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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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錬金術士エディタ 四


 首都カリスからタナカ男爵領に戻って数日が過ぎた。

 その間にフィッツクラレンス家からは、これといって何のアプローチもなかった。音沙汰なしというやつだ。使者を乗せた早馬はおろか、手紙の一つさえ届くことなく、日々はのほほんと過ぎていった。

 仮に自分が逃げ出して直後に動き出したのなら、既にこの街まで手が及んでいる筈だ。リチャードさんは即断即決の人である。にも関わらず反応がないということは、別れ際の脅しが聞いている証拠だろう。

 流石のエステルちゃんも、今回ばかりはパパさんに拘束されて思える。追いかけてこなかったのがなによりの証拠だ。首都にはゾフィーちゃんも一緒だし、この様子ならアレンも余程のことはないだろう。良い女に愛されている男は得てして長生きするものだ。

 ということで、面倒の一切合財を放り出して一休み。

 ここ数日は他にやることもなく、ロリゴン宅の執務室で書類など眺めながら、メイドさんが煎れてくれるお茶をしばくのが日課だ。ちなみに当のメイドさんはと言えば、デスクに向き合って、なにやらカリカリとやっている。

「あれ? もしかしてお茶を変えました? ソフィアさん」

 今し方に入れて貰ったばかり。

 湯気を上げる一杯をズズズと啜ったところで、ふと風味の違いに気付いた。

「っ!?」

 声を上げたところで、机に向うソフィアちゃんの肩が、大仰にも震えた。

 ガタリ、膝がデスクの引き出しにでも当たったのか、音が鳴る。

「どうしました?」

「い、いえっ! なにも変えておりません! なにもっ!」

「そうですか。すみません、では私の勘違いでしたね」

「めめめ、滅相もないですっ!」

 どこか焦って思えるメイドさん。

 まあ、彼女がガクブルしているのはいつものことだ。

 これといって気にする必要はないだろう。

 麗らかな午後の一時いっとき、ソファーへと腰を落ち着けて、窓の外に街の光景など眺めながら、ゴクリゴクリ、美味しいお茶を頂く。

 すぐ傍らではメイドさんがお仕事をしていて、何気なく視線をそちらへ移せば、その身動ぎに応じてオッパイのぷるるん震える様子が窺える。

「…………」

 なんという癒し空間だろう。

 ずっとこうしていたい欲求に駆られる。

 理想的なおっぱいのある風景だ。

「……これは極めて落ち着きますね」

「え? な、なんでしょうか?」

「あ、いえ、なんでもありません。独り言です」

「は、はい」

 ソフィアちゃんの働くオッパイを眺めながら頂くお茶とても美味しい。こうした時間がずっと続けば良いのに。もしかしたらフィッツクラレンスの家と喧嘩して正解だったかもしれない。リチャードさんバイバイ。エステルちゃんバイバイ。

 そんなふうに思うくらい、圧倒的な癒やしを感じている。

 実は色々とやるべきことも溜まってきているのだけれど、あと二、三日くらいはゆっくりしても良いんじゃなかろうか。ここ最近、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、非常に慌ただしかったから。

「…………」

「…………」

 執務室にはソフィアちゃんがペンを動かす音が僅か響く限り。

 とても穏やかな時間だろう。

 交わす言葉も少なにお茶を頂くことしばらく。

 ゴクリ、ゴクリ。カリカリ、カリカリ。

 ゴクリ、ゴクリ。カリカリ、カリカリ。

 ややあって、カップの底が見えてようかという頃合のことだった。

 不意に勢い良く部屋のドアが開かれた。

「で、できたっ!」

 バァン、大きな音を立ててエディタ先生が登場だ。

 なにができたのだろう。

 自分との子供だったらそれ以上嬉しいことはないな。

 惜しむべくは未だに息子が新品未開封である点か。

「お部屋の外で会うのは久しぶりですね、エディタさん。どうしました?」

「本が書けたっ! ほ、本が書けたぞっ!」

「なるほど、そいつはめでたいですね」

 一仕事終えて興奮気味なエディタ先生かわいい。

 なにやら両手に紙の束を差し出してみせる。卒業証書を授与される学生みたいな感じになってる。恐らくはそれが原稿なのだろう。それなりに枚数がありそうだ。先生はちょっとした手順であっても、十分な枚数を投じて分かりやすく書く人だからな。

 おかげで名著揃いである。

「最初はやはり、お前に読んで貰うべきだろうと思って持ってきだっ!」

「よろしいのですか?」

「当然だっ! だから、さ、さぁ、読んでみてくれっ」

 差し出された紙の束、その一番上にはタイトルが記載されていた。

 曰く、私と共同研究

 マナポーションとかまるで関係のないラベリングが非常にエディタ先生らしくてグッドだ。むしろ共同研究できたことに悦びが迸って思える。肝心の成果物など、おまけだと言わんばかりだ。

「た、タイトルはあくまで仮だっ……」

 恥ずかしそうに顔を背ける金髪ロリータ。

 だったら最初からやらなければ良いのに、深夜のテンション的なあれがそれで、思わずやってしまったのだろう。普段は冷静沈着なのに、妙なところで勝手に自爆するのがラブリーである。

「別にこちらのままで良いのではないですか?」

「え? ……いいのか?」

「エディタさんらしくて素敵だと思います」

「だがしかし、それでは私ばかりが書いたようではないか」

「事実書いたのはエディタさんじゃないですか」

「いやだから、そ、そういう意味じゃなくてだな……」

 せっかく先生は自らの著作を私と何某かシリーズで揃えているのだから、ここは是非ともそのポリシーに則って頂けたら、先生のファンとしても喜ばしい限りである。いつかは書かせてやりたいものだ、私と乱交生中出し。

 とりあえず、頂戴した原稿はありがたく拝読させて頂こう。

「今晩あたりにでも、ジックリと読ませて頂きます」

「う、うむ、そうしてくれ。指摘とかあると嬉しい」

「はい」

 先生の著作物に指摘する箇所などないと思うけれどな。

 錬金術士を目指す一読者として、素直に楽しませて貰おう。

「ところでエディタさん。ついでと言ってはなんですが伺いたいことが」

「なんだ?」

「以前に聞いたグリーンシルフというのは、暗黒大陸のどのあたりに分布しているのでしょうか? 差し支えなければ教えて頂けるとありがたいのですけれども」

 若返りの秘薬を作成するのに必要な材料の一つとして挙がったのが、グリーンシルフの羽である。貴族だの領地開拓だのフィッツクラレンス家だの、その辺りの面倒が一段落したので、そろそろ本格的に若返ってみようかと考えた次第だ。

「っ、ま、まさか、向うつもりかっ!?」

「いつ機会が訪れるとも分かりませんから、一応は抑えておきたいなと」

「…………」

 こちらとしては、そう大した質問をしたつもりもない。事実、以前には彼女自身の口から耳とした事柄である。しかしながら、彼女にとっては少なからず事情が異なったようで、大仰にも反応してみせる。

 ありありと躊躇する様子が窺えた。

「いかがしました?」

「いや、な、なんでもない」

「もしも難しいようであれば、無理にとは言いませんが」

「グリーンシルフは暗黒大陸でも比較的浅い場所に集落を作る傾向がある。同大陸の生き物であるが故に相応の力を備えているが、性格は温厚で知性も伴う。通常のシルフと基本的には変わらず、そこまで危険のある生き物ではない」

「なるほど」

 グリーンシルフとやらには知性があるのか。

 交渉の余地がある点は非常にありがたい。

「私が確認したのは暗黒大陸の南部、沿岸部からほど近いところにある森だ。界隈に根を張った冒険者連中からは、シュイーンの森などと呼ばれていた。それなりに規模があって、グリーンシルフの他にも多くの生き物が小さな集落を作っている」

「シュイーンの森ですね。ありがとうございます」

 キーワードゲットだぜ。

「しかし、如何に浅いとは言え、暗黒大陸には変わりないのだから……」

 難しい表情でおずおずと、続くところを語らんとするエディタ先生。

 心配してくれているのだろうか。

 だとすれば、これ以上の喜びはない。

 ただ、そうした彼女の言葉を遮るよう、執務室のドアがノックされた。コンコンコン、木製の戸を叩く小気味良い音が響く。同時に廊下の側から届けられたのは、どこか耳に覚えのある男性の声だ。

「すみません、こちらにタナカ男爵がいらっしゃると伺ったのですが」

「はい、おりますが……」

「失礼してもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 随分と礼儀正しい。

 自身のみならずエディタ先生とソフィアちゃんの注目する先、ドアが開かれた。応じて姿を現したのは、あぁ、なるほど、どおりで覚えがある筈だ。ノイマン氏である。

「これはこれはノイマンさん、お久しぶりです」

「はい、お久しぶりですタナカ男爵」

 この人に敬語で挨拶されると、なんか背筋がゾクゾクするな。

 社畜の心が落ち着かない。酷く不安な気持ちになるぞ。

「いつからこちらに?」

「謁見の間で男爵とお会いしてから、翌日には発ちました」

「なるほど」

「つい今し方に到着したのですが、まさか先にタナカ男爵がいらっしゃっているとは思いませんでした。聞いた話では随分と魔法が堪能であるとのことで、やはり、普通に歩いた場合とでは違うものなのでしょうか?」

「そのようなものですね」

 飛行魔法云々は説明も面倒だし適当で良いだろう。

 頷いて応じる。

 それよりもこちらとしては、他に突っ込みたいところが多々。

「ところでノイマンさん、一つ良いでしょうか?」

「はい、なにかご用でしょうか?」

「エステルさんは偉そうなことを言っておりましたが、男爵呼ばわりは結構ですよ。ノイマンさんにそう呼ばれると、まだどこか前線に飛ばされるのではないかと、気が気でない気分になってしまいます」

「滅相もございません。貴族に方に失礼があっては……」

「今更じゃありませんか? 宮中に聞いたとは思いますが、私の身の上は非常に不安定なものです。フィッツクラレンス子爵がいつ心変わりするとも知れません。翌年にはまた平民となって、冒険者に戻って、ノイマンさんの下で働いているかもしれません」

「…………」

「だからという訳ではありませんが、以前と変わらない間柄であれたらと」

 感覚的はあれだよな、ほら、親会社から出向してきた後輩が、本社へ栄転、その数年後に上司として再び出向してきたような。今は自分が上司としての位置にある訳だけれど、なるほど、これは確かにやり難いと感じる。

 ノイマンさんは少し横柄なくらいがちょうど良い。

「……まあ、本人が良いというのであれば、私はどちらでも構わないが」

「ではそのような形でお願いします」

「分かった」

 すぐに元通り、態度から口調まで戻ってくれた。

「それで私はなにをすれば良い? 一応、首都での仕事は一区切りつけてきた。陛下からもタナカを助けるようにと言伝まで頂戴してしまった。少なくとも先の約束どおり、期限まではこちらで世話になるつもりだ」

「そういうことであれば、私と共に街の運営を行って頂けたらと。恐らく中央の役人であったノイマンさんの方が、この手の仕事は得意でしょう。色々とご教示して頂けたら、私としても非常に助かります」

「たしかに細々とした手続きは行っていたが、大局を判断するのは貴族の仕事だぞ? 最近の貴族は末端の手続きに限らず、なんでもかんでも役人に丸投げしてくれる。それでいて自分たちは仕事をしていると言わんばかり、大きな顔をするんだ」

 あぁ、こっちの世界でもマネージャー層ってそういうものなのな。

 やたらと会議や打ち合わせで予定表が埋まってる人っているよな。

「ちゃんと責任は持ちますので、その点に関しては都度振って貰えたらと」

「なら良いが……」

 王様にムチャぶりされたせいでノイマン氏がスーパー疑心暗鬼モードだ。

 とても辛そうな顔をしているぞ。ブラックな客先に常駐出兵されたソルジャーの帰還を感じさせる。同期は実家に帰った。先輩は飛び込んだ。後輩は病院のベッドだ。俺だけが帰ってこれた。デパスおいしい。そんな感じ。

 流石に可哀想なので、以後は出来る限り無茶のないよう工面したいところだ。

 本当はトリクリスに所在するのだという、宰相肝いりの謎プロジェクトに関して、軽く調査をして貰おうと考えていた。しかしながら、この様子だと流石に難しそうである。今は穏やかに街の運営など携わって頂き、そちらは自分の足で動くとしよう。

「当面、心身が休まるまでは休暇を取って下さって結構ですよ」

「っ……い、いや、働くぞ? 別に仕事をするのが嫌という訳では……」

「しかし疲れていらっしゃるようですから。首都でも無理をされたそうで」

 あの王様がわざわざ言うくらいだから間違いない。

 ただ、これに応えるノイマンさんはどこか必死だ。

「疲れているには違いないが、俺はまだまだやれる、やれるぞ!?」

「そうですか? しかし……」

「たしかに色々と無茶は言われたが、俺には養うべき家族がっ……」

 あぁ、勘違いさせてしまったようだ。

 申し訳ないことをした。

「すみません、別にノイマンさんをどうこうするというようなお話ではありません。ただ、本当に疲れているようですので、十日ほどゆっくり休んで頂けたらと思っただけです。幸い、ここには温泉など湧いておりますし」

「……本当か?」

「ええ、本当です」

「…………」

 真面目な顔で頷いて応じると、途端に押し黙ってしまうノイマンさん。恐らくだが自分が冒険者などやっていた時分にあれこれ無茶を押し付けたことに対して、少なからず思うところがあるのだろう。そりゃそうだ。

「あまり私から言うのは良くはありませんね。簡単にお伝えすると、この街の代表はクリスティーナという方です。そして、これを支えて下さっているのが、黄昏の団というクランのゴンザレスさんと、そちらに居らっしゃるソフィアさんです」

「た、黄昏の団っ!? あの者たちが貴族であるお前に靡いたのかっ!?」

「かなり無理をお願いしてしまいました」

「だとしても、黄昏の団のゴンザレスと言えば、今はなきアウフシュナイター家の嫡男だろう。あの家の最後を思えば、貴族のために働くなど、到底考えられるものではない。本当なのか?」

「すみません、私もあまり多くを交わした訳ではないので、詳しい事情は知れません。後日、改めて顔合わせの場を調整しますので、そちらでご確認して頂いても良いですか? クリスティーナさんに関しては、ちょっと捉まるかどうか分かりませんが」

「そ、そうか……」

 もしかしてゴンちゃんって結構苦労してきた人なのだろうか。

 ロリハーレムとか囲ってるから、あまり重たく考えたことなかったわ。一度、アウフシュタイナー家とやらを勉強したほうが良いかもしれない。ヤツは良い男だからな。この領地が水泡に帰しても、末永くお付き合いしたい相手である。

「しかし街の代表が留守というのは、なにか他に進めていることがあるのか?」

「いえ、そういう訳ではないのですが、如何せん自由奔放な性格の持ち主でして。ただ、この街を守るという意味では、これ以上ない方です。だからというか、少しばかり血の気が盛んでして、大変に恐縮なのですが、扱いには気を使って頂けると嬉しいです」

「……なるほど」

「もしも手に負えなくなったら、私に言ってやってください」

「会ってみないことにはなんとも言えないが、分かった。そのようにしよう」

「ありがとうございます」

 まあ、ここまで言っておけば大丈夫だろう。たぶん。

 ノイマン氏も中央で出世を妬まれるくらいに優秀だったのだ。恐らくは良い感じに動いてくれることだろう。ただ、心を壊してしまっては元も子もないので、当面は療養に専念して頂きたいところだが。

「それと仕事はボチボチで構わないと思いますよ」

「それは嫌味というものだぞ、タナカ」

「すみません。以後は気をつけますね」

 このぐらいの距離感、なんか良いな。

 同僚って感じだ。

「お手数をお掛けしますが、今後ともよろしくお願い致します。ノイマンさん」

「ああ、よろしく頼む」

 あとでゴンザレスにも紹介したほうが良いかもな。

 おう、そうしよう。

 歓迎会とかもやりたい。

 しかし、そうなると数日ばかり続いたおっぱい鑑賞生活も、本日で終了のお知らせだろうか。ノイマン氏に仕事をお願いした手前、自分がソフィアちゃんのオッパイばかり眺めている訳にはいかない。

 もう少し楽しんでいたかった。

「それでは早速ですが、私は他に仕事があるので失礼しますね」

 場の面々に挨拶を一つして、執務室を後とした。



◇◆◇



 今自分が持っている仕事で一番に優先順位が高いのは、やはり王様からの頼み事だろう。明確な期限は設けられていないけれど、まるで事情の知れない漠然とした案件であるから、なるはやで行動しておくに越したことはない。

 などと考えたところで、行うべきは宰相の隠しごとの特定だ。

 フィッツクラレンス子爵領のどこで何をしているのか。

「…………」

 ロリゴン宅を発って以後、とりあえず南地区の大通りを歩みながら、あれこれと考えを巡らせる。一口にフィッツクラレンス子爵領とは言っても、それなりに規模がある。当てずっぽうに行動しても成果は得られないだろう。

 さて、どうしたものか。

 せめてヒントの一つでも欲しいところだ。

 頭を悩ませながら歩んでいた。すると通りの向かう先から、見知った顔が歩んでくるのを発見だ。他の誰でもない、ゴンちゃんである。その周りには数名からなるロリとショタの姿が確認できた。いつだか垣間見たヤツのハーレムである。

「お? こんなところでどうしたんだ、男爵さまよ」

「ゴンザレスさん、これは良いところにいらっしゃいました」

 楽しそうな子どもたちの表情を鑑みるに、恐らく街を案内している最中なのだろう。大柄な彼の腕にしがみつく子がいたり、胸に抱きつく子がいたり、まったく、公衆の面前でイチャイチャと見せつけてくれるぜ。

 まさに人生のゴールとして相応しいところにあるよな。

「俺に用件か?」

「ええまあ、そのようなものです。とは言え、皆さんお楽しみのようですから、時間を改めて出直しますね。或いは町長の屋敷まで来て頂ければ幸いです」

「簡単なことなら今この場で話してくれても構わねぇぜ? もしも言いづらいっていうなら、アンタの言うとおり場を改めるけどよ」

「そうですね……」

 どうしよう。

 別に全てを全て話す訳じゃないから、まあいいか。

「一点だけ伺いたいのですが」

「おう、なんだ?」

「トリクリスの界隈で鉱山や水源といった、資源の類が見られる場所を教えて頂けませんか? 他に王宮の方が気を惹かれるような場所など、思い当たるところがあれば、そちらも併せて窺えると嬉しいのですけれど」

「おいおい、またなんか危ない話に首突っ込んでるんじゃねぇだろうな?」

「詳しいところは状況が落ち着き次第、改めて共有させて頂きますね。一応、私の方で片付ける予定です。ゴンザレスさんや黄昏の団の方々にご迷惑をお掛けすることはないよう、極力注意いたします」

「別にそういう意味で言ったんじゃねぇんだけどなぁ」

 頬をポリポリと掻きながら語るゴンザレス。

「しかし、資源っつっても、そう数がある訳じゃねぇぞ? そもそも規模のある領地じゃねぇからな。子爵領としては比較的小さい方だろう。ただ、プッシーと接している都合、貿易の類はそれなりに見込めるが」

「なるほど」

 宰相が国のトップを謀るくらいだから、希少な鉱物が取れる鉱山だとか、その手の利権問題かと思ったのだけれど、もしかして外れだろうか。まさか隣国と接している程度で、ああも躍起になるとは思えないのだけれど。

「それでも挙げるとすれば、トリクリスから西の方にあるドルツ山が、この辺りで一番に産出量の多い鉱山だな。今では掘り尽くしちまったみたいだけれど、昔は質の良いデニス鉱が取れるってんで、かなり賑わっていたらしいぜ」

「ドルツ山ですか」

 どこかで聞いた響きだな。

 ちょっと思い出せないけれど。

「他はこれと比較すると、どれも規模が小さくなっちまうな」

「なるほど、そうなのですね」

 というと、まずはそちらから確認するのが良いだろう。

 こういうのは候補を一つ一つ潰してゆくのが大切だ。地味な作業ではあるが、依頼人が依頼人であるから、人を雇って大掛かりに行う訳にもいかない。下手をすれば色々と押し付けられた上、トカゲの尻尾切りを喰らう羽目となる。

 ここは慎重にゆくとしよう。

「悪いな。あんまり大した情報もなくて」

「いえ、それでも私にとっては十分なものでした。ありがとうございます」

「そうか? なら良かったが」

「早速ですがドルツ山に向かってみようと思います」

「おう、行って来い。街のことは俺たちが面倒みててやるからよ」

「あ、それと中央で仕事をして下さっていた役人の方が、向こうでの仕事を終えてこちらに来て下さりました。ノイマンさんという方なのですが、もしもお会いしたら、ご挨拶をしておいて頂けると助かります」

「役人を雇ったのか?」

「フィッツクラレンス子爵の繋がりです」

「なるほどな」

「それでは慌ただしくなってしまい申し訳ありませんが、失礼しますね」

「なにをするつもりか知らねぇが、気をつけろよっ!」

「はい」

 ゴンちゃんの温かいお言葉に頷いたところで、飛行魔法により身体を空に浮かび上がらせる。まさか馬車に移動していては日が暮れてしまうから、このままドルツ山とやらまでひとっ飛びである。

 相手は鉱山だ。

 指定された方角に向かってゆけば、自ずとそれらしい場所に辿り着くだろう。



◇◆◇



 ドラゴンシティからフィッツクラレンス子爵領はトリクリスまで飛び、更にそこから先、ゴンちゃんに指示されたとおり、西に向かって延々と移動した。すると見えてきたのは、切り立った岩肌が印象的な山の連なりだ。

 この界隈にドルツ山とやらが存在するのだろう。

 少しばかり高度を落としたところで、その麓に家屋と思しき屋根の連なりを発見である。それなりに規模の窺える街だ。ゴンザレスが語ってみせたところ、往年は人で溢れたという話にも納得である。

「…………」

 ただ、それも今は昔の話、というやつ。

 空から眺めた限りではあるが、同所は酷く寂れて思える。決して人がいない訳ではないが、首都カリスと比較してはもちろん、トリクリスの街にも劣り、昨今であればドラゴンシティの中央広場よりも人口密度は低そうだ。

 なんというか、こう、あれだ。高齢化の進む地方都市の駅前広場的な。

「……あ、炭鉱っぽい」

 街から山側へ向かって伸びる道の先、建物も疎らとなった辺りで、山肌に開いた穴を発見だ。縁を木製の板に造られた二メートル四方ほどの口である。両側には手に槍を持った鎧姿の兵士が、左右に別れて並び立つ姿が窺えた。

 炭鉱の出入口だろうか。

 他にも同じような穴は、周囲に幾つも見受けられる。ただ、そこにだけ兵士の並び立つ姿が確認できた。廃山の穴全てに兵を配置するのはコスト的に難しいと頭では理解しつつ、何故にそこだけと疑問に思わないでもない。

 ということで、まずは確認に向かってみるとしよう。

「行ってみるか」

 同所に立つ兵であれば、なにかしら知っていることもあるだろう。

 思い立ったが吉日、飛行魔法を操って彼らの下に降り立つ。

「何者だっ!?」

「魔法使いかっ!」

 少しばかり距離をおいて着陸したけれど、少なからず警戒されてしまった。当然と言えば当然だ。取れるものも取れなくなった寂れた炭鉱へ、わざわざ空を飛んでまでやって来たとあれば、誰の目にも奇異に移る。

「すみません、少しお伺いしたいことがございます」

「……このような場所に何者だ?」

「怪しいヤツだな。やたらと平べったい顔をしおってからに」

 顔は放っておいてくれよ、顔は。

「つい先月にトリクリスを納めるべく首都カリスより参られましたフィッツクラレンス子爵、その使いのタナカと申すものです。訳あってこのようななりをしてはおりますが、一応、陛下より男爵の位を賜っております」

「だっ、男爵っ!?」

「なっ……」

 こちらが名乗るに応じて、兵二人の身体がピンと強張る。

 その姿を眺めたところで、貴族の挨拶がやたらと長くなる傾向にある理由を理解だろうか。自らの身の上を大きく見せる為には、あれこれと喋る必要があるのだ。やれ何々家の誰々さんと関係があるだの、そういう感じの。

 ベンチャー系スタートアップ代表や、繁華街で幅を効かせる不良の類が、やたらと肩書きを頭に乗せて名乗りたがるのと同じである。そう考えると少しばかり、自らの行いに切なさ感じてしまうな。

 これで名実ともに貴族の仲間入りか。

「この地を治めるべく、フィッツクラレンス子爵の名の下に、領地内の調査を行っております。こちらの炭鉱に関しましても、つい先日にその命が下されました。これより調査を行わせて下さい」

「い、いや、しかしあのっ……」

「こちらの炭鉱はっ……」

 途端、酷く困った表情となる兵二名。

 これはもしかして、一発目で当たりを引いてしまっただろうか。

 いやいやいや、そう容易に判断するのは良くない。過去、これほどまで容易に仕事が進んだ覚えがあるだろうか。いいや、一度足りともないな。当初、街へ入るにもプリズンブレイクする羽目となった。

 ここ最近はLUKの低下も著しいし、十分に注意してゆこう。

「貴方たちが誰かに仕えていることは理解しています。しかしながら、私もまたフィッツクラレンス子爵に、強いてはフィッツクラレンス公爵に仕える身の上です。ここは素直に通して貰えると幸いです」

「いや、お、おかしいだろう? 男爵がそのような格好をして……」

「そうだ、たしかにおかしいぞっ!」

 そうそうこちらの姿格好に突っ込みを入れてくる兵二名。

 やはり、ちゃんと貴族の格好をした方が良いのだろうか。

 今に着ている旅人の服の方が動きやすく、着心地も良いのだけれど。

「このような格好をしてまで訪れる理由があるのです。もしも疑問に思うのであれば、フィッツクラレンス公爵に確認して頂いても結構です。彼とは夕食に招かれて、食事を共にした間柄です」

「ぐっ、ま、また、そのような大きな口を叩いて我々を騙すつもりか?」

「公爵と食事を共にしたなどと、子供の嘘のほうがまだ信じられる」

 語るに応じて兵二人は手にした槍を向けてきた。鋭い切っ先がキラリ光っては、こちらに定められる。一歩を踏み込めば容易に胸を突ける位置取りだ。

 もちろんファイアボールで圧倒することは簡単である。いつぞやの魔導貴族と同様、ものの数秒と要しないだろう。鎧ごとトロリである。

 だが、ここでエステルちゃんの評判を落とすのも、面白くない。

「一つ貴方たちに提案があります。今ならばまだフィッツクラレンス子爵の下に着くことができますよ。こうして私という存在を向かえてしまった以上、遅かれ早かれ放逐されるだろう貴方たちであったとしても」

「なっ……」

「お、脅すつもりかっ!?」

「これは親切心からお伝えしています。私の主人であるフィッツクラレンス子爵は非常に心優しい聖女が如きお方です。要らぬ殺生を好みません。故に私もこれに従います。しかしながら、同時に子爵からの命令は絶対です」

 更に言えば、万が一ここがドンピシャだった場合、自分の行いが彼らから宰相側に伝わることは避けたい。口封じという手立ても考えられるけれど、流石に人としてどうなのよと思わないでもない。

 ということで勧誘だ。

「ぐっ……」

「だ、だったら……」

「ラジウス平原に向かい、そこで黄昏の団のゴンザレスという方に声を掛けて下さい。そうすれば決して悪いようにはしないでしょう。少なくとも末端だろう貴方たちをどうこうするような真似は行いません」

「ゴンザレス? まさかゴンザレスの知り合いなのか?」

 ゴンちゃんの名前に兵の片割れが反応した。

「はい。今は縁あって私のところで騎士団など努めて頂いております」

「……そう、なのですか?」

 あ、なんか突破したっぽい。

 少しばかり口調が厳かなものに変化だ。そうと分かれば、このチャンスを利用しない手はない。とことんマブダチをアピールしてゆこう。

「ゴンザレスさんのお知り合いですか?」

「知人が……黄昏の団にいる。昨年の寒い頃に入った」

「なるほど。ではその知人さんは、私と会っているかも知れませんね」

「ばかな! 黄昏の団が貴族靡くなどとっ……」

「ゴンザレスさんに会って確認しますか? 今、彼はラジウス平原にいます」

「…………」

 兵の一人が語り始めたところで、もう一人もまた、こちらのやり取りに注目だろうか。おかげで完全にペースはこちらのものだ。

 ここは一つ、強く出てみよう。

「通して貰えませんか? 断られた場合、こちらも手段を選びません」

「っ……」

 そこまでを述べれば、建前の上とは言え、この封建極まる世界で平民と貴族、これに抗うことはできなかったよう。二人は槍を下ろすと共に、一歩、身を引いて見せた。

 ただ、うち一人、今し方に語ってみせた彼が続ける。

「お、俺、前はトリクリスの城に務めていたんだ……」

「なんと、そうだったのですね」

「それが、上がすげ変わるからと言われて、それで、こんな場所まで飛ばされて、更に訳の分からない貴族の争いに巻き込まれてっ……」

 槍を持つ手がプルプルと震え始めた。

「また貴族は、だ、男爵様は、俺に命令をするのかっ!? 今度は牢屋の中かっ!?」

「え? あ、いえ、あの……」

 ちょっとちょっと、色々と溢れているぞこの兵士。

 流石に炭鉱勤務は堪えるよう。

「俺には家族だっているんだっ! それなのに、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、嫁は逃げてくし、子供だってグレちまうし、もう……もうっ!」

 マジかよ。想像した以上に重い話を聞いてしまったわ。

 こりゃ覚悟が決まってるな。

 グレてビッチになった娘が主催する乱交パーティーに参加したい。

「おい、どうなんだよっ!? 男爵様っ!」

「ちょ、おい、やめろってっ!」

 もう一人の兵士が止めに掛かる。

 羽交い締めというやつだ。

「いいかげんにしろっ! 相手を考えろっ!」

「これ以上、俺にどうしろってんだっ! あぁっ!?」

 これが末端兵の生き様か。

 個人的には結婚できただけ幸せだと思うけれどな。俺も末端兵でいいから、せめて適齢で結婚したかった。真夏のラブラブ汗だくセックスを経験してみたかった。そこから先の人生なんて、誤差だろ、誤差。

 とかなんとか、素直にお伝えしては、本当に槍先が動きかねない。

 適当なところで宥めなければ。

「安心して下さい。貴方は牢屋には行きません。すぐにとは行きませんが、私からフィッツクラレンス子爵に掛けあってみましょう。トリクリスの城に戻りたいのであれば、それも不可能ではないと思います」

「ほ、本当かっ!?」

「ええ、本当です」

「……そ、そうか」

「しかしながら、それもこれも私がここを通れたらの話です。私がフィッツクラレンス子爵から信用されないことには、続くところ貴方とのお話も叶いませんからね。どうでしょう? 通しては貰えませんか?」

 ジッと相手の目を見て話しかける。

 相手は早々に折れた。

 今まさにブレイクしそうだった兵の一人が、もう一人に問いかける。

「お、おい、俺は、俺はこの男爵さまを信じたい」

「相変わらず現金なやつだな? まあ、俺はどっちでも良いけれどさ」

 応える側はやれやれだと言わんばかりに応じて頷く。

 こちらは相棒と異なり、随分と人生に達観して思える。

 ただし続くところ、こちらを見つめて一言を忘れない。

「しかし、そういうことなら男爵様、どうか自分にも金一封ばかり頂戴できたらと」

「その程度であれば構いませんよ」

 分かりやすい手合で助かった。

 懐から銀貨を数枚ばかり手渡してやれば、満面の笑みに頷いて応じた。

「どうぞタナカ男爵閣下、お通り下さいませ。わたくし今後は、フィッツクラレンス家の為に身を粉にして働かせて頂きます。フィッツクラレンス公爵万歳、フィッツクラレンス子爵万歳、タナカ男爵万歳」

「ありがとうございます」

 良かった、無事に入場できそうだ。



◇◆◇



 兵に見送られて向かう穴の中。

 炭鉱の内側はランタンの明かりが消されており真っ暗だった。これに代えてファイアボールを向かう先に浮かべること、松明の如く。幅高さ共に二メートルばかりの薄暗がりをゆっくりと、慎重な足取りに歩んでいく。

「…………」

 モンスターの類が出るかも知れない。

 注意をした方が良いだろう。

 などと、当初こそ身を強ばらせての進行。しかしながら、十数分ばかりを歩んでも、取り立てて変化は見られなかった。ただ延々と穴が続いているばかりである。途中で枝分かれなどしているけれど、それ以外の相違は見られない。

 あまりにも代わり映えしない光景であって、尚且つ坑道という狭っ苦しい空間が相まれば、流石に不安となってくる。もしも迷子になったら大変だろう。一応、照明とは別のファイアボールで、足元や壁を溶かしながらマーキングを行っているけれど。

 ただそれでも、一度は外に出て休憩しようかな、なんて。

「…………」

 寂しい。寂しいぞ。あと怖いぞ。

 一人で来るんじゃなかった。

 心細さから脳味噌がエディタ先生のスージーを求めて妄想を始める。

 そういえば最近、先生のパンチラを見ていない気がする。

 などと寂しさを紛らわせる為、あれこれ考え始めた最中のことだった。

「……っ!?」

 不意に足下が崩れた。

 咄嗟に飛行魔法で浮かび上がり事なきを得る。砕けた暗がりの中へと落下してゆく。数瞬の後にガラガラと何かにぶつかっては跳ねる大きな音が、足元に開いた数メートルほどの穴から届けられた。

 どうやら下にもまた空洞が連なっていたよう。

「これはビビるだろ……」

 飛行魔法の高度を落として、穴の下へ探検に向かう。万が一にもモンスターの類が飛び出してきたら厄介だ。光源となるファイアボールを先行させる形で、慎重にゆっくり、ゆっくり、身を下ろしてゆく。

 すると数メートルばかりを降りたところで、通路と異なる広い空間に至る。

 姿を現したのは、百平米ほどの広々とした部屋だった。

 天井もこれまで歩いてきた穴と比較して高く、五、六メートルほど。

 更に言えばそれまで歩んできた通路が手掘りの炭鉱穴であったに対して、同所は人の手により部屋として体裁が整えられている。壁は石を積んで作られており、天井もまた同様。その只中へ、今し方に踏み抜いた穴から降ってきた形だ。

「…………」

 おいおいおい、掘り当てちゃった感が迸るぞ。

 同所には天井の穴を除いて、他に出入口の類も見当たらないから。

「なんだこれ……」

 更に部屋の中央の床には、なにやら魔法陣のようなものが描かれている。

 とても大きい。

 しかも細かい文字がびっしりと描かれていて、光ったらきっと綺麗だぞ。

「…………」

 なんだろうな。

 どういった効能を伴うのか、まるで理解できない。

 魔導貴族が見たら喜びそうだ。

 こんなことなら声を掛けてくれば良かった。

「…………」

 目の前に鎮座した幾何学図形は如何様な代物であるか、どれだけ眺めたところで閃くことはなかった。当然、見覚えも皆無。故にここは一つ勇気を出して、上へ乗ってみようではないか。当然、無敵モードを行使してである。

 飛行魔法をキャンセル。

 ふわり床へ降り立つと同時、足の裏に石畳の硬い感触を得る。

「…………」

 しかしながら、それでも変化は見られなかった。

「さっぱり分からないな……」

 もしかしてこれが宰相の求める何某かだったりするのだろうか。

 流石に判断がつかないぞ。

 もしかしたら他の誰かの秘密なイヤンという可能性も。

 さて、どうしたものか。

「…………」

 試しに魔力とやらを込めてみようか。

 いつぞやマナポーションとやらで実践したものと同様の行いだ。

「……どれどれ」

 なんら必要はないのだけれど、雰囲気を出す為にも両手を魔法陣に向けてみたりして、こちら田中、こちら田中、応答せよ正体不明の魔法陣。扱い方こそだいぶ熟れてきたものの、依然として実態の知れない魔力とやら。ゆんゆんと注ぎ込む。

 すると、おう、ごっそりと持って行かれた。

「うぉっ……」

 無敵モード発動ほどではない。

 けれども結構な量だった。

 ちょっと驚いた。

 ステータス的にはどの程度を持って行かれたのだろう。



名前:タナカ
性別:男
種族:人間
レベル:125
ジョブ:錬金術師
HP:149802/149802
MP:250000030/252000030
STR:10012
VIT:2711
DEX:16100
AGI:12322
INT:20001900
LUC:27



 普段は自然治癒で減らないMPに変化が見られた。

 恐らくは次に確認すれば、




名前:タナカ
性別:男
種族:人間
レベル:125
ジョブ:錬金術師
HP:149802/149802
MP:252000030/252000030
STR:10012
VIT:2711
DEX:16100
AGI:12322
INT:20001900
LUC:27



 想像したとおり満タンになっている。

 つまり自然回復が追いつかないほどの量が減ったということだ。一度や二度では枯渇せずとも、際限なく連発すれば、いずれはゼロとなる。つまり普段利用している回復魔法やファイアボールと比較して、かなりの消費量ということだ。

 などと、あれこれファンタジーに考察をしている最中のこと、不意に足元の魔法陣から反応が返ってきた。どのような反応かと言えば、これを構成する線が、キラキラと強い輝きを放ち始めたのである。

 どうしよう。

「と、とりあえず降りるか……」

 そう言えば上に乗ったままだったよと、思い起こして大急ぎで足を動かす。

 しかしながら、そうした間にも光は輝きを増してゆく。

「ぅぉっ!?」

 まるでマグネシウムでも炊いたよう、一際眩い輝きが放たれた。

 目を開けていられないほどの発光だった。

 同時にエレベータにでも乗り込んだよう、足元にぐらつきを覚える。こけるまいと飛行魔法を行使して、魔法陣の上から退くよう移動を試みる。可能な限り距離を取るよう、勢い良く見を飛ばして部屋の隅の方へ。

 するとどうしたことか。

 ゴンと勢い良く頭をぶつけた。

 続くところ、肩。

 更に勢い余って胴体をぶつけたところで地面に落ちる。

「っ……」

 痛い。

 あまりに痛い。

 ブチっという音が響いた。

 ここ最近で使い慣れた飛行魔法だからと、碌に前も見えない状態で飛んで失敗したようだ。しかしながら、壁はもう少し先にあったと思った。どうやら想定したより飛行距離を稼いでいたようだ。

 大急ぎで回復魔法を用いて患部を癒やす。

 凄まじい勢いで傷みが引いてゆく。

「…………」

 人心地つく頃には視界も落ち着きを取り戻していた。

 そして、周りの光景を確認して、ふと気付いた。

「……どこだよここ」

 今の今まで探検していたのは、百平米ほどの大部屋。

 だった筈なのだけれど、視界に映るのは三十平米もない石室だった。

 なんだこりゃ。

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