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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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南部諸国 三

【ソフィアちゃん視点】

 タナカさんが井戸の中に消えてから一晩が経ちました。

 我々ドラゴンシティの面々は、日の出と共に執務室に集まって会議の最中にございます。ゴンザレスさんやノイマンさん、フィッツクラレンス公爵も含めまして、こちらの街に関係する方々が、一人の例外なく同所に顔を合わせております。

 タナカさんの不在を受けまして、今後の対応を検討している次第です。

 会議の議題は大きく二つございます。

 一つは魔王様討伐の事後処理についてです。事務処理だけなら、タナカさんが不在であっても進めることができます。しかしながら、対外的な発表はそうともいきません。当事者が不在のまま戦勝パレードなど、前代未聞でございます。

 そこで重要になってくるのが、もう一つの議題、タナカさんの行方の捜索となります。果たして彼はどこへ行ってしまったのでしょうか。現在も執務室では、集まった皆様の間で意見が飛び交っております。

「今すぐにでも各国へ通達を出すべきだわっ!」

「リズ、それは待ったほうがいい。この状況で彼が行方不明だと他所の国に知られるのは得策ではない。それこそタナカ伯爵の努力が全て無意味になってしまう。情報の開示は最低限にするべきだ」

「だけれどパパ、そ、それでどうやって探すと言うのっ!?」

「リズの言いたいことは理解しているし、私も君と同じ気持ちだよ。フィッツクラレンス公爵としては、西の勇者様を担ぐほうが、彼を担ぐより遥かにやり易い。ただ、それでも今回の件に関しては、他の誰でもないタナカ伯爵に報いたいのだよ」

「っ……」

「魔王を討った名誉は他の誰でもない、彼のものだ」

「でも、し、死んでしまったらそれっきりなのよっ!?」

「……大丈夫だよ、リズ。彼ほどの男がそう簡単に死ぬものか」

 エステル様、とても荒ぶっていらっしゃいます。

 これに答えるフィッツクラレンス公爵も、非常に難しそうなお顔をしていらっしゃいますね。エステル様の心配は十分に理解できますし、一方でフィッツクラレンス公爵の仰ることも、分からないでもありません。

 魔王討伐の栄誉です。

 誰だって喉から手が出るほどに欲しいことでしょう。

 そうしたお二人とは別に、テーブルを囲ってあれこれと言葉を重ねていらっしゃるのが、ファーレン様やエルフさん、それに学園都市からいらしたジャーナル教授といった、魔法にお強い方々です。

「エルフの錬金術師よ、何か魔法的な痕跡は残っていなかっただろうか?」

「昨晩から色々と試しているのだが、今のところこれといって手掛かりは掴めていない。だが、ヤツを攫った魔法が空間魔法の類いであることは間違いない。もう少しばかり時間を掛ければ、あるいは何か分かるのかもしれない」

「そうか……」

「この者でも見つけられないとなると、流石に難しいかもしれんのぉ」

 エルフさんは昨晩、徹夜で作業に当たっていらっしゃいました。目の下には大きなくまが浮かんでいらっしゃいます。メイドもまた何度か、彼女の下へお夜食やお茶など運ばせて頂いたので、その努力は存じております。

 しかし、そんな彼女でも手掛かり一つ掴めていないようです。

 本当にタナカさんは、どこへ行ってしまったのでしょうか。

『ええい、さっさと探しに行くぞっ!』

 痺れを切らしたドラゴンさんが声を上げました。

 そんな彼女はいつの間にか場所を移動しており、背後には廊下に通じるドアがございます。たしかにドラゴンさんの機動力があれば、他の方々が行うより効率的にタナカさんを探すことができるかもしれません。

 しかし、それでも宛のない人探しというのは、とても大変だと思われます。自ずと思い返されたのは、大聖国での一件でしょうか。たった一つの町の中であっても、人一人を探すのは大変でございました。

「探しに行くとしても、最低限の当たりはつけておくべきだ。世界は貴様が思っているより、遥かに巨大で複雑に出来ている。手当たり次第に向かったところで、ヤツの飛ばされた先を引き当てることは難しい」

『ぐるるるるる、私の翼なら大丈夫に決っているっ!』

「馬鹿を言え、そのような運任せに向かってどうにかなるようなものでは……」

 そう口にしたところで、ふとエルフさんが何かに気づいた様子です。

 ドラゴンさんに向かわれていた視線が、不意にこちらへと向きました。

「いや、なるかもしれん」

 その口元にはニヤリと、なにやら笑みが浮かんでおります。

 なんでしょう。

 どうにもこうにも嫌な予感がしてまいりました。



◇◆◇



 醤油顔が自信満々で放った召喚魔法は、可愛らしい鳥さんを呼び出した。

『ふぁきゅー! ふぁきゅー!』

 一生懸命に羽ばたいて、それでも一向に飛び立つ様子がない姿は、どこか微笑ましいものを感じさせる。聞きなれない妙ちくりんな鳴き声も、こうして繰り返し耳にしていると、心地良く感じられるから不思議である。

「メイスフィールド様、こちらが本日から貴方様に仕える真なる召喚獣です」

「…………」

 流石の坊ちゃまも言葉がないようだ。

 あまりの可愛らしさにメロメロなのだろうな。

 ということにしておく。

「さぁ、我らが盟約に従い、彼の者より坊ちゃまを守るのです」

 我々の正面に立つリーゼント少年を見つめて、鳥さんに指示を出す。

 別に盟約など交わした覚えはないのだけれど、召喚魔法ってそういうものなんじゃなかろうかと、適当に台詞など口にしてみた。本人にしてみれば、瀕死の重症から復帰した直後のことで、大変申し訳ないと思う。

 ただ、それでも鳥さんは童貞の声に答えるよう、リーゼント少年に向き直った。

 くるりと方向転換して、ブサメンの側にお尻が向く形だ。

『ふぁっきゅー!』

 どうやらこちらの意図は正しく伝わった様子だ。

 ラブリーなお尻をぷりぷりと振りながら、威嚇するように鳴き声を上げる鳥さん。時折、バサバサと羽をバタつかせたりして、一生懸命な感じが非常に良く伝わってくる。頑張って戦おうとしている感じが、見ている側にもひしひしと伝わってくるぞ。

 なんかこう、拾い上げて抱きしめたい気持ちになってきた。

 持って帰ってエディタ先生に自慢したい。

「いかがでしょうか? メイスフィールド家が誇る魔獣の恐ろしさは」

「っ……」

 問いかけると、ハッと我に返った様子でリーゼント少年が答えた。

 今の今まで召喚獣に意識を奪われていたようだ。

「こ、こんな小さな鳥に何ができるってっていうんだっ!」

「見た目に騙されると、痛い目を見ますよ?」

 適当に語ってみたけれど、実際のところどうなのだろう。

 こういうときこそステータスウィンドウの出番である。



名前:ダフィ
性別:男
種族:フェニックス
レベル:7
ジョブ:派遣
HP:3120/3120
MP:4201/4201
STR:4302
VIT:3200
DEX:1839
AGI:5201
INT:6210
LUC:6201



 マジかよ。

 もしかしなくても、いつぞや暗黒大陸で遭遇した鳥さんと同じ種族じゃないか。サイズ的に考えて、あれの幼生であると思われる。こんな可愛い子が、あんな大きくなっちゃうのかって、流石に驚く。

 今のところはヌイと大差ない程度であるが、これが成長したらどうなるのか少し怖い。しかも過去に争った成体は、かなりおバカであった。あれは果たして個体の特性であったのか、それとも種としての性質であったのか。

 当面は醤油顔と共にメイスフィールド家のペットとして召し抱えてもらおう。

「じょ、上等だ! こんな鳥に遅れを取るものかっ!」

 真面目な表情となり、鳥さんに向き直るリーゼント少年。

 すると、そんな彼に対して、周囲からは非難の声が飛んだ。

 主に女子生徒から飛んだ。

「すごい可愛い」「もしかして、あんな可愛い子に魔法を撃つつもりなのかしら?」「いくらバーズリー家の方でも、流石にそれはどうかと思うわ」「私も召喚魔法、学んでみようかしら」「どうやって呼ぶのかしら?」「私もやってみたいわ」「あんな可愛い子をどうこうするなんて、ちょっと酷いわよね」

 非常に心強い援護射撃である。

 おかげでリーゼント少年はタジタジだ。

「ぐっ……」

 一方で鳥さんはといえば、変わらず羽をバサバサとさせている。ぴょんぴょんと飛び跳ねたりしながら、威嚇の構えを継続である。呼び出されて直後にも関わらず、どうやら醤油顔からのお願いを真摯に受け止めて下さったようだ。

 思ったよりも忠実な生き物である。

 なんだか逆に申し訳ない気持ちになってきたぞ。

「よ、他所から魔法使いを雇うなど、特待生らしからぬ行いだっ!」

 少なからず焦った様子で言い放つリーゼント少年。

 こうして世界を異にしても、学生生活でイニシアチブを握るのは、、女子生徒を味方に付けた者のようだ。結果的に彼は捨て台詞を吐いて、同所から去っていった。取り巻きの生徒たちも同様である。

 廊下の角を曲がった辺りで、一団の姿は我々から見えなくなった。

 これを確認したことで、鳥さんが醤油顔を振り返る。

 そして、どこか自慢げに胸を張ると、一声大きく鳴いてみせた。

『ふぁきゅー!』

 なかなk良い仕事をするではないか。

「この魔物は、ほ、本当に貴様が呼び出したのか?」

「色々と疑問があることかとは存じます。ですがメイスフィールド様、まずは自らに与えられた仕事を見事に果たしてみせた彼に、栄養のある食事と、お褒めの言葉をどうか、お願いできませんでしょうか」

「あぁ……分かった」

 そろそろこちらの学校も、お昼休みだと思うんですわ。



◇◆◇



 場所を変えて同校の中庭まで移動した。

 つい先刻までブサメンが暇を潰していた庭先のベンチに、坊ちゃまと並んで腰掛けている。膝の上には共に学園の食堂で仕入れた弁当がある。本来は食堂内で食べるもののようだが、給仕のメイドさんにお願いしてテイクアウトさせて頂いた。

 なんでも屋外で食事をとる者はあまり多くないようで、中庭もまた他に人の気配はみられない。お貴族様ともなると、毎日の食事の作法にも色々と求められる仕来りがあるのだろう。おかげで同所は我々の貸し切りである。

「この魔物は、本当にお前の魔法で召喚されたのか?」

「さて、どうでしょう。メイスフィールド様の思いが通じたのかもしれません」

「…………」

 二人の見つめる先には、鳥さんが座っている。

 醤油顔と坊ちゃまの間のスペースだ。

 その正面には、我々が手にしたものと同一の弁当が並べられており、彼はこれをキュウキュウと喉を鳴らしながら、美味しそうにパクついている。鳥類というと木の実や虫が主食かとも思ったのだけれど、意外と何でも来いのようだ。

 ちなみに本日のランチメニューは、メインディッシュの肉料理をサンドイッチしてもらったバーガーに、付け合せのサラダとなる。鳥さんは肉だけでなくパンやサラダも満遍なく喋んでいる。そういう健康志向なところ、凄く良いと思う。

「どうして、どうして私ではなく、お前なのだろう……」

「メイスフィールド様?」

 醤油顔の召喚魔法を目の当たりにして以降、坊ちゃまの具合がよろしくない。何やら酷く気落ちした様子で、お弁当にもなかなか手を付けようとしない。サンドイッチも幾つかあるうちの一つを半分ほど食べたところで、止まってしまっている。

「自分が天才だとは思わない。ただ、それでも人並み以上に努力してきたという自負はある。並の魔法使いに負けることはないと、そう信じられるだけの苦労は重ねてきた。だというのに、この結果はなんなのだろう」

「…………」

 そう言われると耳が痛いブサメンである。

 果たして彼にどのような目的があるのかは知らない。ただ、その道を遮ってしまったのが、この身であることは理解できた。だからだろうか、遮ってしまった道に代わり、新たに行く先を照らすくらいは協力したいと思う。

「メイスフィールド様は何か、為すべき使命をお持ちなのでしょうか?」

「っ……」

 それとなく問うたところ、眉がピクリと震えた。

 なんだろう、もしかして地雷だったろうか。

 今は亡き妹の敵討ち、とか言われたら流石に困ってしまうかもしれない。

「……使命は、ある」

「その為に召喚魔法が必要なのですか?」

「そうだ」

「召喚魔法でなければ難しいのですか?」

 魔法なんて他にも色々とあるだろう。

 醤油顔的にはファイアボールなんてオススメだ。あれは良い魔法である。日々の照明代わりから始まってオーク退治、ドラゴン退治、最近は魔王退治などにも利用されている。これほど頼もしい魔法はないだろう。

「そちらをお伺いしても?」

「…………」

 ちょいとハードボイルドを意識してお尋ねしてみる。

 すると坊ちゃまは顔を伏して、手元のサンドイッチをじっと見つめ始めた。なにやら思い悩んで見える姿は、その憂いを多分に美麗なものとして見る者に伝える。憂いを抱える姿も様になるイケメンだ。

 もしもブサメンが同じことをやったら、きっとお腹が一杯でお弁当の処理に困っているように見えることだろう。

「決して無理にとはいいませんが」

「……お前はグラヌスの戦いを知っているか?」

「いいえ、存じませんが」

「かつて南部諸国において、絶対の勢力を誇った大国が、隣接する小国を攻めたことがあった。国力の違いは圧倒的であって、誰もが大国の圧勝となるだろうと考えていた。それこそ数週と掛からずに、小国は陥落するだろうと」

「そのような戦争があったのですね」

「だがしかし、勝ったのは小国だった」

「それはまた何故でしょうか?」

「小国に組みした、たった一人の召喚術師によって、大国の軍勢は敗れたのだよ。それも敵を退けたのではない。完全に瓦解させたのだ。その戦争を受けて、大国は大きく国力を落とした。逆に隣国から付け込まれる隙きを作り、後に滅亡したほどだ」

「それはまたなんと、お伽噺のような出来事ですね」

「お前の言葉は尤もだ。グラヌスの戦い自体、百年以上昔の話となる。事実が歪んで伝わっている可能性は否めない。学園都市の研究者であっても、懐疑的な見方をする者は多いという話だ。だが、小国が今も残る一方、大国が滅亡しているのは事実だ」

「なるほど」

「私はこの話を眉唾だとは思わない。きっとそれはあったのだ」

 語る坊ちゃまの瞳には、何やら熱いものが宿って思えた。

 ここまで語られれば、ブサメンだって理解できる。しかしながら、そうなると彼の使命というのは、相当スケールの大きな話になるのではなかろうか。少なくとも今は亡き妹の敵討ちを行う為に、一個師団率いるような真似はしないだろう。

「メイスフィールド様は大きな使命をお持ちのようですね」

「だからこそ、こんなところで躓くわけにはいかんのだ」

「…………」

 けどまあ、そう言われるとこっちも辛いよな。

 こちとら完全に悪役じゃん。彼の使命を阻害して止まない立ち位置である。しかし、流石に事が事なので、下手に首を突っ込む訳にもいかない。ペニー帝国での自分はタナカ伯爵領の領主なのだ。国外でヤンチャとか絶対にアウトである。

「なにも召喚魔法ばかりが魔法ではありません。他に魔法を学ばれてはいかがでしょうか? この世界にはたった一撃で、巨大なお城を破壊するほどの強力な魔法も存在します。坊ちゃまはまだまだお若いのですから」

「それは当代の魔王からの一撃を言っているのか?」

「ええまあ、あれもその一例ではありますね」

 魔王様の一件に関しては、こちら南部諸国でも話題になっているようだ。そうなるとプッシー共和国と同様に、少なからず被害を受けた国があるのかもしれない。坊ちゃまの国は大丈夫だったのだろうか。

「我が祖国は小さ過ぎて相手にされなかったようだが、隣の国は首都が一撃で壊滅したという話を聞いた。たしかにそれほどの魔法があれば、召喚術を学ばずとも、我が使命は達せられるかもしれない」

「はい」

「だがしかし、あれほどの魔法を人間が放つことは不可能だ。世に名高いペニー帝国の魔道貴族や、学園都市のジャーナル教授といった方々であれば、もしかしたらもしかするのかもしれない。だが、少なくとも私にできるとは思えない」

 こんなところでまで彼らの名を聞くとは思わなかった。

 想像した以上に有名人なのな。

「こうして学園で魔法を学んでいるからこそ、自らの限界というものが見えてしまう。それを越えることができる唯一の可能性が、召喚魔法なのだ。質を数で補う、それが召喚魔法の真髄だと私は考えている」

「……なるほど」

 召喚魔法ってそういうものなのだろうか。

 それとなく鳥さんを眺めては疑問に思う。

『ふぁきゅ』

 すると何を勘違いしたのか、彼はクチバシに挟んだ野菜の一切れを飲み込む直前、遠慮がちに醤油顔の側に置いた。もしかして、おすそ分けというやつだろうか。そんなに物欲しそうな顔をした覚えはないのだけれど。

 やはり異文化コミュニケーションというのは難しい。故にだからこそ、こういった一つ一つの機会を大切にして、信頼関係を築いていきたいと思う。ブサメンは頂戴した野菜を指先で摘んで口に運び、シャクシャクと美味しく頂いた。

 代わりにこちらからは肉をプレゼントしよう。

 バーガーに挟まれていた肉の幾らかを、指先に摘んで彼の前に差し出す。

『ふぁ、ふぁきゅっ!』

 喜ぶ鳥さん可愛い。

 たしかに召喚魔法は素晴らしい魔法だ。

 でもコイツ、オスなんだよな。

「もしもお前が本当に召喚魔法を使えるというのであれば、私に召喚魔法を教えてはもらえないか? 何度繰り返しても、お前しか召喚できない私の魔法に意味があるのなら、きっとその為なのではないかと思う」

「いえ、それはその……」

 流石に教えるとか無理である。エディタ先生や魔道貴族あたりであれば、きっと上手く教えたに違いない。しかしながら、醤油顔の魔法はどれもこれも適当なので、人に教えるということができない。

 ただ、坊ちゃまは必死の形相だ。

「どうか、頼むっ」

「…………」

 困ったな。

 こうなったら、あれだ。適当に精神論を語って逸らかす作戦。

 それくらいしか浮かんでこない。

「私から魔法をお教えすることは可能かもしれません。しかしながら、私はメイスフィールド様の使命を理解しておりません。そして、過ぎた力は自身のみならず、周囲に害を与えます。これを容易に授けることはできません」

「……やはり、そうか」

「はい」

 適当に響きの良い台詞で乗り切らせて頂こう。

 などと考えたのだけれど、坊ちゃまは醤油顔が想像した以上に必死だ。

「ならば、聞いてくれ。私の身の上話を」

「メイスフィールド様?」

 話せば話すほど、坊ちゃまの表情は凄みを増していく。トーク継続の予感である。この様子だと、容易には切り上げられそうにない。美味しそうにランチを頂く鳥さんを挟んで、ブサメンとイケメンのやり取りは続く。

「私の出自は今朝も語ったとおりニップル王国だ」

「はい」

「ただし一点、お前に伝えた内容には嘘がある」

「嘘、ですか?」

「私はメイスフィールド家の人間ではない」

「……どういうことでしょうか?」

「ニップル王家、その第一王子の地位にある」

「…………」

 また面倒臭そうな話を聞いてしまったぜ。

 っていうか、それはこの場で語ってしまっても良いものなのか。しかも聞かせた相手は、つい数日前に召喚魔法で呼び出された、見ず知らずの中年オヤジである。身元不定にも程があるだろう。

「気にするな。お前の協力を得られねば、それも数年の命だろう」

「……理由をお伺いしても?」

「南部諸国統一の動きは理解しているか?」

「いえ、あまり詳しくは……」

 以前、誰かがそんな感じの話をしていたような、していなかったような。

 単語の響きは覚えているけれど、それが具体的にどのようなものなのかは覚えていない。もしかしたら、誰かが話しているのを近くで耳にした程度かも。それくらい他人事だった。遥か遠い国の出来事だった。

「我が祖国であるニップル王国の他、この学園を含む近隣一帯、南部諸国と呼ばれる界隈は今、列強諸国からの圧力に抗する為、国としての垣根を超えて、一つの連合として纏まろうという動きが起きている」

「それが南部諸国の統一というものですか」

「巨大な敵に対して、一丸となってこれに挑む。響きは決して悪くないだろう。しかしながら、はいそうですかと、素直に纏まることは難しい。これまでも互いに幾度となく争い合ってきた国々なのだ」

「はい」

 どこぞの欧州連合であっても、代表者が重い腰を上げてから実現に至るまで、実に一半世紀以上の時間を要したという。当時生まれたばかりの子供が老年となるほど、長い月日をかけて為されたらしい。ネットの記事で読んだもの。

「結果的に割を食うのは小さな国々なのだ。平民のお前にも分かりやすく説明しよう。例えば魔力に長けた魔法使いと、魔力に乏しい魔法使いがいる。それぞれはこれまで、己にあった戦場で、自らに与えられた仕事を全うしてきた」

「はい」

「だが、もしも統一がなされたのならば、それこそ明日からでも、魔力に乏しい魔法使いは、魔力に長けた魔法使いと肩を並べて、共に戦うことになる。当然、並んで戦場を駆けることなど、夢のまた夢だろう。前者は瞬く間に魔力を切らしてしまう」

 坊ちゃまくらいの年齢だと、むしろ魔力に長ける魔法使いが、魔力に乏しい魔法使いを支え、成長させてくれるのではないかとか、期待するものではなかろうか。少なくとも統一の謳い文句の一つには、そのような内容が入っている筈だ。

 何が彼をそこまで悲観的にさせるのだろう。

 ただ、そうは言っても正しいのは坊ちゃまの言葉である。少なくとも醤油顔が二、三十年を掛けて学んだどこぞの世界の歴史は、そういう感じで回っている。きっとそれはこちらの世界でも同じなのだろう。

「決して統一を否定している訳ではない。統一が為されたことによって救われる者も、少なからず生まれることだろう。しかしながら、私は母国であるニップル王国を、より優位な状況で、後世へ送り出す使命があるのだ」

「……既に条文の類いが?」

「ああ、父上の下まで届いている」

 想像した以上に重苦しいお話だった。

 きっと不平等な条約なのだろう。

 思わず食事の手が止まってしまったぜ。鳥さんから向けられる気遣うような眼差しが申し訳ない。しかし、こちとら万年平社員だった社畜風情である。国家間の統一とか、口を出すにはスケールが大き過ぎる。ドラゴンシティの運営だけで手一杯ですわ。

「理解したか?」

「だからこそメイスフィールド様は、純粋な戦力を求めているのですね」

「統一の決議が成される二年後までに、国力を上げる必要がある。しかしながら、国は既に枯れてしまっている。数年で各国と競い合うまで、育て上げることは不可能だろう。つまり、他所から調達するしかないのだ」

「……なるほど」

「更に言えば、来週にも統一に向けた全体会議が控えている」

「…………」

 限界集落が企業誘致に必死となっているようで非常に切ない。仮に達成できたとしても、一時的な時間稼ぎに過ぎない。ただ、それでも坊ちゃまは頑張りたいのだろう。たまにいるよな、こういう英雄属性の人って。誰かの為に一生懸命になっちゃう人って。

 めっちゃ格好いいじゃないですか。

「仰ることは理解しました」

「……本当か?」

「本当か、というと?」

「いくら魔法使いとはいえ、平民に今の話が理解できるものなのか?」

「ええまあ、ところどころはといった程度ですが」

 今更ながら、平民な身の上が切ないぜ。ただ、それでも魔法使いの例え話とか、とても分かり易かった。きっと相当気を遣ってご説明してくれたのだろう。本当に語りたいことの三割も話せていないのではなかろうか。

「しかしながら、そのお話ですと私には難しいですね」

「……何故だ?」

「私の召喚魔法もまた坊ちゃまと同じように、望んだ相手を望んだ通り、呼び出すことができる訳ではないのです。更に言えば、先程は偉ぶっておりましたが、その命令権を確保している訳でもないのです」

「制御は、む、難しいのか?」

「こちらの彼も、今は他の誰でもない彼自身の好意から、我々に付き合って下さっている限りでございます。そこに主従関係はありません。なので私の魔法もまた、メイスフィールド様の目的に適しているとは言えないのです」

「亜流、ということか」

「大変恐縮ですが、そのように理解して頂けたらと」

 それとなく鳥さんに視線を向ける。

 すると、ブサメンの視線に気付いた彼のクチバシが動いた。今度は細かく千切った肉の一切れをこちらへ進呈である。もしかして、先程のお肉のお返しだろうか。流石に申し訳ないので、ブサメンはそれを指先で摘んで、彼のお弁当箱に戻させて頂く。

 暖かい心遣いへの感謝から、併せて自身の弁当箱よりデザートの果実を献上。

『ふぁ? ふぁっ!?』

 この鳥さんに対して、醤油顔が支配権を持っているかと言えば、それはきっとノーである。きっと幼生が所以の純粋さが、今この癒やし空間を形作っているに違いあるまい。あとは召喚して当初の回復魔法も、少なからず影響しているのだろう。

 そうでなければ彼も、繰り返し弁当を差し出したりはしないだろう。こちらのブサメンは、彼の弁当を食べたいとは一度も思っていないし、意識したりもしていない。むしろ申し訳ないと考えたくらいだ。

 このように意思疎通が上手く言っていない時点で、両者の間に結ばれた関係は乏しいと思われる。少なくとも坊ちゃまが想定するような、兵としての用途は厳しいのではなかろうか。下手をしたら敵国に飼いならされて、敵に回る可能性すらある。

「……そうか」

「ご期待に添えず、申し訳ありません」

 最低限で取得した召喚魔法のスキルレベルを上げれば、もう少しこう、召喚した人物の意図した通りに行動するのかもしれない。ただ、もしも仮にそれが正しいとすると、なんだろう、これ以上はレベルを上げたくなくなってきたぞ。

 やっぱり最初は相思相愛ラブラブ交尾である。

 まだ見ぬ獣耳ロリータを思えば、召喚魔法のレベル固定は必須である。

 異性との出会いに恵まれないブサメンにとって、強制的に相手を呼び出せる出会い系魔法ほど刺激的な手立てはない。欲しいのは自意識の欠如してしまった肉便器ではなく、自分と対等な関係にある肉便器なのだ。膜付きの。

 好みの獣耳ロリータが召喚されるまで、気長に切磋琢磨してゆきたいと思う。

「いや、構わん。こちらこそ無理を言った」

「いえいえ、とんでもない」

 しかしなんだ、とんだランチタイムになってしまったな。



◇◆◇



 同日は本来であれば、学園で召喚魔法を専攻する教授と会う予定であった。しかしながら、昼休みでの一件により時間に遅れてしまった為、面会と相談は後日に持ち越しとなった。学校の先生はとても忙しいのだそうだ。

 そして、なんだかんだで一日を終えた同日の晩である。

 ダイニング床での夕食を終えて、就寝準備も万端。部屋の照明を落として、ベッドの上に横となり、うつらうつらとし始めた頃合いのこと。坊ちゃまから与えられた居室のドアが、不意にノックもなく開かれた。

 姿を表したのは、彼に仕えるロリメイドだ。

「起きて下さい。話があります」

 相変わらずいきなりな性格の持ち主である。

 寝る前のオナニーとかしていなくて本当に良かった。室内に鳥さんが一緒だから、どうしてもそういう気分になれなくて自重していた次第である。室内に小動物の入ったケージを置かれただけでも、気になってしまうことってあるじゃんね。

 ちなみに問題の鳥さんは、部屋の隅の方に設けた専用のベッドで眠っている。

 日中帯、坊ちゃまが授業に精を出している間、童貞が中庭で拵えたものである。構造は非常に簡単だ。木箱に干し草を敷き詰めて、その上にシーツを被せただけである。草の代わりにクッションを敷くのが、ブサメンの当面の些末な目標である。

「急ぎの用件でしょうか? すぐに参りますので……」

「ここで構いません」

 短く呟いて、ロリメイドが童貞ルームに入ってきた。

 今まさに開かれたばかりのドアは、後手に閉められてバタン。これで少しでもスカートの丈が短くなっていれば、ブサメンも良い夢を見られただろうに。どうして彼女はロングが好きなのか。これで非処女だったら目も当てられないぞ。

「……なにか私に問題でも?」

「坊ちゃまから伺いました。なんでも召喚魔法を行使したのだと」

「…………」

 まさか彼女にまで伝わっているとは思わなかった。

 果たして坊ちゃまは、こちらのロリメイドに対して、どこまでを話をしたのだろう。それによって醤油顔が行うべきトークの内容は大きく変わってくる。世間話の延長として、その一端を話題に上げた程度であれば良いのだが。

「率直に確認します。何を企んでいるのですか?」

 鋭い眼差しと共に問われた。

 これはあれだ、もしかしなくても醤油顔のことを刺客の類いと勘違いしている予感。出会ってから一晩の付き合いだけれど、彼女が坊ちゃまに対して、並々ならぬ忠義を尽くしているのは十分に感じ取れる。

「いいえ、別に何も企んではおりませんよ」

「…………」

「私と彼の出会いは、全て偶然からなるものです」

 ブサメンの真意を探るような眼差しが格好良い。

 有事の際にはご主人様を背負って、鉄火場を駆け抜けて行きそうな感じが、股ぐらに下がった二つの宝玉を、そのお口へ預けたくなってしまう。自身の急所を咥内に囚われる危うさは、きっと幸せ。

「……信じられませんね」

 ボソリ、呟くと同時にメイドさんが動いた。

 その身体が目にも留まらぬ速さで動いたかと思えば、醤油顔に肉薄している。まさか抗うことなどできない。童貞は全てを受け入れるべく、彼女の接近に対してノーアクションでウェルカム。

 間髪を容れず彼女は、ベッドの上に横たわるブサメンに馬乗りだ。

 脇腹の辺りに足を降ろして膝立ちの姿勢である。両脛でこちらの左右の腕を封じた上、右手は額に当てられて、頭部を枕へ押し付けるようぎゅうぎゅうと。右手にはいつの間に取り出したのか、ナイフが握られており、こちらの首元に突きつけている。

 マジ最高。

 こういうの待ってた。

 一連の挙動に応じて、捲り上がったロングスカートの下から、太ももが覗いている。今の今までずっと布生地の下にあった、ロリメイドの太ももだ。想像した以上にムチムチとしており、張り艶ともに申し分ない。

 彼女のこういう積極的なところ、大好き。

 こちらのロリメイドは、第三者との主従に基いて、自らの意志で動いているのだ。そこには醤油顔との間で、金銭的なやり取りが一切発生していない。これすなわち主観的タダマン。自ずと疑似逆レイプを楽しんでしまう。

「……これは?」

「もう一度問います。何が目的ですか?」

「何度問われても答えは変わりません」

「この状況で碌に動じることなく、いけしゃあしゃあと言葉を交わしてみせる。そんな相手を信じろというのですか? 私は信じられません。何かしら魔法的な干渉から、坊ちゃまの前に姿を表したのではありませんか?」

 こうして眼と眼を合わせて話をしてくれる娘さんって最高。

 それだけで心が軽やかになってくる。

「そこはどうにか信じて頂くしかありませんね」

「…………」

 今の醤油顔にできることは、この状況をどうにか長引かせることだけだ。

 もっと味わいたい、互いに触れ合う肌、頭上に眺める異性からの視線。叶うことなら、中腰となっている下半身をどっしりと、こちらの下腹部に降ろして頂きたい。そうすることで童貞は、より高みへ臨むことが出来る。

 などと考えたのが良くなかっただろうか。

『ふぁっ? ふぁっ!?』

 部屋の隅の方から、何やら妙な鳴き声が聞こえてきた。

 その特徴的な響きは間違いない、鳥さんである。

 それとなく様子を窺うと、ベッド代わりとなる木箱の中から首を伸ばして、こちらの様子を窺う彼の姿が確認できた。なにやら驚いた様子で目を丸くしている。鳥類でありながらも、想像した以上に表情豊かな生き物だぞフェニックス。

「っ……」

『ふぁっきゅー!』

 かと思えば次の瞬間、ロリメイドの身体が吹っ飛んだ。

 僅か一瞬の出来事である。

 木箱を飛び出した鳥さんが、あろうことか彼女に体当たりを敢行したようだ。対象を吹き飛ばした彼は、そのまま勢いを失って、ぽとりと醤油顔が横たわるベッドの上、シーツに身を落とした。

 一方で吹き飛ばされた側は、ベッドの上から移動すること、部屋の隅で壁にぶつかって倒れ伏す。その表情は厳しい。どうやら相当堪えた様子である。いくら幼生とはいえ、伊達にフェニックスしていないということか。

『ふぁっ……ふぁ……』

 などと感心していた手前、ふと気づいた。

 ベッドのシーツが真っ赤である。

 すわ何事かと視線を巡らせる。

 すると、なんと鳥さんのお腹にナイフが突き刺さっているではないか。正面から入って根本まで深々である。彼の全長が三、四十センチほどという点を鑑みれば、瀕死の重傷であることは間違いない。

 両者が接し合ったほんの僅かな間に、決死の攻防があったのだろう。

 出会って一日の関係ながら、ここまで必死になってくれた鳥さんに、おもわず愛しさを覚えてしまうよ。一方的に呼び出されていながらも、不細工な中年野郎と行動を共にしてくれている。その甲斐甲斐しさに胸キュンだわ。

「ヒールっ!」

 全身全霊を持って、痛いの痛いの飛んでゆけ。

 魔法陣が展開されると同時に、鳥さんの身体からナイフが抜け落ちる。

 数秒のうちに腹部の刺し傷が癒えていく。

『ふぁぁ……』

 鳥さんの鳴き声に余裕が戻った。

 心なしか気持ち良さそうだ。

 良かった。

 この様子であれば、きっと大丈夫だろう。

 一方で気になるのは、ナイフの持ち主であるロリメイドだ。

 自ずと視線が向かった先には、いつの間にやら姿勢を正した彼女の姿がある。吹っ飛んで当初は無様にもパンモロを晒していたというのに、くそう、せっかくの機会を逃してしまった。童貞は悲しみを覚える。

 代わりに身構えた姿は、腰を落として重心も低く臨戦態勢である。

「無詠唱で回復魔法、それも瀕死の重傷を即座に完治……」

「ええまあ、馬鹿の一つ覚えとでも言いましょうか」

「…………」

『ふぁ、ふぁっ、ふぁっきゅー!』

 臨戦態勢の鳥さんをシーツの上に乗せながら、ロリメイドと会話を継続。

 羽をバサバサとやっているのは、彼なりの威嚇の意志なのだろう。

「既に日が変わってしまっているかも知れませんが、本日、学園で彼から身の上話を聞きました。私のような平民には到底及びも尽きませんが、彼もまた人の上に立つ者として、とても苦労されてきたようですね」

「っ……」

 素直に自身の見聞きした話をお伝えすると、ロリメイドの表情は殊更渋いものに変化した。坊ちゃまがそこまでをブサメンに伝えているとは、どうやら彼女もまた想定外であったようだ。こっちだって想定外だったもの。

「だからこそ、今一度お伝えします。私は彼に対して協力的でありたいと考えています。それでも尚信じられないというのであれば、こう考えて下さい。都合が悪くなるまで、利用すれば良いのだと」

「それを私に信じろと?」

「はい、信じて下さい」

「…………」

 彼女がゴッゴル族だったら、もう少し簡単に信じてもらえたかも知れない。今は遠き褐色ロリータの君を思い、童貞は心を切なくさせる。ただまあ、意思の疎通が取れて直後、その背後に控えたセクハラから、軽蔑の対象となることは免れまいが。

「……ステラ、どうした? なにやら騒がしい音が聞こえてきたが」

 そうこうしていると、廊下の方から声が聞こえてきた。

 他の誰でもない、同所の家主にして彼女のご主人様である。騒ぎを聞きつけてやってきたようだ。トントントンと足音が近づいてくるのを感じる。それなりに広い学生寮だけれど、所詮は宅内である。歩けば数秒の距離感だ。

 これを耳にしたメイドさんは、醤油顔から即座に身を翻した。

「今日のところはこれで引きます」

「ありがとうございます」

 流石の彼女も、坊ちゃまの前でまで争うつもりはないらしい。醤油顔のホームステイをより良いものにする為には、やはり彼との関係が非常に重要になりそうだ。今後とも坊ちゃまとの交流は大切にしてゆきたい。

「これは私からのささやかなプレゼントです」

 部屋を去らんとする彼女の背に向けて、それとなくヒールを放つ。

 これといって外傷は見られないが、念のため。念のためだ。

「っ!?」

 彼女は厳しい表情となり、咄嗟にブサメンを振り返って身構えた。

 ただ、それが何の変哲もない回復魔法だと理解して眉をひそめる。

「なんのつもりですか?」

「怪我をされていたら大変ですから」

「……要らぬ心配です」

「であればなによりです」

「ふんっ……」

 小さく鼻を鳴らして、ロリメイドはブサメンの部屋から出ていった。

 直後に坊ちゃまと顔を合わせたらしく、ドア越しに何やら、二人が言葉を交わす声が聞こえてくる。ただまあ、醤油顔には関係のない話だ。今日は色々とあって疲れたし、さっさと眠ってしまおう。

 鳥さんもまだ小さいから、夜更かしは身体に良くないだろうし。
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