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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫
29/131

紛争 五


 居住まいを正したところで情報共有の時間である。場所は変わらず、メルセデスちゃんが青姦する為に切り開いただろう百合スペースでのこと。だって地面に顔を覗かせる切り株が、どれも切り口新しいんだもの。

 ちなみに彼女の餌食となった捕虜の金髪オカッパ少女は、今も蔦にグルグル巻の上、傍らに転がっている。時折、ビクンビクンと身体を震わせる姿のなんと艶めかしいこと、極めてレイプしたい。

「ということで、我々は救出作戦の一環としてここにおります」

「そ、そうか。それはご苦労だった」

「ご理解できましたか?」

「……言わんとすることはな」

「であれば、こちらとしてもありがたいですね」

 このような昆虫天国に長居は無用である。

 さっさと引き上げてお風呂にでも浸かりサッパリとしたい。

「急な話で申し訳ありませんが、私と共にトリクリスへ戻って下さい」

「……だがしかし、わ、私には前線防衛という重要な使命がある!」

「そこの捕虜も一緒で良いですから。また来ても良いですし」

「分かった。良いだろう」

 最近、メルセデスちゃんのコントロール方法が分かってきた。

 条件を付けたら、案の定、即答である。

 チラリ、ガチレズの眼差しが傍らに横となった簀巻き少女に向かう。

 するとこれに応じるよう、ビクン、ビクン、その華奢な肉体が大きく震えた。何事かと注目すれば、服の中から虫のようなものが這い出してきた。黄色のベースに黒い斑点模様のムカデみたいな生き物だ。

 三十センチ近い。胴体の太さも酒瓶の首ほどある。

 あと足がめっちゃワキワキしてる。

「ち、出てきてしまったか」

「…………」

 どこからだよ。

 いや、もう何も尋ねまい。疑問に思うまい。

 想像した以上にレズ力高いぞ、この女騎士。

 一方で虫を入れられていた側は、恍惚の表情に継続してビクンビクン。

 心の中のCGギャラリーが確実に一つ埋まったわ。

「おい、コイツは本当に近衛騎士なのか?」

「え、えぇ、まぁ」

 キレ気味ダークエルフさえ、キレながら引いて思える。

 騎士である点は魔道貴族の確認も入った筈なので間違いない。ただ、近衛などという肩書きであったとは知らなかった。元からそうだったのか、ドラゴン退治の折に昇進したのか。いずれとも判断はつかないが、まあ、なにかしら人事があったのだろう。

「ところで、メルセデスさん。一点窺いたいことがあるんですが」

「なんだ?」

 チラリ、チラリ、簀巻き少女に視線を送りながら応じるガチレズ女騎士。

 どんだけレズセックスしたいんだよ。いや、気持ちは分かるけど。

「他に部隊の方々はどうされたのでしょうか?」

「あぁ、それはその、非常に無念ながら敵兵の歯牙に掛かり……」

「なるほど、そうでしたか」

 尋ねておいてなんだけれど、真偽の程は怪しいな。

 メルセデスちゃん、自分で撒いたんじゃないだろうな。わざと敵兵をけしかけて部隊瓦解、一人だけ別行動、そんな光景が容易に脳裏へ浮かんだ。目の前に自分好みの金髪オカッパ前髪パッツン美少女が居たのなら、少なくとも俺ならやる。であれば彼女もやる。

 あぁ、間違いない。

「であれば、戦力面でも不安が残りますので、急いで街へ戻りましょう」

「オマエが一緒なら万が一にも不足するようなことはないと思うが」

「今の私は一兵卒です。それ以上のお給料を貰ってる訳ではないので」

「……分かった。不本意だが致し方ない」

 そこから先は知らんよ。

 再び彼女が戦場へ舞い戻り陵辱の限りを尽くしたとしても、それはそれ。

 個人的には逆に集団レイプされるメルセデスちゃんを見てみたい。

 その折には是非とも、くっころからのアヘ堕ちスタイルでお願いします。

 ということで、話はまとまった。

 かと思われた。

「……おい」

 不意にダークエルフが声を上げた。

 低く押し殺してのそれは、耳として自然と背筋に緊張が走る。無駄なことを語らない彼女だから、こうしてわざわざ話を割ってまで口を開いたということは、相応の何某かに気づいたのだろう。

「如何しました?」

「敵だ。囲まれている」

「なんとまぁ……」

 流石は前線。忙しいなおい。

 数はどの程度だろう。

「……いけますか?」

「知らん。だが、このような場所で死ぬつもりはない」

「であれば、ここは協力しましょう。バックアップします」

「当然だ。おい、そこの騎士、貴様もだ」

 ダークエルフがメルセデスちゃんへと訴える。

「分かっている。私には城へ連れ帰った捕虜を尋問するという大切な仕事が待っている。まさか、このような場所で倒れる訳にはゆかぬのだ。この肩に国の未来が掛かっているのだからな!」

 今日のメルセデスちゃん元気良いな。

 近くに魔道貴族が居ないし、好みの少女を捕虜ってるし。

 そりゃ溌剌するのも当然か。

「来るぞっ」

 ダークエルフが吠えた。

 応じて、その示すところに従い、木々の合間より飛来する魔法。

 幾十も氷の氷柱が飛んで来た。

 すわ空へ飛び立とうとしたところ、しかし、それでは二人がどうなるのか、慣れない前衛後衛入り乱れてのゲリラ戦に戸惑いが生まれる。一瞬の気の迷いである。しかしながら、その間にも氷柱は迫り、我々の目前まで至っていた。

 これはヤバい。

 被弾を覚悟で回復魔法をスタンバイ。

 だがしかし、俺が行動を起こすまでもなく、脅威は剣が振るわれるに応じて霧散した。キィン、甲高い音と共に砕かれる氷柱、氷柱、氷柱。目にも止まらぬ早業でメルセデスちゃんとダークエルフが対処してくれたよう。

 幾十と向かい来たその全てが、二人の切っ先に薙ぎ払われた。

 なんだよコイツら、猛烈にカッコ良いんだけど。

「お二人とも、流石ですね……」

 都合、背中合わせの二人に挟まれる形で、凄まじいお荷物感を迸らせるのが俺。咄嗟の対応というやつは、やはり場数を抜けてきた連中に一日の長があるな。気づけば庇われている事実が、童貞野郎としてはちょっと嬉しい。

 特に今回は手数の少なさが顕著となったように思える。

 この森林地帯ではファイアボールを使うにも憚られる。虫連中とのエンカウントに際しては咄嗟に出かかったものの、冷静に考えてみれば山火事必至である。だからこそ相手も氷柱など飛ばしてきたのだろう。

「なるほど、そこそこ腕は立つようですわね!」

 あれこれ考えを巡らせていると、木々の向こうから人の声。

 凛として響くのは十代を思わせる年若い少女の気配。

「何者だっ!」

 剣を構えた姿勢のまま、吠えるメルセデスちゃん。ダークエルフも油断ならない様子で声の聞こえてきた側へ身を構える。二人ともスゲェ格好いい。共にムチムチボンバーだから、なんかこう、グラマラスな肉体とシリアスな雰囲気が最高に相性良い。

 エステルちゃんだと、こうはいかなかったろう。

「おぉおおおっっほほほほほ! 何者? 随分な物言いですわね!」

 ともすれば、返されたのは猛烈なおほほほほ感。

 自ら語ると同時、樹木の合間より姿を表わす敵兵。

「強いて言うのなら、敵軍の大将? ごらんなさい、この私わたくしの姿を」

 ガサゴソと木々の葉を揺らして登場した声の主。

 甲高い笑い声に縦ロールの存在を夢想したところ、現れたるはドンピシャで金髪縦ロールだったりするから、この世界もなかなか捨てたもんじゃない。しかもこの密林の只中で豪勢なドレス姿だ。煌びやかな赤だ。しかもハイヒール。スゲェなおい。

「……大将?」

 自然と疑問が溢れたところ、返答は律儀にも。

「プッシー共和国、アハーン子爵領を治めるドリス・オブ・アハーンとはわたくしをおいて他にありませんわっ! この度の侵攻、我が軍勢の力を持って、トリクリスをペニー帝国の地図から消し飛ばして差し上げますわぁっ!」

 随分とテンション高いヤツが来たぞ。

 何より特徴的なのはその頭髪だ。

 巻きに巻いた黄金色の縦ロール。髪の一房一房が真横に流れる様相は圧巻。エッジの鋭さを十分に保ちつつも、身動きに応じて自然に揺れる様は、ただ単純に固めた限りでもないナチュラル仕様。随分と気合いが入っている。

 こいつはプロの仕事だな。

「大将が前線へお出ましとは、プッシーも随分と切羽詰まっているようだな」

 一同を代表するよう軽口を返すダークエルフ。

「おほほほほほ、そういった短絡的な思考こそがエルフの良くない点ですわ。物事はもっと柔軟に考えるべきなのです。この度の戦場は、敵軍の大将が自ら足を運べるほどに一方的であるのだと」

「……なんだと?」

「これが最も効率的だと言っているのですわぁっ! 無知とは怖いですわぁ!」

「なっ……」

 見たところエステルちゃんと大差ない年頃だ。十代前半から中頃といったところ。ただし、体付きはまるで別モノ。語る調子が賑やかであれば、胸元も同様にとても賑やかである。ムチンムチンのボインボインである。

 エステルちゃんが洗濯板を地で行く極貧バストを日々晒すに対して、こちらのなんと豊満なことか。彼女に仕えるメイドのレベッカさん、あの巨大な胸に匹敵するサイズを誇るから圧巻である。

 しかも驚いたことに、その上で彼女の背丈は、恐らくエステルちゃんより少し小さい。百三十あるかないかといったところ。非常にミニマムだ。ロリロリだ。その上で胸元の開けたドレスに窺う、上乳の見事な張りと艶の訴えたるは、瑞々しい取れたての果実。

 ロリ巨乳いとをかし。

 マジをかし。

 しかも決してデブという訳じゃない。むしろ腹は引っ込んで引き締まり、腰回りは再びエステルちゃんと比較を致しましたところ、あぁ、やっぱり細いのだ。大きなお胸が腰のくびれに相まっては、もう、どうしよう。どうしようエディタ先生。

 やたらと元気の良い妙ちくりんな語り調子を目の当たりとしては、少なからず霞んで思える外見的事実が、しかし、決して無碍にできない黄金律。なんだこのアンバランスは。奇跡の金髪ロリ巨乳。

 縦ロールやバカっぽい語りと相まって、最高に良いじゃないか。

 こういうロリムチハイテンションな子に逆レイプして貰えるなら死んでも良いわ。

「下らない派閥争いにプッシー共和国を巻き込んだこと、後悔すると良いですわ」

「……どういうことですか?」

「おぉおおおっっほほっほほ、末端の兵には意味のない講釈でしたわねっ!」

 ところで、右の縦ロールに蜘蛛っぽいのがしがみついてる。

 ワキワキと動き回っているんだけど、大丈夫なのかね。

「ゲロス、この者立ちを蹴散らしなさい!」

 縦ロールが吠える。

 ゲロスと呼ばれた者が何者かと言えば、恐らく、縦ロールな彼女の傍らに立つ男性を指してのことだろう。俺とそう変わらない背格好の人物である。年齢は二十歳くらいだろうか。総じて線の細く色白い、どこか病的な弱々しさを感じさせる手合いである。

 縦ロールちゃんがあまりに可愛くて、完全に空気だったわ。

 恐らくはプッシー共和国の軍服だろう。出で立ちこそ襟付きのカッチリとしたキレイめ。しかし、肩に届くほど伸びた黒髪はもっさりとして、如何に中分けしていようとも陰険な気配は完全に真逆。それでも頭には三角帽子、羽なんて付けちゃってオシャレさん。

 なんていうか、あれだ、ほら、アキバ系サブカル男子っていうか。

「承りました。お嬢様」

「すぐに片してしまってはつまらないし、少し遊んで上げなさい」

「はい、お心のままに」

 少女が語るに応じて、彼は頭に被っていた帽子を脱ぐ。

 すると、どうしたことだろう。

 側頭部に生えたるは、ニョキリ、立派な角である。途中でねじりの入った二本一セットは、羊のそれを思わせるデザイン。適当に伸ばされたキモロン毛の無造作具合と相まって、なんか結構カッコ良い。顔の線が細いのでよく似合ってる。

 よくよく見てみれば普通にイケメンだな、コイツ。

 最近流行のちょっとキモいタイプのイケメンだ。ゲーセンとかアニメ系のクラブを主戦場にするタイプのイケメンだ。自分みたいなキモオタの烙印を押された男にとっては、ある種の理想型である。普通に嫉妬するわ。

 ロン毛とか、一度で良いから似合うって言われたいだろ。髪のあるうちにさ。

「なっ……」

 であれば、そんな双角イケメンを目の当たりとして、ダークエルフの顔に驚愕が。

 これまで減らず口ばかり叩いてきたキレ女らしからぬ反応だろう。

「今更怖じ気づいても遅いのですわよ?」

「ぐっ……」

 なんだろう。

 あまりにも好みのイケメンだったので、胸キュンしちゃったとかだろうか。

 ダークエルフみたいな色黒ビッチって、意外とこういうタイプと親和性高いよな。

 それなら俺帰るわ。

「……どうかしましたか?」

「どうかしたに決まってるだろうっ!?」

 ただ、返されたところは割とガチ。

 なので真面目に緊張しておく。

 角野郎がそんなにヤバいのか。この手のアニマル属性など街に幾らでも発見できただろうに。むしろ、目の前の彼よりもっとヤバい連中だって大勢居た。背中に羽が生えてるのとか、首から上が魚ってるのとか。

 中世ファンタジー一年生にはヤバさ基準がサッパリ分からん。

 また、敵はキモロン毛に限らない。同時に現れた十数名の軍服姿が、各々、杖や剣を構えては我々を取り囲む。ザッ、ザザッ、って感じだ。先の戦場に眺めた連中と比較して、着ている服が上等である。

 少女の言葉が正しければ、きっと近衛的な立場にある者たちだろう。

 都合、メルセデスちゃん提供の陵辱スペースをぐるっと一周取り囲む形である。

「貴様、何故に人の世へ荷担する。まさか、そちらの娘もそうなのか?」

「お嬢様は歴とした人間ですよ」

「ではどうしてっ!」

「私はお嬢様の忠実な下僕、お嬢様にお仕えすることが我が悦び」

「……そのような戯れ言を信じろと?」

「信じて頂けなくとも結構ですので」

「ぐっ……」

 キモロン毛とダークエルフの間でトーク発生。

 もうちょっと第三者にも分かりやすく話してくれよ。冒頭から思わせぶりで意味深なやり取りとか、恰好付けるのは結構だけど、周りの皆に優しくないだろ。

 ということで、こういう状況でこそステータスウィンドウの出番だ。

 随分と久しぶりな気がする。



名前:エヴァンゲロス
性別:男
種族:ハイデーモン
レベル:686
ジョブ:マゾ奴隷
HP:870000/870000
MP:1903000/1903000
STR:107500
VIT:69322
DEX:92994
AGI:94442
INT:128030
LUC:19329



 おうふ。どうしてこう急に出てくるかね。

 ダークエルフの怯え具合を速攻で理解だわ。ついでに敵将自ら、これを語って前線に登場する理由も、同時に把握した次第である。これだけ強力な布陣であるのなら、単騎でトリクリスを落とすことも不可能ではあるまい。非常に効率的。

 ついでにキモロン毛と縦ロールの背後関係も知ってしまった。

 こればかりは知りたくなかった。

「タナカ、耳を貸せ」

「はい?」

 すぐ隣、メルセデスちゃんに呼ばれた。

 思えば名前を呼ばれるのは初めてだ。

 嬉しい。凄く嬉しい。感動的。

 ガチレズであるということは、それすなわち処女であるということだ。仮にマンコトゥーマンコで膜が破損していようと、俺はこれを例外と認める。変態な彼女とのアクロバティックで情熱的且つ先進的な初体験というのも悪くない。全力で愛する自信がある。

 ただし昆虫の利用は却下な。

 俺のアナルはまだ多足類でヒギィしたくない。

「どうかしましたか?」

「どうかしたに決まっているだろう!? 逃げるぞっ!」

「そうですね……」

 このステータスを確認した後では、他に選択肢も浮かばない。タイマンならまだしも、ムチムチボンバーたちを守りながら安全に打倒する自信はない。こちとら一発撃沈上等の紙装甲だ。狭い空間での敵味方入り乱れた乱戦は苦手である。

 仮に攻めて出るとしても、相手がどういった魔法を用いるか、判断をしてからでないと恐ろしい。貴重なムチムチボンバーを失う訳にはいかない。あぁ、名前を呼んで貰ったことで、メルセデスちゃんの株がグッと上がった感ある。ストップ高。絶対に助ける。

 仕方ないだろう。童貞は惚れっぽいんだよ。

 しかし、上手く逃げ切れるだろうか。

 周囲を囲む連中だって、二人にとっては決して無視できるものでないように思う。

 となると、ここはあれしかないな。

 些か良心が痛むが、メルセデスちゃんの肉便器を人――――。

「貴様らそこを動くなっ! 僅かでも動けばこの者の命はないぞっ!」

 気づけば既に己が肉便器の喉元へ剣の先を向けているガチレズ女騎士。

 威風堂々。なんと堂に入った振る舞いだろうか。

 割と卑劣な行いである筈なのに、あたかも自らに正義があるよう。しかも剣を握るのとは別の腕が回された先は、腰を抱くように見せかけて、お尻を撫でている。全力で、高速で、撫でに行っている。

 すげぇ執念だ。

 自身の生命が危機に晒されたことでメルセデスちゃんの性欲は普段の十割増しだ。

「…………」

「どうだ? 捕虜が役に立っただろう?」

 ニカっと良い笑顔で自らの性癖がもたらした成果を誇ってみせる。

 その間も彼女の指は尻を撫でて撫でて撫でて撫でて留まることを知らない。

 時折漏らされる肉便器の艶っぽい呻き声がメルセデスちゃんの元気の源だ。

「……そうですね」

「だから言っただろう。その為の捕虜だとな」

 分かったから繰り返すなよ。

「え、えぇ、まぁ……」

 不本意ながら、言葉どころか視線を交わすまでもなく、通じ合ってしまった。

 共感以上の何かを俺は彼女に感じた。

 本来なら嬉しい筈なのに、ちょっと悲しい気分なのは何故なのか。

 彼女の肩書きは本当に近衛騎士であっているのか、甚だ疑問だ。

 上から下まで俺よりゲスいぞ。

「あらまぁ、なんと卑劣な人間なのかしら。敵軍の兵を人質にとるだなんて」

「これだけの人数で囲っておいてよく言う。卑劣はむしろそちらだ」

「であればわたくしは、周りの者たちが手を出さないことを約束しましょう」

「ぐっ……」

「どうしました? 我が軍の兵を解放して下さい」

「い、いや、しかしだな……」

 そして、哮ってみせるも僅かの間、速攻で論破される。

 非常にメルセデスちゃんっぽくてよろしい。見た目知的で麗しいのだけれど、実体は割と脳筋一直線なのが彼女の短所であり長所でもある。本来ならば美徳である勘とセンスと本能の優れたるところが、逆に彼女のおバカさを際立てていると思える。

 いやまあ、メルセデスちゃん評はこの際置いておこう。

 今に行うべくは無事にゲリラ戦を脱すること。

「構うことはありません。このまま逃げましょう」

 綺麗事を口にしている余裕などない。

 メルセデスちゃんの肉便器を盾としてトンズラである。

「民は国の宝、そのような狼藉はさせませんわっ! ゲロス!」

「はい、お嬢様」

 金髪縦ロールの命に従いキモロン毛が動いた。

 思ったよりも早い。

 というか、レベル相応、凡そ人間には叶わない勢いだ。

「っ……」

 腰に下げた剣を引き抜くと同時、その切っ先が向かったのは、案の定メルセデスちゃんだ。位置的にも一番近いところに所在し、尚且つ人質を取っている都合、自然と狙われたのだろう。

 彼女は咄嗟に得物を掲げるが、それは初撃で弾き飛ばされた。

「ぐぅっ……」

「お嬢様は敵兵の鎮圧をご所望だ。大人しく散れい」

 サクッと小気味良い音を立てて飛んだ剣が樹木の幹に突き刺さる。

 これを失って、メルセデスちゃんはと言えば。

「や、やれるものならやってみろっ……」

 正面に肉便器をかざし凄んでみせる。

 っていうか、この子、まだ尻を撫でてるよ。

「では試してみましょう」

「っ!?」

 何気ない調子に呟くと同時、キモロン毛の腕が動いた。

 目にも止まらぬ一撃というやつだった。

 次の瞬間、捕虜を抱くメルセデスちゃんの右腕が切り飛ばされた。

 本当になんにも見えなかった。

「メルセデスさんっ!」

「ぐぁあああああああああああっ!」

 凡そ女らしくない悲鳴を上げて、その場に蹲るメルセデスちゃん。

 やられる姿はエステルちゃんの方が遙かに可愛いな。

 コイツの場合なんか親父臭い。まだ少女と称して差し支えない歳だろうに。

「い、今回復をっ!」

 とは言え放り置くわけにもいかないから、回復魔法だ、回復魔法。

 浮かび上がるのは魔法陣。

 彼女の足下に。

 俺は親父臭いメルセデスちゃんでも大丈夫。ちゃんとレイプしたい。

「ぐっ、ぅぅつ……あぁ……」

「意識を確かに持って下さい!」

「これは、か、回復魔法か……」

 自らの肉体変化に気づいたようで、その口から声が上がる。

 怪我は右腕を切り飛ばされた限り。致命傷という訳でもなかったので、通常の回復魔法により傷は瞬く間に癒やされてゆく。新しく生えゆくのとは別、地面に落ちた方はそのまま残っているから、なんだろう、これちょっと可能性を感じるのだけれど。

「あらぁん? 人間の割には大した魔力なのねぇ?」

「……そうですかね?」

「おぉぉっほほほほほ! でも、私の下僕の方が遙かに強いわ!」

「確かに他の方と比較して頭一つ抜けているようですね」

 気づけばいつの間にやら、捕虜は敵の手に渡っていた。縦ロールの傍ら、他に控えていた親衛隊っぽい連中が、今まさに前髪パッツンを拿捕する蔦を切り裂いて、その肩に自らのアウターを掛けてやっている。区画を走り終えた駅伝選手みたいになってる。

 悲しいぜ。もっと見ていたかった。

 金髪オカッパ前髪パッツン少女。

 だがしかし、そこから先に続くストーリーが、俺には見える。

 自国に戻った彼女に与えられるのは、敵兵に囚われたという決して拭えない事実。同時に少なからず感じてしまった己が肉体の変化。そして何よりも周囲から向けられる以前とは違った好奇の視線。特に男たちからのエッチな視線。やがて訪れる、接触。

 やがて彼女は嫌よ嫌よも好きのうちの法則に従い。

 あぁ、妄想するだけで三度は余裕だな。

「やってしまいなさい。ゲロス」

「お嬢様、彼の者の魔力はなかなかのものです」

「だったらなにかしら?」

「今晩のご褒美、フルコースを所望致します」

「構わないわ」

「ありがたき幸せっ! 切に参りますっ!」

「ええ、そうなさい」

「はは!」

 ゲロスと呼ばれた男の意識が俺に向く。

 恐らくは今し方の回復魔法を鑑みての判断だろう。また回復されても面倒だから先に倒してしまおうという算段に違いあるまい。なかなか賢いじゃないか。伊達にレベル三桁してないな。しかしながら、そう簡単に倒されてはやらないぞ。

 むしろ好都合というやつだ。

「私が彼を引き付けている間に逃げて下さいっ!」

「わ、分かった!」

 ドラゴン戦を鑑みてだろう。メルセデスちゃんの返事は速攻だ。

 こういったところで通じ合えるのは、ありがたい限り。

「馬鹿、やめておけっ! 人間ごときが叶う相手ではっ……」

 一方で吠えたのがダークエルフ。

 もしかして心配してくれているのだろうか? だとしたら嬉しいじゃないの。

 ただ、今はムチムチボンバーに構っている余裕などない。

「メルセデスさん、彼女を頼みます!」

「分かった!」

 こういうときガチレズ女騎士は頼もしい。相手がダークエルフだろうとお構いなしさ。無駄に肌と肌を密着させること盛りの付いた中年オヤジの如し。対象の二の腕に自らの胸を押しつけながら、その身体を後方へと引きずってゆく。

「お、おいっ! 離せ!」

「ここは危険だ。ヤツの言うとおり後ろへ下がるんだ」

 マジなのは表情だけだ。

 その肉体は全力で己が快楽を求めて動いている。

「あのモヤシに何ができるっ!? 取り柄は回復魔法だろうがっ!」

「私を信じろっ! それとも奴隷のまま死にたいのかっ!?」

「ぐっ……」

「早くしろっ! 我々が居てはヤツがまともに動けん」

「……わ、分かった」

「こっちだっ!」

「お、おいっ! もう腕を放せっ! 気色悪いっ!」

 早々に折れた。

 自らの身の上を引き合いに出されては、ダークエルフもメルセデスちゃんの言葉に従い、駆け足で場を脱する。或いは過剰なスキンシップが効果を発揮したのか。少しばかり上擦った語り調子からは後者の気配が特濃だ。

 これに際して敵軍はと言えば、縦ロールの言葉を守ってだろう。周りを取り囲んだ兵の誰もは、彼女たちが傍らを過ぎるに際しても、決して剣や杖を振るうことはなかった。それだけキモロン毛の存在を信じているのだろう。

 だからこそ緊張は当然のこと。

 これだけ大した男を従えているのだ。縦ロールの方も同程度か、若しくはそれ以上である可能性が高い。だからこそ彼女たちには早く逃げて貰いたい。三桁後半足す三桁後半は四桁だ。連携の具合次第ではクリスティーナ並と考えても良い。

 とてもではないが誰かを守りながら打倒する自信など湧いてこない。

 なによりここは密林の只中である。

 これまでの戦法が使えない。

 目上の相手に対する戦法としては、空中を飛行魔法で逃げ回りながらのファイアボールが、ほぼ唯一と称しても過言ではない。こうも木々の茂った場所にあっては、満足に飛び上がることも難しい。

 そして、相手の攻撃力はこちらのHPを一撃で削り取って余りあるもの。

「一瞬で終わりにしましょうっ!」

 余裕の現れだろう。わざわざムチムチコンビが森の中へ姿を消すまで見届けてから、キモロン毛が動いた。地を蹴ってこちらへ向かい、一直線である。長髪が風に流れて後方へゆらゆらしてるのカッコイイ。かなり憧れる。

 学生の頃、自身の顔面偏差値を省みず無謀にも色気づいて、髪の毛など伸ばしてみたことがあった。碌に会話をした覚えのないクラスメイトから、ホームレスみたい、って言われた記憶が蘇る。ちくしょう。翌日には丸刈りだった。

 あぁ、なにもかも、ロン毛が良くない。ロン毛が。

「これはどうも、わざわざご丁寧に……」

 どうしよう。

 どうすれば良いのか。

 考えている間にも敵は迫ってくる。

 であれば四の五の言っていられる状況ではない。

 ロン毛を楽しむ輩には滅びを。

「ぬぅんっ!」

 森林火災上等。

 全力でファイアボール。

 ムチムチコンビは自分より後方に居る。前方には縦ロールとキモロン毛、それと同所を囲う近衛連中のうち幾らばかりか。であれば、遠慮などする必要は無い。何もかも燃やし尽くしてくれよう。

 ロン毛がそんなに偉いのかよ。ロン毛なんて、ロン毛なんてなっ。

「一瞬で終わりにしてやろうとは、こちらの台詞ですっ!」

 奇跡のロリ巨乳を失うのは非常に惜しい。

 だが自身の命には替えられない。

 迫るキモロン毛に向けて両腕を突き出す。

 俺も世間に認められたロン毛ライフを楽しみたかった。

 ロン毛っていうのは、ブサメンの憧れなんだよ。

 ロン毛、ロン毛として、自信満々に生きたかった。

 云々。

 思わず熱が入って、なんら必要でない咆吼が口から漏れる。

「ぉぉぉぉおおおっ!」

 同時、正面に魔法陣が浮かび上がる。

 その中央に一瞬、蝋燭の先ほどの炎が灯った。かと思えば、生まれたばかりの火気は早々に膨れあがり、巨大な炎の固まりとなる。それはクリスティーナ戦で投入した十メートル超の巨大な火球である。

 近隣一帯の木々を即座に灰と化し、迫るキモロン毛さえも巻き込む。

「……お、お嬢様っ! お下がりくだっ……」

 炎の向こう側に声が沈んだ。

 構わず撃ってしまえファイアボール。

「くぅらえぃっ!」

 腕へ力を込めるに応じて、前方へすっ飛んでゆく炎の固まり。

 キモロン毛の後方に立っていた縦ロールや、縦ロールの近衛も巻き込む。更に向かう先、衰えるところを知らない火球は、後方に続く木々さえも飲み込む。

 延々と直進、フルオートメーション焼き畑農業的な。

 都合、段々と遠退いてゆくファイアボールの背を見送り、林中に生まれたるは焼け焦げた地肌を去らず、幅十数メートルほどの街道だ。

 煮立った土や石ころが表面でグツグツいっている。冷えて固まるころには、良い具合に平らな道となっているのではなかろうか。

 ややあって、遠方にズドン、大きな炸裂音が響き渡った。

 事後処理も完璧である。

 生き残った近衛たちは瞬く間、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
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