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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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フィッツクラレンス家 五

活動報告を更新しました。

 リチャードさんとの交渉の場に乱入したエステルちゃん。

 彼女は後手でドアを閉めると共に、ゆっくりと歩みを進めて部屋の中ほどまでやってくる。そこはちょうど自分とゴッゴルちゃんが腰掛けるソファーのあたり。距離を置いて設えられたリチャードさんの腰掛けるソファーは、そこから更に先の上座である。

「……ねぇ、パパ。これはどういうことかしら?」

 彼女の視線は下着姿のゾフィーちゃんに向かい、パパさんを経由して、こちらの下半身まで到達した。そこには既に体積を増したフランクフルトが、早く食べてと訴えんばかり、ズボン生地の下で自らをアピールしている。

「っ……」

 反射的に数歩ばかり、エステルちゃんの足がこちらに動いた。

 視線はフランクフルトに釘付けだ。

 二人は手を伸ばせば肩に触れられるほどの距離である。当然、同様に手を伸ばせばフランクフルトにも届いてしまう。もしもお腹が空いていたのなら、自然とお口に運んでしまうような未来も、決して遠くはないだろう。

 これに慌てたパパさんが、声も大きく吠えるように叫んだ。

「リズっ! 私は部屋で大人しくしているように伝えた筈ですっ!」

 父親として、大人として、その威厳を見せつけるように。

 自分のような外様貴族に対するとは打って変わって愛情マシマシ。

 しかしながら、親の心子知らず。

「それよりもお父さま、これはどういうことかしら。どうしてシアンが?」

 酷く威圧的な調子で語ってみせる。

 見られている。

 見られているよ。

 フランクフルトのフランクな部分が。

「リズ、ま、まずは私の目を見て話しなさいっ!」

「パパなんか見ている場合じゃないわっ!」

 パパと知らないオジサンのフランクフルト。

 そんな題字がふと、脳裏には浮かんで消えた。

 エディタ先生のせいだ。

「ねぇ、パパ。訪ねているのは私なのよ? ちゃんと説明して欲しいわ」

「っ……」

 今日のエステルちゃんは一味違う。

 果たしてどこまで聞いていのだろう。

 睨むよう問いかけた彼女に対して、これに立ち向かうパパさんはたじたじ。いつぞや会食の折には、小さく収まって思えたロリビッチだけれど、覚悟完了した途端に周りが見えなくなる性格が故、今この瞬間は父親を圧倒して思える。

 やっぱり親子だなぁ、なんて。

「パパ?」

 その視線が寸毫も揺らぐことなくフランクフルトに向かう都合、言葉ばかりが娘から父親に向かう。ハァハァと息を荒くして、血走った目で肉棒を凝視しているロリビッチィ。そんなに見つめられたら、更にサイズを大きくしてしまうではないか。

 一方、完全に空気のゾフィーちゃんはといえば、依然として下着姿のまま、応接室の片隅に晒されている。それはもう恋に落ちてしまいそうなほど愛らしい。姫ビッチは惨めであればあるほど、魅力的な少女となるのだ。

「私とタナカさんは大人の話をしていたのです。リズは黙っていなさい」

「それならどうしてシアンが一緒なの? 大人の話ってなに?」

 底冷えのする声で問い掛けるエステルちゃん。

 激情を飲み込んだ先にある、僅かばかりの冷静さに最後の一歩を踏み留まり、小刻みに肩を震わせる様子は、いつ感情が弾けるのか気が気でない。このロリビッチには、実の父親をファイアボールした輝かしい実績があるのだから。

「……そうですね」

 なにやら覚悟を決めた様子でパパさんが続ける。

「早く教えて」

「タナカさんとシアンさんの婚姻に関するお話です」

「け、結婚っ!?」

 どうやらロリビッチ、そう多くは聞いていなかった様子だ。婚姻話から始まって、処女膜検定へ至るまでの流れも理解していない。果たしてそれが良かったのか否か、エステルちゃん離れを考える身の上としては、些か複雑な気分である。

「パパっ、それはどういうことっ!? 私、ぜんぜん聞いてないわっ!」

「私が決めました。彼女の父親も喜んでいる。他に理由が要りますか?」

「シアンがそれを望んだの?」

「ええ、彼女もタナカさんと一つになることを喜んでいますよ」

「っ……」

 語るリチャードさんは頑なだ。肩越しに振り返ると、その顔は慎重な面持ちを晒していた。なにがなんでもエステルちゃんから自分を遠ざけたいらしい。親としては当然だろう。自分だって娘が生まれたらそうする。娘の膜はパパが頂きたいのです。

 しかしながら、そうした彼の訴えを耳とした娘はと言えば、父が子に向ける愛情など何処吹く風。ようやっとフランクフルトから視線が外れたところで、今度は鬼のような形相となりゾフィーちゃんを睨みつける。

 過去、アレンを横から攫われた記憶が警笛を鳴らしているのだろう。

「……シアン?」

 パパをスルーして、姫ビッチにダイレクトアタックだ。

 見つめられた側は、平素からの眼差しに見つめ返す限り。

「本当、なのかしら?」

「…………」

 ちなみに自身の身体はと言えば、正面をエステルちゃんに向けたまま待機。肩越しに状況を窺っている。今一番に考慮すべきは、ゾフィーちゃんやリチャードさんにモッコリを目撃されないことである、

 というのは建前である。エステルちゃんにオチンチンの膨らみをじっくり鑑賞して欲しい。注目されるの凄く気持ちいい。異性からの視線が凄くいい。段々と快楽に理性が負けつつある。これはイカンと思いつつも微エレクチオン。

 なんて考えていたところで、ふと、脇より届く視線に気付いた。

 ゴッゴルちゃんだ。

 褐色ロリータがじぃっと、ジト目でこちらを見つめている。

 隣の席に腰掛けていた都合、彼女もまたモッコリ圏内である。同時に自身は彼女の読心圏内である。その視線はこちらの顔を見つめて、顔を見つめて、顔を見つめて、ただただ視線を合わせてくるばかり。

 なんかドキドキする。

 更に部屋の片隅には下着姿で待機するゾフィーちゃんの姿が。

「…………」

 極めて危ない状況が、この上なくエキサイティング。

 ゴッゴルちゃんの手前、あまり過激なことを考える訳にはいかない。自らを律するべく、意識を高潔に保たんと引き締める。なんて意識したところで、途端にあれこれとエッチなことを考え始めてしまうから脳味噌とは不思議なものだ。

 エステルちゃんとパパさんの親子で朝まで生ファック。危険日上等の近親相姦生中出し。そんな光景をゾフィーちゃんとゴッゴルちゃん、二人と3Pしながら眺めていたい。バックで深く突きながら、もう一人と濃いベロチューを希望する。

「……そんなに交尾したいの?」

「すみません、今は静かにしていて下さい」

「…………」

 早々にツッコミを入れてくれる褐色ロリータ白髪系。

 今この場でゴッゴルちゃんに喋って頂くのは危険だ。

 申し訳ないのだけれど、口を噤んで貰おう。

 ここ最近、あれこれと彼女を含んだ妄想ばかりしていた為か、ゴッゴルちゃんのツッコミ頻度が上昇して思える。自発的に退散させるつもりが、逆に耐性を与えているのではないかと、少なからず不安な気持ちになってくる。

 これはもうオチンチンの味を覚えさせて虜にするしかないな。

 叶うことなら自分だけのフェイバリット肉便器に任命したい。

「……発情期?」

「すみません、その通りですから今は静かに……」

 ゴッゴル応対していて、なんとなく理解した。

 きっと彼女はお話をしたいだけだ。

 ここぞとばかりにツッコミを入れてくる理由。

 それは自分も会話の輪に入りたくて仕方がないから。

「っ……」

 ピクリ、まゆが震えた。

 正解である。

 この黒ひげ危機一髪的状況でも、会話に加わりたいとか、どんだけだよ。

「と、ところでっ! そのゴッゴル族の娘はなんなのかしらっ!?」

 間髪置かずにエステルちゃんからご指摘を頂戴した。

 どうやらゴッゴル族を知ってるっぽい。

 尚且つ、パパさんへ語り掛けるのとは、少しばかり語調が変化したの可愛い。

 というか、嬉しい。

 意識されている感じが、童貞的に極めてありがとうございます。ゾフィーちゃんといい、このロリビッチといい、どうしてペニー帝国の非処女たちは男心を擽る術を理解しているのか。このままでは近い未来、行く先を誤ってしまいそうだ。

「彼女とは縁ありまして、現在は行動を共にしております。意図してフィッツクラレンス家の方々にどうこうといった思惑はありませんので、どうか他の方に対するものと同様に付き合って頂けたらと」

 例によってゴッゴルちゃんのリーディングなところは黙っておく。ただでさえ説明するのが面倒なのに、今の状況であれこれと語るのは藪蛇だ。いずれにせよ、後ほどパパさんから説明を受けるだろうし。

「縁って、そ、そそ、それはどういう関係なのかしらっ!?」

「ただの話し相手です。それ以上でもそれ以下でもありません」

「でも、ゴ、ゴッゴル族なのに……」

「生まれや見た目で人を差別するのはよくありませんよ、エステルさん」

「っ……」

 自らの過去の行いを思い起こしてだろう。自然とロリビッチの表情が強張った。出会って当初の彼女はと言えば、それはもう全力でツンツンしていた。当時、路上に散らばった汚物でも眺めるよう、見つめられた経験を思い起こして、少しばかり興奮。

 まさかデレるとは思わなかった。

「わ、分かったわ」

「ご理解に感謝いたします、エステルさん。ありがとうございます」

「別に、あ、貴方に褒められたくて頷いた訳ではないわっ!」

「そうですね。そのとおりだと思います。流石はリチャードさんの娘です」

 一緒にパパの方もヨイショしておこう。

 先ほどから目が少しばかり開いて、ブチギレモード入ってるし。

 マジ怖い。

「……タナカさん、よろしいですか?」

「あ、はい、なんでしょうか?」

「そろそろ時間です。他に人を待たせているので、移動しましょう」

 これ以上、娘とお話をさせてなるものかと、気迫を感じさせる提案である。どれだけエステルちゃんのことが大切なんだよ、思わないでもない。

 アレンのヤツ、ちゃんと五体満足で生活できてるよな。揺るぎないリチャードさんの振る舞いを眺めて、段々と心配になってきた。

「用事、ですか?」

「派閥の方々にタナカさんのご紹介を行う予定です」

「なるほど」

 無理矢理にでも場を締めようとするリチャードさん。

 これにエステルちゃんが吠えた。

「ちょ、ちょっと待ってっ! 私はまだシアンと話すことがあるわ!」

「リズ、貴方は部屋に戻っていなさい」

「嫌よっ! パパにだって沢山、言いたいことがあるのだからっ!」

「私の言うことが聞けないのですか?」

「聞けないわっ! 絶対に戻らないのだから!」

「では仕方がありません。無理矢理にでも部屋に戻ってもらいます」

「っ……」

 リチャードさんがパチンと指を鳴らす。応じて、エステルちゃんに変化が見られた。背中に大きな重りでも乗せられたよう、床へ蹲ったではないか。見れば彼女の首には輪っかのようなものが嵌められている。

 もしかしてダークムチムチが嵌めていた、奴隷の首輪みたいなアイテムだったりするのだろうか。子煩悩の親馬鹿公爵で有名な彼だから、これは滅多でない行いだと思う。それほどまでに娘のファックが衝撃的だったのだろう。

 エステルちゃんのビッチ具合を鑑みれば、必要な処置だとは思うけれど。

「私もリズにこのような仕打ちをするのは悲しいです。ですが、貴方が私の言うことを聞かないというのであれば、心を鬼にせざるを得ません。これまで甘やかして育ててしまったことを、今は少しばかり後悔しています」

「かっ……はっ……い、いや……ぜったいに……」

 ちょっと不憫なロリビッチ。

 必至に立ち上がろうとしているけれど、どうやら上手く立てないよう。

「あの、リチャードさん、これは……」

「魔法の利用と身体の自由を制限する道具です。貴族の間では小さな子供の教育に用いる、一種の補助具です。他にも今のように、親の言うことを聞かない子供に、お灸をすえるのにも用いますね。これが非常に強力で、精神を患った大人にも付けたりします」

「な、なるほど」

 これが魔法社会の弊害というヤツだろうか。

 小さな子供のうちから魔法が使えるこちらの社会とは、未就学の子供が拳銃を自由に振り回せるにも等しい環境である。分別がつくまでこれを抑えることは、教育云々の前に、家族の命を守る為にも必要な行いだろう。精神病患者も然り。

 そして、これくらいしないと、このロリビッチを抑えることは不可能なのだろう。今も床に這いつくばりながら、それでも必至にこちらへ向かい、片腕を伸ばしている。まるでゾンビ芸でも見ているようだ。

「さぁ、タナカさんとロコロコさんはこちらへ」

「……よろしいのですか?」

「実害はありません。それとも娘が気になりますか?」

「正直、貴族の文化というものは、そう容易に慣れそうにありません」

「本当に申し訳ありません。ですが、どうか今だけはお願いできませんか?」

 席を立ってこちらの機嫌を伺うよう問うてくるリチャードさん。

 致し方なし。

 大公爵さまがここまで下手に出ているのだ、今は大人しく従おう。

「……分かりました」

 教育の一環であるならば、これ以上の指摘は憚られる。可哀想ではあるけれど、ご家庭の事情にまで足を踏み入れることはできない。更に原因が自分とならば尚のこと。流石のリチャードさんも、この一点に関しては、絶対に譲らないだろうし。

 パパさんの言葉に従い、我々は場所を他に移すこととなった。



◇◆◇



 リチャードさんに連れられて向かった先、場所は屋内のパーティーホール。数百平米ほどのかなり広々とした空間だ。天井も高く作られており、規模としては小学校の体育館といったところ。

 飾り付けが為されて、料理の類も並べられた同所には、既に大勢の貴族が集まり、立食パーティーの態を成していた。いつだかエステルちゃんに連れられて経験したフィッツクラレンス家の定例と大差ない光景だ。

 そうした背景の下、新米男爵は数多の貴族様との顔合わせと相成った。

 ちなみにロコロコちゃんの扱いはどうかと言えば、流石にゴッゴルスタイルそのままで同所へ望むのは心象が最悪だろうとのこと。リチャードさんの手配により、あれこれとおめかしである。

 化粧と服で肌の色を隠し、ウィッグで髪を隠し、ニョロリ伸びた尻尾もお腹に巻いて服の下へ。都合、銀髪褐色ロリータは本来の色を失って、金髪白色ロリータへと完全に姿を変えている。ハリウッドも真っ青の化粧術だった。

 おかげで彼女のゴッゴル具合は誰にもバレていない。

 そんな似非ホワイトロリータの同所における役割はと言えば、適当にご飯など食べながら、会場を訪れた貴族さま方の心の中をビュッフェスタイルで頂こうという算段だ。ゴッゴルちゃんと離れるのは辛く寂しいけれど、これも今後の貴族生活を思えば致し方なし。

 出会って数日の付き合いながら、段々と心を読まれるのが快感になってきている。

 これって良くない依存だよな。

 他方、自身はと言えば、パーティー会場に訪れた貴族さま方とのお顔合わせ。この手のイベントは生まれて初めての経験だ。他所様のご厚意で自らの顔を売らせて頂けるなどと、恐れ多いにも程がある。

 もしも生前に経験する機会があったのなら、こういった世界も存在するのかと脳内革命。上昇志向を気取って尽力する自らがあったかもしれない。いずれは如何に多くの人の上に立てるか、そんなことに切磋琢磨して、更なる大成を夢見る。

 そして、やがては大先生のご紹介でプチトマトしちゃうような。

 あぁ、いいなぁ、プチトマト。

 小学生とプチトマトしたい人生だった。

「貴様がタナカか? 私はオコナー伯爵だ。リチャード様の肝入りらしいな?」

「お会いできて光栄です、オコナー伯爵。フィッツクラレンス公爵には色々と面倒を見て頂いておりまして、その御恩を返す為にも、尽力したいと考えております」

 しかしながら、現実は無情。

 目前には強面の野郎ばかりがズラリ。

 今はこれに挨拶するのが自らの役割だ。

「はじめまして、タナカ男爵。私はノースブルック子爵だ」

「田中と申します。どうぞ、今後ともよろしくお願いいたします」

 しかもイケメン率が高い。

 その事実が酷く切ない。

 もう少し不細工な貴族様と知り合いたい。いかにも幼女を拉致監禁して、性奴隷として扱っていそうな貴族様と。そうしたら自分も、そんな彼と仲良くなって、気持ちの良い幼女を毎晩のお供にご提供させて頂くことも叶ったかも知れない。

 性奴隷ロリータとセックスしたい。

 性奴隷ロリータを飼ってる貴族様と懇意にさせていただきたい。

「これはこれは、タナカ男爵といったか? 私はノーマンという」

「フィッツクラレンス公爵より、ノーマン侯爵のお名前は伺っておりました。こうしてご挨拶をできたこと、大変に喜ばしく感じております。どうぞ、よろしくお願い致します」

 二桁に及ぶ貴族さま方とのご挨拶。そこには性奴隷のせの字も出てこない。極めて健全だ。同時に誰もが、少なくとも表情面は、友好的である。それもこれも、ひとえに傍らで控えたリチャードさんの威光あってだろう。お披露目は恙無く進んでいった。

 ちなみに当の彼はと言えば、グラスを片手にゾフィーちゃんのパパとお話の最中だ。前者が平素からのスマイルであれこれ語るに対して、後者は酷く緊張した面持ちに構えている。きっと娘さんの非処女を巡る問題を今まさに問いつめられているのだろう。

 やたらと堀の深いゾフィーちゃんのパパの額やら鼻頭やらに、びっしりと汗が浮かんでいる様子が妙にコミカルなものとして映る。自らの娘さんを適当に扱ったこと、今この場で深く反省するといい。

 ちなみに当の膜無し姫ビッチはと言えば、醤油顔の傍らに立っている。

「ビッチ伯爵の娘と婚姻したというは本当だったのですな」

 なんとか子爵が呟いた。

 傍らに当人の姿を眺めてだろう。

 どうやら既に情報は他へと流された後であったらしい。まさかリチャードさんも、先程のような形で、婚姻の話が流れるとは考えていなかったのだろう。ゾフィーちゃんの膜無し判定が、今まさに彼とビッチ伯爵を慌てさせている。

 これで相手が普通の男爵であったのなら、選り好みなどしなかっただろう。

 ゾフィーちゃん可愛いし。頭も良いし。

「そうですね……」

「いやぁ、羨ましい限りではないか。タナカ男爵」

「はい、大変に光栄であります」

 場の流れで有耶無耶のまま同所を訪れてしまった。都合、他の貴族の面々の下、これを否定することは難しい。下手な言動はリチャードさんとビッチ伯爵の顔に泥を塗ることになる。それは今の貴族生活において、一番にあってはならないことだ。

「ビッチ伯爵家のシアン嬢と言えば、ペニー帝国でも指折りの才女ですからな」「いやぁ、タナカ男爵が羨ましい」「私の息子も適齢でして、もしも見合いが叶うなら、全てを投げ打ってでも馳せ参じたいところ」「まさにまさに、まったくもってまさに」

「魔法騎士団の名声は昨今、その勢いが留まることを知りませんからなぁ!」「そう言えば王女殿下の一大事の折、ファーレン様と共にドラゴン退治に向かわれたとか」「おぉ、私もその話は知っておりますぞ」「私もです。今や宮中で一番の話題ですな」

 貴族さま方から、容赦無いヨイショ攻撃が与えられる。

 胃がキリキリと痛む。

 これはもうゴッゴルちゃんから、トロトロ唾液の愛情ディープキスを頂戴しないことには耐えられそうにない。しかしながら、彼女はフロアの反対側で、何某かの骨付き肉と格闘の最中だ。美味しそうにパクついていらっしゃる。

 なんて考えたところで、右手に柔らかな感触が。

「っ!?」

 何事かと全身が震えた。

 慌てて視線を向ける。

 するとそこにはゾフィーちゃんのお手々が。

「……旦那さま」

 しかも、嬉し恥ずかし旦那様呼ばわりだ。

「シアンさま?」

「なんですか? 旦那さま」

 伊達に自らの立場が掛かっていない。

 膜を伴わない事実が、お父上とお父上の上司に露呈してしまった都合、彼女の淑女生命は風前の灯。どうにかして今を乗り切ろうと必至なのだろう。結婚する気など皆無なのに、この時間だけは無事に過ごさねばと、明け透けに見えてしまっているぞ。

 最高にビッチだゾフィーちゃん。

 でも可愛いから許しちゃう。

 無性にマックのポテトとか食べたくなるときがあるように、やたらとビッチな子とセックスしたくなるときってあるじゃん。リチャードさんにお願いすれば、生中出しから妊娠、出産まで自由自在なところが、色々と諦めている中年野郎の心を鷲掴みである。

 まるで自宅近所のソープランドが構えたホームページでも眺めているよう。あぁ、お金さえ支払えば、こんな子に生中出しできるんだぁ、みたいな。今も直線距離数キロのところで、この子は見ず知らずのオッサンに生中出しされてるんだろうなぁ、という。

 碌に肌の露出もない画像が、たったそれだけで、上等なオカズになる不思議。

「私は貴方の妻になるです」

「ええ、そうですね」

 こんなこと語ってはいるが、素直になる気は微塵もないだろう。このアクティブ極まる姫ビッチが、素直に好きでもない男と一緒になるとは思えない。伊達に自力でアイドルデビューしていない。既になにかしら手を打っているに違いない。

 だからこそ、こうして露骨なまでにアピールをすることができるのだ。押し付けられた控えめなオッパイの心地良いこと心地良いこと。そういった彼女の行動力に満ち溢れたところ、かなり嫌いじゃない。尊敬できる。

 これは負けていられないな。

「大丈夫です。ちゃんと理解していますよ」

 彼女にはドラゴン退治から始まり、ドラゴンシティでの興行やアレンの件など、随所でお世話になった。このまま無下にするのは、流石に不憫な気がする。パンモロとか最高に可愛いし、お手々柔らかいし、ここは一つ借りを返すべきだろう。

 手を握ってくれるの、童貞的に凄く嬉しいんだよ。

「私は近く国外へ向かう用事があります。これを終えたら式を上げましょう」

「っ!?」

「留守にするのは僅か数週ほどの期間です。私はすぐに貴方の下まで戻ります」

 右手を握るゾフィーちゃんの指に力が入る。

 ちなみに彼女の友人であるエステルちゃんはと言えば、パパの命令によって自室に軟禁状態である。おかげで今この瞬間、自分は存分にゾフィーちゃんのお手々をニギニギすることができる。素晴らしきはパパの強権。

 この手が幾十本もの肉棒を扱いてきたかと思うと、反射的に離したくなるよな。爪と肉の間にザーメンの乾きカスとか詰まっているのではなかろうかと。昨晩はどこに宿泊したんだよ的な意味で。それでも今だけは処女のつもりでニギニギだ。

「……旦那さま、それは本当です? シアンは非常に嬉しいです」

 会話を合わせるゾフィーちゃんの涙ぐましい努力。

 手の甲に彼女の爪がめり込んでいる。痛い。どんだけ嫌いなんだよ。

 流石に凹むから勘弁して欲しい。

 今の一言で、少なからず反応を見せた貴族の姿があった。そっと場を離れる者もちらほら。おそらくはゾフィーちゃんと自分の結婚を良く思わない手合いだろう。阻止するべく動いてくれるのであれば、それこそ願ったり叶ったりである。

 表情に変化の見られた手合いも決して少なくない。

 ペニー帝国にその名を響かせるフィッツクラレンス派閥。パーティー会場に集まった貴族たちは三桁を超える。これだけ大きな寄り合いとなれば、色々と人の思惑が入ってくるものだ。まさか一枚岩とはいかない。

 そこに我々の付け入る隙がある。

 数日もあれば、その間に何かしら動いてくるだろうさ。

「理解して下さい。貴方は賢い」

 ボソリ、彼女だけに聞こえるよう耳打ち。

「っ……」

「一ヶ月後に終わらせます。いいですね?」

 視線で指示す先、我々から距離を置くよう移動した貴族を指し示してご説明。

「……わ、分かったです」

 早々に爪は引っ込んだ。

 自らの早合点を恥じてだろうか、爪を立ててしまった箇所を、姫ビッチはスリスリと指先で撫でてくれる。この代わり身の早さとか、なんかもう、清々しいまでにビッチビチである。だが、それが何故か良いと思えるのが、ゾフィーちゃんの魅力である。

 指先でスリスリされるの、思ったよりエロ気持ちいい。

「旦那さま、シアンは旦那さまのお帰りを心待ちにしているです」

 語る響きもそれまでと変わらず。

「ご理解ありがとうございます。シアンさま」

「旦那さまのご帰宅が待ち遠しいです」

「ええ、楽しみに待っていて下さい」

 海外出張から戻る頃には、他の面々の都合で状況は二転三転しているだろう。その為の種も蒔いた。良い具合に芽吹いてくれる筈だ。それにゾフィーちゃん自身の活躍のみから、大局が決している可能性すらある。

 その時に改めて、より心地の良い波に乗れば良い。

「愛してるです、旦那さま」

「私もです」

 周りを取り囲む貴族な方々にアピールすべく、朗らかに語らい合うビッチと童貞。ギュッと腕に抱きついてくれるゾフィーちゃんが、背後関係を全て理解していても、可愛くて、可愛くて、もっこり注意報発令。

 そうした最中、不意に届けられたのが感謝の言葉。

 ボソリ、とても小さな声で。

「先刻は自尊心を砕いてまで庇ってくれて、ありがとうです」

「はい?」

「あまりにも不器用な嘘です。でも、非常に貴方らしい」

「……嘘、ですか?」

「この借りはいつか返すです」

「あの、それはいったいどういう……」

 取り立てて貸しを作った覚えはない。嘘だってついていない。姫ビッチの為にプライドを挫いた覚えも当然ない。疑問に思い質問を返そうとしたところ、けれど、周囲から投げかけられる言葉にその隙を奪われる。

「いやぁ、本当に羨ましい」「本当ですな。私の息子はシアンさまのファンですから、泣いて悔しがることでしょう」「私の息子もですよ」「魔法騎士団といえば、ファーレン卿も一目置いていらっしゃるという」「ドラゴン退治は伊達ではありませんな」

 一連のやり取りを眺める誰も彼もは、新たに誕生したカップルへ、腹に一物も二物も抱えながら、一様に笑顔で祝福の言葉を向ける。

 鳴り止まない貴族様方からのヨイショ攻撃。

 すぐ近くに立ったリチャードさんとビッチ伯爵が影響してだろう。

「…………」

 なにもかもが嘘ばかり。

 真実を理解するのは唯一、ゴッゴルちゃんが限りである。



◇◆◇



 ゾフィーちゃんと一緒に巡る挨拶回りも一段落。

 さて、そろそろ失礼させて貰おうかと、会場でリチャードさんの姿を探している最中の出来事だった。会場ホールの一面に設けられたステンドグラス。サント・シャペル大聖堂も真っ青な連なりが、パリン、大きな音を立てて割れた。

 誰も彼もの注目が音の聞こえてきた側に向かう。

 砕けてしまったガラス片が、次々とホール内部に落下してゆく。これと同じくして、ドサリ、少しばかり低い音と共にそれは会場の床へ落下した。なにかが屋外から室内に向けて飛び込んで来たようだ。

 小さくバウンドしたそれは、ピクリピクリ、床の上で身体を震わせる。

 落下のダメージが故か、それとも他に何某か理由があるのか。それは弱々しくも肘を立て、必至に上半身を起こすべく、全身をプルプルと痙攣させていた。上手く身体を起こせないよう。まるで生まれ落ちて間もない子鹿のようだ。

「リズっ!?」

 誰にも先んじて吠えたのは、リチャードさんだった。

 彼の声が示す通り、落下してきたのは、他の誰でもないエステルちゃん。

「ど、どうしてここにっ!」

 酷く狼狽した様子で娘のもとに駆け寄るパパ。

 自然と自分もその後を追っていた。

 ロリビッチの身に何かあったのだろうか。彼女はそれなりに飛行魔法を扱えた筈だ。いつぞや紛争の折には、健気な文句と共に魔導貴族さえ唸らせてみせたほど。それがどうして窓から落ちてきた。

 ああ、そうだ、彼女の首には輪っかが嵌められている。

 それが魔法の利用と身体の自由を奪っているとか云々。

 エステルちゃんの登場を受けては、会場に集った貴族たちの間にも動揺が走った。そりゃそうだ。親馬鹿で知られる自派閥トップの娘さんが、今にも死にそうな体で窓ガラスを突き破り登場したのである。

 誰も彼もの表情に緊張が走って思えた。

「彼は、か、れは、私の……なのだからっ……」

 会場の注目を一手に集めたロリビッチ。

 その視線が向かった先には、困ったことに醤油顔とゾフィーちゃんが。

「リズっ! その首輪を嵌めて尚も、ここまで来たのですかっ!?」

「シアン、ゆ、る、さない……パパも……だい、きらい……」

「っ……」

 ロリビッチが鬼のような形相でゾフィーちゃんを睨んでいた。

 これまでもこの子の嫉妬する姿は見てきたけれど、今日のそれは段違いだ。今にも死にそうな彼女が見せる、地面に這いつくばりながら、それでも相手を討ち取らんとする執念の感じさせる振る舞いは、恋する乙女というより、怒り狂った悪鬼である。

「わ、分かりましたっ! すぐに外しますから、大人しくっ!」

「私がいちばん愛してる……ぜったいに、ぜったいにゆるさ、ない……」

 口からブクブクと泡を吹きながら、それでも必至に語り訴えるロリビッチ。落下の衝撃からだろう。手足とか変な方向に曲がってしまっている。両腕など皮膚と肉が裂けて白いものが飛び出している。落下に際して身体を庇ったのだろう。

 だというに、悲鳴の一つさえ上げることなく、ただひたすらにゾフィーちゃんを睨んでいるエステルちゃん。アレンを目の前で奪われた過去が、今この瞬間、彼女を滾らせて思える。ちょっとしたホラーだ。

 そうした愛娘の姿に慌てたリチャードさんが、彼女の首元に手を伸ばす。会場入り直前に受けた説明の通り、現在の彼女が晒す子鹿モードは、首に嵌められた輪っかが原因で間違いなさそうだ。

 一方で身体を起こすことを諦めたのがエステルちゃん。彼女はゾフィーちゃんに対して、その右腕をプルプルと震わせながら、手の平を示すよう掲げる。どれだけ無様な姿を晒そうと、彼女はなんら構った様子がない。

 折れてしまった肘から先が、ぶらんと床に向かい垂れ下がる。これに気づいた彼女は、床に寝転んだまま、少しばかり身を転がす。肩の向きを整えることで、掌の法線が相手を捉えるよう、位置を修正した。

 ヤバイと思った。

 いつぞやの家庭内ファイアボールが思い起こされた。

「エステルさんっ、待ってくださいっ!」

「リ、リズ、やめなさいっ! 無理に魔法を使ってはっ……」

 自分とリチャードさんの声が重なる。

 よもや大惨事。

 しかしながら、恐れていた反応は起こらなかった。次の瞬間にでも訪れると思われた爆発は、プスン、ガス欠となった自動車の排気音を思わせる乾いた音と共に、爆竹ほどの衝撃を生むことさえなく消失した。

「っ!?」

 かと思えば、パキンと乾いた音が響く。

 エステルちゃんの首に嵌められていた輪っかが割れた。

 綺麗に二つとなり、床に落ちてカランカランと。

「わたしが一番、あ、い、して、る……あい……し……て……る……」

 同時にエステルちゃんの肉体から、ふっと力が失われる。必至に伸ばされていた腕が、歯を食いしばるよう上げられていた頭が、支えを失って床に落ちる。

「り、リズ……」

 猛り過ぎてオーバーヒートしてしまったようだ。



◇◆◇



 エステルちゃんの登場により急遽パーティーはお開きとなった。

 今はリチャードさんと共にお屋敷の彼女の部屋で、ベッドに横となるロリビッチを見つめている。部屋の隅にはゴッゴルちゃんの姿もチラリ。一応、皆々に対しては読心圏外となるような配置である。

「回復魔法をありがとうございます、タナカさん」

「いえ、こちらこそ申し訳ない限りで……」

 一時は脈が止まってしまったエステルちゃんであるが、回復魔法を全力投球したところ、無事に持ち直してくれた。誰の助けも借りずに自らの限界を突破するなどと、侮りがたしはビッチのビッチ極まるが所以、どこまでも真っ直ぐな性欲の至るところ。

 シーツの上、穏やかに胸を上下させている。スースーと規則正しく寝息を立てる様子は、姿ばかりを鑑みれば、絶世の美少女であるから、なかもう詐欺である。膜さえ無事ならばと、惜しみざるを得ない。

「しかし、まさか枷を破壊するとは思いませんでした……」

 呟くリチャードさんは、どこかバツが悪そうだ。

 娘に対して申し訳ない気持ちがあるのだろう。単なる親馬鹿ではなく、当人の気持ちを理解してあげられるだけの度量を持ちあわせて思える。もしも自分が彼と同じ立場だったら、果たして落ち着いていられるだろうか。

「リチャードさん、申し訳ありませんでした」

 だから、改めて頭を下げる。

 間男的な意味で。

「いえ、タナカさんとの関係は本人から聞いています。貴方は娘に対して、娘のことを第一に考えた上で、接して下さっている。これに感謝こそすれども、非難の声を上げることはありません」

「事実と感情は別物ではありませんか? たまには発散も必要です」

「……タナカさんは未婚だと伺っておりましたが?」

「ええ、結婚の経験はありません。当然、子供を持った経験も。しかしながら、心中を察することはできるかと思います。こういったことを言うと、実際に娘さんをお持ちであるリチャードさんには、聞くに堪えない暴言に思われるかも知れませんが」

「…………」

「ですから、リチャードさん。この度は申し訳ありませんでした」

 自分と出会わなければ、エステルちゃんもリチャードさんが望んだように、いや、アレンに膜ブレイクされた事実は変わらないけれど、でも、もう少し穏やかに日々を過ごせたのではなかろうかと。

「そう、ですね……」

「はい」

 目に入れても痛くない娘が、いつの間にやら傷だらけだったのだ。

 それはそれは悲しいに違いない。

 生まれて初めて陵辱系同人誌を見たとき、とても悲しかったもの。

 大好きなキャラがチャラ男たちに集団輪姦されてるの。

 今は大好物だけれど。

「リチャードさん、陛下からお話は聞いていますか?」

「ええ、大聖国の件ですね?」

「出来る限り早いうちに、首都カリスを発とうと思います。私事で大変に恐縮なのですが、支度をお手伝いして頂いてもよろしいでしょうか?」

「…………」

「リチャードさん?」

「……それは少しだけ、待って貰えませんか?」

「なにか他に用件でも?」

 おかしいな。

 リチャードさんの立場なら、今すぐにでも、と返ってくる想定だった。

 しばらくを待ってみると、なにやら彼は意を決した様子で、改めてこちらに向き直って見せた。それはもう酷く真剣な眼差しで、アジア人のコンプレックス、平たい黄色を見つめてくれる。

「タナカさん」

「はい」

「今更このようなことをお伝えするのは忍びないのですが……」

「……なんでしょうか?」

「娘を、リズを、どうか、よろしくお願い致します」

 マジかよ。

 今のやり取り、パパの攻略ルートだったのかよ。

 それはちょっと想定外だわ。

 っていうか、ゾフィーちゃんとの婚姻アナウンスはどうするんだよ。

 ビッチ伯爵とか最高にとばっちりじゃん。

 提案は彼からかもしれないけれど。

「リチャードさん、貴方は今、現実が正しく見えていません。娘さんが私に向ける情熱は、一時の気の迷いです。半年もすれば、元の穏やかな彼女を取り戻すでしょう。その時、決して後悔を与えないよう、腕を引くのが貴方の務めです」

「……本当にそう思いますか?」

「ええ、思います。娘さんの精一杯な姿を目の当たりとして、貴方もまた熱に拿捕されているのです。一晩、ゆっくりと眠って、また明日にでも冷静に考えてみてください。貴方の娘さんは、とても、それはもう、素敵なお嬢さんなのですから」

 エステルちゃん、口から泡とか吹いてたしな。

 流石にあの姿を拝んだ後だと、色々と考えてしまうだろう。

「私は今の自分を、極めて冷静だと判断するのですが」

「だとしても娘の一大事なのですから、このような場で決めることではありませんよ。十分に調査を行い、根回しを済ませてから、更に検討を重ねた上で、実行に移すべきだと思います。リチャードさんは、そうして今の立場を築かれたのではないですか?」

「……それらは、既に行ったのです」

「まだまだ足りていませんね。リチャードさんが思っているほど、私は真っ当な人物ではありません。これは決して謙遜などではありません。とてもではありませんが、娘さんを幸せにはできないでしょう」

「それが娘を僅か数日で国内有数の子爵にまで担いだ男の言葉ですか?」

「その通りです」

 初めては初めての子がいいのだ。

 その一点だけは、どうしても譲れない。

 リチャード・ファイマンも言ってる。

 一番のルールは自分自身を欺かないことだと。

「分かりました、明日にまた場を持たせて下さい」

 小さく頷いて、けれど、まるで諦めた様子のないパパさん。

 その言葉が終えられたところ、シーツの上、身体の動く気配があった。モソモソと僅かばかり身動ぎ。ややあって、パチリ、閉じられていた形の良い瞳が開かれた。照明に照らされて輝く赤色は、まるで高価な宝石のようにキラキラと。

「リ、リズ……」

 リチャードさんが震える声に問い掛ける。

 どのような距離感で接したものか、測りかねているのだろう。

 対して、そんな彼に彼女はといえば、一頻り部屋を見渡したところで問う。

「パパ、どうして私の部屋に平民がいるのかしら?」

「え?」

 その視線が捉えた先には、たしかに旅人の服装備な男が立っている。

 俺だよ。

 瞬間、リチャードさんと醤油顔の顔が硬直した。
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