールする為に。

 そういうことならば、これをお借りしない手はない。

「ありがとうございます。お心遣い感謝いたします」

「空の旅行を楽しんで下さい」

「はい、そうさせて頂きます」

 素直に頷いて応じる。

 一方で度肝を抜かれているのが、エディタ先生だ。

「ほ、本当に飛空艇で行くのかっ!? しかもこんな立派な船で……」

 ポカンと開かれた口と、見開かれた瞳とが非常に可愛らしい。なんだかんだでソフィアちゃん並に小市民な金髪ロリ先生である。思わずオチンチンを突っ込みたくなる。

「こちらは?」

 自然とリチャードさんの意識が向かう。

 そう言えば先日は一緒に食事をした間柄ながら、ちゃんと紹介をしていなかったことを思い起こす。先生自身も食事に必至で、まるでコミュニケーションが取れていなかった。

「私の錬金術の先生でハイエルフのエディタさんです」

「っ!? な、なんだ!?」

 急に名前を呼ばれたところ、振り返る先生の挙動が最高に小動物的。

 どうやら飛空艇に夢中であったよう。

「はじめまして。私はフィッツクラレンス家の当主、リチャード・フィッツクラレンスと申します」

「なっ……」

 なにかとペニー帝国の時勢には通じている先生だ。エステルちゃんの実家の名前を耳としたところで、ピンと背筋が伸びると共に全身が固まった。

 まさか目の前の優男が、ご当主様とは思わなかったよう。

 できれば礼儀正しく受け答えしていただきたいところだ。この男は意外と細かいところで人を見て、確実にランク付けしてくるタイプの手合いである。

 可能であれば先生には三つ星を取得してもらいたい。

「いかがしました?」

「も、申し訳ないっ! リチャード殿。私は名をエディタという。首都カリスでアトリエなど営んでいる。この度はこのような場にお招き頂いたこと、誠に恐ちゅっ……」

 速攻、ガリっと舌を噛んで見せる。

 どうして先生はこうヘッポコなんだろうな。

 それでも涙目になりながら、必至の形相でご挨拶を継続だ。

「まこ、まことに恐縮なこと、お礼を申し上げたいっ! い、以前の食事もっ!」

「無理をしていただかなくても結構ですよ。薬をお持ちしましょうか?」

 姫ビッチが同じことしたら全力でファイアボールだよな。

 エステルちゃんでもアウトだと思う。

 今回のは先生でもかなりギリギリの線だったし。

「だ、大丈夫だっ! お心遣い、とても嬉しく思う!」

 回復魔法を掛けようかと思ったけれど、涙目の先生が可愛かったので、しばらく放置して心のチンチンに栄養を与える。両者の身長差から、小さな子供が親に叱られているような構図が、非常にビンビンと響いてくれる。

「タナカさんの先生ということは、素晴らしい錬金術士なのでしょう。そのような方と知り合うことができて、私としても非常に喜ばしいです。どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします」

「こ、こちらこそだっ! どうぞ、どうぞよろしくっ!」

 テンパったまま、先生は必至に頭を下げている。

 猛烈にペコペコしている。

 ソフィアちゃんやメルセデスちゃんとはまた違った良さがある。

 きっとリチャードさんにも先生の性根は伝わったことだろう。

 ところでここ最近、メルセデスちゃんを見ていない。

 どこで何をしているのやら。

「タナカさん、こちらへ一緒においで下さったということは……」

「はい。エディタさんにも同行して頂こうかと。可能でしょうか?」

「問題ありません。一人や二人は誤差のようなものです」

「ありがとうございます。とても助かります」

「いえ、むしろ使節団としてハイエルフの方が一緒であれば、我々としても箔がつくというもの。ペニー帝国としては重きをおいていないようですが、こういった諸外国との付き合いで見栄を示しておくことは、非常に大切だと思います」

「私も同じ意見です、リチャードさん」

「タナカさんにそう仰って頂けると頼もしいですね」

「滅相もありません」

「ところで彼女は一緒でなくてもよろしかったのですか?」

 彼女とは姫ビッチを指してのことだろう。リチャードさんがそれとなく周囲に意識を向けるような素振りを見せる。完全に演技なのだけれど、それがまた絵になるから、この優男は憎らしいほどにイケメンだ。

「彼女は魔法騎士団としてのお仕事があるそうですよ」

「なるほど、そうでしたか」

 まさか事細かに追求してくることもないだろう。

 嘘がバレても困ることはないので、場凌ぎ的に適当を語っておく。

「それにリチャードさんも、このような状況となっては既に彼女に対して興味もないのではありませんか? 意味がないとは思いませんし、新米男爵が派閥内に足場を築くには依然として大したものでしょうが」

「ビッチ伯爵には悪いですが、その通りですね。タナカさんの足場という意味では、他にやりようは幾らでもあります。第一、貴方は私が手助けをしなくとも、幾らでも好きなように動ける人間です。これほど手の掛からない子はありません」

「後でシコリが残らないよう、取り成しておいて頂けると嬉しいです」

「元はといえば私が蒔いた種です。しっかりと片付けておきますのでご安心下さい」

「ありがとうございます」

 エステルちゃんの記憶が失われた今、ゾフィーちゃんとの婚約云々も、彼にとっては意味のない話である。元よりエステルちゃんの意識をどうにかする為の施策であった。当人の記憶が飛んでしまった今では何の価値もない。

 一方でゾフィーちゃんのパパは涙目だろう。派閥の都合で巻き込まれたゾフィーちゃん本人など、公開膜無し判定まで受けて、完全な損である。その哀れさが非常に愛らしくて、個人的には好感度プラス一なのだけれど。

 着実に姫としての経験を積んでいるじゃんね。

 いつかクイーンへ進化する日を楽しみにしておこう。

「一応、旅路に必要なものは詰め込んでありますが、必要な物があれば、仰って下さい。この飛空艇であれば、数日ばかり寄り道をしたところで、十分な余裕を持って目的地に到着できるでしょう」

 語りながら数枚ばかりの紙束を差し出してきた。

 受け取って確認したところ、紙面には物資のリストが並ぶ。

 積み荷の一覧だろう。

「こちらの贈与品ですが、陛下の言葉とは開きがあるように思えます」

「向こうの担当者、というか、会合の会場でタナカさんの目に叶った人物に渡して下さい。ペニー帝国からというよりは、フィッツクラレンス家からの誠意となります。扱いに関しては一任させて頂きます」

「承知しました。そのように扱わせて頂きます」

 また面倒な仕事がオプションで付いてきたぞ。

 ぱっと見た感じ、売り払えば金貨二百枚ほどの価値があるお歳暮一式だ。

 丸投げというのが性質悪いよな。

 ドラゴンシティの運営を丸投げしている自分が言えた義理じゃないけれど。

 ソフィアちゃんとかストレス腋臭が殊更酷いことになっていそうで興奮する。

「資金も幾らか積んでおきましたので、必要に応じて利用して下さい」

「お忙しいところご対応をありがとうございます」

「いえいえ、この度は謝罪の意味も含まれておりますので」

「だとしても、飛空艇とは非常にありがたいですね」

「予定は如何しますか? すぐにでも出発が可能ですが」

「そうですね。あまり長居しても面倒ですから、ご意向に添えたらと」

「そうして頂けると私も心が穏やかですみます」

「でしょうね」

「ええ、ではそのような形で」

 リチャードさんとのやり取りもそこそこ、逃げるように飛空艇へと乗り込む。

 いつぞや魔導貴族が用意したより一回り大きな飛空艇だ。ステップを登ったところで、通路には他に船員の姿が窺える。水夫ならぬ空夫だろう男性とメイド姿の女性とが半々といった分配だ。

 後者のうち、とりわけロリ可愛らしい子が行く先を案内してくれる。

 なかなか分かっているじゃないですか、リチャードさん。

 エディタ先生とゴッゴルちゃんと共に、その指示に従って飛空艇の船内を歩む。こちらが船室です、こちらが艦橋です、こちらが応接室です、こちらがおトイレです、云々。あれやこれやと各所の説明が為された。

 そうこうするうちに離陸の支度が整ったのだろう。

 最後は甲板へ案内されたところで、地上にはリチャードさん。

 旅立ちの挨拶をしろということだろう。

「それでは行ってまいります、リチャードさん」

「よろしくお願いします、タナカさん」

 短く言葉を交わしたところで、いざ、飛空艇は空へと飛び立った。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 タナカさんが首都に経たれて翌々日の出来事です。

『もっと町を大きくするぞ!』

「……え?」

 執務室にやって来たドラゴンさんが仰りました。

 彼女の両脇にはゴンザレスさんとノイマンさんの姿があります。ドラゴンシティでも女性に人気のお二人を両手に花状態でありまして、ちょっと、いいえ、メイド的に凄く羨ましいです、ドラゴンさん。

 しかも語る表情は自信満々で、小さくて形の良いお鼻がピスピスと息巻いております。

『後はお前が頷けばやって良いと、あのニンゲンが言っていた』

「す、すみません、あの人間というのは、その、どなたのことで……」

「タナカの奴がこの町長さんに言い残したんだそうだ。俺とノイマンと、あとお嬢ちゃんの三人から合意を取れば、町を好きなようにして良いってな。んでもって、俺とコイツとが頷いて、残すところ嬢ちゃん次第って訳だ」

 ゴンザレスさんが視線に指し示す先、そこにはノイマンさんがいらっしゃいます。

『まさか嫌なのか? ニンゲン』

「い、いえっ! 滅相もありませんっ! どうぞどうぞっ!」

 ドラゴンさんから言われたら、頷かざるを得ません。

 そんな怖いこと、どうして私に託すのですかタナカさん。

『そうか! あぁ、なかなか見どころがあるな? ニンゲン』

「めめめめ、滅相もありませんっ!」

 私が頷かせて頂きましたところ、ドラゴンさんの顔には満面の笑みが。

 どうやら街づくり大好きな予感です。ドラゴンというのは壊すの専門なイメージがあったのですが、思いの外、作る方もお好きなのですね。ちょっと私のイメージするドラゴンとは違います。

「しかし、大きくするとは言っても、どこを増やすのだ? 東西の区画がオープンした時点で、タナカのヤツが下賜された領地は既に使いきってしまった筈だ。下手に手を出しては面倒な事になる」

 ノイマンさんが仰ることは尤もです。

『……どういうことだ?』

「タナカのヤツは男爵という位の貴族だ。これはあまり位の高い身分ではない。与えられた土地も微々たるものだ。そして、街は既にこれを使いきってしまっている。西にも東にも、既に空いている場所がないのだ」

『それはこの国の都合だろう? あの馬鹿っぽいニンゲンから貰えばいい』

 馬鹿っぽいニンゲンとは、縦ロール様を指してのことでしょう。

 ここ最近の彼女は、北地区の温泉ばかりか、南地区の平民街にまで顔を出しているようで、他の誰より街に馴染んで思えます。数日前には従者の方も戻っていらしたようで、更に活動範囲を広げて思えます。

 確かに彼女はペニー帝国の方ではありません。

 いい加減、自分の領土に戻らなくて良いのでしょうか。

「た、確かに隣国には関係のない事情だが、それはそれで問題になるぞ」

『まさか駄目なのか? 貴様ら、一度は頷いたのに……』

 ジロリ、ドラゴンさんがお二人を睨みつけます。

 あんまりお心が強くないノイマンさんなど、額にブワッと油汗が。

 助け舟を出すよう、ゴンザレスさんが口を開きます。

「そういうことなら、縦に伸ばしてみたらどうだ?」

『縦だと?』

「そうだ。この国で一番に高い建物を建ててやるんだよ」

『……ほう、この国で一番に高い建物、か』

「さぞや見晴らしの良い光景が、俺たちを待っているだろうさ」

 俺たち、なんて言い切ってしまう時点で、実はゴンザレスさんもノリノリじゃないですか。本当は彼も街を大きくしたくて仕方がないような気がします。国内有数の冒険者集団であった黄昏の団は、いつから建築業に転身したのでしょうか。

 危険な兆候です。

 巻き込まれなようにしないといけません。

『たしかに、悪くないな』

「だろう?」

『だがしかし、貴様は一点、誤っているぞ、ニンゲン』

「おう? そりゃどういったことだ、ドラゴンさんよ」

『国一番などと甘っちょろいことを言うな。目指すは世界一だ』

「なるほどな。付き合うぜ? ドラゴンの嬢ちゃん」

『当然だっ! そうと決まれば、よしっ! ゆくぞっ!』

 ニコーっと満面の笑みを浮かべて、ドラゴンさんは歩み出します。

 ぷにぷにのホッペが非常に愛らしいです。

 これに付き従うよう、ゴンザレスさんとノイマンさんもまた同様に。

 私はデスクに腰掛けたまま、これを見送るばかりです。

 タナカさん、私には皆さんをどうこうするような真似は不可能です。ただただ、世の行く末を見守るばかりです。っていうか、そういうのはタナカさんのお仕事ですよね。最近、職務怠慢だと思います。

「おう、邪魔したな、嬢ちゃんっ!」

「忙しいところ失礼した。ソフィア君」

「は、はひっ!」

 パタン、ドアが閉じられたところで、執務室は元の静けさを取り戻しました。

 一介のメイド風情としては、平穏無事に済むことを祈るばかりです。



◇◆◇



 ドラゴン退治の折は、魔導貴族のワンマン飛行であった空の旅。

 今回はリチャードさんが用立てた十分な人員から、ホテルのロイヤルスイートを思わせる接待を受けながらの道中となった。部屋は極めて豪華だし、食事も一日三回、コースで出てくるから驚きだ。

 主にエディタ先生が驚きだ。

「お、おい、私はあまり蓄えがなくてだな……」

 飛び立って半日ばかり、例によって速攻でお財布の心配をし始める。

 ハイエルフのハイなところが、着実に威光を失ってゆく先生。懐から取り出した革袋の中、心細そうに硬貨の枚数を数えているからもうギュってしたい。

「問題ありません。支出は全てリチャードさんが持ちますので」

「しかし、あ、相手はペニー帝国を代表する公爵だろう?」

「だからですよ」

 醤油顔の顔を下から覗きこむよう、不安気に訴えて下さる。

 場所は飛空艇の甲板。出発して早々、他にやることもなくて手持ち無沙汰となり、先生と景色など眺めている次第。ちなみにゴッゴルちゃんはと言えば、船員の皆様のお心を見て回っていただいている。

 万が一にも面倒な輩が紛れ込んでいたら大変だからな。

 代償は徹夜。

 ゴッゴルちゃんとは一晩、朝までお話することを約束した。

 当初は二徹を所望された。

 どんだけお話するの好きなんだよって。

「だとしても、一銭も支払わないというのは……」

「彼が言い出したことです。我々はありがたく使わせて貰うばかりです」

「しかし、あ、相手は大公爵だぞっ!?」

「ここで下手に引いたのなら、逆に彼は私の評価を下げるでしょう」

「そ、そういう、ものなのか?」

「ええ、そういうものなのです」

 ここで遠慮をするのは違う。

 それに面倒な仕事も乗せられているしな。

 精々、ありがたく使わせて貰うのが正解だ。

「……お前の交友関係は、よ、よく分からんっ!」

「私自身もよく分かってませんから、気にしたら負けですよ」

「なんだそれは……」

「あまり風にあたっていても身体に毒です。戻りませんか?」

「あ、あぁ、そうだな」

 そっとエディタ先生の肩を抱こうとして、やっぱり、それだけの度胸がなくて、言葉に促す限りで船室へ向かうこととする。万が一にも嫌がられてしまったのなら、これからの船旅が最悪のものとなってしまう。それだけは避けなければ。

 思えば生まれてこの方、異性に告白した経験ってなかったな。

 死ぬまでに一度はしてみたいと思う。

 でも、そんな些末な行いが、とても難しいんだよな。
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