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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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特典SS(エディタ先生、ロリゴン、ソフィアちゃん)

【エディタ先生視点@呪いが治癒した翌日、自宅で田中とトークするシーン】


 そろそろ日も高くなろうかという頃合いのこと。

 私は非常なる緊張と共に、その男を自宅に迎えていた。

 否、自宅と称するには些か問題のある家屋だろうか。この国の法規に従えば、既に私の所有権は喪失しており、代わりに目の前の男が保有している。昨晩、自室のタンスに証書を発見した。印も確かなもので、紛うことなく公文章であった。

 にも関わらず、目の前の男はそれら全てを、私に譲渡して家を出て行ったのだ。

 かと思えば、昨日の今日で再び、このアトリエを訪ねて来た。

 その場の格好つけで語ってみたものの、やはり返せと言われるかと思った。それならそれで仕方がない。なにせ命を助けられたのだ。アトリエの一つや二つ、代償としては安いくらいである。さっさと身支度をして出て行こうと考えていた。

 それがどうしたことだ。

「あぁ? 若返りの秘薬のレシピだと?」

「えぇ、もしよろしければご教示願えませんでしょうか」

 この男は見返りとして、若返りの秘薬のレシピを求めてきた。

 よりによって。

「先生の著作のなかで唯一、そこだけページに欠けがありました」

「……まさか全てを読んだか?」

 アトリエならば構わない。あぁ、構わない。錬金術のレシピであっても、秘薬以外であれば、全てをくれてやって良い。だがしかし、今し方にヤツが口とした事柄だけは、伝える訳にはいかなかった。

 レッドドラゴンを打倒するような人物であれば、殊更に。

「すみません、まさか先生が存命とは思いませんでして」

 とりあえず、あれだ、ほら、どこぞの聖女が得意だった技を使おう。

 男は皆、これが大好きだというからな。

「ふんっ、語ってくれるじゃないか」

 大仰にも足を組んで、太股の付け根の辺りを晒してみる。

 ローブの内側、風の流れが良くなってスースーとする。

 自然と背筋が伸びる。

 なんてはしたない格好だろう。もしかしたら、見えてしまっているのではなかろうか。しかし、今見せずにいつ見せるというのだ。私には他に持っているものなど、何もないのだから。生き残る為には仕方がない。

「とは言え、流し見た限りで忘れている点も多いとは思いますが」

「ふぅん?」

 応じて即座に視線が動いた。

 チラリ、チラリ、今し方に上げた股の辺りに向かっている。

 多分。

「スルペマ液を調合する際に利用する中和剤の材料は?」

 胸がドキドキと鼓動を早くする。

 これを悟られぬよう、強気な眼差しで問うた。

 いつだか書籍に綴じた内容の一節だ。本文中には書かれていない。もちろん、目次にも挙がらない液体である。脇に少しばかりスペースを取って述べたコラムであるから、余程のこと熟読していない限り、目が触れることはないだろう。

「ある著作にはザーンメ液との記載がありました。しかしながら、その二年後に書かれた別の著作には、同液にラフェの実から抽出した油をニ対一の割合で混合することにより、効能を向上させることが可能とのコラムが記載されていたと思います」

「…………」

「どうでしょうか?」

 くそう、よく読んでいるじゃないか。

 こうなったら、もう少し太股を上げよう。

 強行手段に出られたら大変だからな。

 それに少しだけだが、異性に肌を見られるというのは、悪くない気がしてきた。自分という存在が、世界から欲せられているという感じ。長らく独り身であった為か、そんな僅かな感慨が喜ばしく感じてしまう。

 ただ、まさか悟られる訳にはいかないから、表情は厳しくな。厳しく。

「……ふんっ、大した人間だな」

「先生ほどではありませんが、多少の教養は持ち合わせておりますので」

「確かに、貴様の言うとおりだ。指摘されたレシピには欠けがある」

「何か理由が?」

「……別に、そう大した理由ではない」

「差し支えなければ詳しいところを教えて頂きたいのですが」

 この者が言うとおり、若いというのは、それだけで大きな価値だ。特に寿命の短い種族にとって、老いとは切実な問題だろう。恐らく私は、この男が抱える問題を、真に理解することは敵わない。何故ならば私は老いないから。

 どうして返したものだろう。

 とりあえず、もう少しばかり股を開いてみようか。

 思ったより食いつきが良い。

 真面目な顔で真面目なこと語っている割には、目玉がギョロギョロとせわしなく動いて、こちらの股間の辺りを窺っている。なんて助平な男だろう。このような幼い肉体でも効果があるとは、想像した以上の成果である。

 大人の色香を意識して、足を組んだり身動ぎをしてみたり。

 一方で問い掛けに対しては、如何様に回答したものかと頭を悩ませる。

 そんなことをしていると、続けて相手から反応があった。

「すみません。勝手に書籍へ目を通したことに関しては謝罪します。ただ、私はどうしても知りたいのです。他に条件があるのであれば教えて下さい。お願いします」

「謝罪する必要は無い」

「ではせめて、必要な材料だけでもお教えて貰えませんか?」

「っ……」

 攻めてきたな。

 どうやら太股だけでは足りないようだ。しかしながら、流石にこれ以上は、私としても抵抗がある。冷静に考えてみれば、目の前の男はレッドドラゴンの討伐に関わるような人物だ。腕っ節も相応だろう。過剰な挑発は非常に危険である。

 ただ、なんだろう。

 これ以上を見せたら、どうなるのだろうか。

 根拠の知れない、焦りに似た好奇心が、胸の鼓動を早くさせる。

「先生、まだ体調がよろしくないのですか?」

「ち、違うっ! 違うぞっ!?」

「そうですか? であれば良いのですけれど」

「あのページについては、私も少し記憶が曖昧なところがある。しばらく頭を整理する猶予が欲しい。そう長く待たせることはしない、それでは駄目か?」

「よろしいのですか?」

「当然だ。昨日、あれだけ私の方から催促したのだ」

「しかし、無理矢理というのは好きませんので……」

「う、うるさい。いいから大人しく待っていろ」

 どうしよう、やはり見せるべきだろうか。

 足を組み直す振りをすれば、きっとより自然に露出することができるような気がする。そうだ、それが良い。それなら変には思われない筈だ。違和感を持たれることなく、私は更に深いところを晒すことができる。

 よし、それでいこう。

「承知しました。では、今日のところはこれで失礼しますね」

 え、ここまで攻めて帰るのか。

 いやまあ、私としては助かるのだけれど。

 うむ、助かる。

「……あぁ」

「本日はありがとうございました。エディタ先生」

「いや、構わない。秘薬のレシピについては難しいが、他であれば、なんでも応じてやる。このアトリエが欲しいというのであれば、くれてやっても良い。既に不要かも知れないが、棚にある本も全てな」

「ここは貴方のアトリエです。家を大切に思うからこそ、私は貴方からこのアトリエを奪うことはできません。私は私で、いつか自分に相応しい家を手に入れてみせます。その時はエディタ先生もお招きさせて頂きますね」

「……そうか」

「はい」

 相手から切りだされて、少し冷静になった。

 私はなにを考えていたのだ。

 より自然ってなんだよ。

 変態じゃないか。

 くそう、癖になったらどうしてくれる。

「それなら一つ、こっちから注文をいいか?」

「なんですか?」

「こうして尋ねてくるのは構わない。茶の一杯くらい煎れてやる。胸や股にチラチラと視線を向けるのも構わない。こんな貧相な身体で良ければ、幾らでも見れば良い。ただ、私を先生と呼ぶのは止めろ。絶対だ」

「先生は先生ですよ。非常に優れた錬金術師の先生じゃないですか」

「それが苛立たしいんだよ。貴様は私を馬鹿にしてるのか?」

「いえいえ、滅相もない」

「次に呼んだら、仮に秘薬のレシピを思い出しても教えてやらん。いいな?」

「……わ、分かりました。これからはエディタさんと」

「ふんっ」

「では失礼しますね。エディタさん」

「あぁ……」

 危なかった。

 次は覚えているといい。

 太股だけで上手い具合に魅了してやるのだから。








【ソフィアちゃん視点@ドラゴン退治から帰宅直後のシーン】


 辛く苦しかったドラゴン退治。

 私自身がなにかを成した訳ではありませんが、皆さんに付いて行くだけでも、それはそれは非常に困難な荒行でありました。その全工程を終えたところ、数日ぶりに自宅へ帰った私を待っていたのは、驚きに目を丸くした父親の姿です。

 どうやら娘が生きて返ってくるとは、夢にも思わなかったようですね。なんて薄情な人でしょう。這々の体で玄関の戸口を越えた私の姿を目の当たりとして、いの一番、まさか化けて出たか? などと呟いてくれました。

 幾らなんでも酷いと思います。

 ただ、文句を言うのも面倒臭くて、私は無言のまま自室に戻りました。

 すると慌てた彼は、駆け足で調理場に飛んでゆきました。しばらくを待つと、部屋のドアがノックされました。廊下から姿を現した父は、盆に一杯のスープを乗せておりました。そして、これを机の上に置くと、碌に言葉を交わすこともなく去ってゆきました。

「……おいしい」

 僅か数日ばかりの留守ながら、とても懐かしい味ですね。

 幼いころより飲みなれた風味が、明日からはまた、これまでと変わらず飲食店の娘としての生活が始まることを予感させてくれます。カップが空になったところで、ようやっと、本当に帰ってこれたのだと、実感いたしました。

 人心地ついた気分です。

 しかしながら、依然として問題は山盛りです。とりわけ早急に解決しなければならないのが、懐に収まった革袋の中身です。自室に設えた父手製の机に口金をひっくり返して、収められていたモノを確認します。

 いちまい。にまい。さんまい。よんまい。たくさん。たくさん。

「…………」

 たしかにございます。

 金貨が百四十二枚もございます。

「こんな額、ど、どうすれば……」

 正直、怖いです。

 喜びよりも恐怖が先立ちます。

 一、二枚くらいなら、もう少し現実味を伴い受け取れたと思います。しかしながら、三桁を越える金貨の山は流石に恐ろしいです。父親と私や私の未だ見ぬ旦那様が、二世代に渡り店で稼いだとしても、ここまでの額を稼ぎだすことは困難でしょう。

 それがこうも簡単に、私の机の上に乗っています。

「…………」

 これは人を壊すことのできるお金です。

 どれだけ真面目な人であっても、これだけの金貨を目の前に並べられたら、きっと、容易に道を誤ってしまうでしょう。それは今し方にスープを届けてくれた、我が家の大黒柱であっても、決して例外ではありません。

「……誰にも見せられませんね」

 人が殺せる額ですよ。

 万が一にも見られてはいけません。

 父に限らず、誰にも知られてはいけません。

 幸せと不幸は紙一重なのです。

「と、とりあえず、他のモノに変えた方が良いですよね……」

 現金のまま自宅に置いておくのは危険です。

 なにかしら品に変えて、適当なところに卸させて頂くのが良いかも知れません。卸先を幾つかに分けて、支払いを引き伸ばしたのなら、当分は誤魔化せるでしょう。

 これを繰り返してゆけば、その手の処理に疎い父はきっと気づきません。伊達に家の帳簿の管理も任されておりません。

 ええ、そんな感じで行きましょう。

 なんて考えていたところ、再び部屋のドアがノックされました。

 扉の向こう側から響いたのは、聞き慣れた父の声です。

「ソ、ソフィア、お前にお客様がいらしているぞっ!?」

「え? 私にですか?」

 せっかく良い感じで去って行ったのに、肝心なところで残念な父親ですね。

 ただまあ、お客さんを無視する訳にはいきません。

「すぐに下まで降りてくるんだっ!」

「はい、分かりました」

 とりあえず、お金は革袋にしまって机の中です。

 鍵もちゃんと掛けておきましょう。

 廊下を駆けて、階段を下ります。

 大急ぎで一階にある店舗フロアまで向かいました。

 お店の出入り口付近には、見知らぬ男性がいらっしゃいます。良いところの執事さん然とした姿格好をしていらっしゃいます。

 また、彼の背後には数名ばかり、メイドさんの並ぶ様子が窺えます。更に彼女たちの後ろには、店先に留まった馬車が確認できました。

 父親はと言えば、彼らに酷く萎縮した様子でペコペコとしてます。

「ソフィア、こちらはファーレン様のお使いだそうだ」

「え……」

 どこかで聞いたような名前です。

 そうですね。

 ドラゴン退治の折に、タナカさんと仲良くしていた貴族様です。

 つい先日まで顔を合わせていたので間違いありません。

「貴方がソフィア様で間違いありませんでしょうか?」

 執事の方が父から私に向き直り、お口を開かれました。

「は、はいっ!」

「ファーレン様からの言伝を受けて参りました」

「あの、そ、それはどういった……」

「貴方には本日より、学園でメイドとして働いていただきます」

「……え?」

 なんですか、その突拍子もないお話は。

「お手数ですが、我々と共に来て下さい。どうぞ、よろしくお願い致します」

「あの、わ、わたしはこの店で他に仕事がっ……」

「お父上には既にお話を通させて頂きました」

「すまないな、ソフィア……」

「ちょ、ちょっと、お父さん、私がいなくなったらお店の仕事はっ……」

「その点は大丈夫だ。気兼ねなくお勤めを果たして来るといい」

「っ……」

 ちらり、その手に目を向けると、なにやら革袋が握られています。

 この人、買収されましたね。間違いありません。

 一度ならず二度までも娘を売り払うなど、とんでもない父親ですよ。

 まあ、相手が貴族様とあらば、断ることが難しいのは分かりますけれど。

「どうぞ、こちらです」

「…………」

 対価まで頂いてしまった現状、まさかお断りすることも難しいでしょう。

 一介の町娘にすぎない私には、他に選択肢などございません。

「……はい」

 せっかく帰ってこれたと思ったのに、またお出かけです。

 悔しいです。

 切ないです。

 ここ最近、どうにも運がありませんね。









【ロリゴン視点@ぺぺ山で退治された後、首都カリスにやってきたシーン】


 負けた。

 負けてしまった。

 くやしい。

 ニンゲンなんかに。

『…………』

 八つ当たりをしたせいで、巣が壊れてしまった。

 もう住めない。

 頑張って作ったのに。

『…………』

 悲しい。

 とても悲しい。

 おかげで、もっとくやしい。

『…………』

 あのニンゲン、どうしてあんなに頑丈なんだ。

 倒しても倒しても、よみがえる。

 思い出しただけで、くやしくてくやしくて、尻尾が動いてしまう。

 ことさらに巣が壊れる。

『ぐるるるるる』

 唸り声を上げると、遠くで雑魚の吠える声が聞こえてきた。ただ、それもしばらくすると、静かになる。どうやら逃げていったようだ。

 そう、それでいいんだ。

 そうじゃなきゃだめなんだ。

 だというのに、あのニンゲンはどうして。

『……ぐる』

 我慢ならない。

 このままではいられない。

 眠れそうにない。

 居ても立ってもいられない。

『…………』

 行こう。

 たしか、サイトウといったか。

 ぜったいにゆるさん。



◇◆◇



 飛んできた。

 奴らを送っていった先だから、ちゃんと覚えている。

 ニンゲンどもの集落だ。

 この辺りだと、一番大きい集落だから、ぜったいに忘れない。

 ここに、あの男がいるらしい。

『ぐるるるる』

 覚えのある場所に着地しよう。

 たしか、ファーレンとか呼ばれていたニンゲンの巣があったはずだ。

 この辺りはゴミゴミとしているが、あそこには広い場所があった。

 どれだけのニンゲンが、私に踏み潰されようと、なんら構わない。

『…………』

 構わないが、また、あのサイトウとかいうヤツが出てきたら面倒だからな。

 ニンゲンは仲間がやられると、わらわらと集まってくる。

 別にニンゲンが怖いわけじゃない。

 そうだ。

 そのとおりだ。

『ギャース!』

 着陸した。

 ひとつ吠えたら、ニンゲンがわらわらと集まってきた。

 ふん、雑魚が。

 何匹集まろうと、私の敵ではないな

 ただまあ、なんだ、今は大人しくしておこう。

 そう、あのニンゲンがやってくるまではな。

 私はそこいらの阿呆なドラゴンとは違う。

 賢いのだ。

 だから、大人しく待ってやろう。

『…………』

 しばらく待っていた。

 何もせずに待っていた。

 すると、サイトウを名乗るニンゲンが現れた。

 だが、前に見た時と違うような気がする。

 こんなだっただろうか。

 いや、もう少し、頭の部分が暗くて、全体的に黄色かった気がする。

『だから貴様は何者だ? 私はサイトウを呼んだのだ』

「だ、だからっ、ぼ、ぼ、ぼぼ、僕がサイトウだっ!」

『よもや私が人で無いからと、偽っているのではあるまいな? 以前と比べて、髪の色が些か明るくなっているのではないか? もっと暗い色をしていた筈だ』

「これは、じ、地毛だっ! 僕は決して自分を偽ってなどいないっ!」

『本当か? どことなく違うような気がするが……』

「そのようなこと知るものかっ! ド、ドラゴンが、このような場所に何の用件だっ!?」

『ふむ、まあ良い。人間のような小さき存在、私には碌に判断がつかぬ』

 そう言われると、そんな気がしてきた。

 でも、なんか違ったような気もする。

 わからない。

 わからないぞ。

 ニンゲンの見分けなど、これまで考えたことがなかった。

 どれも等しく小さいから。

 まあいいか、これがサイトウなら、これを倒して帰ればいい。

 そうしたら私は最強だ。

「アレンさんっ!」

 む、なんだか耳に覚えのある音が聞こえた。

 ニンゲンの出す音だ。

『ぬっ……』

 アイツだ。

 アイツがやって来たぞ。

 やっぱり別じゃないか。

『こうして並んで見ると、あぁ、その黄色い肌は見覚えがあるぞ、ニンゲン』

「無駄にもの覚えの良いドラゴンですね」

『貴様、タナカと言うのかぁ……』

 騙された。

 くそう。

 悔しい。

 白い方のニンゲンめ、この私に嘘を吐いたな。

『やはり違ったではないか。小癪な真似をしおってからに』

 睨んでやると、ビクリ、震えた。

 そうだ。

 それでいい。

 ニンゲンはそういうものなのだ。

 だというのに、このタナカとかいう個体は――。

「僅か数日で再来とは、随分と足の軽いドラゴンですね」

『貴様との一戦を思い起こしては、夜も眠れぬほど苛立ちを覚える』

「先んじて絡んできたのは貴方ですし、力が及ばなかったのも貴方です。それもこれも自業自得じゃないですか。ここで負けたら本格的にメンツ丸つぶれですよ?」

『ぐっ……』

 このまま踏み潰してやろうか。

 いいや、だめだ。

 踏み潰しても死ななかった。

 しかも反撃された。

 炎を吹かれて、とても熱かった。

「お帰り願えませんか? 街の人々が驚いています」

『……嫌だ』

「では、どうしたらお帰り願えますか?」

『…………』

 くそう。

 どうしよう。

 そんなの、私だって分からない。

「百歩譲って私を尋ねるのは良いとしましょう。しかし、自分の図体ぐらい考えて下さい。その身体で街に入られては非常に迷惑です。ファーレンさんの家の庭は貴方の着陸場じゃないのですから」

「いや、別に私は構わんが……」

 む、顔に毛の生えたヤツが、良いことを言った。

 口の周りに毛が生えてるヤツだ。

 なかなか見どころのあるニンゲンじゃないか。

『な、ならばっ……』

「ということで、今日のところはお帰り下さい」

『っ……』

 このタナカというニンゲン、嫌いだ。

 大嫌いだ。

 いつか絶対に食ってやる。

 頭から丸かじりにしてやる。

「でなければ、その無駄に大きな図体をなんとかすることですね」

『……良いだろう』

「ええ、ではそういうことで」

『覚えていろ、タナカ……』

「皆さん、お客様がお帰りです。どうか杖を収めて下さい」

 覚えていろよ、タナカというニンゲン。

 いつか絶対、この私を恐れさせてやる。

 そして、丸かじりだ。

 丸かじりなんだからな。

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