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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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紛争 十一

 些か強引ながら、無事に紛争は解決した。

 街の領主だという金髪ロリ巨乳が降伏したところで、一連の面倒は終えられたと考えて良いだろう。後はエステルちゃんからエステルちゃんのパパを通じて、プッシー共和国との間に調停が結ばれることを祈るのみ。愛娘の治める領土の面倒とあらば、パパさんも決して悪いようにはしないだろう。

 ということで自身の気分的にも一段落。

 なのだが、ここへ来てショッキングな光景が今まさに。

 俺の目の前で非常に羨ましい出来事が繰り広げられている。

「ファーレンさん、貴方たちは何をやってらっしゃるのですか?」

「っ……こ、これは、だな……」

 地面へうつ伏せとなったクリスティーナの背中へ、魔道貴族、エステルちゃん、ソフィアちゃんの三名が、今まさに腰を落ち着けている。新手のプレイだろうか。これだから貴族の考えることは分からない。俺も幼女の背中でプニプニしたい。

 いやしかし、相手はクリスティーナ。

 とは言え、幼女には変わりなく。

 くそう。

 くそう。

 尻の裏で感じる幼女の温かみが欲しい。

『貴様は乗るなよ? 自分で飛べ』

「いえ、別に乗るつもりはないのですが……」

 身体を横たえた姿勢のクリスティーナから、真顔に凄まれた。

 おかげで理解する。

 どうやら彼女が魔道貴族たちの足であったよう。

 っていうか、俺は駄目なのかよ。乗っちゃ駄目なのかよ。

「いいから、は、早く出発して頂戴っ」

 エステルちゃんが催促する。

 その焦り具合を鑑みるに理解する。如何にファンタジー極まる世界であっても、地べたへうつ伏せに横たわる幼女の背中へ腰を落ち着ける所行は甚だ一般的でないよう。魔道貴族、エステルちゃん、ソフィアちゃんと一様に視線を逸らす様子から把握である。

 なんかむっちゃ仲良さそうに見えるぞアンタら。

「分かりました。では私は後から追わせて頂きます」

『ほぉ?』

「……なんですか?」

 適当を答えると、クリスティーナが妙な煽りをくれる。

『人間風情が、この私についてこれるとでも思っているのか?』

 なるほど。

 ヤツはヤツで自身の飛行速度に自信があるよう。

 だがしかし、こちとら誤って振り込んだ飛行魔法がレベル五十五だ。

 良い勝負が出来るのではなかろうか。

「それはやってみないと分かりませんね」

『……大した自信じゃないか』

 素直に答えたら、殊更に煽られた。

 沸点低すぎだろクリスティーナ。

『良いだろう。この私に空で争いを挑んだこと、後悔させてやろう』

「いえ、別に争いなど挑んでいないのですけど……」

『万が一にも貴様が私より先にあの街へ辿り着いたのなら、この舌で貴様の不浄の鱗を舐めてやっても良い。代わりに貴様が私より遅れてあの街へ辿り着いたのなら、貴様がその舌で、私の不浄の鱗を舐めるのだ』

 碌に言葉を交わす暇もない。

 言うが早いか、クリスティーナのロリボディが中に浮かび上がる。

 なんていうか、こう、酷くシュールな光景だ。人が魔法でスーパーマンよろしく飛び立つだけでも滑稽なのに、そこへ三人、列を成して座っているとあれば、ほら、あれだ、運転手はロリだ、車掌もロリだ、そんな感じ。

『ゆくぞぉっ!』

 ロリドラゴンが吠えた。

 凄まじい勢いに出発、空をすっ飛んでゆく。

 まだ約束に応じた訳でもないのに。

「ちょっ……」

 一瞬、その背中で涙目となるソフィアちゃんの姿が見えた。だからだろうか。流石にこれは放り置けなくて、ヤツの口車に乗るのは悔しいが、致し方なし。

 決して不浄の鱗とやらに興味を持った訳ではない。ロリドラゴンの不浄の鱗なんて、まったくこれっぽっちも興味ない。当然だろう。

「ま、待って下さいっ!」

 ということで、大慌て、自身もまた空を飛ぶ羽目となる。

 魔道貴族やエステルちゃんが一緒だから大丈夫だとは思うけれど、万が一にも振り落とされた日には目も当てられない。あれで伊達にドラゴンしていない。ちょっとしたコミュニケーションミスが命に関わる。

 伊達にこちとら、一発良いのを腹に貰っていない。

「ちょ、ちょっとっ! 貴方たち、待ちなさいっ!」

 ともすれば自身が飛び立つ直後、背後からは縦ロールの声が響いた。

「お嬢様っ」

「私たちも行くわよっ! この場に残って、消えた城の説明をするのは面倒だわ! リズの屋敷で人質でもなんでも、適当に過ごして時間を稼ぐ作戦よっ!」

「なるほどっ! 確かにその通り、賢いですお嬢様っ!」

「ふふんっ、もっと褒めなさいっ!」

 チラリ視線を背後へ向ければ、我々に続くよう飛び立った巨乳ロリとキモロン毛の姿を確認できた。後者が前者を抱きかかえてのこと。お姫様だっこというやつだ。きぃ、羨ましい。俺も巨乳ロリのお尻を揉みながらセクハラ飛行したかった。

 一路、クリスティーナを先頭として、空の追いかけっこが始まりである。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】


 ドラゴンさん、は、はや、早いですっ。周りの景色が目にも止まらぬ勢いで後方へ飛んでいきます。風の当たりこそ魔法に遮られて思えますが、音までは遮っていないようで、轟々という唸りが耳元まで届けられます。

 とても怖いです。

 時折、揺れる都度に身体の内側をギュッと掴まれる感覚が危険です。

 命の危険を感じます。

 往路に同じく、帰りもまたドラゴンさんの背中にお世話となる運びになりました。なんとなく、そうなるんだろうとは覚悟していたのですが、タナカさんのせいで想像した以上に超特急です。行き比じゃないくらい急いでます。

「ソフィッ、遠慮しなくて良いから、しっかりしがみついてなさいっ!」

「え? あ、あっ、ですがっ……」

「よそ見していると振り落とされるわよっ!」

「は、はひっ!」

 こちらを振り向いたエステル様、顔が本気です。

 目元がピクピクしてます。

「すばらしいっ! これがドラゴンの飛行魔法かっ!」

 ファーレン様は相変わらずです。

 最近、この方が同じ人間なのか、疑問に思うこと度々です。

『ちぃっ、ついてきておるかっ……』

 そして、我々を乗せて飛ぶ当のドラゴンさんはと言えば、チラリチラリ、後方へ視線を向けて顰めっ面です。どうやら後ろからタナカさんが付いてきているようで、これが気に入らないみたいです。

『人間風情が、これでも喰らえ』

 苦々しげに呟いて、後に向かい腕を振るいます。

 応じて火球が放たれました。

 成人男性をまるごと飲み込めるほどの大きさです。

「ぬぁあああああああっ!?」

 後ろの方からタナカさんの悲鳴が聞こえてきました。

 エステル様共々、驚いてそちらを振り返れば、頭髪を若干焦がした彼の姿がありました。それでもしっかりとドラゴンさんを追って来ているあたり、以外と勝負事が好きな性分なのかも知れません。

「…………」

 というか、この人たちはなにをやっているのでしょう。

 大人しく帰りましょうよう。

 どうしていちいち喧嘩をしなければならないのですか。

 ドラゴンさんが腕を振るう度に身体が揺れて、もの凄く怖いです。

 オシッコ漏れました。

 ジョバジョバ出てます。

 もう無理です。

 諦めて下さい。

『ちぃ、こうなれば全力で引き離してくれるっ』

 ドラゴンさん、更に加速です。

 ぐぉんって来ました。

 漏らしたオシッコが滴となり空に散ってゆきます。

「ひぁああっ! は、はやっ、はやいですっ! お、おちっ、おちまっ!」

 エステル様の肩に置かせて頂いていた手が外れてしまいました。

 ドラゴンさんに座った姿勢のまま、身体が後ろへ倒れてゆきます。

 あぁ、私の命もここまでなのでしょうか。せめてもう少し、まともな最後が良かったです。オシッコを撒き散らしながら地面に激突死なんて、悲しすぎます。

 こんなことなら、そう、せめて一度くらい、タナカさんのご飯にアレを混ぜておけば良かったです。遠慮なんてすることはなかったのです。悔やんでも悔やみきれません。

「ちょっ、そ、ソフィっ!」

 などと覚悟を決めたところで、不意に腕の引かれる感覚が。

 脇に痛みが走ると同時、エステル様の声が響きました。どうやら私の腕を取り、危ういところに支えて下さったようです。一息に姿勢が元のところまで復帰です。

「しっかりなさいっ!」

「は、はひぃっ、あ、あああ、あ、ありがとうございますっ」

 エステル様、優しいです。

 エステル様、素敵です。

 エステル様、神様です。

「腰に手を回して良いから、ちゃんと抱きついていなさいっ!」

「はひっ! わ、わかりましたっ!」

「腕だけで無く、膝も使って全身を固定するの。こうよっ! 分かる!?」

「はいっ、締めますっ! ギュッてしますっ!」

「そう、その調子で、こ、腰にしっかり力を入れとぉぇぇぇぇええ」

「ぎゃぁあああああああ」

 たいへんです。

 エステル様がリバースなされました。

 それまで肩に置かせて頂いていた手を、腹部に回したのが良くなかったようです。締め付けてしまったようです。ギュってしたのがアウトでした。

 しかもこちらを振り返っていらっしゃった都合、更に運悪くドラゴンさんの急加速と相まり、吐き出されたモノは真横に流れて私の顔にドンピシャです。

 悲鳴を上げるに際して開かれた口の中へ、流動性の酸っぱくて生暖かいものが注ぎ込まれました。反射的に喉が動いて、ゴクン、内側を伝うのは強烈な酸味です。

 エステル様のゲロおいしくないです。

 これは、あれですね。

 私は食べるより食べさせる方が好みのようです。

「ぁああああっ、あっ……あぁっ……」

「そ、ソフィ、ごめっ……」

 早く到着して下さい。

 これ以上は限界です。

 おねがいします。どうか、なにとぞ。



◇◆◇



 結論から言えば、勝ったのはクリスティーナだった。

 伊達にドラゴンしていない。空は連中の天下で間違いなさそうだ。とは言え、途中で一度は追い抜いたりして、それなりに健闘したのもまた事実。或いはスキルレベルをもう少し上げれば、勝利することも不可能ではないのかも知れない。

 決して不浄の鱗に興味があった訳ではない。ヤツは酷いドラゴンだ。他者に対する思いやりの心を持っていないドラゴンだ。そんなヤツの不浄の鱗なんて、これっぽっちも興味が湧かない。

「…………」

 なんて、そんな筈ないだろ、興味ありまくりだこの野郎。

 早くペロペロさせろよ。

 俺はペロペロされるよりペロペロしたい派なんだ。

 自分に嘘をついたところで、得なんて一つもないだろう。むしろストレスが溜まるばかりだ。だったら俺は自らに対して常に素直でありたいと強く思う。せめて、こうした内に滾る想いくらいは、健全に回してゆきたいじゃないか。

『どうだ、みたかっ!? これが私の力だッ!』

 おかげでロリドラゴン、すげぇ機嫌が良い。

 迸る笑みがニマニマと。

 持ち上げられたほっぺのお肉が最高にプニプニしてるわ。

「……そうですね。大した飛行能力です」

『とうぜんだ! 人間風情とは比べるべくもない』

「とは言え、途中で攻撃魔法を放ってきたのは頂けません」

『言い訳かぁ? 尻の穴の小さな男だな』

「…………」

 ニマニマがムカつく。

 可愛いけどムカつく。

 ムカつくけど可愛い。

 幼女可愛い。

 幼女、ちくしょう、幼女、可愛い。

 可愛い。

 幼女。

 プニプニ。

『ふふん? どうした? なにか言いたそうな顔だなぁ?』

「いいえ、特には」

 ちなみに現在の所在は、例によってトリクリスに所在する領主の城の中庭だ。彼女の他、その上に搭乗していた面々はと言えば、到着して直後、地べたに座り混んでグッタリとしている。可哀相に、心労が祟ったのだろう。

 魔道貴族でさえ言葉少なに肩を上下させているのだから相応なものだ。地面に広がったマントと、これを支える丸まった背中とが、四十過ぎのオッサンに哀愁を漂わせる。

 エステルちゃんは例によって壮大にゲロゲロとやっている。飛空艇でも酔っていたし、酔いやすい体質なのかも知れない。顔を青くしてとても辛そうだ。

 そして、ソフィアちゃんに至っては体中がべちょべちょである。恐らくは前者の嘔吐を受けたのだろう。腰から上、身体も服も、見るも無惨にもんじゃ仕様である。髪にまで絡んで酷く見窄らしい姿恰好である。

 すぐにでも風呂場へ駆け込みたいだろうに、それでも周囲の目に怯えて現場に佇む姿からは、圧倒的な小物感が迸る。いいや、ここまで来ればむしろ大物だ。愛してる。ベロフェラしたい。エステルちゃん産のもんじゃが相まりお味も最高だろう。

『どうした? 我が翼を前としては言葉もないか?』

「……確かに大したものですね。流石はドラゴンでしょうか」

『そうか! 認めるか? 認めるのか!? この私をっ!』

「そうですね。翼に関しては認めても良いでしょう」

『……翼に関してはだと?』

「いけませんかね?」

『まあいい、いずれは他も認めさせてやろう。必ずだっ!』

 以前も思ったけど、やたらと承認欲が強いよな、クリスティーナ。

 そういう女はメンヘラ率が高いってどこかで読んだぞ。

「ええまあ、好きにして下さい」

『とは言え、今は貴様も強がってばかりはいられまい? なぁ?』

「……というと?」

『まさか忘れたとは言わせんぞ』

「…………」

 まさか忘れる訳がないだろう糞ドラゴンめ。

 今も平然を装うのに必至だわ。

「なんの話ですか?」

 極めて真面目な表情に問い掛ける。

 早く宣告すると良い。

 今宵、ロリコンの舌は不浄の鱗に飢えておるわ。

『…………』

「どうしたのですか?」

 はやく。

『……だが、ま、まあいい、今は気分が良い。またの機会にしてやろう』

「っ……」

 なんだと。

 ちょっと待てよ糞ドラゴン。この後に及んでビビったか?

 クリスティーナの性格からして、絶対に折れることはないと思っていた。だってそうだろう。だというに、これはどうした為体ていたらくだ。俺は不浄の鱗が舐めたい。丹念に舐めあげたい。

 だというのに。

『だがしかし、この事実は忘れるなよ? 翼は私の方が上だっ!』

「え、ええ、分かりました」

 俺には翼なんてねぇよ。

 ちくしょう。

 ちくしょう。

 こんなに悔しいのは久しぶりだ。

 顔か? やっぱり顔なのか?

 エステルちゃんには舐め舐めさせたのに。

 教えて下さいエディタ先生。

 あぁ、なんかもう疲れたし、今日のところはベッドに休ませて貰おうか。



◇◆◇



 なんのかんので前線を盥回しとされて、最終的には敵地まで赴いてラスボス攻略した一昨日。そこへ至るまでも十日近くを移動に費やしていた都合、トリクリスのお城に与えられた居室で、ふかふかのベッドは最高に気持ちが良かった。

 久方ぶりに与えられた健康で文化的な睡眠というヤツである。

 おかげで寝て起きれば翌日の昼を廻っている始末。

「……よく寝たわ」

 他に人の気配も皆無の寝室、シーツの上で呟く。

 与えられた部屋は個室だ。

 しかも二十畳はあろうかという広々な上に、調度品の一つを取っても誰かの人生を買えてしまいそうなほどに豪華な作りだ。天井からシャンデリアとか下がってるし、なんかもうブルジョアジー。

 エステルちゃんのご厚意で、自分や魔道貴族の他、ソフィアちゃんやクリスティーナも同様に部屋を与えられている。身内に金持ちがいると、こういうときに助かるよな。彼女のラブがアレンに戻ったとしても、交友は続けてゆきたいとか貧民思考しちゃう。

 ちなみに迸る小物感で定評のある我が家のメイドさんはと言えば、彼女からの申し出に対して、酷く申し訳なさそうな顔で断りを口とした。曰わく、私にはタナカさんのお世話がありますので。

 グッときた。グッときた。

 しかし、城主が嫉妬の色をちらり垣間見せたところで、早々に割り当てられた部屋へと収まっていった次第である。エステルちゃん、そこは素直に納得して欲しかった。相変わらず愛されてる感が半端ない。こんなブサイクのどこが良いのか。

「…………」

 そんなこんなで穏やかな時間が戻ってしばし。

 取り立てて行うべくもなく、ぼうっとして過ごす。

 なんかこう、今回は流石に疲れたので、そういう気分だろ。

 熱海へ温泉旅行にでも行きたい気分だわ。

 海の見える個室付きの露天風呂に浅く長く浸かって、ざざーん、ざざーん、引いては寄せ、寄せては返す波の音を延々と聞いていたい。夕食は海の幸をふんだんに用いたお刺身の盛り合わせ。更に傍ら金網の上にはサザエのつぼ焼きがジュクジュクと泡を吹く。

「…………」

 良い。

 とても良い。

 年寄り臭いかもしれないけれど、そういうのが凄く欲しい。

 などと、ちょっとホームシック染みたことを考えたのが良くなかったダウト。

 次の瞬間にはバタン、大きな音と共に部屋のドアが開かれた。

「タナカさんっ! 大変です! え、エステルさまがお呼びですっ!」

「あ、おはようございます。ソフィアさん」

 朝一でソフィアちゃんの顔を見れるとか、最高に幸せだろ。



◇◆◇



 収束を見せたかのように思われたペニー帝国とプッシー共和国の小競り合い。これに続報が入ったのは一晩が過ぎて翌日のことだった。なんでも城と縦ロールの失われた街で、在留する兵や民が発憤興起したのだという。

 その足は未だ街を出発したに過ぎないが、確実にトリクリスへ向かっているのだそう。間諜の詳しい調べによれば、敵国兵の襲来と城の陥落を受けて、ヤケクソ気味となった兵達がやられる前にやれの精神で出立したのだそうだ。

 なんて迷惑な話もあったものか。

「ちょっとドリス、貴方の国の面倒よっ! なんとかなさい」

「……無理じゃないかしらぁ」

「どうして? 街の人間は貴方を助ける為に出兵したのではないの?」

「わたくし、こう見えても城に落ち着いてから、まだ数週しか経ってないの。碌に顔も知らない領主のために領民が決起などすると思って?」

「……威張らなくても良いわよ」

 今に我々の居る場所はトリクリスの城の応接室だ。学生寮も随分と豪華だったか、こちらもまた負けず劣らず金が掛かって思える。

 自分の他にはソフィアちゃん、エステルちゃん、ロリ巨乳、魔道貴族、キモロン毛、それにクリスティーナと、見慣れた顔ぶれがソファーに並ぶ。自身の両脇へエステルちゃんとソフィアちゃんが腰掛けている都合、プチハーレム感が嬉しい。

 また、足を組んだ縦ロールのパンチラも堪らない。エステルちゃんが何故だか男装している都合、同所での貴重なパンチラ枠が彼女だ。派手な真っ赤なドレスに対して、しかし、以外にも素朴な白である。童貞的にポイント高い。

 同じく赤いドレスでも、クリスティーナの方は丈が長いからチラってくれないしな。誰だよ、こいつに丈長のドレスを与えたのは。なっちゃいない。粗暴な性格を加味した上でのミニスカこそが鉄板である。野性味溢れたパンチラは素晴らしいものだ。

『だったら何だと言うのだ? 滅ぼせば良い』

「そ、そういう訳にはいかないのよっ」

 甚だ疑問だとばかり、人事のようにクリスティーナ。

 これに語って聞かせるのがエステルちゃん。

「ここで戦況を本格化させても、誰一人として得をしないわ」

 ちゃんと領主様しているぞ。

 そんな彼女の訴えに対して、一つ、反論が上がった。

「いいえ、居るわよぉ? 得をする人間が」

「……ドリス、それはどういうことかしら?」

「リズ、今回の一件は貴方たちの国の、ペニーの上層部が絡んでいるわ」

「どういうこと?」

「紛争を仕掛けたのはそちらの間諜よ。私はそれを理解して乗ったのだけれど」

「ちょ、ちょっと! ドリス、詳しいところを説明なさいっ!」

 縦ロールの言葉を受けて、殊更に焦り始めるエステルちゃん。

 なにやらきな臭くなって参りました。

 っていうか、俺みたいな平民が同席して良いのだろうか。

 それとなくソフィアちゃんを伺うと、全力でガクブルモードがスイッチオンだ。

 ここは一つ、ポイントを稼ぐチャンスだろ。

「エステルさん。私やソフィアさんは席を外した方が……」

「いいや、貴様は聞いているべきだ」

「…………」

 脇より魔道貴族に一刀両断された。

 ソフィアちゃんに格好良いところを見せる筈が、なんか凄く残念な感じだよ。

 これじゃ逆にポイントダウンだろ。

「ドリス、続けなさい」

「このわたくしを相手に随分と偉そうなこと」

「いいから早くっ!」

「まったく……」

 ぶつぶつと文句を口としながら、それでも続くところを語り始める縦ロール。その姿を鑑みるに、なんだかんだで仲が良いような気がする。小さい頃からの知り合いというヤツだろうか。知らないけれど。

「トリクリスや国境近隣の兵備状況を伝える資料が流れてきたわ。トリクリスを落とすことまでは難しくても、界隈に所在する村の一つや二つ程度は落とせるだけの情報が」

「…………」

「ここまで舐めた真似をされたの、わたくし、生まれて始めてのことでしたわ。だから、それならいっそのことトリクリスものとも、墜として差し上げましょうと」

「……分かったわ。ところで、その間諜は?」

「口を割らないので殺してしまいましたわ。きっと本当に知らなかったのでしょう。というより、その辺りこそ貴方の行いじゃないのかしら? 頭が狂ったモノだとばかり」

「違うわよっ! 領地を受け継いでから数日、まだ施政には一言も口を出していないわっ! 今は、ひ、引き継ぎ期間ということもあるから、色々と学んでいる最中なの」

「そう……であれば、なんとなくだけれど、えぇ……そうね」

「なによ?」

「いいえ、なんでもないわぁ。それを私が貴方に伝える義理はないもの」

「それならいちいち意味深なことを言わないで欲しいわね」

 物騒なロリータ共だな。

 ソフィアちゃん、もの凄い勢いで震えちゃってるぞ。

 ちょっとは気を遣ってあげなよって。

「まあ良いわ。今は発起した貴方の領土の民をどうかするのが先よ」

「どうにかして貰えるのかしら? わたくし、凄く不安なのだけれどぉ」

「するわよっ! この私を誰だと思っているの?」

「……わたくしには遙か劣るわ!」

「上等よ! その眼に焼き付けておきなさい。この私の活躍を」

「あらそう? 幾らでも活躍すれば良いじゃないの」

 迸る幼馴染み感。

 間違いないだろ。

 でも今は感心している場合じゃない。

 割と緊迫している。

 下手に手を打っては本格的に開戦だ。

 地方領主へ任されるには、これまた大した判断だと思う。

「エステルさん、なにか策が?」

 いちおう、尋ねて見る。

「……今、考えているわ」

「なるほど」

 返されたところは芳しくない。

 どうやら対応しかねているようだ。背景はどうあれ、差し迫った脅威は依然として変わらず。このままでは開戦必至。紛争では片付けられなくなる五秒前。

 であれば、ここは自身の出番だろう。約束してしまったからな。どんな時でも助けるとか、誰が相手でも助けるとか、その場の勢いで安請負してしまったからな。

 せめて状況くらいは聞いておかねば。

「エステルさん、一つ確認したいのですが……」

「な、なに?」

「敵軍はどういったルートでトリクリスに?」

「あ、えぇ、たしか先の戦闘があったラマの草原とは別の、えっと……」

「なるほど、もう一つの草原ですね」

「知っているの?」

「はい。名前こそ知れませんが、所在はしっかりと」

 これは行幸。

 もしかしたら、なんとかなるかも知れない。

 ヤツならば。



◇◆◇



「おぉ、良く来たなっ!」

 同所を訪れて早々、我々を出迎えてくれたのは、相変わらず眩しいほどの笑み。これで相手が美少女だったら言うことはなかった。だがしかし、現実は無残極まる。ニコリが浮かぶ先はと言えば、筋肉ムキムキのマッチョな彼である。

「どうも、数日ぶりですね。ゴンザレスさん」

「歓迎するぜ? ただ、その後ろの連中には俺も些か気が向くな」

「すみません。気に障るようでしたら外で待っていて貰いますが」

「い、いや、そこまでじゃねぇけどよ……」

 後ろの連中というのは、共に同所へと訪れたエステルちゃんや魔道貴族を示してのことだろう。値の張りそうなドレスや、露骨に貴族を感じさせる上等なマントを羽織った面々である。誰の目にもハイソに映る。

 一方で語る彼は徒言えば、現場一筋な冒険者然とした出で立ちであるから、やはり相性がよろしくないのだろう。ちらり向けられた視線にも、以前には感じられなかったトゲが見受けられる。

 場所は屋外、草原の只中に設えられたボロ小屋の傍らである。

「悪い人たちではありません。私が保証します」

「……アンタが保証するなら、分かった、信用しても良いさ」

「ありがとうございます」

 これからお願いすることを考えると、胸の痛い問答だった。

 とは言え、彼ら以外に頼る伝手などない。

 そして、彼ら以外にこの急場を凌げる手合いなど、自分は及びが無い。

「しかし、だとすればアンタはどうしたんだ? まさか貴族さま共々、ここへ寄越された訳でもあるまい? 以前にも言ったが、俺はクランの頭として、仲間を守る責務がある。これだけは誰が相手であっても、絶対に譲れねぇ」

「その点は私も重々理解しております」

「……だったら、なんだ?」

 幾分か表情も険しくこちらを見つめてくるゴンザレス。

 貴族に良い印象がないのだろう。

 こんなことなら一人で来るんだった。

 そうすれば、もう少し簡単に交渉を進められただろう。

「…………」

 となると、この場は大人しく、全てをぶっちゃけた方が良さそうだ。

 パッと見た感じ脳筋のゴンザレスだけど、三桁越えの仲間を率いているんだ。きっと頭は悪くない。いいや、むしろ自身より良いと考えて挑んだ方が良い。少なくとも自分はそんな沢山の人をまとめることなど不可能だ。ドラゴン退治に際しても数人をまとめるだけでギリギリ一杯だった。

 であれば、この状況での隠し事は最悪の印象を与えるだろう。

「ゴンザレスさんに紹介させて下さい」

「あぁ?」

「こちらの彼女ですが、フィッツクラレンス子爵になります。見た目は若いですが、現在はトリクリスを含む近隣一帯を収める領主という身分にあります」

「え? わ、私なの?」

 急に話題を振られて戸惑うエステルちゃん。

 これに構わず俺は続ける。

「そして、こちらがファーレン卿。本人は魔道貴族などと名乗っておりますね」

「…………」

 亀の甲より年の功。

 オッサンは少なからず状況を推し量った様子で無言に会釈を一つ。

 ただ、紹介された側は慌て始める。

「おいおいおい、ちょっと待ってくれよ。そんなお偉方が、こんな前線までおいで為すってどうしたことだ? 言っておくが、こちとらお国の為に一生懸命、見ての通り身を粉にして働いている最中だぜ?」

「すみません、ゴンザレスさん。困惑は理解出来ます。しかしながら、私を信じて最後まで耳をお貸し願えませんでしょうか? 事の次第はトリクリスに限らず、国の全体に関わる大きなものなのです」

「……こっちは一介の冒険者だ。貴族さま方にどんなご用があっての話だよ」

 ゴンザレスとトークしている都合、他にクランとやらのメンバーがぞくぞくと集まってくる。多少ばかり言葉を交わした限りにも関わらず、いつの間にやら、ぐるりと周りを取り囲まれてしまった。

 しかも皆々、手には剣やら槍やら杖やら、物騒にも構えている。

 愛されているじゃないか、ゴンザレス。

 流石だ。

 だからこそ、今回の一件は彼らでなくてはならない。

 数に負けても、これを押し返せるだけの気概が必要なのだ。

「そして、フィッツクラレンス子爵の隣に立っている、身体が小さくて胸の大きな子ですが、こちらが今まさに我々の戦っているプッシー共和国において、トリクリスに隣接する領土を預かる領主のドリス・アハーンさんです」

 やばい、縦ロールのミドルネーム忘れてる。まあいいや。

「え? わたくしもですの? というより、そこの男は何者なのかしら?」

 狼狽えるロリ巨乳。

 ナチュラルにセクハラ出来る幸せ。

 以前の勤め先だったら、一発で訴えられてただろうな。

 だがしかし、今に優先すべくはゴンザレス攻略である。

「ちょっと待て、流石にそれは話が過ぎるぜ、タナカさん」

「我々は彼女の居城に赴き、直接交渉を行いました。そして、領主本人の判断により、一連の紛争の終わりを取り付けました。プッシー共和国との調停です。彼女自身は本人の了承を得て人質に。その引き替えとして、ペニー帝国は同国に対して他に一切の干渉を行わないことを約束する予定です」

「おい、俺の話を……」

「それがつい先日の出来事となります。プッシー共和国における調整は胸の大きな彼女に行って頂く運びとなっております。当人曰わく、ペニー帝国の協力があれば不可能ではないとのことです。また、ペニー帝国側はフィッツクラレンス子爵を通じて、フィッツクラレンス公爵へと話を通す予定です」

「…………」

「フィッツクラレンス子爵のお言葉を借りれば、こちらもまた現実的とのことで」

「……本当、かよ」

 エステルちゃんの親父の名前が出てきたところで、ゴンザレスも遂に黙った。脳筋の癖して、ペニー帝国のお貴族さま事情にも、少なからず通じているようだ。伊達に俺の情報系お師匠様していないじゃん。

 であれば、後は一気に畳み掛けるのみ。

「ですが、プッシー共和国の民は今も尚、勘違いの只中にあるようです。領主が敵国に捕らわれて、自分たちもまた捕虜になるのだと考えてしまったようです。近隣に所在する領民達が、今まさにこの地へ向かい、大挙して侵攻の最中にあります」

「……本当なのか?」

「はい、そして、敵兵の総数は五桁に及びます」

「なっ……」

「両国の今後の関係を思えば、この場に血が流れることは絶対に避けなければなりません。今でこそペニー帝国も、末兵に冒険者を用いる程度で済んでおります。しかし今後、プッシー共和国が本格的な攻勢に移ったのなら、どうなるかは知れません」

「……満を期して開戦、か」

 どこからともなく、後ろから息を飲む音が響いて聞こえた。

 今のはエステルちゃんやロリ巨乳に向けたものなどで、然り。

 当然、嘘を言ったつもりもない。

 そのまま続ける。

「このような状況で信じろとは酷な話だと思います。ですが、どうかお願いです、ゴンザレスさん。私の言葉を無条件に信じて下さい。そして、私と共に事態の収拾へ向けて、ペニー帝国最強のクラン、黄昏の団を動かしては貰えないでしょうか?」

 勝率は五分と行ったところ。

 祈るような眼差しにガチムチ野郎を見つめる。

 すると、対する怖い顔はと言えば、なかなかどうして、楽しそうな顔だ。

 ニンマリと笑みなど浮かべて問うてくる。

「つまり、なんだ? タナカさん、アンタには敵兵を退ける手があると」

「はい。その通りです」

「正直、聞くのが怖いんだけどよぉ……」

「恐らく、相当に怖いことを言うと思います。とは言え、ゴンザレスさんであれば、必ずや乗り越えられるだろうとも信じております。いいえ、違いますね。私はゴンザレスさんと黄昏の団でなければ、乗り越えられない窮地であると考えて参りました」

「おいおいおい、ちょっと待ってくれよタナカさん」

「……やはり、難しいでしょうか?」

「そこまで言われて、引き下がるヤツなんざ、うちのクランには女子供だろうと一人だって居ねぇよ。なにより今在るこの命だって、元はと言えばアンタに救われたものだ。であれば、あぁ、散らすには絶好の機会だぜ」

「少なからず死傷も生じるとは思いますが……」

「言えよタナカさん。最強だなんて言われちゃ、まさか退けねぇよ」

 なんだよこのマッチョ、無駄に恰好付けやがって。

 今まさに精一杯、恰好付けてトークしてるこっちが霞んじゃうじゃんか。

 これだからイケメンは卑怯だわ。

 ただ、そんなゴンザレスが最高に頼もしいだろ。

「ゴンザレスさん、大変に恐縮ですが、クランの皆さんの命を私に預けて下さい」

 幾分か声色を強くしての問い掛け。

 暑っ苦しいガチムチの瞳をジッと真剣に見つめての訴えである。

 ともすれば、彼からの返事は即答だった。

「あぁ、いいぜ?」

「……ありがとうございます」

 なんだよこの筋肉イケメン。

 気持ちが良いくらい、格好良いな。
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