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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

本文

63/132

錬金術師エディタ 五

活動報告を更新しました。
 ドラゴンシティに戻った我々が、最初に出会ったのはロリゴンだった。

『ふーんふふふんふんー』

 機嫌も良さそうに下手くそな鼻歌など歌いながら、ニマニマ笑顔で自らの作った町を闊歩していたゴールデンアイズロリータドラゴン。町長就任以後、誰に言われるでもなく、当人が勝手に始めた警備という名の散歩である。ヤツの日課の一つとなっている。

『ふんふふふーんー……ふ、ふふんっ』

 髪はしっとりと濡れて風呂上がり。薄手の白いワンピース一枚でトコトコと。他に人気も少ない夜遅い時間帯、物静かな界隈に夜風を楽しんでいたのだろう。行く先に自らの手がけた建物を見つけて、にんまり、とても幸せそうだ。

 そんな彼女と、ちょうど街の正門の辺りでばったりと。

「こんばんは、クリスティーナさん」

『なっ……』

「……どうしました?」

『何故にそいつがここにいるっ!?』

 こちらの隣にゴッゴルちゃんの存在を見つけて、第一声がそれだ。

 途端にホッペのプニプニが失われる。

 自然と強張った口元からは、敵意を隠さない、鋭く尖った犬歯が覗く。

 薄暗がりに爛々と輝く黄金色の瞳がミステリアス。

「しばらくこちらで預かることになりました」

『んぁっ!?』

 数歩を後ずさる勢いで、殊更に驚いてみせるロリゴン。

 対照的にゴッゴルちゃんはと言えば、粛々とご挨拶を。

「……よろしく」

『それはどういうことだっ! なんでそんなことになっているっ!?』

 ちなみにマゾ魔族は一足お先に縦ロールの下へと去っていった。

 曰く、ゴッゴル族などと共に行動できるか、とのこと。

 今頃は膜付スージーからご褒美など頂戴しているに違いない。ファック。

「その辺りも含めてご説明をしますので」

『ちょ、町長の権利だ! ダメだぞっ!? ぜ、絶対にダメだっ!』

「では私は領主としての権利を主張させて頂きます」

『ぐぬぅっ……』

 ゴッゴルちゃんと周囲の距離に注意しながら、一路、町長宅へと急いだ。



◇◆◇



 そんなこんなで夜中にもかかわらず、町長宅の応接室へ。

 廊下を並んで歩む自分とゴッゴルちゃん。その後方を数メートルばかり距離を設けて、クリスティーナが付いてきている。我々が振り返ると、ビクリ、肩を震わせて、数歩ばかりを後ずさるのだ。まるで野良猫みたいなヤツである。

 数分と掛からず、目当てのドアまで辿り着いた。

 そこで不意にゴッゴルちゃんが呟いた。

「この部屋?」

「ええ、そうですが、なにか問題でも?」

「……貴方を利用しようと考えている者が、いる」

「え?」

 もしかして、扉の向こう側の誰かの心を読んじゃった感じだろうか。

 それちょっとキツイぞ。

 いやでも、一口にこの醤油顔を利用するとは言え、どういった用途でどの部位を利用するのか、それらにより判断は別れるだろう。

 もしも夜のベッドでダンディースティックを利用しようと考えているのであれば、それはもう、素晴らしい、むしろウェルカムである。

「平日の日中帯、貴方の魔法を」

「……大丈夫です。言われずとも理解してますから」

 このままドアの前で悩んでいても仕方がない。

 一つ、勇気を振り絞りドアを開く。

 すると、そこには思ったより大勢、人の姿があった。

 まるで我々を待ち構えるよう、魔道貴族にゴンザレス、ノイマンさん、ソフィアちゃん、そして、何故かエステルちゃんのパパの姿までもが見受けられるではないか。

 ちなみに席の並びはと言えば、対面並びの三人掛けのソファーに対して、魔道貴族とエステルちゃんのパパが各々腰を落ち着けている。

 残る面々は前者の後ろへ直立不動である。

 唯一の例外はソフィアちゃんで、彼女だけはデスクに腰掛けている。手にはペンを握っており、全身をガクガクブルブルと震わせながら、涙目で書類に向き合っている。

「……リチャードさん?」

「留守中にすみません。勝手に待たせて貰っておりました」

 一同、出入口の側に向き直り、こちらに注目だ。

 取り立てて声を上げたのは、自ら述べたとおりエステルちゃんのパパ。十中八九で首都カリスでの一件に絡んだ話だろう。ともすれば、如何に相手が目上の貴族であるとはいえ、ここは強気に向かうべきだろう。

「これはどういったことでしょうか? 私の留守中になにか?」

「いや、少しばかりタナカさんとお話をしたくて参りましたよ」

「お話、ですか?」

「ええ。ところで、そちらの彼女は……」

 自然とリチャードさんの意識がゴッゴルちゃんに向かう。

 彼女たちの能力は、貴族の謀りに用いられる場合も多いという。まさか、大貴族である彼が、その存在を知らないことはないだろう。褐色の肌と白銀の髪、それにお尻から伸びたしっぽは、その種族を象徴する外見的特徴だと言う。

「私の友人のロコロコさんです」

「……どうも」

 片手間に紹介などしてみる。

 律儀にも頭を下げるゴッゴルちゃん。

「なるほど、彼女を用立てていた訳ですね」

 すると、彼女の存在を勝手に勘違いしてくれるリチャードさん。ただでさえ細い目元が、殊更に細められたような気がした。

 間違いない。この身を利用しようと企んでいたのは彼だ。ちらり、ゴッゴルちゃんにお伺いを立ててみれば、コクリと頷く姿が確認できた。

「一つ、リチャードさんにお願いがあります」

「なんですか?」

「少しばかり席を詰めて頂きたいのです。できればソファーの端まで」

「……こちらに腰掛けるのですか?」

 リチャードさんの視線は自分とソファーの間で行ったり来たり。

 唯一、事情を理解する魔導貴族が口を開いた。

「リチャード。ヤツの言うとおりにするべきだ。おそらく今の貴様は、そのハイゴッゴルの影響圏内に存在する。自らの身が可愛いのであれば、一刻も早く場所を移れ」

「ファーレン卿? まあ、移れと言われれば移りますが……」

 こちらの指示通り、エステルちゃんのパパは、部屋の奥へ向かいソファーの上を移動した。その尻が再びクッションに落ち着いたところで、こちらはゴッゴルちゃんにお伺い。

「どうですか?」

「……読めない」

「他に読める人は、居ませんよね?」

 一番出入口に近い側、要は下座に座っていたのがリチャードさんだ。相変わらず他人を陥れるのが趣味なのだろう。以前にヘーゲルとしてやって来た際と、まるで変わらない対応を、今度はドラゴンシティの面々に披露しただろうことは想像に硬くない。

 ただ、そんな彼の対応が、今回は大きく足を引っ張ったもよう。

「貴方だけ」

「であれば、良かった」

 できれば自分以外は誰の心も読んで欲しくない。

 あ、今のなんかゴッゴルちゃんを独占しているっぽくて、良いかも。

「タナカさん?」

「リチャード、そのゴッゴル族は特別だ。肌を触れずとも、他人の心を読むことができる。恐らく、今し方の貴様はその圏内にあったのだろう」

「なっ……」

 魔導貴族が告げたところ、リチャードさんが瞳を見開いた。

 相変わらず、この人が目を開くと、怖い。

「そういう訳ですので、この場に立ったまま失礼しますね」

 室内には他に人の姿も多い。

 下手に腰を落ち着ける訳にもいかない。

「……なるほど」

「リチャードさん?」

 挨拶代わりに言葉を重ねたところ、パパさんはふぅと溜息など吐いて、観念した様子に語ってみせる。それは常に自信満々、余裕に満ち溢れていた彼が見せる、初めての降参の言葉であった。

「参りましたよ、タナカさん。今回ばかりは、もう、本当に参りましたね。貴方から譲歩を引き出すつもりで訪れたというのに、全ては貴方の掌の上だった訳ですから」

「…………」

 こちらをハメる算段でもあったのだろう。

 先のゴッゴルちゃんのご指摘を鑑みれば、可能性としては決して小さくない。相手がリチャードさんなら、たぶん、間違いなくあったのだろう。

 ただ、それもこれも、あれもどれも、他の誰でもない彼自身の勘違いから、ほんの僅かな偶然から、一手を打つまでもなく崩れ去ったよう。

 再び変化を見せた表情は、完全に諦めのそれであった。

 詳しいところは知れないが、これはグッジョブだぞ、ゴッゴルちゃん。

 後で二日間洗っていないオチンチンをしゃぶらせてあげよう。

「タナカさん、貴方に対する意識を改めます」

「というと?」

「正式に私の方から、お願いいたします。どうか、私の派閥に加わって下さい」

「…………」

 ソファーより立ち上がったエステルちゃんのパパが、なんと、こちらに向けて粛々と頭を下げてみせた。魔道貴族だけならばまだしも、ゴンザレスやノイマン氏、ソフィアちゃんなど、平民の目があるにも関わらずだ。

「リチャードさん、まずは頭を上げて下さい」

「貴方が派閥に加わって下さるのであれば、私は頭を上げましょう」

「…………」

 この人、割となんでもありだな。

 伊達にエステルちゃんのパパをしていないってことだろう。

 一瞬、その影が重なるのを感じたよ。

「分かりました。貴方の派閥に加わります。ですから上げて下さい」

「本当ですか?」

「ええ、本当です。もちろん、妙な条件などなければ、ですが」

「ありません。断じてありません」

 呟いて、頭を上げたリチャードさんが、数歩をこちらに近づいた。

 そこはゴッゴルちゃんの読心圏内である。

「り、リチャードさん」

「私の伝えたいところは、貴方の友人から確認してください」

「……分かりました」

 やっぱりエステルちゃんのパパだよ。

 あの子は絶対にこの人の血を色濃く受け継いでいるわ。

 これはもう間違いないだろう。

「ロコロコさん」

「嘘は言っていない」

「先程の件については」

「……酷く怯えている」

「そ、そうですか」

 当人が主張する通り確認させて頂けば、コクリ、傍らに頷いたのが褐色ロリータ白髪系。まさか、今この状況で彼女が嘘を付くことはないだろう。となると、一連の主張は言葉通りのものなのだろう。

「分かりました。リチャードさん」

「ご理解いただけましたか?」

「ええ。ですから早急に、数歩ばかり後ずさって下さい。彼女の力は一時的なものではありません。本人の意志に関わらず常に働き続けます」

「それはまた随分と強力ですね」

 小さく頷いたところで、指示通り身を退けるエステルちゃんのパパ。

 先程と同じ位置まで移動である。

「しかし、タナカさんはどうなのですか? 今も傍らに立っていますが」

「私は、まあ、その……色々と諦めておりますので」

「…………」

 あまり喜ばしくない事実を、それでも渋々とお伝えさせて頂く。

 万が一にもゴッゴルちゃんが、自分以外の誰かに懐柔されたら、多分、色々と終わってしまうだろうな。そう考えると彼女の身柄は、実は自身にとって非常に重要なところにあるのではないか、なんて思った。

 これはもう、オチンポ奴隷化でメロメロにゾッコンラブさせるしかないよな。

「……読まれていると意識すると、そういうの増えるね」

「自分でも理解しているので、いちいち突っ込まないでください」

 この子、段々と慣れてきてないか?

 それともこれ以上は止めてくれというアラートだろうか。

 まあ、どっちでも良いや。

 意識するとこっちの精神がヤラれてしまう。

「貴方に対して搦手を取ることは藪蛇であるのだと、前回と、そして今回とで、十分に理解致いたしました。だからこそ、今後は真正面から、こうしてお話をさせて貰えたらと考えております」

「フィッツクラレンス公爵にそう仰って頂けるとは恐縮です」

「ありがとうございます。タナカ男爵」

 今一度、深々と頭を下げてみせるエステルちゃんのパパだった。

 しかしである、その顔が上がり、続けられたところは語気も強く。

「ただ、娘に関しては、一歩引いて下さい。これだけは譲れません。それでも娘を、エリザベスを欲しいと言うのであれば、私はこの場で貴方に立ち向かいます」

「え、ええ。それはもちろんですとも……」

 完全に父親の顔だった。



◇◆◇



 リチャードさんとのトークが一段落したところで、話題の中心はゴッゴルちゃんに移った。事前に知っていた魔道貴族やロリゴンは別として、ゴンちゃんやノイマン氏、それにソフィアちゃんにはご紹介しなければなるまい。

 また、ドラゴンシティにおける彼女の住まいも確保しないと。

「改めて皆さんにご紹介します。ハイゴッゴルのロコロコさんです」

「……どうも」

 先程に同じく、ペコリと頭を下げるゴッゴルちゃん。

 人の位置取りは先程までと変わらず、自分と彼女が出入口付近に立ち、これを部屋の中に位置する面々が眺める形だ。

 ちなみに一番遠いところにいるのが、デスクの椅子に腰掛けたソフィアちゃんである。その正面にソファーが向かいがけで二つ並んでおり、皆々はその周辺に位置している。そこから更に数メートルを隔てて我々だ。

 クリスティーナはゴッゴルちゃんが出入口付近に立っている都合、室内に入れず、少し離れた廊下で地団駄を踏んでいる。

「当面、こちらで一緒に暮らすことになったのですが、如何せん彼女は特別でして、現在は封鎖している西区画の一部を彼女の住居に当てようと考えております」

「それは構わねぇけど、飯とか風呂はどうするんだ?」

「……たしかに、そのあたりは問題ですね」

 ゴンちゃんからの鋭いご指摘。

 まさかずっと閉じ込めておくわけにもいかない。

「そうですねぇ……」

 自分が配膳の上げ下げから、お風呂の入浴サポートまでするしかないか。

 特に後者を重点的に行いたい気分だ。

「住居は不要。適当にこの街の外で暮らす」

「ですが、周囲には碌に集落もありませんよ?」

「暗黒大陸と比較すればなにもかもが容易」

「……まあ、それはそうかも知れませんが」

「なにか問題が?」

「…………」

 たしかに、彼女に任せたほうが、こっちであれこれとルールを敷くより上手くいきそうな気がする。なにせ相手は、我々とは比較にならないほど、長いこと自らの力と向き合ってきたわけだから。

「分かりました。細かいところはロコロコさんに一任しましょう」

「おいおい、本当にそれで大丈夫かよ?」

「彼女には彼女が読んだ全てを他言しないよう、強くお願いしております。もしも仮にその約束が破られた時、最初に最大の被害を被るのは私になります。ですから、どうか信じてやっては貰えませんか?」

「ま、まぁ、アンタがそう言うなら、俺は構わねぇけどよぉ……」

「いいや、私も少しは取り決めを作るべきだと思うぞ、タナカ」

 ゴンちゃんに続いて、ノイマン氏からも意見が飛ぶ。

 二人は街作り、運営に関しては大した才覚を誇る。

 流石にこれを無視して押し通す訳にはゆくまい。

「では、街の出入りに関して、敷居を設けるようにしましょう」

「そうして貰えると助かる。要らぬ火種を作らなくて済む。ゴッゴル族の有効性は今し方のやり取りを確認すれば、十分に納得のいくものだ。そこから先はタナカ、貴様のやり方次第だろう」

「そうだな。それなら俺たちも、多少なりとも安心できるわ。俺だけならまだしも、仲間連中にはゴッゴル族に良くない感情を抱くヤツがいるかも知れねぇからな。一応、その辺りは近いうちに確認しとくけどよ」

「承知しました。ご意見ありがとうございます」

 そうした感じて、粛々とゴッゴルちゃんの身の上に関するあれこれは決まっていった。こと街の運営に関しては彼ら二人が多くを担っている。言うことを聞いておいて、得をすることはあっても、損をすることはないだろう。

 良かった、どうやら受け入れて貰えそうだ。

 なんて考えたところで、廊下の向こう側からドスの効いた声が響く。

『お、おいこら、いい加減に私を部屋に入れろ』

 ロリゴンだ。

「そうですね。すみませんでした」

 流石にこれ以上の意地悪は可哀想なのでやめておく。

 怒りつつも泣きそうな感じが前立腺を刺激する。

 ゴッゴルちゃんを伴い、少しばかり廊下を先に歩んだところで、颯爽と駆け足、クリスティーナは執務室へと飛び込んだ。これを追いかける形で、再び部屋の出入口にまで戻ると、ヤツはソフィアちゃんの正面にあるデスクの上に腰を下ろしていた。

 一番に奥まった場所だ。

 どんだけ心を読まれるのが嫌なんだよ。

 いや、最高に嫌だろうけどさ。

「タナカさん、こちらのお嬢さんは……」

 自然とリチャードさんの意識がロリゴンに向く。

「ああ、そう言えばご紹介がまだでしたね。そちらがこの街を治める町長となります。領主の私の代わりとして、日々を働いてくださっています。ちなみに彼女の後ろに腰掛けたメイドさんが、町長代理です」

『ちょ、町長のクリスティーナだっ! どうだっ!』

 未だ町長という役職を用いるに差し当たり、腰が引けている。そろそろ馴染んでくれても良いと思うのだけれど。ただ、それでも胸を張って見せる仕草は極めてラブリーだ。ワンピースの薄い生地に浮かんだ乳首が可愛い。

「なるほど? しかし、それにしては随分とお若いようですが」

 流石の公爵様もこれには首を傾げる。

 そこへ間髪置かずにツッコミを入れるのが問題の町長だ。

『なんだ? ニンゲン如きが私を相手に歳を語るのか?』

「随分と、元気の良いお子さんですね。もしかしてタナカさんの?」

「いいえ、彼女はエンシェントドラゴンです。おそらく今のペニー帝国においては、彼女より力のある者は存在しません。街の代表として、これほど頼り甲斐のある手合はいないでしょう」

「え、エンシェントドラゴン、ですか?」

 自然とパパさんの視線は魔導貴族へ。

 そこには数多の問題の回答がある。

「貴様の疑念は尤もだ、リチャード。しかし、ヤツの言葉は正しい」

「それはまた、な、なんともはや……」

 粛々と応える魔道貴族とは対照的、酷く驚いた表情となるパパさん。

 こればかりは致し方なし。

「もしもこちらの街に関して、なにかご用命がありましたら、彼女にご連絡をいただけると幸いです。その際には後ろに控えるソフィアさんが細かなところをサポートして下さると思いますので、併せてご紹介させて頂きました」

「分かりました」

 短く呟いて、席を立ったリチャードさんがクリスティーナに向き直る。

 自分の名前が出されたことで、ソフィアちゃんのガクブルモードがスイッチオン。今にも泣き出してしまいそうな顔で、脇の下を粛々と湿らせるメイドさん可愛い。

『……なんだよ? ニンゲン』

「私はリチャード・フィッツクラレンスという者です。エンシェントドラゴンのクリスティーナさん、でしたね。色々とご迷惑をお掛けすることがあるとは思いますが、どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます」

『申し上げる? そ、そうか。まあ、この私の下にわざわざ足を運んで、申し上げるというのであれば、よろしくしてやらないこともないなっ! なっ!』

「ありがとうございます、クリスティーナさん」

 相変わらず人の発言の細かいところ、よく見てるよな、ロリゴン。

 反応も踏まえて凄く愛らしい。

 たぶん、リチャードさん的にポイント高いような気がする。

『ここは私の街だからなっ! その男にばかりあれこれ言うなよ? 話とかあるのなら、ちゃんと私のところに持ってきて、それからだからな? いいな?』

「ええ、承知致しております」

 出会って間もない手合に町長扱いされたのが嬉しかったのだろう。人見知りなヤツにしては、珍しくも初対面のニンゲン相手に機嫌を良くして思える。

 今後とも二人が良い関係でいてくれれば、こちらとしてもありがたい限りだ。

 これで相手が肝っ玉の小ささに定評のあるゾフィーちゃんのパパあたりだったら、色々と面倒なこととなっていたに違いない。伊達に祖先が人外ファックしてないよな、フィッツクラレンス。その尖った実力至上主義は見ていて心地が良い。

 挨拶まわりが一段落したところで、ふとリチャードさんの視線が動いた。

 向かった先はゴッゴルちゃん。

「しかし、触れずとも悟れるゴッゴル族、ですか」

 物欲しそうな視線だ。

「言っておきますが、貸出はしませんよ?」

「駄目ですか?」

「彼女は私の大切なパートナーですので」

 嘘も方便というやつだ。

「なるほど」

「ところで、リチャードさん。差し当たっては今後の予定なのですが……」

 これまでのやり取りを鑑みるに、一度、首都カリスへ向かう必要が出てくることだろう。自分も王様に報告したいことがあるので、ここは彼と共に里帰りするのが良いと思う。

 なんて考えたところ、不意に背後から声が。

「おい、そんなところで立っていないで、中に入ったらどうだ?」

「おや、エディタさん」

 パジャマ姿のエディタ先生とエンカウント。

 我々の背後に立った彼女は、なにやら不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。夜も遅い時間、少し賑やかにしてしまっただろうか。だとすれば、これは悪いことをした。

「お騒がせしてしまい、すみません」

「別にそういう意味じゃなくてだな……というか、なんだ? このゴッゴル族は」

「あ……」

 エディタ先生、ナチュラルにゴッゴルちゃんの圏内へ入ってきた。

「しかも随分と年若い娘ではないか。そもそもここ数日ばかり、どこへ出かけていたのだ? わ、私の著作を読んで、感想をくれるという約束は……」

「あ……」

 そうだ、そっちも完全に忘れていた。

 エディタ先生から預かった紙面は、今も自室で手付かずである。本当であれば、ドルツ山に赴いた日の晩にでも確認するつもりであった。それが魔法陣だのゴッゴルだの魔族だので、今日の今日まですっかり頭から抜け落ちていた。

「も、申し訳ありません。直ぐに読ませて頂きます」

「……ふん」

 やばい、エディタ先生が拗ねちゃった。

 ただ、それ以上にヤバイのが、今の先生の位置だ。

「すみません、エディタさん、このような状況で大変に恐縮なのですが、我々から早急に距離をおいては貰えませんか? できれば槍が届かないほどの間隔で」

「どういうことだ? ……まさか、に、臭うのか? わ、わわ、私がっ」

「いえ、それが……」

 速攻で脇の下をクンカクンカとやり始める先生可愛い。

 ちなみに臭いのは、どちらかというとソフィアちゃんだ。

 まさか彼女にだけ、ロコロコちゃんを紹介しない訳にはいかない。どのような反応が返されるか、行く先が手に取るように分かる。それでも自分は先生に今の先生の置かれた状況をご説明しなければならない。

 ということで、皆々の手前、ゴッゴルちゃんの特殊能力をご説明させて頂いた。

 貴方の心は丸裸となりました云々。

 結果、先生のメンタルは間髪置かずにブレイクである。

「なっ、なっ、なっ……」

 驚愕に見開かれた瞳が、ゴッゴルちゃんを捉える。

 顔色は真っ青だ。

 え、マジで? それマジで? 言わんばかり。

「すみません、私のミスです。エディタさん」

「そんなっ、よ、よむ、心の内側を? 今の心を?」

「残念ながら」

「…………」

 固まったまま反応がないエディタ先生。

 仕方ないので、ゴッゴルちゃんに先生をご紹介でも。

「ロコロコさん、こちら私の錬金術士の先生であるエディ……」

「ぬぉぉぉああああああああああああああああああっ!」

 紹介の言葉も終わらない内に、先生の口からは絶叫。ロリゴン邸の隅から隅まで、いいや、屋外にまで響くほど、とても大きな声だった。およそ女性が上げるものとは思えない、野太く力強い悲鳴の連なり。

 同時に踵を返して、彼女は我々の下より走り去る。

 今まさにやって来ただろう廊下を、ズダダダと足音も大きく全速力だった。

「…………」

「…………」

 これは本格的にヤバイぞ。

 どうしよう。

 エディタ先生に嫌われてしまったら、どうしよう。人生の楽しみの三割が失われるにも等しい。先生のサービス精神旺盛なパンチラこそ日々の潤い。若返りの秘薬とか、もうどうでもいいから、まずは先生と仲直りを。仲直りをしなければ。

「すみません、ちょっと失礼します」

 大慌てでその後を追いかけることとなった。

 飛行魔法使っちゃうわ。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 急に泣き出してしまったエルフさん。その背を追いかけて、タナカさんが飛んでいってしまいました。更に何故か、タナカさんを追いかける形で、ロコロコさんもまた、飛んでいってしまいました。

 後に残された私たちはどうすれば良いのでしょうか。

「あ、あの、クリスティーナさん……」

 とりあえず、町長であるドラゴンさんにお伺いを立ててみます。

『ふんっ、だからゴッゴルなど連れてくるなと言ったのだ!』

 私のボソボソとした声は彼女まで届きませんでした。

 ふてぶてしくも呟かれたところは、きっと、タナカさんに向けてでしょう。

『ゴッゴル族など不要だ。必要であれば私がこの手で全てを吐かせてやる』

 デスクの天板に腰掛けたまま、足など組んで語っていらっしゃいます。

 とても偉そうです。

 あ、でも今は事実上、本当に偉いのですよね。町長ですし。

「…………」

 ところで、書類が幾枚か、彼女のお尻の下敷きになっています。汚れたり破れたりしたら大変です。回収すべく両手で慎重に引っ張ってみます。しかしながら、ドッシリと体重が乗ってしまっているようで、一向に取れません。

 あぁ、どうしましょう。書類、どうしましょう。

「ひとまずこの場はお開きとしませんか?」

 そうこうするうちにリチャード様が仰られました。

 賛成です。

 私もそれが良いと思います。

「んじゃ、すみませんが、俺はこれで失礼させて貰いますぜ」

「それなら私も失礼させて頂きます。他に仕事がありまして」

 いの一番、そそくさと部屋を後にされたのはゴンザレスさんでした。これはノイマンさんから伺ったのですが、なんでも貴族というものが、あまり好きではないのだそうです。そんな彼に習うよう、傍らにノイマンさんも続かれました。

 美形トップツーが退場です。

 悲しいです。

 私も一緒に連れて行って頂きたかったです。

 一方でソファーに腰掛けたまま、親しげに言葉を交わされるのが、ファーレン様とリチャード様です。どうやらお二人は以前からお知り合いのようですね。貴族としての付き合いというよりは、より友人のそれに近しく思われます。

「リチャード、貴様、今晩はどうするつもりだ?」

「こちらは宿場宿としても機能していると確認しておりますが」

「であれば私と共に来い。部屋と風呂を案内しよう」

「助かります、ファーレン卿」

「貴様のところと比較しては、家畜小屋のように感じるかもしれないが、これで風呂の具合はなかなかのものだ。きっと満足するだろう」

「そう言えば、一度も浸かったことがなかったのですよ。楽しみですね」

 そんなお二人に、あぁ、ドラゴンさんが噛み付かれました。

『おいこら、家畜小屋ってなんだ?』

 ジロリ、黄金色の瞳がファーレン様を睨みつけます。

 かなり怖いです。

 見た目可愛らしい彼女ですが、未だに私は恐怖のほうが先ん立ちます。

 きっと他の方も同じような心持ちなのではないかと。

 ドラゴンさん、割と細かいところをよく聞いていらっしゃるのですよね。

 耳が良いみたいです。

「い、いや、ちょっとした言葉のあやだ。不快に思ったのであれば謝罪する」

『本当か?』

「ああ、本当だ。すまなかった」

『ふんっ! ここの良さが分からないなどと、貴様らの程度が知れるぞ! 程度が! 以後は万が一も、そのような失言を繰り返さないことだなっ! 分かったかっ!?』

「う、う、うむ。まったくもってそのとおりだ」

 ドラゴンさんに言い負けるファーレン様、なんかちょっと可愛いですね。

 新鮮な感じが凄くいいです。グッときました。

 そうしたお言葉が響いたのでしょうか。お二人もまたゴンザレスさんやノイマンさんに続いて、ドラゴンさんに追い立てられるよう、部屋を出てゆきました。

 ペニー帝国きっての大貴族様が、所在なさ気に場を後とする姿は、えぇ、我がベーコン家に末代まで語り継いでも良いほどの衝撃でした。

 驚愕です。

 ドラゴンさん凄いです。

 そうした具合に、あれやこれや、段々と人は減ってゆきました。そうして、最後に残ったのは私と、どうしたことでしょう、ドラゴンさんです。

 思えば二人きりになるのは初めてです。

 かなり怖いです。

 正直、早々にお別れしたいです。

 そして彼女のお尻の下には書類が挟まれたままです。

「あ、あの……」

『なんだ?』

 お尻を上げて欲しいです。

 書類が、書類が大変なことに。

 彼女が身動ぎするに応じて、ちょっとシワとか寄って来ちゃってます。

「もう夜も遅いので、そ、その、お風呂などに向かわれては……」

 おっかなびっくりご提案させて頂きます。

 タナカさんが戻っていらっしゃいました都合、ドラゴンさんも私というメイドを無下に扱うことはないと信じて、精一杯の主義主張にございます。

『あぁ、たしかに夜も遅いなぁ』

「で、ですよねっ!」

『汗をかいたから、もう一回、風呂に入るのがいいな』

「はい! 良いと思います」

『そうだ! オマエも一緒に来い! たまには私の背中を流させてやろう。あの男が言うには、オマエは町長である私の代理らしいからな。町長としての心意気というやつを、ちゃんと教えておかないとならないと思う! どうだ! 分かったな!?』

「…………」

 タナカさん。

 なんですかこれ。

『どうした?』

「は、はいっ……」

『よ、よしっ』

 平民風情には贅沢な欲求だとは思いますが、今は切に一人の時間が欲しいです。



◇◆◇



 エディタ先生の背を追いかけることしばらく。

 辿り着いた先は、ロリゴン邸に所在する客間の一室だ。当然のようにドアは鍵が掛けられており、これを開くことは叶わない。ろくすっぽ人の気配が感じられない向こう側へ、閉ざされた戸口の先から語りかけるのが精々である。

「あ、あの、エディタさん……」

 なんかこう、ラブコメっぽい感じが凄くいい。失意のヒロインを後ろから追いかけるという主人公的シチュエーションが、今まさに自分という立ち位置とシンクロして、青春を後追いしている気配に充実感を感じております。

「彼女は、酷く悲しんでいる」

「……はい」

 傍らより、ゴッゴルちゃんから極めて的確な助言を頂戴した。

 まったくもってそのとおり。今は自身の満足より、エディタ先生の心中を優先するべきだろう。流石はゴッゴルちゃん。その一言だけでも、連れてきて良かったと思うほどだよ。いやもう本当に的を射た意見をありがとう。

 ただ冷静に考えると、全ての原因は君なのだけれどさ。

「エディタさん。どうか、ここを開けては下さいませんか?」

 こんなまどろっこしい展開、まさか自分が経験する羽目になるとは思わなかった。勘違いから自らの殻に篭ってしまった彼女の下へ、これを解きほぐすべく向かった彼氏の気分で全力投球させて頂こう。

「エディタさっ……」

 再三に渡り名を読んだところで、ドスン、ドアが震えた。

 枕でも投げつけたのだろうか。

 どうやら一人芝居にならず済んだよう。ちゃんと先生はご在室の様子だ。

「ロコロコさん、どんな具合でしたか?」

「…………」

 問うてみたところ、お返事はない。

 読めているのだろうか、読めていないのだろうか。

 それさえも定かでない。

 多分、彼女は彼女で読めるが所以の気遣いがあるのだろう。だからこそ応じない。ありがたい限りだ。彼女の口の堅さは自分も信じている。信用している。そんなゴッゴルちゃんの心意気が、今この瞬間、最高に逆レイプされたい。

 エディタ先生の部屋の前で逆レイプされたい。

「……しない」

「分かってますから」

 しかし、そうなると、これはどうしたものか。こういうのはヒロインが主人公のこと愛しているからこそ発生するイベントだ。そうなるとエディタ先生、もしかして、もしかして、もしかしちゃったりするのだろうか。

「…………」

 これは想像力を掻き立てられる事案だろ。

 もしかしてハネムーンしちゃう系かもですわ。

「……それはない」

「なるほど。ご忠告ありがとうございます」

 畜生、ゴッゴルちゃんめ。

 この子に言われると、説得力が段違いだから萎えるわ。

「っていうか離れて下さい。やっぱり読んじゃってるじゃないですか」

「…………」

 コクリと小さく頷いて、ゴッゴルちゃんはエディタ先生の部屋から距離を取った。

 そうしたやり取りが内側にまで伝わってしまったようで、ドアの向こう側からは、ドスン、バタン、慌ただしげに人の移動する気配が伝わってきた。

 きっと廊下から距離を取るよう逃げたのだろう。

 何事にも好奇心旺盛なエディタ先生のことだ、ドアに耳とかくっつけて、外の様子を窺っていたとしても不思議ではない。

「ということで、私はエディタさんの説得に向かいます。ロコロコさんはこちらで待っていて下さい。面倒だとか、時間の無駄だとか、いろいろと思うかもしれませんけれど、私にとっては非常に大切なことなので」

「……分かった」

「ありがとうございます」

 褐色ロリータに断りを入れて、ドアノブを握る。

 もちろん鍵は掛かったままだ。

「エディタさん、ここを開けては貰えませんか?」

 試しに問いかけてみる。

「エディタさん? いらっしゃいますよね?」

 何度か言葉を掛けてみても、反応は帰ってこない。

 悲しいな。

 仕方がないのでドア越しのお話となる。

「ロコロコさんについては、本当にすみませんでした。ただ、彼女は自身が読んだことを決して口外いたしません。そこは強く約束をしています。ですから、どうか、今回のことは水に流して貰えませんか」

 遺跡からドラゴンシティへ戻る移動の最中、ちゃんと約束をしたのだ。

「……それではゴッゴル族と共に在る意味がないだろうが」

 ボソリ、内側から声が返された。

 仰るところは尤もだ。

「たしかにそうですね。仕事の上で必要な場合、今回のように貴族の方とやり取りをする際には、サポートして頂くかも知れません。しかしながら、少なくとも仲間が困るようなことは絶対にしませんし、私がさせません」

「…………」

「もしもそれが原因で不和が生じるようであれば、私が彼女をどうにかします」

 つい数刻前、マゾ魔族が語ってみせたところである。

 これだけ強く念じておけば、他人との会話に飢えまくっているゴッゴルちゃんのことだ、滅多な行いはしないだろう。約束を破ったところで、彼女にはデメリットこそあれど、メリットなど何一つないのだから。

「どうでしょうか?」

「……貴様はどうなのだ?」

「私ですか?」

「よ、読まれているのだろう?」

「ええまあ、そうですね。今も実際に読まれています」

「…………」

 相手の言わんとすることは理解できる。

 人として卑しいところを全て見られてしまった都合、これ以上は開き直るしかない。そして、彼女を出元とした拡散を防ぐべく、全力で取り組むべくが自身に取り得る最善だ。万が一にもゴッゴルちゃんの口が滑った日には、もう、どうしよう。

 いかん、考えると不安になってきた。

 エディタ先生の不安が伝染ってきた。

「私も不安ですよ。ですが、彼女には恩義がありますので」

「……恩義? それほど大層なものなのか?」

「彼女には危ないところを助けられました。これを一方的な都合で無かったことにはしたくありません。もちろん、彼女自身が私の思考に対して嫌悪感を抱いて離れていくというのであれば、これを引き止めるようなことは決してしませんが」

 グリーンシルフの一件を引き合いに出してトークを継続。こう言えば説得力もそこそこ出るだろう。他の誰でもない、エディタ先生だからこそ通じるものがあると信じておりますとも。

「……そ、そうなのか」

「ええ、そうなのです」

 ということで、別に離れてくれても構わないんだぜ、ゴッゴルちゃん。

 チラリ、褐色ロリータの反応を伺う。

 が、微動だにせずジト目に見つめてくれる彼女の会話飢えは本物だ。

「ご理解いただけましたでしょうか?」

「……頭では、理解した」

「ありがとうございます。とても喜ばしいです」

「しかし、だ、だからといって、それを受け入れろなどとは……」

「いえ、彼女には街の隅の方に家屋を用意するつもりです。基本的には私以外、立ち入りを許可するつもりもありません。ですので、これ以上をエディタさんが、心を読まれるようなことは起こりません」

「…………」

 ゴッゴルちゃんには悪いけれど、それくらいは必要だろう。

 やっぱり誰しもプライベートは大切だろうし。

「どうでしょうか?」

「そのような対応で、相手は納得しているのか?」

 そう言えば確認してなかった。

 どうなんだろう。

 距離を置いて立つ褐色ロリータへ、再び視線をちらり。

「……かまわない」

 よし、言質は取ったぞ。

 彼女的には住居が暗黒大陸からペニー帝国へ移ったに過ぎないから、まあ、そう大した違いではないのだろう。周囲環境の改善と衣食住の充実を鑑みれば、プラスはあってもマイナスは一つも見つけられない筈だ。

「納得しています。問題ありません」

「…………」

 ということで、これでどうだろう。

 祈るような気持ちでドアの向こう側に意識を向ける。

「私はエディタさんと不仲になるのが辛いのです。どうか、許しては貰えませんか? 今後とも仲良くやってゆけたらと、強く願っています。すぐにとは言いませんから、その美しいお顔を私に見せて頂けたらと」

 ついでにそこはかとなくプロポーズなど織り交ぜてみる。

 こういう状況じゃないと、真面目にアプローチする機会なんてないしな。

 つい今し方のゴッゴルちゃん曰く、望みは極めて薄いみたいだけれど、それでも努力は忘れたくない。いつの日か、我が息子が十分に経験を詰んだあかつきには、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

「わ、わわわ、分かった! 許すっ!」

「本当ですか? ありがとうございます。とても嬉しいです」

「……ふ、ふんっ」

 最後は即答だった。

 良かった。

 無事に承諾を頂戴したぞ。

 エディタ先生と仲直りできたの凄く嬉しい。

「慌ただしくなってしまい申し訳ありませんが、先ほどのような事故が再び起こる事態は防がなければなりません。矢継ぎ早となり大変に恐縮ですが、私は彼女のベッドを用意しに向かおうと思います」

「…………」

「エディタさん?」

「……か、勝手に行けよ。いちいち、私に報告なんて、いらないだろっ」

「すみません。それでは、今日のところはこれで」

 無事に金髪ロリムチムチ先生と和解である。

 次はゴッゴルちゃんの今晩の宿を用立てなければ。
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