挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

本文

48/132

領地開拓 六


 遂に田中ランドが完成した。

 ということで、お客様の迎え入れを始めた訳だが、実は既に多少ばかり手を打ってあったりする。黄昏の団は代表ゴンザレスにお願いすること数日前、トリクリスでここの宣伝をしておいて貰ったのだ。

 そして、街の皆様に大人気であるゴンちゃんのお言葉とあれば、なかなかどうして、オープンから数日、施設は活気に溢れていた。団員一同が従業員としてお迎えする只中、トリクリスの町の人たちが通りを行き交っている。

「これは流石に達成感がありますね」

「ちげぇねぇ」

 並び立ちスキンヘッドな知人と、自分たちの仕事を語らい合う。

 胸の内を満たすのは想像した以上の充実感だ。

「ドリスにも人を寄越すよう言っておいたわ」

「ありがとうございます、エステルさん」

 ゴンザレスとは反対側、同様に隣へ並ぶはエステルちゃん。

 口上こそ何気無いものだが、実際は結構な借りを作ってしまったことになる。今回の騒動が落ち着いたら、ちゃんとお返ししよう。色々と頑張ってくれたみたいだし、フェラくらいさせてあげても良いぞ、などと、一度で良いから上から目線で伝えてみたい。男なら死ぬまでに一度は言ってみたい台詞じゃんね。

 実際には土下座してお願いする立場だけれども。

「私は貴方の親よ? このくらい当然なのだからっ!」

「だとしても助かったのは事実ですから」

 右にゴンザレス。左にエステルちゃん。

 中央に醤油顔を設けたところで非常に申し訳ない絵面になっている。

 ちなみにソフィアちゃんはと言えば、実家が飲食店であった都合、なんでも帳簿が付けられるというので、初日から続く収支の計算を行って貰っている。ここ数日は難しい顔で事務所の机に向かっている。

 エディタ先生は部屋に篭って書籍に執筆の最中だ。連日、寝食も忘れる勢いで部屋に篭っている。一つのことに夢中となると、周りが見えなくなってしまう先生かわいい。典型的な研究者気質の持ち主である。

 魔導貴族は学技会の片付けがあるからと首都カリスに帰っていった。際してはこちらから頼み込んでロリドラゴンに送って貰った。本来であれば数日を要するところ、片道一日というのが非常に便利なドラゴン便である。

 そういった訳で現在のパーティーは自分の他、ゴンちゃんとロリビッチの三人だ。

「しゅ、収支はどうなのかしらっ!」

「そこそこ来てますよ。ただ、今のままだと非常に厳しいですね」

 期限まで十日ばかりを残して、現在、総売上は金貨十枚と少し。町の出入口で徴収している入場料が一人あたり銅貨十枚である都合、単純に割れば総入園者数は約一万人。ただ、これは飲食店などの売上も含んだ額なので、実際の来訪者数はもう少し減るだろう。

 現在のペースでも今月を乗り切ることは可能だ。

 だがしかし、継続した町の運営は不可能である。

 一番大きな固定費が騎士団への契約金である。仮に騎士団契約を更新して貰うならば、少なくとも金貨百枚を稼がねばならない。これに乗せて国に納める分の五十枚、最低でも金貨百五十枚が月末までに必要なのだ。

 もちろん他に人を採用できれば、かなりコストを抑えられると思う。ただ、今の状況だと募集しても碌に集まらないだろう。また、街もまだまだ改善の余地があるので、当面は建設と合わせて動ける彼らが理想だ。

 それに消耗品の類だって調達しなければならない。

 つまり最低でも毎月二百枚ほどは売上げねばならないのだ。

「駄目なのっ!?」

「俺としてはもう少し街作りを楽しんでみたいんだがな」

「その為にも少し頭を使わないとなりませんね……」

 さて、どうしたものか。

 などと頭を悩ませていたところ、不意に声を掛けられた。

「団長っ! それにタナカの兄貴っ!」

 黄昏の団の団員である。

 振り向いた先にはマッチョな野郎が立っている。モヒカンヘッドが印象的な二十代中頃と思しき男性である。いつぞやクリスティーナから一発受けて、風呂場に顔面から突っ込んだ手合でもある。元気そうで何よりだ。

「お二方にちょっとお伝えしてぇことがっ」

 どうやら走ってきたらしく、ハァハァと息を荒くしている。

「おう、どうしたよ?」

「なんでも街の代表と話がしたいってヤツが来てるんですが……」

「なんだそりゃ」

 首を傾げるゴンザレス。

「商人の連中ですわ。きっと噂を聞きつけて来たんじゃねぇかと」

「なるほどな」

 ほう。

 これは渡りに船だ。



◇◆◇



 場所を移すこと昨日も利用したラウンジへ。

 もうここ応接室で良いかな。

 向かい合わせに並ぶソファーの一方に腰掛けて待つことしばらく、モヒカンに釣れられてやって来たのは二十代後半から三十代前半を思わせる青年だった。シャツにベストというごく一般的な商人のスタイル。ただ非常に質の良い仕立てである。

 顔はもれなくイケメンだ。やたらと目が細くて、こう、無駄にニコニコとしているタイプの優男である。ラノベの類だと、主人公の友人ポジションに収まっていて、やたらと丁寧な物腰であったり、ホモっぽい言動が目立ったりする、そういう感じのあれだ。

 しかし、出会う相手が尽くイケメンなのは何故なのか。

 自尊心とか自信とか、ごっそり持っていかれるわ。

 また彼の傍らには、同い年ほどに窺える女性の姿がある。恐らくは彼女とか、奥さんとか、そういうのだろう。腰下まで伸びた長く艶やかな金色の髪が特徴的だ。おっとりとした顔立ちの落ち着いた印象を受けるローブ姿の女性である。

 ただし、非常にムッチリとした体型の持ち主で、胸とお尻が共にダイナマイツしている。一方、腰は十分に引き絞られており、エッチ極まりない。きっとエッチな子供を孕むことだろう。是非とも親娘丼で美味しく頂きたい逸材だ。

「この度はお目通りをありがとうございます。タナカ男爵」

「ありがとうございます。平に感謝いたします」

 大仰にも頭を下げられる。

 貴族の称号が全力で生きている。

 イケメンのみならず隣の美女にまで頭を下げられてちょっと良い気分。

「わたくし、名前をヘーゲルと申します。こちらは妻のイライザです」

「イライザと申します。この度の謁見まこと恐悦至極にございます」

 これが貴族パワーか。凄いじゃないか。

 これならストリートで気に入ったギャルを自販機からジュースを購入するノリで、お手軽にレイプできそうだ。なんて危険なんだ貴族。男のロマンに満ちあふれているぞ。最近は電子マネーに対応する機種も増えてより簡単にレイプできるよな。

 ただまあ、なんだ、日常会話では違和感の方が先走ってくれる。

 背筋がムズムズする。

 人生、頭は下げられるより下げる方が、圧倒的に多かったから。

「本日はわたくしども、マンソン商会の使いとして参らせて頂きました」

 ヤバイ。

 こっちの世界の会社名とか全然知らないぞ。少なからず誇った様子があるのは、恐らくそれなりに大きな商会なのだろう。こんなことなら事前にモヒカン経由で訪ねておけば良かった。そうすればゴンちゃんやエステルちゃんに確認のしようもあったのに。

 とりあえず大手企業の本部長クラスだと考えて接しよう。

 それなら万が一もないだろう。

 やっぱりお話が終わったら、接待の席とか用意したほうが良いのだろうか。

「どうも遠いところをご足労を下さり、まことにありがとうございます」

「いえいえ、たしかに本部は首都カリスに設けておりますが、トリクリスにも拠点を構えておりまして、馬車で一日といったところとなります。この距離感が我々としてはまたとない機会と考えさせて頂いておりまして」

「なるほど、そうでしたか」

「つきましてはタナカ男爵にご相談をさせて頂けたらと」

 商売のお話に来たのは間違いないだろう。

 ちなみに同ラウンジには自分の他、目の前のイケメンと美女だけ。

 なんでもさしで話がしたいとのこと、事前にモヒカンを通じて彼らより伝えられており、ゴンザレスとエステルちゃんには席を外して貰った。ゴンちゃんはこれまでと変わらず街の手入れに、ロリビッチはソフィアちゃんのお手伝いに向かっていった。

 ご協力ありがたい限りである。

 また彼らを案内したモヒカンはと言えば、二人をお通しして早々に去っていった。せめて茶の一杯でも出してくれよとは思わないでもないのだが。やはり、その辺りは脳筋が所以といったところか。

「であれば歓迎させて頂きます。ようこそ、ドラゴンシティに」

 慣れないお貴族様トークは早々に切り上げる。

 本題に入らせて貰おう。

「ドラゴンシティ、ですか?」

「この町の町長は現役のドラゴンなのですよ」

「ドラゴンですか?」

「ええ、ドラゴンです。ピチピチのドラゴンです」

「は、はぁ……」

 何言ってんだコイツって顔だな。

 まあ、別に信じて貰う必要もあるまい。

 ヤツのピチピチ具合は自分だけが知っていれば良い。

 適当に流して話を続けよう。

「すみません、お話を戻しましょう。この度はどのようなご用でしょうか?」

 取り立てて伊達を重ねる必要もないので、実直に訪ねてみる。

 聞くまでもないのだが、こういうのは形が大切だ。

「はい、是非ともこちらの町で商売をさせて頂けたらと思いまして」

「なるほど」

「いかがでしょうか?」

「それは我々としても願ったり叶ったりですね」

 如何せん黄昏の団だけでは人手不足だ。

 特に資材の搬入には人手と、なにより沢山の馬車が必要となる。金貨百枚という資本もいつまで持つか分からない。ここは他所様と協業してでも収支の安定化を図るべきだろう。当面の目標は街の運営を軌道に載せることだ。

 たった一度でも、赤字は決して許されないのだから。

「本当ですか? そう仰って頂けるとありがたい限りです」

「いかんせん物資が不足しておりまして、こちらも非常に助かります」

 しかし、このイケメン、年の割に随分と落ち着いて思える。

 紛いなりにも貴族だという自分を相手にして、けれど、その堂々と受け答えする様子からは相当な場慣れが窺えた。普段からお偉いさん相手に仕事をしているのは間違いないだろう。もしかしたら代表の懐刀とか、そういう立ち位置の人物なのかも知れない。

 ちょっと気を引き締めていこうか。

「そういうことでしたら、我々の商会が一手にこれを引き受けさせて頂ければと、ご提案させて頂きます。トリクリスに大きな拠点を設けておりまして、供給には自信を持ってオススメさせて頂きます」

「なるほど」

 どうやら街での商取引を独占したいよう。

 流石にそれは厳しい。

「トリクリスに大きな拠点とは非常に魅力的ですね。もしも叶うのであれば、是非お願いしたく思います。しかしながら申し訳ありません。そのあたりは私の一存では決めかねるところにありまして、フィッツクラレンス子爵のご意向を伺えたらと」

「なるほど、やはりそのほうが収まりはよろしいのですね」

「ええ、私の身の上は子爵のおんぶに抱っこでありまして」

 決して嘘は言っていない。

 ロリビッチを盾にして守りの姿勢である。いかに大きな商会であっても、フィッツクラレンス家に喧嘩を売るような真似はしないだろう。こちらの後ろにエステルちゃんが構えていることは周知の事実であるからして、適当なところで妥協を引き出したい。

「そうですか……」

 すると、ヘーゲルさんは多少ばかりを考えて後、続けた。

「やはりフィッツクラレンス子爵とは懇意にされているのですか?」

「ヘーゲルさんがどのような噂を耳とされたのかは知れませんが、世間の皆様が騒ぎ立てるようなことは何一つありません。ただ単純に子爵は私の能力を買って下さり、私はこれに答えるべく一生懸命となっている限りです」

 まさか噂の方が控えめですとは言えない。

 今は世間体を守るべく挑む。

「なるほど、これは失礼を致しました」

「ですので取引に関しましても、トリクリスに準じた形で行って頂けると、私共としては非常にありがたいですね。いかに男爵領とは言えども、事実上はフィッツクラレンス子爵領の属州のようなものですから」

 ここまで言っておけば大丈夫だろう。

「分かりました。細かいところは子爵と詰めさせて頂きます」

「そうして頂けると非常に助かります」

 エステルちゃんが間に入ってくれれば、妙なことにはならないだろう。縦ロールとのトークを鑑みるに、あれでなかなか才女である。事前にネゴっておけば、こちらの求めるところは通してくれる筈だ。

「しかし、そうなると話題は急になくなってしまいますね」

「せっかくお越しくださったところ申し訳ありません」

 ニコニコな面を殊更にニコニコとさせて細目のイケメンが語る。

 さっきから目が線だよ、線。

 こうした手合って、急に鋭く瞳を開いたりするのが最高にビビるんだよな。

 きっとそういうタイプのキャラ作りに違いない。

「いえいえ、タナカ男爵、私のような平民に頭を下げないで頂きたい」

「今はまだ試用期間のようなものですから、平民と変わりありませんよ」

「それはまた随分とフィッツクラレンス子爵に入れ込んでいるのですね」

「ええまあ、そのように見えるかも知れませんね……」

 先程からエステルちゃん絡みの話題ばかり振ってくれる。もしかして探られているのだろうか。やはり商売人としても気になるところなのだろう。なにせ彼女は新しいトリクリスの領主様なのだから。

 よし、それならここは一つ、ロリビッチをヨイショしておこうか。

 彼女自身も自分と同様、子爵に着任してから間もない。トリクリスを筆頭として、近隣一帯、領土を上手に納める為には、現地に根を生やした商会との円滑な関係も非常に重要だろう。お話をした感じ規模も相応だろうし。

「フィッツクラレンス子爵は非常に優れた才覚の持ち主であらせられます。世間的には親の七光りだのと非難の声が上がることも多々ですが、傍らに学ばせて頂いた私からすれば、既に子爵足りえる度量と決断力を併せ持たれているかと」

「それはまた随分と惚れ込んでいらっしゃいますね?」

「はい」

 後は膜さえ備えていれば完璧だった。なんでエステルちゃんの膣には膜がないのだろう。膜を失った膣とか、キャップを失くしてしまった蛍光ペンみたいなものだ。すぐに乾いてカサカサだ。

「また御年を思えば、未だ伸びしろは計り知れないところにございます。トリクリスにおいても、マンソン商会さんとのお付き合いで学べることは非常に多いのではないと思います。つきましてはどうか、長い目で懇意にして頂けたらと」

「こういっては失礼かもしれませんが、まるで父親のようですね」

「そんな滅相もない。私など子爵と比較しては産子のようなものです」

 やけに絡んでくるな、この人。

 やっぱり商人っていうのは、これくらい貪欲じゃないと駄目なのかね。

 それともなにか欲しい情報があるのか。

「答えられることと答えられないことはハッキリとしておりますので、差し支えなければお伺いしてもよろしいですか? 私としましてもヘーゲルさんのような大きな商会の方とは懇意にさせて頂けたのなら、非常に喜ばしいことでありまして」

「……そうですね」

 しばらくを悩むうような素振りを見せるヘーゲルさん。

 すると傍らより、不意にイライザさんが口を開いた。

「横から口を挟むこと大変に恐縮ですが、タナカ男爵に一点、お伺いしたいことがございます。殿方のお話に女が横から口を挟むこと差し出がましいとは思いますが、どうかお答え願えませんでしょうか?」

「どのようなお話でしょうか?」

「私どもにしても男爵の宮中におけるお噂は兼ね兼ね。実のところ主人もまた、これに悩んでいる節がございます。つきましては僅か数日という期間で街を一つ作り上げられた男爵の至る所、勝算をお聞かせ願えましたらと」

「勝算ですか」

「決して少なくない投資を考えておりますわ」

 凛として語ってみせる奥さん格好いい。

 この旦那にしてこの妻って感じだ。

 いいよなぁ、こういう力強いお嫁さんって、凄く憧れる。

 結婚願望をビシバシと刺激されるわ。

 エステルちゃんとか嫁に出たら、きっとこんな感じなんじゃないかと思う。

「いかがでしょうか?」

「そうですね……」

 問題は何を持ってして勝利とするか、その一点に尽きる。

 彼らの求めるところ、恒久的な領地としての利益を約束することは、今の段階では難しい。来月のお支払いすらままならない現状を鑑みれば、おいそれと契約書にサインはできない。これは素直にお伝えするのが良さそうだ。

「正直にお伝えしますと、あまり芳しくはありませんね」

「そうなのですか? これだけの街を設けているではないですか。元々はなにもない草原であったと聞きます。どのような手法を用いたのかは知れませんが、誰でにも叶う真似ではないのでしょう」

 旦那さんに代わり会話を進める奥さん美しい。

「それでも確約はいたしかねます」

「そうですか……」

「とは言え、仮に事業が失敗したところで、せいぜい私が奴隷に堕ちる限りです。街の代表は既に他で用意しておりますので、ここは残ります。これは子爵も承知しております。そして、私の上に立つのは他の誰でもない、フィッツクラレンス子爵となります」

「……ええ、そうですわね」

 ピクリ、妻ダイナマイツの眉が震えた。

「その事実を担保にして頂ければと。子爵に確認して頂いても結構です」

 ここまで説明すれば大丈夫だろう。

 先程の問い掛けが本当なら、彼らの欲しいものそのものだ。

 M&Aってやつだ。

 ただまあ、ここの町長はちょっと癖が強いけれどな。

「あとは誰の声が大きいかの、その一点に尽きるかと」

「いずれにせよ我々に不利益はない、ということですわね」

「そういうことです」

 わざわざ口にして確認するあたり、確度は高そうだ。

 ここは一つ、お願いしてみようか。

「どうでしょうか? ここは一つ、大きく投資して頂けませんでしょうか?」

「先ほどの発言とは裏腹に、随分と自信がおありなのですね」

「そう見えますか?」

「男爵の位から奴隷に堕ちるのですよ? 恐れはないのですか?」

「微塵もありませんね」

 堕ちたら堕ちたでエステルちゃんのオチンポ奴隷だしな。

 膜付少女とのラブラブセックスという本懐こそ遂げられずとも、輪姦に次ぐ輪姦の末に、こんなにされたら頭まっしろになっちゃうよぉ系女子に習って、絶望の先に待つ快楽を全身全霊を持って享受する限りだ。

「……大した自信ですわね。先程の言葉が霞んで思えます」

「私の進退など意味のないことですよ。大切なのは御社の利益ですから」

「…………」

 ここまで誠意を尽くせば、独占ならずとも承諾して貰えると思うのだが。

 どうだろう。

 少なからずドキドキとしながら、旦那さんに視線を向ける。

 すると、こちらの意志が通じたのだろう。

 彼は幾らばかりかを考えて以後、厳かにも呟いた。

「タナカ男爵にはそこまでして叶えたい夢があるのですか?」

「夢、ですか?」

 おうふ、ここに来て随分な変化球だ。

 そもそも商人と領主の間で行うトークなのかこれは。

 なんというか、小学校の頃に経験した三者面談を思い起こす。

 場に第三者が存在する訳もないのに、そんな感慨を得る。

「ありますね」

「随分と大きいように思われますが、詳しく窺っても?」

「いえいえ、そう大したものではありません。私の友人知人であれば既に成し得ていることです。それこそ息をするように。ただ、私にとってはこれが非常に遠くありまして、その為の第一歩として、この場に望んでいる次第です」

 ハーレム。ハーレムだ。

 右を見ても左を見てもスージー溢れるパラダイスを。

 肌色の世界を。

 右手にエステルちゃんを装備。

 左手にクリスティーナを装備。

 お口にはエディタ先生を装備。

 お股にはソフィアちゃんを装備。

 そういうフル武装アドベンチャーがしたいのだよ。

「……なるほど」

「恐らくヘーゲルさんも、持たれた経験があるのではないかと」

「持つ? それは私が、ですか?」

「勝手な推測ではありますが」

 これだけのイケメンだ。

 過去、セフレの二人や三人は居ただろうさ。

「…………」

「…………」

 あれこれと思いのほか素直に語ってしまったところ、ソファーテーブルを挟んで反対側、ヘーゲルさんとイライザさんは口を閉じてしまった。

 あぁ、これ以上は時間の無駄だろう。

 ちょっと語り過ぎたな。酒の席で役職付きがあれこれと偉そうに説教し始める理由を垣間見た気分だろうか。ちょっとスッキリした自分を感じる。

 適当なところでお開きとしよう。他に仕事は多いのだ。

「以上ですが、よろしいでしょうか?」

「え、ええ」

 幾分か焦り調子に受け答えのヘーゲル氏。

「この街はマンソン様を迎え入れる十分な準備があります。参入規模に関しましては、どうか、ご検討のほどお願い申し上げます。もしも詳しいお話をさせて頂ける段階となりましたら、こちらも実務担当を交えてお打ち合わせを調整させて頂きます」

「ええ、ありがとうございます。タナカ男爵」

「こちらこそ恐縮です、マンソンさん」

 そんなこんなで、対マンソン商会の商談は終えられた。



◇◆◇



 打ち合わせを終えて以後ヘーゲルさんとイザベラさんを正門までお見送りして一息ついた頃合いのこと、界隈にゴンザレスの姿を見つけた。部下も連れずに何やら、人を探している様子だった。

「おっ! いたいたっ! おいっ!」

「これはゴンザレスさん、また調度良いところに」

「なんだ? もしかして俺に要件か?」

「もしかしたらマンソン商会さんと組むことになるかも知れません」

「おいおいおい、そりゃ本当か?」

「はい」

「マンソン商会といえばペニー帝国でも指折りの大商会じゃねぇか」

「主に物資の調達を担当して頂くことになるかと思います。また店舗として用意した家屋をお任せすることにもなるかと。ですので今後は打ち合わせが入ったら、ゴンザレスさんにもお声掛けさせて頂くことになるかと思いまして」

「あ、あぁ、そりゃ構わえねぇけどよ。けど、俺みたいな冒険者が……」

「トリクリスに商売をする方で、ゴンザレスさんを知らない人はいないでしょう」

「ったくよぉ、相変わらずよく回る舌だな?」

「回す相手は選んでいるつもりですけれど」

「言ってくれるぜ」

 とかなんとか、臭いやり取りを交わして情報共有を完了だ。

 ここまで伝えれば、あとは良しなに済ませてくれるのがゴンちゃんのハイスペックが示すところ。見た感じスキンヘッドで刺青入りの完全なヤーさんスタイルながら、実態は人情に溢れた愛情ロリータハーレム持ちである。

 こういう余裕に満ち溢れたところが幼女を導くのだろうな。

「ところでこっちもいいか?」

「なにか私に?」

「アンタに客だ」

「また商人の方でもいらっしゃいましたか?」

「いいや、違う。貴族のお嬢様だ」

「貴族の?」

 誰だろう。

 貴族の知り合いなんてそう居ないぞ。

 エステルちゃんや縦ロールくらいなものだ。

「ビッチ家のお嬢さまだ。アンタもフィッツクラレンス子爵の下に居るなら知っているだろう? 同派閥でも中核を成す伯爵家の一つだな。その三女で魔法師団のシアン副団長と言えば、腕に自信があるヤツなら誰でも知っている」

「シアンさん、ですか?」

 誰だそれ。

 知らんな。

「ここ最近だと王女の病を巡るあれやこれやでレッドドラゴンの討伐に加わっていたらしいな。ドラゴンスレイヤーの一人に数えられているそうだ。若くして副団長という地位に居ることも手伝って、ここ最近は俺ら市民の間でもなにかと耳にする名前だ」

「あぁ、なるほど」

 ゾフィーちゃんか。

 そう言えばそんな名前だった気がする。

「彼女がこの街まで来ているのですか?」

「今は子爵さまが面倒をみているぜ。なんでも知り合いらしいな? 子爵に魔法を教えたのがシアン副団長と聞いて納得したわ。だからこそ紛争の最中も、あれだけ見事に飛び回っていられた訳だ」

 そう言えば、そんなことを以前に言っていたような、言っていなかったような。ゴンザレスの指摘は、ロリビッチを知らないヤツが聞けば的を射て響くだろう。ただ、ゾフィーちゃんの教示も然ることながら、エステルちゃんの努力も大きいと思う。

 あれでなかなか努力の出来る女さロリビッチ。

「場所を教えてもらってもいいですか?」

「ああ、アンタを呼んで来いと言われてたんだ」

「そういうことでしたか」

 ゴンちゃんが探してたのは、どうやら自分だったようだ。

 貴族というのは随分と忙しい役柄である。



◇◆◇



 ゴンザレスの案内に従って移動した。

 訪れた先は北地区に所在するお貴族様向けの施設の一つだ。建物はどれも他の地区と比較して豪勢な作りとなっており、自分とクリスティーナの合作が目立つ。いつぞやヤツが建てた巨大な凱旋門もこの地区のオブジェである。

 そうした建物の並びの一つ、宿泊施設に設けられた応接室のこと。

「お久しぶりです、ゾフィーさん」

「お久しぶりなのです」

 なのです、か。

 相変わらず飛ばしてるな、このローブっ子は。

 以前に会った際と同様のローブ姿は、アレん曰く魔法騎士団に幾つかある正装の一つなのだという。裾や袖など要所に金色の刺繍が入れられており、生地も傍目に良い物を使っていると分かる。絹っぽい光沢ってあるじゃん。

 ただし一点、標準とは異なる箇所がある。

 本来であれば足元まで伸びる裾が、膝上の位置でカットされている。下に着用したミニスカートが幾らばかりか生地を覗かせて、ひらりひらりとはためく様子はいとエロし。過酷なアイドル戦に向けてにカスタムされたチラリズム極まる品だ。

 清楚アイドル系メスビッチの気配がプンプンするぜ。

 姫の貫禄ってヤツだ。

「わざわざこのような場所までどうしました?」

 知らない仲ではないので、挨拶も早々、率直に問いかける。

 お客様である都合、彼女は三人掛けのソファーの中央に腰を落ち着けている。一方でこれを迎え入れる我々はエステルちゃんと自分が横に並ぶ形だ。

 ちなみにゴンザレスはと言えば、案内を終えてすぐに何処へとも消えていった。

 貴族の席に平民は不要だなんだと適当を語っていたので、きっと街作りの方が楽しいのだろう。部屋を去らんとする歩みは極めて早かった。

「相談があるのです。聞いて貰えますか?」

「聞くだけなら幾らでも構いませんけれど……」

 上目遣いに問うてくるゾフィーちゃんが非常にあざと可愛い。クリスティーナに対するそれとは、また違った苛立ちを覚える。計算して作られた美少女だ。でも可愛いものは可愛い。思わずレイプしたくなる。

 男とはどこまでも愚かな生き物なのさ。

 この子にはドス黒く染まった百戦錬磨の丘と、その脇を覆う巨大なビラビラがよく似合う。もう元に戻らないビラビラを唇で挟んで引っ張りウニョーンしたい。月刊ビラビラ創刊号はゾフィーちゃんで決まりだろ。

「ゾフィー。貴方、まさかアレンだけでなく彼までっ……」

 エステルちゃんの表情が険しさを増す。

 どうやら寝取られ警報発令中の模様だ。

 だがしかし、この姫属性が自分のような醤油顔に靡くとは思わない。この手の意識高い系ビッチが靡く先は金持ちかイケメンだと相場は決まっている。場末のなんちゃって男爵など四十過ぎのフリーターくらいにしか思っていない筈だ。

「この街の一角に舞台を持ちたいのです」

「舞台ですか?」

「はいです」

 ふと思い起こされたのは学技会の最中に見たゾフィーちゃんオンステージ。

 なるほど、あれをここでもやりたいということだろう。現代人の感覚的には、デパートの屋上で開かれる新米アイドルのステージ興行みたいな。彼女の考えている通り、この手の行楽地とアイドルの舞台は非常に相性が良い。

 流石は姫属性、目の付け所があざといじゃないの。しかもランドオープン直後に本人が直接交渉とか、行動力が半端ない。更に言えば今の彼女はまだ十代である。そういうところは割と普通に尊敬できる。格好良いと思うもの。

 であればこちらも、ビジネスビッチに相応しい態度で臨もう。

「期間はどの程度になりますかね?」

「一週間毎に額を決めて借り受けたいです」

「なるほど」

 彼女の提案はこちらとしても悪くない。

 お風呂以外にも見世物が生まれるのは願ってもないところだ。

「分かりました。そのお話、ぜひお受けさせて頂きます」

「本当ですか?」

「ええ、嘘をついても仕方がありませんよ」

「ありがとうです」

 果たして彼女の人気がどの程度かは知れない。だが、見た目極めて可愛らしく、貴族としても上の方にある娘っ子が、ミニスカでパンチラ上等、平民の前で歌って踊るというのであれば、決して少なくない集客が望める筈だ。

 ただ、現在の田中ランドには舞台施設が存在しない。

「となると早速ですが、舞台を作るとしましょうか」

 人通りの多い広場の脇にでもホールを作るとしよう。

 雨の場合も考慮して屋根付きのが良いな。

 ゾフィーちゃん以外の利用も十分に考えられるし。

「……作る、ですか?」

「ええ、間取りも確認したいので、付き合って貰えませんか?」

「は、はいです」

 契約額は施設の出来栄えも含めて判断して貰おう

 よし、そうとなれば善は急げだ。

 ソファより腰を上げる。

 すると、傍らよりエステルちゃんの声が挙がった。

「ちょ、ちょっと待って欲しいわっ!」

「どうしました?」

「ゾフィー! 貴方、やっぱり彼をアレンの時みたいに奪うつもりじゃ……」

「それは違います。私は気づいたのです」

「な、なにに気づいたのよっ! まさか彼の極めて格好良い姿にっ!?」

 猛るエステルちゃんに構わず、ゾフィーちゃんは淡々と続ける。

「一人の男性に愛されることは大切です。時には他の幾万にも勝る幸福を得ることができると思います。ですが、他の幾万から愛されることも、やはり場合によっては、一人の男性に愛される以上の幸福を届けるのです」

「……なにを言っているのかしら?」

「私はこの世界に生きる大勢の男性にとっての癒やしでありたいです」

「…………」

「一人は皆のために、皆は一人のために、です」

 なんか語りだしたぞ、この姫ビッチ。

 貴族という満ち足りた生い立ちが、彼女の精神を加速させたのだろう。

 都合、数世紀ばかり意識の高さを先取りしている感ハンパない。

「アレンはどうしたのかしら?」

「アレンとは首都カリスに戻って以後、一度も顔を会わせていないです」

「えっ……そうなの? 一度も?」

「はいです」

 流石にそれは可哀想だろビッチーズ。

 信じてた女二人に裏切られるとか、流石に同情を禁じ得ない。思えばトリクリスから首都カリスに戻って以後、自分もアレンとは一度として機会を持っていないぞ。

 やはり早めに一度、顔を会わせておくべきじゃなかろうか。

「ま、まあ、別にアレンはどうでも良いわっ! どうでもっ!」

 いま少し気になっただろ? エステルちゃん。

 別にいいんだぞ、古巣に帰ってくれても。

 こっちはまだギリギリで耐えられるところにあるからな。

 もう少し寄られたらヤバイけど。

「ですから、舞台の都合をお願いしますです」

「分かりました。では候補地として人が集まりそうな場所を案内しましょう」

「お願いするです」

「ちょ、ちょっと、私も行くわっ! 置いて行かないで頂戴っ!」

 ビッチ二名と同伴で、街の賑やかなところへと向かおうか。



◇◆◇



 舞台の場所はゾフィーちゃんと相談して、街の中央に所在する広場の脇に決まった。既に幾らか建物が建っていた都合、ストーンウォールを駆使して区画整理をすることパズルゲームの如く。そこにちょっとしたホールを作った。

 あまり規模を大きくしても、興行当初は空きスペースが目立つだろうから、少し狭くて百平米ほどだ。もしも繁盛するようなら、更に区画整理を重ねて、規模を増やすことを約束した。なので当面は地下アイドル規模でのスタートとなる。

 建物としてはそう難しい構造でもない為、小一時間ばかりで作業は終えられた。

 際しては依頼主であるゾフィーちゃんの意向も取り入れての施工となった。中央に丸い舞台が用意されて、そこへ至るようすり鉢状に緩い傾斜というスタイルだ。なんでも三百六十度から見られたいらしい。

 ここ数日の経験も存分に活かしての短期竣工である。

 ぶっちゃけ水回りが不要なので非常に楽だった。トイレの類は他に公衆便所が随所に設けられているので、そちらを利用して頂く形である。青姦ポイントは特定の施設に閉じず、公共に開けているべきだと思う。

 当然、半数は多目的仕様である。なにせ多目的だからな。

「こんなものでどうでしょうか?」

「十分です。そして相変わらず素晴らしい魔法の腕です」

 完成した舞台の上から、ホールを眺めて感嘆のゾフィーちゃん。

「それは良かった」

「まさか建物をストーンウォールで作っているとは思いませんでした」

「一応、当面は持つことを確認しているので、大丈夫だとは思います」

「なるほど、そこが懸念でした。持つようなら問題ないです」

 ロリドラゴンからの情報を流して安心をお約束。どうやら気になっていたのは本当らしく、ゾフィーちゃんはホッと一息だ。やはり、この石の壁は一時的な出っ張りというのが、魔法使い界隈の共通認識で間違いないよう。

 今一度、彼女はフロア全体を見渡して続ける。

「ご協力を感謝するです。想像した以上の出来栄えなのです」

「ゾフィーさんとは今後とも良い関係であれたらと思います」

「こちらこそお願いするです」

 適当に挨拶を返したところ、不意に姫ビッチが右手を差し出してきた。

 もしかして握手だろうか。

 こんな醤油顔を相手にもアピールを忘れないマメさが非常に意識高い。

「ええ、よろしくお願いします」

 ここは素直に応じておこう。

 自らもまた右手を差し出してギュッと握る。

 その暖かな体温に一瞬クラっと来たのは童貞が所以。ここ最近でやたらと増えたエステルちゃんとのスキンシップに鍛えられていると思っていたのだけれど、そんなことはなかったよう。ロリの感触は良いものだ。

 多少ばかり動いた指先の僅か手の甲を擦る瑣末な感触に胸キュンだ。童貞の弱いところをよく分かっているじゃないか姫ビッチめ。でも大丈夫。歌舞伎町の塾で十分に学んだ意識の高い童貞は、アイドルになど反応しない。

 大切なのはラブなのだよ、ラブ。

「ちょ、ちょっと、どうして手を握る必要があるのよっ」

「別に他意はないです」

「貴方の言葉はまるで信じられないわっ!」

「いつかエステルも理解する日がくるです」

「私は彼一筋だから、他の大勢なんて興味ないわっ!」

「そうですか?」

「そうよっ!」

「大勢から責め立てられるのは存外のこと気持ちが良いです」

「っ……そそそ、そういうことを言っているのではないわっ!」

「冗談です。私の身体はそこまで安くないです」

「なっ、こっ、アンタって子は……」

 猛るエステルちゃんと平静を崩さないゾフィーちゃん。非常に対照的な二人だ。そんなだからアレンを奪われるのだよロリビッチさん。もう少し日々を落ち着いて過ごしてみては如何だろうか。

 こと魔法に関しては生徒と先生の関係であったと聞く。この調子では以前から、彼女たちの関係とは、今のようなものであったのだろうと思わせる。恋人まで奪われている都合、実は結構エステルちゃんって、ゾフィーちゃん相手に損を重ねているのかも。

「いい加減に怒るわよ? ゾフィー」

「申し訳ありませんです。エステルさま」

「ふんっ……」

 そんな具合だから、自然と手を離す自分とゾフィーちゃん。

 サービスタイム終了のお知らせ。

「ステージは明日からすぐに始めさせて貰うです」

「分かりました。では早速ですが契約に入りたいのですが」

「はいです」

 応じて少しばかり考える素振りを見せる姫ビッチ。

 できたてホヤホヤの舞台を眺めながら、彼女は片手の指を全て立てて言った。。

「まずは今週分に関して、金貨五枚でお願いしたいです」

「え、五枚ですか?」

 そんなに貰って良いのだろうか。

「足りないですか? であれば十枚にするです」

 もう一方の手も同様に正面へと掲げられる。

 肌荒れの類とは無縁の白い肌は、若々しい艶と張りが感じられる。爪の形も綺麗に整えられており、とてもエッチなフィンガーだ。口の中に無理矢理突っ込まれてグチュグチュされたい。アレンのヤツもこの指に幾度となく導かれて来たのだろう。

 ふと想像したところで童貞マインドに致命傷だ。

 危ない危ない。この世界は危険に満ち溢れている。

「いえ、五枚で結構ですよ。共に冒険した仲ではありませんか」

「良いのですか?」

「流石に十枚を頂戴しては、会計上、言い訳が立ちませんよ」

「なるほどです」

「ただ、もしもゾフィーさんが舞台を運営していく上で、或いは私がこの街を発展させてゆく上で、人の入りが激しくなりましたら、交渉の場を頂戴できると幸いです。その時には当然、施設の方も拡充させて貰いますので」

「承知したです。そのような形でお願いするです」

 しかし、果たして彼女は一人幾らで観客をステージに招くつもりだろう。

 一度の公演で二、三百ほど集まったとして、五営業日で約千人となる。つまり一人あたり頭銅貨五十枚だ。日本円で五千円くらい。

 ソフィアちゃんちの日替わり定食が銅貨八枚である点を鑑みれば、現地の平民にとっては結構な額だろう。随分と強気である。

 まあ、実家はご立派な伯爵家ということだし、娯楽的な側面が大きいのだろう。収支を気にしないアイドル活動とは、羨ましい限りである。

「期間中は独占して頂いて結構です。こちらへの報告も不要です。好きなように使ってやって下さい。施設が破損して修復が必要になったり、他に要望など出て来たら、そのときに連絡を入れてくれれば良いですから」

「荷物の搬入は勝手にやってしまって構わないですか?」

「ええ、構いませんよ」

「ありがとうです」

 想定外のところから思わず臨時収入を得てホクホクだ。

 この金貨五枚は大きいぞ。

 持つべきものはアイドルな知り合いだな。

 しかしながら、ゾフィーちゃんはフィッツクラレンス派の貴族らしいから、これ以上、ホールの賃料を収入に勘定するのは不味いだろう。万が一にも宰相に突っ込まれた場合、採算度外視のレンタル料を説明する根拠がない。五枚でもギリギリだ。

 一回こっきりの裏ワザのようなものだと考えておこう。

 あぁ、これだから外部監査というやつは面倒だな。

「要件は済んだのよねっ!? それなら行きましょうっ!」

 エステルちゃんにシャツの裾を引っ張られた。

 もれなく上目遣いである。

 この子の上目遣いはゾフィーちゃんと異なり、なんというか、本気の上目遣いだ。つり目がちな眦が殊更に釣り上がり、真っ赤な瞳がジィと、燃え上がらん勢いでこちらを見つめている。

 いつになく必死なロリビッチが普段の三割増しでロリってて可愛い。

「そうですね」

「そうなのよっ!」

 ゾフィーちゃんの営業スマイルに見送られて、ホールを後とした。



◇◆◇



 新設の多目的ホールを出たところで、エステルちゃんから問われた。

「ところで、あの、す、すこし良いかしら?」

「どうかしましたか?」

 その場に立ち止まり、なにやら思いつめた様子での問い掛けだ。ここ最近のアクティブなロリビッチを鑑みるに、またどうしようもないことを言い出すのではないかと、少なからず緊張するのを感じた。

「一つ、お願いしたいことがあるのだけれども」

「珍しいですね。私でよければなんでも応じますが」

 金髪ロリータが自らお願いとは珍しい。

 というか、初めてじゃなかろうか。

 普段は願い事を訴える間もなく自ら動いているからな、この子は。

「本当っ!?」

「ええ、可能な限りとはなりますが」

 そう思い至ると、妙に叶えてあげたくなる不思議。

 最近は随分と世話にもなったし。

「だったら、あ、あ、あのっ、お風呂、お風呂に入りたいの!」

「お風呂ですか? それでしたら訪れてより毎晩、ソフィアさんと一緒に入りに行っていると私は理解していたのですけれど、もしや違っていましたか?」

「違うのっ! 貴方と一緒に入りたいのっ! 一緒のお風呂っ!」

「…………」

 なるほど。

 確かに混浴風呂も沢山作った。

 それを指してのお話だろう。

 思えば作ることは作ったが、未だ魔導貴族の一件で一度利用した限りだ。当然、見たくないと言えば嘘になる。むしろ見たくて見せたくて仕方がない。何度も足を向けかけた。しかしながら一人で向うには、如何せん周囲の目が厳しい場所なのだ。

 何故ならば田中ランドには黄昏の団の連中が溢れている。ここ最近はマッチョ軍団に限らず、女性メンバーや小さな子どもまで、お手伝いに来てくれているらしい。ゴンちゃんに尋ねたところ、なんでも三桁近い追加投入だ。女湯の番台など最たる。

 そして、問題の領主はと言えば、この目立つ醤油顔である。

 こっちが向こうを知らなくても、きっと向こうはこっちを知っている。

 一時的にとは言え、騎士団として彼ら彼女らをの上に立つ自分が、一人こそこそと混浴風呂へ生スージーを鑑賞しに行く姿を見られる訳にはいかない。いかなかったのだ。領主としての尊厳は、街の存続に関わる重要事項である。

 正直、オープンしてから気づいた。盲点だった。

 悔しかった。切なかった。辛かった。

 だがしかし、エステルちゃんが一緒ならどうだ?

 なんということだ、言い訳が立つではないかコノヤロウ。

「や、やっぱり……駄目、かしら?」

 酷く萎縮しながらも、上目遣いで恐る恐る問うてくる。

 であれば、このロリビッチを利用しない手はない。

 彼女さえ傍らに居てくれれば、自分は堂々と混浴風呂へ向かえる。

「陛下から貴族の位を得て以降、エステルさんには連日に渡りお世話となっております。そのようなお願いであれば、別段、断る理由もありませんよ。もちろん、エステルさんが肌を許してくれるのであれば、ですが」

「本当っ!? 許すわっ! ぜんぶぜんぶ、膣壁から子宮の奥深くまでっ!」

「そ、そうですか」

 ちょっとちょっと、道行く人がこっち見てるんだけど。

 でも膣壁とか子宮とか大好きエロワード。

 膣出しも「なかだし」より「ちつだし」ってルビふって欲しいタイプの童貞だし。

「そ、そっ、それじゃあっ! お風呂っ! 一緒にお風呂に入りましょうっ!」

「私などで良ければ」

「身体を洗うわっ! す、隅々まで、全部洗わせてもらうのだからっ!」

 途端に興奮し始めたエステルちゃんと共に、混浴風呂へ向かうこととなった。

 はしゃぐ彼女の後を追って、早足に歩みを進める。

 セフレとハプバーに入場できるヤリチンの優越感を垣間見ているわ。



◇◆◇



 訪れた先は北地区、貴族向けの区画に設けられたお風呂施設の一つ。

 その脱衣所まで足を運んだところで、ふと気づいた。

 冷静に思い返してみれば、貴族のお客様は未だ碌にお迎えしていない。少なくともソフィアちゃんの付けている帳簿の上では、魔導貴族が連れてきた連中を除けば、未だ十数人ほどとなる。お客さんの大半は平民であり、南地区の湯船に浸かっている。道中、やたらと通りが閑散としていたのも然り。

 つまりこれってロリビッチのソロステージな予感がヒシヒシと。

「…………」

 しまった。マジしまった。

 とは言え、既に服は脱いでしまった。後は湯船に向う限り。しかも脱衣所は男女で分かれている都合、後戻りはできない。既にエステルちゃんは突入した後だ。これを放って逃げ出したら、正直なところ、彼女が今後どのような行動に出るか未来が見えない。

「しかたない……」

 ガララとドアを引いて先、建物の一階、屋根のある浴室へ一歩を踏み入れる。

 すると、なにやら湯気の先に人の気配が幾つか。

「…………」

 誰だ。

 エステルちゃんだけじゃない。

 誰かが湯船の脇、椅子に座って身体を洗っている。その隣へ他に別の誰かが立ち並ぶ。浴室には自分の他に二名、先客が存在するようだ。共に小柄な体型と長い金髪から、片方はエステルちゃんだろうと判断する。

 やがて残る一人も、数歩ばかり歩み寄れば早々に判明した。

「あら、本当に一緒だったのねぇ」

「だから言ったじゃないの。私は彼と一緒に来たのよ」

 縦ロールだ。こんなところに縦ロールがおった。

 椅子に座っていたのが縦ロール。

 その傍らに立っていたのがエステルちゃん。

 ちなみに現在の縦ロールは縦ロールの縦ロールな部分が、風呂に浸かった為だろう、ウェービー風ストレートになってる。なんかちょっと良いもの見た気分。普段は海に沈んでいて、干潮にならないと見られないんですよ的な。

 パッと見た感じお淑やかさが著しく向上して、お人形さんみたい。しかしながら、ロリ巨乳であるが故に小さい子供向けの玩具というよりは、大きなお友達の為のブッカケ要員みたいなことになっている。正直、無理矢理組み伏せてズボズボしたい。

「ふぅん?」

「なによ? その意味深な目は。なにか言いたいことがあるのかしら?」

「前の男と比べて、随分と趣味が変わったように思えるのだけれどぉ」

「し、真実の愛に気づいたのよっ! 趣味なんて関係ないわっ!」

 さらに言えば、縦ロールが腰掛けていたのは、椅子ではなくマゾ魔族だった。床石に両手と両膝を付いて、完全に椅子と化している。縦ロールはその背中に腰掛けて、さも当然とばかり、悠然と身体を泡に洗っているのだ。

 なんて羨ましい待遇だマゾ魔族め。

 ロリの尻圧を素肌に楽しんでチェアー。

 俺も椅子ごっこしたい。

「あら、そうなの? てっきり目が見えなくなってしまったのかと思ったわぁ」

「今ほど視界がハッキリとしている時分はないわっ! 毎日がとても新鮮で楽しいもの。日々をこれほど充実して過ごせたことなんて、過去にあったかしら? いいえ、生まれて初めての経験だわっ!」

「随分と入れ込んでいるのねぇ。前の彼は良かったのかしらぁ?」

「当然よっ! 最後に彼と出会えた奇跡、私は神に感謝するわっ!」

「それはそれは良かったわぁ、良い人と出会えて」

 猛るエステルちゃん。対して応じる縦ロールはどこまでもマイペース。こうして眺めていると、意外と仲が良いようにも思えてくる。

 なんて考えたのも束の間のこと。

 穏やかな笑みを浮かべていた後者の口元が、不意にニィと嗜虐から歪んだ。かと思えば、次の瞬間、浴室に響き渡るのは耳をつんざくような笑い声だ。

「おぉぉおおほほほほほほほほっ!」

 おほほ入りました。

 急に来たからちょっとビビった。

 エステルちゃんもビビってる。

 マゾ魔族も少しビクってした。

「な、なによっ!」

「けれど、けれど、だけれども、そうして出会いが最後になってしまったのでは、どれだけ情熱的に愛を囁いたところで、大好きな彼に初めてを捧げることができないのよねぇ? ねぇ、どんな気持ち? 大好きな彼に元カレとの経験を聞かれるのはぁ」

「っ……」

 遠慮ない物言いにエステルちゃんの顔が強張る。

 この縦ロール、適当に話を聞く素振りを見せつつ、実際には付け入る隙を伺っていたようだ。なんというサディスティック。伊達に人間椅子へ平然と腰掛けていない。正直、男の前でする話じゃないだろ。かなり容赦無い性格だぞ。

 対してエステルちゃんはと言えば、甚だ緊張した様子で反論である。

「そ、それは貴方だって同じじゃないのっ!」

「あら、違うわよ?」

「……え?」

「私、そう簡単に身体を許したりしないもの。純血を結婚まで守り通すなんて、女として当然でしょう? その程度の自制も効かないなんて、貴方のような売女くらいなものなのではないかしらぁ。不義理にも程度というものがあるわよぉ?」

「なっ……」

 ここで知らされた驚愕の事実。

 縦ロールは処女だった。

 処女だった。

 処女だった。

「…………」

 即時、ドリス・オブ・アハーンちゃんの可愛さが中古ビッチを仏恥義理。

 この世で最も可愛い女の子とは?

 答えは簡単だ。結婚まで膜をキープできる女の子に他ならない。

 激しい運動で膜が破れるなんて体育会系ビッチの言い訳である。最近は出不精な文化系ビッチが増加傾向にあり、一人エッチの最中にバイブで破っちゃったの、みたいな直球勝負も増えて来ているそう。個人的にはもう少し物語性を出してみてはどうかと提案したい。

「…………」

 ちらり、椅子と化したマゾ魔族に視線を向ける。

 するとヤツは何故か、会心のドヤ顔でこちらを見上げていた。両手両足を床に突き、椅子の構えを維持したまま、ニヤリと凄んでみせる根暗系イケメン。コイツは何が誇らしいのだろう。自らのオチンチンの不甲斐なさを示すばかりだというのに。

 それとも、これはあれか? マゾにとってのサドとは、ある種の崇拝すべき神のような、今風に言い換えればアイドルのような、自らの性欲より先に立つ存在なのかもしれない。故にその膜の張りは誇るべきに値すると。

 なるほど。

 いずれにせよ処女の縦ロール可愛い。

 おかげで浪漫スティックが止まらない。

「すみません、先にお湯へ浸かっていますね」

 処女に無様な姿は晒せない。湯船に浸かることで相手の視界より自らの身体を隠す。今はハッスルすべきでない。冷静に、落ち着いて、この類まれなる機会を明日への希望に繋ぐのだ。未来は希望を湛え胎動しているぞ。

 もちろん、位置取りにはぬかりなし。

 他から見て不自然ではない地点に湯船を確保である。お湯に肩まで浸かると、椅子に座った彼女の腰が、こちらの視線の高さに来た。素晴らしい。なという絶妙な湯船の深さだろう。設計したヤツは神である。ロリゴンは神である。

「あ、わ、わたしもっ! 私も一緒にお風呂へ入るわっ!」

 間髪置かずエステルちゃんが隣に収まった。

 こちらは誤差だ、気にするな。

 それよりも今は処女様とのトークを優先する。

「しかし、ドリスさんがこちらに居らっしゃっていたとは意外ですね。てっきりトリクリスに居るものだとばかり思っていました」

 適当に話題を振ってみる。

 縦ロールとお話したい。

 もっと仲良くなりたい。

 共通の趣味を見つけたい。

 お食事に誘いたい。

「リズの城に居ても、他にやることもなくて暇でしょう? ちゃぁんとお金を落としているのだから、これくらいの自由は大目に見てもらいたいわぁ。それともここの領主は、捕虜の女を風呂に入れるだけの甲斐性もないのかしらぁ?」

「我々は元より貴方を歓迎する用意がありましたよ。どうぞごゆっくり」

「あら、それは本当かしらぁ?」

「疑っているのですか?」

「一度と言わず、二度三度と殺しかけた相手に言う台詞とは思えないわねぇ」

「昨日の敵は今日の友ですよ」

 嫁候補とも言う。

 エステルちゃんからはトリクリスのお城で捕虜生活を送っていると聞いていた。多少の自由はあるだろうと思っていたけれど、まさか、勝手に城を出て湯治に訪れているとは思わなかった。なんてフリーダムな捕虜だろう。

 ただまあ、もしもマゾ魔族が本気を出したのなら、トリクリスに駐在する兵隊さんたちでは止められないとは思う。そのあたりエステルちゃんも正しく理解しているからこそ、こうして好きにやらせているのだろう。

 クリスティーナの存在といい、なんかパワーバランスが一部で狂ってるよな。

「本当かしらぁ?」

「本当ですとも」

「……またドラゴンを嗾けるつもりじゃないのぉ?」

「いえいえいえ、他所の貴族様にそのようなことはしませんよ」

 決して嗾けたりはしない。

 ただちょっと遊びに行かせるだけだ。

「ふぅん?」

「どうかしましたか?」

 なにやら値踏みするような視線を向けられる。

 つり目がちな負けん気の強い瞳からの眼差しに背筋がゾクゾクする。

「だとすると、リズの城で聞いた噂は本当だったのかしら」

「どのような噂でしょうか?」

「ふふん、随分と必死なのねぇ? いつだかと比べると妙に可愛らしいわぁ」

 処女である縦ロールさんには、瑣末な勘違いもして欲しくないだろ。ちゃんと相手の意識を確認しないと。

 あとロリ巨乳に可愛いって言って貰えて、凄く嬉しいぞハッピーだ。もっと可愛がって欲しい。特に下半身を重点的に。

「教えて頂けますか?」

「貴方がリズのお尻を追いかけて、ペニー帝国の貴族になろうとしていると」

「なるほど。そちらの噂ですと、やはり些か語弊がありますね」

「そうなのかしらぁ?」

「エステルさんは先の紛争に貢献した褒章として、私を貴族にと推して下さっているのですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。ただ、いかんせん異国の出であるところが、ペニー帝国では厳しいようで」

「それは本当かしらぁ? 今も一緒にお風呂へ入りに来ているじゃないの」

 痛いところを突いてくるじゃないかロリ巨乳め。

「わたしはっ、わ、わた、わたしはそのっ……」

 速攻で顔を真っ赤にするロリビッチもロリビッチだ。

「とは言え、リズの魅力がそれまでと言えば、それまでなのでしょうけれど」

「っ……」

 こうして言葉を交わす間も、縦ロールは身体を丹念に洗っている。首筋や脇の下など、各所を泡にまみれたタオルの滑る様子のなんと艶かしいこと。なにより、たわわに実った巨大なオッパイが、身動きの都度、ぷるるん、ぷるるん、動く様子はマジぷるるん。

 その間に顔を挟んで、左右に激しく首を振りたい気分になる。

 膜付宣言をしておきながら、それで尚、自らの肉体を隠そうとしない縦ロールの懐の深さは、エディタ先生のパンチラに通じるところがある。その寛容な心に童貞は甚く感激しているぞ。こういう処女が欲しかった。

「彼は私の子よっ!? フィッツクラレンスのタナカ男爵なのだものっ!」

 揺れるぷるるんに触発されたのか、エステルちゃんが吠えた。

 更に互いの肩と肩が接するほどに近づいてくるから、割りと本気でやめて欲しい。縦ロールの面前では、絶対に無様を晒したくはないだろ。童貞は防御力は大変に低いのだ。どう足掻いてもエクステンションしてしまうではないか。

 腐っても鯛。中古でも美少女。見た目だけならば、エステルちゃんも縦ロールとタメを張る逸材である。しかも、前者は無駄に積極的だ。時折、チラチラとこちらの下半身に視線を向けるのは、お願いだから遠慮して頂きたい。

 太ももでガード。

 太ももでガード。

 少しばかり距離をおいて息子のポジションをレフトからセンターに整える。

「如何に男爵位を頂戴したとはいえ、実際には平民に毛が生えたようなものです。まさか、大貴族の子女であり、自らも子爵であらせられるエステルさんと、共になるような真似は恐れ多いですよ。それに彼女には既に意中の相手がいらっしゃいます」

「でも本人はとても悔しそうな顔をしているわよぉ?」

「いえ、それは一時いっときの気の迷いであると思います」

「そんなことないわっ! わたしは、わたしは貴方のことが他のなによりっ……」

 話の流れがよろしくない。

 なんとかエステルちゃんを放流しつつ、縦ロールを主軸としたい。

 こういう時にアレンが居てくれたらとは、本当、アイツどこで何してるんだろ。

「おぉぉっっほほほほほほ、無様ねぇ? リズっ!」

「ど、どういうことかしらっ!?」

「オスという生き物は、いつだって初めてを求めるものなのよぉ!」

 声高らかに宣言する縦ロール。

「誰の手垢もついていない、自分だけの色に染められる、そんな相手を求めているのぉ。そして、愛しい相手のそうした想いに応えるのがメスの務め。生涯を共にする相手に初めてを与えられずして何が絆かしらぁっ!」

「だったらっ、な、なんだというのっ!?」

「貴方も非処女より処女の方が良いわよねぇ?」

「っ……」

 なんという直球勝負。色々と核心を突いてきたな。

 恐らくは居城をクリスティーナに壊された恨み、未だ根に持っているのだろう。その矛先が命令主であるエステルちゃんに向かったよう。弱点を的確に抉る一撃は、あぁ、間違いない。ニヤニヤと浮かんだ厭らしい笑みからも窺える。

 一方で自身はと言えば、極めて素直に頷きたい気分だ。全力で賛同する。けれど、流石にここで頷いてはロリビッチの立つ瀬がない。心がブレイクだ。きっと木っ端微塵。だがしかし、自らのメンタルコアに嘘は付けない。

 どうしよう。どうしよう。

 アレンなら全力で否定するだろう。

 ヤツにとっては処女の可愛いセフレなんてありふれた存在だろう。

 しかしながら、ブサメンにとっては一生に一度出会えるか否かの奇跡。

 どうしよう。どうしよう。

 目の前の奇跡どうしよう。

 悩んだ末に、答えるところは自然と一般論へ。

「それは男性に限らない話だと思いますよ。女性であっても自身が意中の男性の初めての相手であって欲しいとは、意識的にせよ、無意識的にせよ、求めるところなのではありませんか? 例えばそう、ドリスさん、貴方のような意識が高い方など特に」

 適当を語り自らに振りかかる火の粉を払い退ける作戦。

 だったのだが、思いのほか縦ロールは冷静だ。

「あら、だったら何だと言うのかしら?」

「多くの優れた女性がそうであるように、男性もまた優れた個体は若いうちから活発な異性経験を伴うものです。そして、メスとは優れたオスに惹かれるものですしょう? そこから先は語るべくもないかと」

「それは世間の在り方であって、貴方の意見ではないわよね?」

 なんだよ、いちいち突っ込んでくれるな。

 優れた女性の多くが非処女だと告げたのが良くなかったのかもしれない。処女のプライドを刺激してしまったのだろう。

 まあいい、こうなれば残すところはパワープレイだ。

「ええ、そうですね。私の意見とは異なります」

「貴方はどうなのかしら?」

「他者の性経験を蔑み笑う方は、処女にも非処女にも劣ると思います」

「っ……」

 喋ってて思ったけど、最高にブーメランしてるよな。

 骨を切らせて肉を断った感が半端ない。

 けれど、こちらの心中など知る余地もない縦ロールだから、途端、その表情は酷く悔しそうなものとなる。見るからにプライドの高そうな言動の目立つ彼女だ。自らの信じるところを否定されれば憤りも相応だろう。

 しかし、そんな彼女こそ良いメスナンバーワン。

 どうにかしてトークの軌道修正を行いたい。

 頑張るわ、俺。

「ただ、そうした世間一般の価値観の只中で、異性に対して誠実でありたいという、貴方の考え方は非常に好ましいと思います。そうした誉高い精神に惹かれる男性は、きっと数多いのではないでしょうか。非常に魅力的に映りますよ」

 というか、そもそも貴族の娘さんだったら、自然なことなのかも知れない。

 婚前の処女膜チェックとかありそうだし。

 むしろエステルちゃんの尻が軽過ぎると思うのだわ。

 この調子じゃあアレンの前だってどうだか。

「別にお世辞なんていらないわぁ! ふんっ!」

「お世辞ではありません。ちゃんとした本音ですよ」

「本当かしらぁ?」

「ええ、本当ですよ」

「それはつまり、貴方は初めてを捧げてくれる子が好きなのねぇ?」

「…………」

「ねぇ、知りたくないかしら? リズの男遍歴とかぁ」

 まあ、結局はそういう結論に落ち着くよな。

 もしも一連の問いかけが、自分に惚れているが所以のアプローチ、ということであれば、全力でお受けする所存だ。しかしながら、どう見てもエステルちゃんへの当てつけである。なので今日のところはロリビッチに味方しておこう。流石に不憫だ。

「だからと言って、理想の相手が好きになる相手とは限りませんよ」

「っ……」

「ああだこうだと考えたところで、結局は落ち着くところに落ち着くものかと」

「ふ、ふぅん? そうかしらぁ?」

 とは言え決して諦めたりはしないぞドリスちゃん。

 いつか絶対にその大きなぷるるんをモミモミしてやる。

 とかなんとか、適当を考えていたら、不意にマゾ魔族が声を上げた。

「おい、これ以上の侮辱は許さないぞ、ニンゲン」

 これまで延々と黙っていたヤツが今更なんだというのだ。

「お嬢様は過去、お忍びで交流を重ねていた市井の殿方から、こっぴどく振られて以降、完全に独り身至上主義なのだ。今でこそサディストという形で外部へ窓口を開いたものの、依然として自らの内に男根を迎え入れるなど夢のまた夢なのだぞっ」

「なるほど」

 非常に納得できるご説明だ。

「ちょっ、ちょっとゲロスっ!」

「ですがお嬢様、この者はお嬢様の品位を否定いたしました」

「だからと言って主人の恥を晒す下僕がどこにいるのかしらっ!?」

「これはこれは私としたことが、大変に申し訳ありません」

 おかしいと思ったのだ、これだけアホ可愛い縦ロールが処女だなんて。それなりに理由があって然り。とは言え、決して知りたくなかった。気になる女の子の過去の恋愛経験とか。童貞的の心を的確に砕く行いだろ。

 盲人の前で目の前の景色の素晴らしさを語らい合うようなものだ。

「貴方は黙っていなさいっ!」

 想定外の暴露から声を荒くする縦ロール。

 怒りの矛先は自らの尻の下に向った。

「今晩はデラックスコースよっ! 全力よぉっ!?」

「望むところにございます」

 一方で酷く嬉しそうなのがマゾ魔族だ。

 コイツめ、ご褒美が欲しくて告げ口しやがったな。

 流石は職業マゾ奴隷だ。

 してやられたぜ。

 けど、まあいいや。

 混浴風呂はデュアルロリマンコ搭載で、心は十分に癒やされた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ