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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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冒険者ギルド 二

 川沿いに歩いて行ったら、ほんとうに街があった。

 無事に帰ることができた。

 ゴブリン様々だ。

 いつか折り菓子持って礼に行こうかね。

 そして今、俺は冒険者ギルドで作業完了の報告をしている。

「ほう、こりゃマコーン草じゃねぇか」

「なんですかそれは」

 カウンター越し、マッチョでスキンヘッドなオヤジとトーク。

「依頼にあったアルーナ草より貴重な薬草だ。この辺にゃあまり生えてない」

「え、ほんとうですか? じゃあ依頼は失敗ですか?」

「本来ならそうなんだが、まあ、代わりにこれを取って来たってんなら、依頼の付け替えで対応してやるよ。アルーナ草の依頼は通年で出ている。ギルドの卸先も大手商会だから、期限はあってないようなものだな」

 なるほど、そういう依頼もあるのか。

 ホームレスの空き缶集めみたいなものだろう。

 今の俺にとってはなんと相応しい例えか。

「ありがとうございます」

 このマッチョ。見た目は怖いけど、意外と良い人なのかも知れない。

 或いは成果至上主義か。

「んじゃ、これが報酬な」

「あ、どうも」

 カウンターの下から幾つかコインを取り出すマッチョ。

「この数のマコーン草だと、銀貨三枚に銅貨十枚ってところだな」

「なるほど。ありがとうございます」

 銀貨一枚の価値がサッパリなのだけれど、貰えるだけ貰っておく。

 チャリンチャリン。

 受け取った硬貨はズボンのポケットへ。

「んじゃ、今回の仕事はこれで完了だ」

「どうも、ありがとうございます」

 俺、ありがとうございます、しか喋ってないじゃん。まあ、マッチョは見た目が怖いから仕方ない。パッと見た感じマフィアだもの。自然と会話も固くなるさ。

 ついでに言うなら、店内の雰囲気も苦手だ。国外、強面の白人が屯するダウンタウンのバーなどへ行けば、きっと同じような空気を吸えるだろう。なんて思う。

 体格が小柄で肌の黄色い醤油顔の日本人には、酷く居たたまれない環境。人種が違う為か、ジロジロと視線を向けられている感も酷く居心地が悪い。

 そそくさと冒険者ギルドを後とした。



◇◆◇



 お金の価値が分からないままでは大変だ。人生詰んでしまう。

 そこで道行く幼女に尋ねてみた。君、ちょっとオジサンにお金の数え方を教えてくれないかな。きちんと教えてくれたらお駄賃をあげるから、的な。

 結果、判明した。

 銀貨一枚で銅貨百枚。食事一食が銅貨五枚から十枚。お宿に一泊で銅貨三十枚から。つまり、銅貨一枚が日本円で百円くらいの価値とのこと。

 よって今の俺の所持金は三万円くらい。

 なるほど、なるほど。

 お駄賃に銅貨三枚をプレゼントしたら、幼女は喜びながら去って行った。

 同じ時間のトークを日本で女子高生相手にすると、数千円取られる。女子中学生にすると逮捕される。女子小学生には、接近しただけでブザーが鳴るよ。

 まったく、異世界ってばロリコン天国じゃんね。

 YESロリータ、GOファック。

「まずは、バッグと服を買うしかない……」

 今の着の身着のまま状態は非常によろしくない。川に洗ったシャツやズボンは、段々と乾きつつある。乾燥した気候も手伝い、日が暮れるころにはカラカラだろう。けれど、これ一枚で明日を迎えるのは、どうにも心許ない。あちこち破けたり解れたり。

 ということで、買い物だ。

 通りを歩んで、適当な店に入っては相場を調査。

 中古が安いとのことで、古着屋を数件ばかり巡り、上下一式を揃えた。厚手の皮に作られたジャケットとズボン。それと綿っぽい生地に作られた下着の類い。

 また、その近隣によろず屋を探して、同様にバッグを購入。バッグとは言っても、大きめの革袋の口を、同じく皮で出来たヒモに締められるだけの極めて簡素な代物だけど。

 これら合わせて出費が銀貨一枚。

 なかなかお高い。

 残り銀貨二枚。

 これで何を購入するか。

 それはもう決まっている。

「異世界って言ったら剣だろ、ソード、ブレード。そういうの」

 四十代を目前に向かえて、ちょっと剣士とか夢見るお年頃じゃんね。

 武器屋行くか。

 武器屋。

 武器屋を探して大通りを急ぎ足で歩む。

 そろそろ日が暮れそう。



◇◆◇



「らっしゃい」

 武器屋を発見した。

 店内に入ると、剣とか斧とか槍とかが、沢山ならんでいる。スゲェ、なんかこう、そういう感じのテーマパークにでも来たような。

 見ているだけでも飽きない。いいね、剣。いいね、武器。ファンタジーゲームの武器屋さんをそのまま実現したような佇まいである。

 でもちょっと、これ、凄く高い。

 値札を見てみたら、銀貨三十枚とか、五十枚とか。

 高いのだと三百枚とか。

 ちょっとちょっと、プリウスとか新車で買えちゃうじゃん。

「あのー」

 どれもお高くて手が出ない。

 銀貨一枚くらいが良いんだけど。

「なんだ?」

 店員に尋ねてみる。

「銀貨一枚くらいで買える武器ってありませんか?」

「銀貨一枚? ないな」

 店員はカウンターの向こうで、碌に反応を見せることなく即答だ。

 僅か一瞬ばかり、こちらへ視線を向けたのが精々。

 なんて無愛想な。

 職人系ドワーフって感じだ。

 なにせ見た目からして、この店員はドワーフだ。

 生ドワーフだよ。すげぇ。

「ないですか……」

「俺の店に限らず、武器を銀貨一枚でどうこうしようってな常識外れも良いところだ。第一、仮に売っていたところで、そんな値段で売ってるヤツは、碌なもんじゃねぇぞ」

「あ、そうなんですね。すみません、お邪魔しました」

「ったく、冷やかしならさっさと出ていってくんな」

「はい……」

 諦めて店を出る。

 どうやら武器は諦めた方が良さそうだ。

 通りを歩みながら、どうしたもんかと考える。

 当面は薬草採集が仕事になりそうだ。薬草の採集先でゴブリンが出現するというのが、一番の問題どころ。今日出会ったような、話の分かるヤツばかりであれば良いのだけれど、流石にそれは有り得ない予感。

 せめてなにか、こう、自衛のための武器が欲しいよ。

「あー、魔法とか使えればなー」

 火の玉とか飛ばせればいいんだけど。

 回復魔法は貰ったけど、攻撃魔法は貰ってないんだよ。

 しくったな。


パッシブ:
 魔力回復:LvMax
 魔力効率:LvMax

アクティブ:
 回復魔法:LvMax

残りスキルポイント:2


 そうそう、これだよ。アクティブは回復魔法しかないみたいな。

 いやまて、なんか下の方に一行増えてるぞ。

 スキルポイント余ってるって。

 なにそれ嬉しい。

「これは使うしかないだろ」

 使い方が分からねぇよ。

 そもそもウィンドウにカーソルとかねぇよ。

 ああいや、ちょっとまて。

 こういう時は念じればなんとかなるって、相場が決まっている。

「俺は火の玉を飛ばしたい。火の玉を飛ばしたい。ファイヤーボールしたい。ファイヤーボールしたい。ファイヤボール。ファイヤボール。一方でファイヤウォールも素敵だ。ファイアアローでもいい。フレアランスとか格好いい。フレア、フレア良いよフレア」

 道を歩きながら、ブツブツと。

 周りからキチガイを見る目に見つめられるけど気にしない。

 避けて通られるけど関係無い。

 しばらく唸ってると、なんか来た。

 身体の内側に、ビクンと刺激的な感触。

「きたっ、訳の分からない手応えがズシッと」

 確信めいたモノを感じてスキルウィンドウ。


パッシブ:
 魔力回復:LvMax
 魔力効率:LvMax

アクティブ:
 回復魔法:LvMax
 火炎魔法:Lv1

残りスキルポイント:1


「ほらきてる。ざまぁみろ」

 なんか増えてる。

 具体的にどういう魔法か分からないけど、これできっと何か出るぞ。もしも想いが届いているなら、それは燃えさかる火炎となり、敵を焼き尽くすであろう、みたいな。

 これなら剣は買わなくても大丈夫だろ。

「よしよし、安心して今晩の宿を探せる訳だ」

 右手にウンコを付着させたまま森を彷徨っていたときは、どうなるかと不安だったけれど、なんとなく行く先が見えてきた気がする。

 前に進んで行けそうな気分。

 ところで、スキルレベルの上限って幾つなのかね。

 他のがマックス表示なので、いまいち分からない。

 っていうか、他の人も俺と同じように、ウンウン唸りながらスキルレベルを上げてるのかね。どうなんだろう。さっぱりだ。攻略ウィキが欲しいね。

 また今度、道ばたで幼女を捕まえて聞いてみるとしよう。

 ここいらの幼女は俺みたいなブサメンでも話を聞いてくれるから好きだわ。

 お駄賃弾んじゃうぞ。

 っていうか、銀貨を渡したら普通にセックスまで持って行けそうだよな。

 懐に余裕ができたら、やってみようかな。

「……まあ、とりあえず今日のところは、ご飯だ、ご飯」

 そうしよう。

 今日は川で飲んだ水が唯一、腹の中に入れたもの。

 お腹減った。減った。



◇◆◇



 街を歩み、日が暮れるに応じて、居酒屋兼飲食店みたいな店に入った。

 店先から良い匂いがしたんだ。

 店内は程良く賑わっている。席は九割が埋まっていた。

 残る僅かなカウンター席へ滑り込みセーフで乗り込んだのが、先程のこと。注文した出所の知れない肉料理を頬張りつつ、異世界のお酒を初体験。

 なかなか、んまいね。

 悪くない。

 料理はステーキっぽい。

 お酒はドイツのビールっぽい。

 どっちも好みだ。

「うまいうまい」

 料理は速攻で平らげた。

 今日は沢山歩いたから、ごはんが進む。

 ご飯が終わったら、お酒を飲む。

 お酒美味しい。お酒最高。

 この世界にもお酒があって良かった。軌道修正不可能なアル中だから、もしもお酒がなかったら大変なことになっていたよ。ほんとう、助かった。救われた。

 二杯目を空にして、プハァーと酒臭い息を遠慮無く吐き散らす。

「あー、お酒はさいこうだ」

 まあ、そんなに強くないから、ほどほどにしないと大変だけど。

 ここは日本と比べて治安悪いし。

「でも、あと一杯くらいなら良いと思う」

 追加でもう一杯注文しよう。

「すみま……」

 手を上げてウェイトレスを呼ぼうとした。

 そうしたところ、なんか後頭部に固いモノが直撃した。

 ゴツンと、かなり激しい衝撃が来た。

「ってぇ……」

 数瞬の後、ガシャンと固いモノの割れる音が背後に響く。

 皿でも投げつけられたのだろうか。

 どういう店だよ。

「かいふく、か、かいふく……」

 後頭部を必死にさすりながら、回復魔法を掛ける。

 痛みは即座に引いた。

 マジどうなってんのこの店。

 少なからず不満を溜めて、後ろを振り向く。

 すると、そこでは喧嘩が始まりそうな気配が。

 冒険者ギルドに集まってる系の顔の怖いマッチョが二人、向き合い唸り合ってる。威嚇し合っている。酷く動物的で野蛮な光景だ。今すぐにでも取っ組み合いに至りそう。

 どうしようもなく怖い。

「…………」

 大人しく回れ右をして、視線を逸らす。

 絡まれたら堪ったもんじゃない。

「す、すみません、あの、お替わりを……」

 今度は少し控えめに店員さんを呼ぶ。

「……あの、大丈夫ですか? 凄い音がしましたけど」

 やってきたウェイトレスさんは、俺の後頭部を気遣ってくれた。

 とても良い人だ。

 十代中頃の女性である。茶色い髪は肩に触れる程度に切り揃えられて、鳶色の瞳がクリクリと可愛らしい、なかなかの美少女である。元気よく店内を回る様子から、活発な印象を受ける。エプロン姿がよく似合う。

「はい、大丈夫なので、あの、お酒のお替わりを下さい。同じやつ」

「ど、動じない人ですね……」

「いや、別に……」

 お酒さえあれば良いのだ。

 後ろの喧嘩なんて知らない。知らない。

 彼女は分かりましたと頷いて、お酒のお替わりを取りに行った。

 これを待つことしばらく。

 そろそろかな、なんて思い始めたところ、また後頭部に衝撃が。

「いっ……」

 今度はゴィーンと来た。

 さっきよりも強烈なのが来た。

 悲鳴を上げる間もなく、カウンターへ突っ伏す羽目となる。

 直後、ゴツン、低い音が床の側から聞こえた。

 恐らくは木製に作られたコップでも飛んで来たのだろう。

「か、かいふく、かいふくを……」

 大慌てで回復だ。

 数瞬の後、後頭部から傷みが引いてゆく。

「……くそ、とんだ酒場だ」

 ちらり、後ろを眺める。

 そこでは相変わらずいきり立ち睨み合うマッチョ二名。

「あの、だ、大丈夫ですか?」

 ウェイトレスさんがお替わりを持ってきた。

 先程に同じく、その視線は俺の後頭部へと向けられて思える。

 気遣いの言葉が嬉しい。

「ええまあ、なんとか」

「かなり大きな音がしましたけど……」

「それより、あの、それ貰っても良いですか?」

「あ、はい。どうぞ」

 お替わりを貰う。

 お酒のお替わり。

「あー、お酒おいしい……」

「……が、頑丈なんですね。あたま」

「別に頑丈って訳でもないんですけど」

 回復魔法ってば最高。

 もしもこれが無ければ、数分は悶絶してただろ。

「あ……」

「え?」

 ウェイトレスさんが、素っ頓狂な声を上げた。

 同時、ドスンと来た。

 身体が椅子の上から押し出されて、俺は床へと転がる。

 完全に吹っ飛んだ。

 かなりの質量だ。

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 思わず吠える。

 なんだよもう。

 声も大きく叫びながら、再三に渡り回復魔法を自分の身体へ。

 痛みが引いたことを確認して、身体を起こす。

 すると、直ぐ近くにはマッチョの片割れが倒れていた。

 どうやら本体が飛んで来たようだ。

「だ、大丈夫ですか?」

「……大丈夫と言えば、だ、大丈夫ですけどぉ」

 倒れるマッチョは、頭でも強く打ったのだろう、意識を失っている。

 もう一人、残るマッチョはこれを満足気な表情に眺めていた。

「あの、お客さん……」

 心配気な表情を見せる店員は美少女。

 俺なんかを心配してくれるのですか。

 ありがとうございます。

 その眼差しに癒やしを得る。

「……なんだ、テメェもヤルのか? あぁ?」

 残るマッチョが俺を睨んでいる。手の指を鳴らしながら凄んでいる。どうやら、相当に酒がまわって思える。顔など真っ赤じゃないか。きっとコイツ、酔っ払っているときのことを翌日になったら忘れてるタイプの酒飲みだ。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。


名前:オットー・マクフェイル
性別:男
種族:人間
レベル:23
ジョブ:剣士
HP:420/509
MP:0/0
STR:170
VIT:220
DEX:121
AGI:87
INT:20
LUC:28

 これは勝てないな。

 INT一点豪華主義の俺は紙装甲だから、先手打たれたら死ねる。

 回復魔法が間に合わなかった時点で終わるだろ。

「いや、別に……」

 大人しく椅子を引いて、元の通り居住まいを正す。

「へっ! 怖じ気づきやがったか、この童貞野郎が!」

 童貞でごめんなさい。

 未経験でごめんなさい。

 っていうか、どうして俺まで喧嘩を売られてるのよ。

「……すみません」

 とりあえず謝っておこう。

「はっ、つまんねぇ、この短小野郎がっ!」

 すると、相手は気分が晴れた様子で、意識を他へ向けた。

 どうやら助かったよう。

 こちらもまた、これ以上を絡まれないよう、マッチョから視線を外す。

 カウンターの上には、奇跡的にも溢れず残っていたお酒。

 これを手に取り、ゴクゴクと。

 あー、お酒美味しい。美味しい、美味しいけど、なんか、あれだ。

 足下にはマッチョが転がっている。

 背後では、マッチョがまた別の男にくだを巻いている。

 店内の緊張がヤバい。

 なんかもう酔いが一発で冷めた感じ。

 あー、今日はこの辺で止めておこう。

「すみません、お会計お願いします」

「あ、はい……」

 銅貨を十枚支払い、飲み屋を後とした。

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