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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫
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武闘会 九

【ソフィアちゃん視点】

 第十二試合が始まりました。

 アウフシュタイナー様と覆面をかぶった方の試合です。メイドとしてはアウフシュタイナー様を応援したいですね。下手な女より女らしい出で立ちは、十代も間もない年頃と相まって、思わずギュッと抱きしめたいほどに可愛らしいです。

 今のうちから唾を付けておけば、数年後にはアレン様やゲイ子爵に比肩するイケメンになるのではないかと、ふと、そんな厭らしいことを考えてしまいます。ふいに垣間見せる理知的な瞳が、メイド的にはグッとくるのですよ。メガネとか似合いそうですね。

「先んじて仕掛けたのは、覆面の方よぉっ!」

 縦ロール様の声が会場に響きます。

 いきなり空から降っていらっしゃって、今も会場にいらっしゃいます。

 とても自由なお方です。

 隣に座った従者の方も、心なしか普段より楽しそうな表情です。

「…………」

 アウフシュタイナー様が覆面の方に向けて魔法を打ち出しました。

 彼の正面に生まれた魔法陣から、七色に輝く光の帯が幾つも飛び出してゆきます。以前、ドラゴン退治の折にもファーレン様を筆頭として、エステル様やゾフィー様が用いられておりました。紛争に際してもプッシー共和国の方々が使っておりました。

 皆さんが挙ってお使いになるので、流石のメイドも気になりました。

「あの、エ、エステル様、お伺いしたいことがあるのですが……」

「なにかしら? ソフィ」

 思い切って、お隣にいらっしゃるエステル様にご質問です。

「あちらの魔法なのですが、なんというか、その、は、流行っていたりするのでしょうか? 皆さん、あちらこちらでお使いになられているような気がするのですが」

 途端、控室に居合わせた方々から、一様にギョッとした眼差しで見られました。

 まさか注目を受けるとは思わず、それはもうどうしたことでしょう。

「あぁ、たしかにソフィは知らないでも無理はないかしら」

「も、も、申し訳ありませんっ……」

 もしかして、エステル様にまで恥を掛せてしまったのでしょうか。だとすれば、これ以上の失礼はありません。頭の中が真っ白です。こんなことなら、下らない好奇心など未来永劫、胸のうちにしまっておけば良かったと。

 慣れないことはするべきではありません。

「良いのよ。知らないのなら尋ねる。とても良いことだわ」

「……あ、ありがとうございます。恐縮です」

 エステル様、お優しいです。

 本当に素敵な方です。

 同じ女なのに惚れてしまいそうですよ。

「何かを攻撃する魔法には色々と種類があるのだけれど、対象によって得手不得手があるわ。とりわけ動きの早い生き物を狙う時、最も効率が良いとされているのが、今まさにソフィが目にした魔法なの」

「そ、そうだったのですね」

「学園都市の学会で発表されて以来、ここ二、三十年はあの魔法を習得することが、魔法使いにとっては一種の関門となっているわ。あの魔法が使えれば、少なくとも魔法使いとして職に困ることはないわね」

「べべ、べ、勉強になります!」

 まさか、そのような背景があるとは思いませんでした。流行っているだとか、そんな酷く適当なことを口にしてしまった自らが恥ずかしいです。控室に居合わせた皆さまから注目されるのも当然です。

 まるでお漏らしでもしてしまったかのようなこっ恥ずかしさでしょうか。

「けれど、ソフィの価値観は非常に重要よ」

「あの、そ、そういいますと」

「誰もが当然として受け入れていることに疑問を持つ。それこそが技術を進歩させる一番のキッカケだとファーレン卿も言っていたわ。私自身も今日、貴方に言われるまで盲目的に使ってきたのよね」

「…………」

「彼や彼の周りにいる者たちの魔法を見ていると、魔法にはもっと色々な可能性があるのではないかと、ふとそんなことを思うわ。だからソフィ、貴方の言葉は決して変ではないし、誰かに蔑まれるようなものでもないわ」

 控室全体に響くよう、声高らかに語って下さいます。

 エステルさま、なんて素敵な方なのでしょう。そんなことを言われたら、一生涯お使えしたくなってしまいますよ。思わず自分が食事処の娘であることを忘れて、身も心もメイドになってしまいそうです。

「失礼、エリザベスといったかのぉ?」

 そうこうしていると、傍らよりお声がけを頂戴しました。

 そのお姿には覚えがございます。

 学園都市からいらっしゃったジャーナル教授という方です。なんでも都市で一番偉い方だそうです。ドラゴンシティにいらっしゃってからは、町長さんのお宅でファーレン様と親しげにご歓談される姿をよく見ます。

「ええ、そうですけれど、何かご用でしょうか?」

「いやなに、今し方の飛行魔法はなかなかのものであった。もしよければ、少し話をしてみたいと思ってのぅ。あぁ、もちろん君らの話の邪魔をするつもりはない。儂もちと混ぜてもらえたら嬉しいのじゃが」

「私などでよろしければ、謹んでお相手させて頂きますが……」

「うれしいのぅ。そちらのメイドの疑問にも、気付かされるところがあってな」

 チラリ、ジャーナル教授から視線を頂戴しました。

「っ……きょ、恐縮です」

 お顔こそしわくちゃですが、その眼差しはとても力強く若々しいものに感じられます。改めて確認してみると、お体もかなり鍛えられているようで、ローブ越しにありながら、厚い胸板の存在が感じられます。

 お若い頃はさぞ格好良かったことでしょう。

 でも、今のお年を召した姿も、なかなか渋みがあって良いですね。

 タナカさんのお知り合いは、本当に格好良い方が多いです。

 いつぞやのお約束が楽しみでなりません。



◇◆◇



 ショタチンポとピーちゃんの試合が始まってからしばらくが経過した。

 その間に両者の間では、幾度となく魔法のやり取りが繰り返されていた。しかし、互いに様子見から先に進むことへ躊躇しているのか、一進一退を繰り返すばかりで、これといって試合は動いていない。

 選手の身分が観客より上である都合、ブーイングの類いは飛んで来ないけれど、会場は少なからず盛り下がって思える。会場を預かる醤油顔としては、些か行き先に不安を覚える展開だろうか。

 そうした最中のこと、不意にショタチンポが口を開いた。

「……もしかしてアンタ、学園都市で会ったヤツじゃないか?」

 彼は自らが戦う相手、その覆面の下に気づいたようだ。

 過去に一度、拳を交えた経験があるとは言え、なかなか大した洞察力である。もしかしたら、これまでに見られた慎重なやり取りは、今まさに語られたところを確認する為の時間であったのかも知れない。

 おかげで問われた側の反応は顕著だった。

「っ!?」

 全身をビクリと震わせての反応。

 おかげでショタチンポの疑念は確信に変わったようだ。

「もしかしなくても、学園都市で会ったピーコックさんだろ? オッサンに毒を飲ませようとして、失敗して、それで何処へとも逃げて行った。さっきの身のこなしとか、前に逃げ出した姿とそっくりだ」

「っ……」

 観衆の面前、酷い紹介もあったものだ。

 流石に勘弁してやれよと思わないでもない。

 もう過ぎたことじゃんね。

「試合開始直後のエアカッターも、式の展開がそっくりだった」

 おかげでピーちゃん、めっちゃ動揺している。羞恥と怒りで全身がプルプルと小刻みに震え始めている。学園都市へ出張の最中、皆々の面前で悪事を暴かれた際と、全く同じ反応である。駄目だろう、彼にそんな態度を取ったら。

「だったら、な、なんだよ……」

 ほら、さっそくヤバイ感じが。

 声色が怪しいぜ。

 ところで、ふと思った。

 陛下の椅子に爆発物を仕掛けたの、もしかしてピーちゃんだったりするだろうか。いやしかし、流石に部外者が忍び込むのは難しい気がする。ああいった要所は大会の開会以前から、ゴンちゃんにお願いして警備してもらっていた。

「まさか、まだオッサンのことを狙ってるのかっ!?」

「だ、誰が狙うかよっ! あんな不細工な男なんてっ」

 ショタチンポの突っ込みを受けて、ピーちゃんから間髪を容れず反論が上がった。やはり賞金目当ての参加で間違いなさそうだ。逆恨みの可能性は低い。陛下の椅子の爆発物も、彼とは別だと考えて良いだろう。

「不細工じゃないっ! あんなに格好いいっ!」

「はぁ? ど、どこが恰好良いんだっ?」

「全部だよっ! 足先から頭の天辺まで最高なんだっ!」

 ところでショタチンポ、その言い方は褒められた側のダメージが半端ない。不細工な外見を公共の面前でヨイショされることほど、ブサメンにとって辛いことはない。それならまだ、素直に外見は不細工だけれど内面は、みたいな感じでやって欲しい。

 まあ、内面も酷いことになっている訳だけれどな。

 相変わらず救いようのない不細工だわ。

「ふんっ、ついに頭まで狂ったか。哀れだな」

「それはアンタの方だ。学園都市から逃げ出して、今はなにをしてるんだよ。せっかく中央に抜擢されたのに、皆に迷惑を掛けて、逃げ出し、今度は何を企んでいるんだ。この大会をどうこうするつもりなら、私は絶対に許さない」

「っ……」

 ショタチンポが一番聞いちゃいけないところを聞いてしまった。

 だってピーちゃんの現職、男娼になっていたもの。しかも困ったことに、恐らく本人は同性愛者であることに、後ろめたさのようなものを持っている。もしくは自身が同性愛者であることを受け入れていない。

 覆面に隠されている為、その表情こそ窺うことはできない。しかしながら、プルプルと小刻みに震える身体を眺めれば、今の彼がどういった状態にあるのかは、手に取るように理解できる。とても可愛そうなことになっている。

「もしかして、ひ、人には言えないようなことをしているのか?」

「なっ……」

 目に見えて狼狽し始めるピーちゃん。

 これを勘違いしたのか、ショタチンポから遠慮のない質問が次から次へと、矢継ぎ早に飛んでいく。過去の経緯を思えば、仕方がないのかもしれない。ただ、もう少しばかり相手のことを考えてあげようぜ。

「やっぱりそうなんだろっ!? 今度は何をするつもりだっ! オッサンはアンタのことを許したかもしれないけれど、私は絶対に許さない! 男だったら卑怯なことをせずに、正々堂々勝負したらどうなんだっ!?」

 後ろ盾をすべて失い、それでも日々を身体一つで一生懸命生きている少年を、これ以上観衆の面前で虐めてやるな。彼は君より余程のこと強く毎日を生きているのだぞ。ただ、少しばかり他人と比較してLUCの値が低いのだ。人生に一番必要な値が。

「まさか、あの時みたいに魔王の肉片をっ……」

 おかげでピーちゃんのメンタルは急転直下。

 そのお口からは絞り出すような、陰鬱の篭もった声が漏れる。

「だ、だったら……なんだって、いうんだよ……」

 いつぞやに同じく、ゲージが溜まってしまったようだ。

 これはもう止まらないぞ。

 醤油顔は知らないぞ。

 あんまり関わりたくないもの。

「だったらなんだって言うんだよぉおおおおおっ!」

 ピーちゃんの雄たけびが会場中に響き渡る。

 これを受けては誰もが、今度は何がどうしたと注目だろうか。試合から意識が離れかけていた観客も、突如として沸騰した彼の様子に驚いたようだ。大会が盛り上がるのは嬉しいが、実情を知るブサメンとしては如何ともし難い。

 飲み物を自慢の太ももにこぼしてしまったエルフさんもいらっしゃる。

「もしかして、二人は知り合いなのかしらぁ?」

 縦ロールの声が会場に伝わる。

 無駄に良く届くボイスは、きっと、おほほ笑いで鍛えてきた成果だろう。そんな彼女の呟きは、今まさに試合を眺める皆さまの疑問を代弁するものだった。自ずと誰もの意識がステージの上、ピーちゃんに向かう。

 対して彼は、感極まった様子で呟いた。

「ああ、そうだっ! 僕だよっ! 悪いかよっ!?」

 やめておけば良いのに、その腕が動いた。

 バッとローブを脱ぎ払う。

 その下から姿を表したのは、別れた際と些か印象を変えたピーちゃんだ。

 何故か女装している。

 髪型は以前出会った時と変わらずオカッパ。これといって化粧の類も見られない。ただ、ショタチンポ並に丈の短いスカートを着用の上、胸元を大胆にも露出させるひらひらとした可愛らしいデザインのブラウス姿。

 しかもブラウスの内側では、たわわに実った胸肉が確認できる。もしかしなくても人体改造してしまった予感。肉片さえあれば魔王すら蘇らせる謎技術を美容整形に転用したのだろう。元来の中性的な顔立ちと相まり、困ったことに男とは思えない。

「……な、なんだよそれ」

 愕然とした様子でショタチンポが呟いた。

 君がそれを言うなよ。

「うるさいっ! 黙れっ! 黙れよっ!」

 喚き散らすピーちゃん。

 尤もなご意見だ。

 対して、一向に黙らないのが縦ロール。

「あらぁん? 男じゃなかったのかしらぁ? こっちも女装が趣味なのぉ?」

 胸こそ膨らんでいるが、声色は男のそれだから、当然の反応である。

 途端に観客席からは、怒涛の勢いで喧騒が立ち始める。獣耳が付いているのだとか、尻尾や羽が生えているのだとか、その手の多様性には定評のあるファンタジーな世界の癖に、男が女の格好をしていたら気になるらしい。

 先程、ショタチンポの女装趣味がバラされた際と同様だ。

「っ……」

 顔を真っ赤にして、自らの身体を抱きしめるピーちゃん。

 もしかして恥ずかしいのだろうか。下手にツッコミを入れて、逆恨みされても面倒である。この試合は縦ロールに丸投げさせて頂こう。せっかく向こうから実況席まで携えてきて下さったのだから、こういう時こそ利用しない手はない。

「お、男で悪いかよっ!? 男なんだから仕方がないだろっ!」

「わたくしに怒鳴られても困るのだけれどぉ?」

「ぐっ……」

「嫌なら止めれば良いじゃないのぉ」

「ぅ……」

 縦ロールの言うとおりである。

 そもそも何故に女装して本戦に臨んだのんだろう。

 恥ずかしいのであれば、女装などしなければ良い。彼が恥ずかしがると、見ているこっちまで恥ずかしい気持ちになってくる。一方でショタチンポの堂々とした振る舞いはどうだ。陛下の謁見まで女装で臨む傾奇者である。

 彼の求めるところが、醤油顔には分からない。

 それでも仮に、女装に関しては止むに止まれぬ事情があったとしよう。けれど、大人しくローブを羽織ったまま戦っていれば良かったのだ。素性を明かすにしても、覆面を取るだけで十分に効果はあったはずだ。何故に膨らんだ尻と露出した太ももを晒した。

 これはもしかして、あれか。ショタチンポが女装を縦ロールに褒められたのが羨ましかったのか。自分も、もしかしたら褒めてもらえるかも、受け入れてもらえるかも。そんな淡い期待が、彼を心を突き動かしたのではなかろうか。

「……答え合わせ、する?」

 すぐ傍ら、ゴッゴルちゃんから魅惑のお誘い。

 それだけは止めてあげて。

 あまりにもピーちゃんが哀れだ。

 あと、自分も知りたくない。

 そうこうする間にも、嘆きの女装男児はテンションを上げていく。別に誰が求めた訳でもないのに気分を高揚させた彼は、既に周りが見えていない。足元にブォン、魔法陣が浮かび上がったかと思えば、これより発する風がスカートを押し上げる。

 全力でパンモロ。

 最高にノーサンキュー。

「みんな死んでしまえばいいんだっ!」

 そう願う彼の股間はパオーンしていた。

 意味がわからない。

「ちょ、ちょっと待てよっ! なんでそうなるんだよっ!」

 大慌てでショタチンポが止めに入る。

 過去の経緯がそうさせたのだろう。

 コイツはやばいと。

「黙れよっ! 僕はオマエが大嫌いだっ!」

「わ、私だってアンタが嫌いだよっ!」

「そんな大したことをしていないのに、ちゃっかり上手くやって、何ら苦労することもなく、こうして安穏と暮らしていて、今もあの男の援助を受けて、顔を隠すこともなく大会に出場して、ちやほやされてっ!」

 最後にチラリ、ピーちゃんの本音が見えたような気がしないでもないぞ。

「だったら、な、なんだって言うんだよっ!?」

 応えるショタチンポも些か混乱気味だ。

「男って生き物は、穴があいていれば何でも良いんだ! 自分にとって都合の良い穴があれば、それだけで満足なんだっ! そこから先は何も見てないっ! そして、飽きたらすぐに捨てるんだっ!」

 ピーちゃんは分かっていない。

 穴と同時に、それを守る膜が必要だ。

「でも、ア、アンタも男だろっ!?」

 どれだけ罵倒されようとも、ちゃんとお返事してあげるショタチンポ。

 こうして見ると、思ったよりも良い奴である。

 エステルちゃんあたりであれば、問答無用で魔法を撃っていることだろう。

「そもそも、アンタは何がしたいんだよっ! 試合なんだから、し、試合するべきだろっ!? それが嫌なら棄権するべきだっ! アンタの言うことを聞いてると、男に遊ばれた女の愚痴にしか聞こえないっ!」

「っ!?」

 ピーちゃんの瞳が驚愕に見開かれる。

 ドンピシャかよ。

 っていうか、そんなところで驚くなよ。

 相手は十一歳の少年だぞ。

「…………」

 これにはショタチンポも少なからず怯んで思える。

 マジかよ、みたいな。

 かと思えば次の瞬間、ピーちゃんが逆ギレモードにシフトした。

「う、うぁあああああああああああああっ!」

 ステージの半分、ショタチンポの立つ側を覆うよう、巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 勝負魔法の予感。

「女々しくて、悪いかよぉっ!?」

 魔法の行使に差し当たり、彼が観客席を考慮に入れているとは思わない。ブサメンも回復魔法をスタンバイレディ。同時に隣の席のゴッゴルさん、もしもヤバそうな感じがありましたら、問答無用でお願いします。どうか何卒。

「……わかった」

 こういうとき、近くにゴッゴルちゃんがいてくれると、逆レイプして欲しい。

「…………」

 仕方がないではありませんか。

 ピーちゃんもそのように訴えております。

「ピーコック選手、これは一気に決着をつけるつもりでしょうかっ!」

 ブサメンはさっさと試合を終わらせたくて合いの手実況。

 続くところ、女々しい男の雄叫びが会場に木霊した。

「お、女の格好をしていると、男に優しくして貰えるんだよぉおおおおお!」

 なんて胸に刺さる主張だろう。

 同時に魔法陣が発動。

 これ以上無い決め台詞を伴い、ピーちゃんの魔法が放たれた。

 急に輝きを増した魔法陣から、巨大な炎が立ち上る。ファイアウォール的な魔法だろうか。ただ、ウォールというには幾分か太い。ピーちゃんが立つ地点よりショタチンポ側の半分を覆うように生えてズドン。

 高さは三階建てのエディタ先生宅の屋根に達するほど。ところで今この瞬間、先生のお宅を例えに出すと、その家屋までザーメンにまみれたような気分になるから不思議だよな。ピーちゃんってば完全にザー汁属性だわ。弱点はオチンポと人の優しさ。

「なによぉ? 女々しい癖に意外とやるじゃないのぉ」

 あくまで煽る姿勢を崩さない縦ロール。

 醤油顔としては、ショタチンポが心配でならない。

 万が一にも焼失していたりしたら、流石に心穏やかじゃいられないだろ。

「……大丈夫」

 不意にゴッゴルちゃんの腕が動いた。

 ピンと伸ばされた人差し指が、炎の只中を指し示す。

 なんだろうと目を凝らして、彼女が指示する辺りを凝視だろうか。すると、そこには炎の中、自らの足で歩むショタチンポの姿を発見だ。炎に全身を包まれながらも、これといって慌てた様子もなく、ピーちゃんの元に向かっていく。

「おぉっと、無事ですっ! アウフシュタイナー選手、無事ですっ!」

 きっと全身をバリア的な何かで覆っているのだろう。ドラゴン退治の折、魔導貴族がその手の魔法を用いて、ワイバーンのブレスを防いでいるの見たことある。肉体は元より、髪や服も無事である。

「ひっ!?」

 ただ、ピーちゃんとしては渾身の一撃であったようだ。

 なんら堪えた様子の見られないショタチンポを目の当たりとして、酷く驚いた表情となり、反射的に背後へ大きく飛び退いた。ステージの半分が炎に包まれている都合、彼の逃げ道は他にない。

「こんなのオッサンの魔法に比べたら、ぜんぜん熱くないっ!」

 炎の中を歩きながら、呪文らしき詠唱を始める黒髪ツインテール。

 その正面に魔法陣が浮かび上がった。

 絵面的にメッチャ恰好いいんだけれど。

「く、来るなっ! 来るなぁっ!」

 今回は取り立てて悪いこともしていないのに、完全に悪役がヤラれる直前のそれになっているピーちゃん。もしも彼に足りないものがあるとすれば、それはきっと毎日の生活における、ちょっとした心の余裕ではなかろうか。

 或いはそれを与えるだけの、無条件の愛というレアアイテム。

 ブサメンも同じものを探しているから、多少は理解できるよ。

「アンタはいっつも、他人に依存しているからそうなるんだよっ!」

「っ……」

 ショタチンポが心を抉るような突っ込みと共に魔法を放った。

 抉られたのは誰の心だろう。

 ファイアボール。

 人の頭部ほどの火球が炎の柱の中から飛び出す。

 ピーちゃん目掛けて一直線。

「う、うぉああああああああああああっ!」

 直撃コース。

 これは不味いと思った瞬間、ファイアボールの進む向きが急に変わった。カクンとフォークボールさながら、高さを落として彼の足元に着弾する形だ。ステージにぶつかったそれは、ズドンと大きな音を立てて炸裂した。

「っ!?」

 舞台が爆炎に包まれる。

 吹き荒れる炎を目の当たりとして、会場から歓声がわぁと上がった。際しては観客席の一角から、アシュレイさま頑張ってぇ! みたいな黄色い声援がちらほらと上がった。どうやらショタチンポにもファン的なものが付いているらしい。

 ゴンちゃんといい、彼と良い、アウフシュタイナー家の人間には、人を寄せ付ける魅力のようなものが備わっているのかもしれない。まあ後者は単に、ショタの女装が可愛いというだけの理由かも知れないが。

 ややあって、炎により生まれた煙が晴れる。

 ステージの上に残っていたのは、ショタチンポだけだった。

 ピーちゃんはどこへ行ったのかと、大慌てで視線を巡らせる。すると、舞台から外れること、場外にその姿を発見だ。ファイアボールにより吹き飛ばされて、そのままステージの下に落ちていた。

 倒れた姿勢のまま、ピクリとも動かない。

 打ちどころが悪かったのか、気絶してしまったようだ。

 太ももの付け根までを晒すよう、スカートがめくれ上がっている。公開がに股の刑に処された姫ビッチとは異なり、なんか可愛い感じの倒れ方をしている。更にオッパイの膨らみは大したもので、尻肉の形も厭らしいから、無性に悔しい気分だ。

「勝負あったかしらぁっ!」

 縦ロールも即座に彼の姿を見つけたようだ。

 声高らかにジャッジメント。

「この試合、アシュレイ・アウフシュタイナー選手の勝ちよぉっ!」

 問題はこの後、逆ギレした彼がドラゴンシティに対して、どのように出るかである。妙な行動に移る可能性は非常に高い。過去の実績からして、ショタチンポに喧嘩を売って終わりということはあるまい。

 下手をしたら再び先代魔王を暴走させ兼ねない。

 意外とポテンシャルが高いから、扱いに困る女装青年だ。

「…………」

「……どうするの?」

 彼には申し訳ないが、大会が終わるまで先生に頼んで眠って頂こう。

 傷ついてしまったアナルのケアには、時間が必要だ。



◇◆◇



 ショタチンポとピーちゃんの女装合戦以降は、これといって目立った試合もなく淡々と進んでいった。

 第十三試合はドラゴンシティきってのヤリチン、アレン・アンダーソン選手とプッシー共和国の宮廷魔術師であるという、ジョゼ・ペクチン選手の戦いとなった。こちらは遠距離からの魔法を得意とする後者を、懐に入り込んだ前者が切り伏せた形だろうか。

 決してペクチン選手が弱かった訳でもなく、アレンは最後の最後まで魔法を身に受けていた。それでも勝利を諦めることなく、逆転の機会を狙っていたヤリチンの粘り勝ちといったところだろうか。

 ゴンちゃんとか、めっちゃ褒めていた。それこそが男の戦いだと言わんばかり、両手放しの絶賛であった。ヤリチンに肩を貸して、医務室まで引っ張っていくほど。確かにヤツの好きそうな戦いであった。伊達に肉壁を生業としていない。

 一方で魔導貴族は終始しょっぱい顔だった。アレンの立ち振る舞いはさておいて、対するペクチン選手の不甲斐なさを扱き下ろしていた。久しぶりに魔導貴族の魔法キチガイっぽいところが見れて、醤油顔は少し懐かしい気分になった。

 いずれにせよ、どいつもこいつも分かりやすい男たちである。

 続く第十四試合はヌイとペサリーン共和国の戦士、ベイウルフとやらである。

 ヌイはヌイである。我らがドラゴンシティに住み着いた、なんちゃってドラゴンだ。ロリゴンの言葉がなければ、未だに連中が彼女と同じドラゴンであるとは到底信じられない。めっちゃもふもふしているから。

 ちなみに参加した個体は、過去に東の勇者様からソフィアちゃんを救ってくれた個体だという。仲間から稽古を受けて、更にロリゴンからアドバイスなど頂戴した上での参加らしい。大会でリベンジを狙っているのだろう。同じドラゴンな我らが町長から聞いたので間違いない。

 一方でペサリーン共和国の戦士はと言えば、色気たっぷりのわんこ系ケモミミ女戦士である。身の丈はブサメンと同じくらいだろうか。大きなオッパイとお尻、それでいて引き締まった筋肉質な腹部や腰回りが特徴的なマッスルガールだ。

 ノイマン氏に確認したところ、ペサリーン共和国とは、亜人たちがメインストリームとなる国らしい。なんでも人間に迫害された亜人たちが集まって生まれた国なのだとか。とてもファンタジーっぽくて良いと思います。

 ちなみにステータス的に互角。

 試合はヌイが勝った。

 勝因はすばしっこさに秀でたヌイによるヒットアンドアウェイ戦法。ケモミミ女戦士は数発を掠らせたところで、終ぞスタミナが尽きての降参だった。あと、試合終了直後、どこからともなくメルセデスちゃんが控室に現れて、一悶着あった。

 ケモミミも好物らしい。

 そして続く第十五試合、ドラゴンシティの関係者は不在。

 プッシー共和国から訪れた腕自慢の町民ドミニク選手とペニー帝国の第三魔法師団の団長キース選手の試合となった。後者はゾフィーちゃんの上司らしい。共に典型的な魔法使いであって、遠距離から景気良く魔法を飛ばしまくっていた。

 最終的には手の数の多さで勝るゾフィーちゃんの上司が勝った。

 そして、同日最後にして第一回戦を締める第十六試合。

 紛争以来だろうか、覆面姿で参加したダークムチムチと、ドムコーン王国からやってきたというオナルマー・ガーネット選手の戦い。どちらも共に剣を振るいながら、魔法も併用するハイブリットタイプ。

 剣を打ち合わせたり、炎が飛び交ったり、幕の内弁当的な戦いが印象的であった。この手の争いに見慣れていない観客には大好評で、観客席からは終始歓声が上がっていた。個人的にはブーちゃんの尻と乳がローブに隠れたままであって、非常に残念だった。

 最終的には慎重に攻めたダークムチムチのカウンター勝ち。

 そんなこんなで大会二日目は過ぎていった。



挿絵(By みてみん)



 明日から二回戦が始まる。

 試合数的に考えると、ちょうど折り返し地点といったところか。

 サクサクと進めてゆきたいところである。
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