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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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武闘会 八

 翌日、これといって問題もなく大会は進行していった。

 第九試合は東の勇者様が登場した。

 これに対するはインバーイ共和国の教会で大司祭に就いているシスター・マリアという人物だった。二十歳を少し過ぎた程度と思しき女性であって、大きなお尻と立派なおっぱいが印象的なグラマラス。腰下まで伸びた長い黒髪が印象的な美女だった。

 当然、醤油顔として後者を応援だろうか。

 最前線からパンモロを狙う心意気であった。

 しかしながら、勝負は一撃で終えられた。

 西の勇者様を意識してのことか、東の勇者様もまたド派手な魔法を用いて、初手により勝敗を決して見せたのである。ステータスを確認したところ、こちらもMPが五割ほど減っていた。マジ空気読めよって。

 こうまでも対抗心を燃やされると、彼ら勇者コンビの間に横たわる蟠りにも、少なからず好奇心を覚えてしまう。果たして彼らの過去に何があったのか。

 ドラゴンシティへ観戦に訪れた者たちの間でも、東西の勇者様の確執は割と有名らしい。以前、ドラゴンシティの繁華街、ソフィアちゃんを巻き込んでの一件が噂話となり、尾びれどころか背びれ胸びれを生やして、そこらかしこで囁かれているとのこと。

 一方で続く第十試合はと言えば、地味の一言に尽きた。

 ステージに上がったのは、ドムコーン王国の騎士団代表クリスタ・ビンデバルト氏とプッシー共和国の魔法使いサリー・グッドオール氏。ステータス的には他の参加者と比較しても、なんら遜色のない値であった。ただ、お互いに能力が拮抗していた為か、上手く動けなかったようだ。

 一進一退の争いが続き、最後は些末なミスから前者が場外となった。

 ということで、続くところ開始の合図を待つのは第十一試合。

「皆さまお待たせ致しました。これより第十一試合を始めたいと思います」

 醤油顔は元気良くアナウンス。

 第十試合が地味だった分、第十一試合に盛り上がりを期待してる。何故ならば次の試合に出場するのは、我らがドラゴンシティ騎士団の団長、ゴンザレス・アウフシュタイナーその人である。

 頼むよゴンちゃん。

「それでは早速ですが選手の紹介に移りたいと思います」

 ステージの上に立つその姿を確認して、声高らかに。

「向かって西に立つ彼こそが、タナカ伯爵領の騎士団長にして、黄昏の団の団長、ゴンザレス・アウフシュタイナー選手です! 彼には選手として参加する傍ら、本大会の運営から警備に至るまで、多くを担っていただいております!」

 その名を呼ぶと、わぁと会場の一方から歓声が上がった。

 観客席のある区画からの人気が凄まじい。それとなく視線を向ければ、最前列で見知った顔を発見した。いつぞや紛争の折、共に前線で頑張った修道院の方である。名前を確かヘンリーさん。生まれも育ちもトリクリスだと仰っていた。

 分かれてから数ヶ月の間柄ながら、妙に懐かしい気分である。

 ヘンリーさんの周りには他に大勢、修道院の関係者と思しき人たちの姿が窺える。冒険者ギルドで店員をしていたタコマッチョの姿もすぐ近くに発見だ。きっとトリクリス界隈の方々がいらっしゃっているのだろう。

 同所でのゴンちゃんに対する支持は圧倒的である。納得の声援だ。

「さて、対する選手ですが……」

 たしか例によって全身ローブの覆面選手だった。

 その姿をステージに確認して、名前を読み上げようと口を開く。

 いいや、いざ開こうとした間際の出来事である。

「おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおっほほほほほほほほ!」

 マジか。

 おほほ来た。

 どこから聞こえて来たのかと、大慌てで会場の様子を窺う。魔法によって拡声されたサウンドは、間違いなくイベント全体に対するアプローチ。しかしながら、ステージや観客席に縦ロールの姿を見つけることはできない。

「……上」

 ゴッゴルちゃんからアドバイスをゲット。

 なるほど、上ですか。

 言われるがままに顎を上げると、そこには空に浮かんだ飛空艇の姿が。大会初日、トーナメント表を掲載するのに利用して以来の飛行だろうか。本日はこれといって予定されていなかった筈である。

 皆々の注目を浴びながら、段々と高度を落としてゆく飛空艇。

 ステージ中央より上空、二、三十メートルほどの高さで静止した。

 よくよく見てみれば艦底の辺りにぶら下がる形で、ゴンドラのようなものが括り付けられている。まさかと思ったところで、どんぴしゃり。そこには腕を組んで高笑いを上げるロリ巨乳の姿があった。傍らにはキモロンゲも然り。

「ゲロスっ!」

「承知っ!」

 縦ロールが吠えるに応じて、キモロンゲが腕を振るう。

 二人揃ってノリノリだ。

 ゴンドラと飛空艇を接続していた四本の柱が、スパンと綺麗に切断された。当然、落下してゆく。ただ、飛行魔法により勢いをコントロールしているようで、本来のそれと比較すると幾分か穏やかなものだ。

 やがて、ドスンと大きな音を立てて着地。

 奇しくもゴンドラの落ちた地点は、ステージを挟んで醤油顔の居する実況席のちょうど反対側である。彼女らの向かう側もステージを向いている都合、互いに顔を突き合わせる形だろうか。

 ニィと縦ロールの顔にサディスティックな笑みが浮かぶ。

 自然と思い起こされたのは、陛下から頂戴したリゾート休暇でのお馬さんごっこ。振り返ること三十余年の人生、これに勝る思い出など、片手に数えるほど。いや、もしかしたら一つもないかもしれない。

 処女の尻肉はまこと柔らかいものであった。

「唐突なのだけれどぉ、そこの男の語り調子はどうにもこうにも真面目でつまらないわぁ! つまらないわよねぇ? つまらないものぉ! ということで、ここからはわたくしも一緒に喋らせてもらおうかしらぁ? かしらぁっ!」

 本当に自由だよな。縦ロール。

 よくよく見てみれば、ゴンドラにはテーブルと椅子が設えられている。そのまま腰を落とせば、ブサメンとゴッゴルちゃんが腰掛けている実況席さながらだ。いつの間に用意したのだろう。どんだけ暇だったんだよって。

「……承知致しました」

 飛空艇まで使われてしまったら、無関係だと突っぱねることも難しい。

 つい今し方、ステージに立つ男がドラゴンシティの警備の代表だとご紹介したばかりである。そんな彼の手前、自分のところの飛空艇が他所の国の貴族によって、いいように使われたばかりか、あまつさえ大会に乱入とか、割とどうしようもない。

 やるじゃないか縦ロール。

 こうなっては致し方なし、彼女を迎え入れることに決めた。

 だって処女膜付いているし。

「これより実況は彼女、ドリス・オブ・アハーン子爵を迎えてお送り致します」

 とりあえず的に宣言してみる。

 すると会場からは、わぁと大きく声が上がった。

 どうやらウケたらしい。

 やったじゃん。

 よく分からないけれど、恐らく余興的なものだと受け入れられたのだろう。ここまで計算していたのだとしたら、なんて恐ろしい処女だろう縦ロール。その膜の垢を煎じて酒の肴に一杯やりたい気分である。

「それじゃあ選手を紹介しようかしらぁ?」

 縦ロールの意識が醤油顔から離れてステージに向かう。

「タナカ伯爵領の騎士団長に対するは、若干十五歳でプッシー共和国の宮廷魔法使いに抜擢された鬼才の持ち主、マーラ・トト選手ですわぁっ! 如何に黄昏の団の団長と言えども、彼女が相手では苦しい戦いとなるのではないかしらぁっ!」

 思ったよりも堂とした語り調子だ。

 覆面選手の肩書に及びがあるのは、同じプッシー共和国の人間だからだろう。もしかしたら試合外で交流があったのかもしれない。しかし、十五歳でお国に召し抱えられるって凄いよな。ペニー帝国でいうところの姫ビッチ級である。

「さっさとその暑っ苦しいローブを取りなさぁい!」

 縦ロールが吠える。

 間髪を容れずトト選手に反応があった。会場の皆々が見守る只中、その腕が勢い良く動いた。バサッと一息にローブが脱がれる。つい先日、エディタ先生とロリゴンが見事に失敗した演出だ。こちらは大成功。

 いざ姿を表したのは、やったぜ、メルセデスちゃんの肉便器。

「相変わらず、救いようのない趣味かしらぁ」

 しかもローブの下、彼女が身につけていた装備はと言えば、圧倒的にタイツ。真っ黒な全身タイツ。首から足先までぴっちりと、身体のシルエットを一ミリの誤差もなく表現するかの如くタイツ。

 生地に余裕は皆無だ。シワの一本さえ確認できない。胸やお尻のラインは当然として、イヤーンでマイッチングな部分まで、全てが掌握できてしまう。今この瞬間、実況席に腰掛けていたことに感謝を。

 とりあえず、縦ロールに負けないよう、お喋りしないと。

「トト選手、これは奇抜な出で立ちです! 一見して完全に守りを捨てて思える姿格好でありますが、果たしてどのような効果の備わっているのでしょうか。その姿を目の当たりとしては、ゴンザレス選手も驚愕です!」

「それでは試合開始かしらぁ?」

 さっさと始めよう。

 とっとと始めよう。

 ゴンちゃん、頼む。

 どうか股間と胸の部分を破いてくれ。

「第八試合、始めて下さい!」

 縦ロールに促されるまま、いざ試合開始である。

 我らが騎士団長には悪いけれど、ブサメンはトトちゃんを応援するわ。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 第十一試合が始まりました。

 ゴンザレスさんは当然ですが、もう一方の選手もまた、メイドは覚えがございます。いつぞや紛争の折、プッシー共和国に身をおいて、黄昏の団の方々と果敢にも全裸で戦っていた女性です。その露出っぷりは未だ鮮明に覚えております。

 そして、本日も凄いですよ。全身タイツです。

「…………」

 彼女の立つ地点は、女性として一つの到達点にほかなりません。多くの女性が胸の内では妄想しながらも、現実との折り合いから見送っている領域です。それを彼女はなんら躊躇なく、自ら一歩を踏み込んでおります。

 思わずメイドも、控室から舞台に注目してしまいます。

「おっと、先手を取ったのはトト選手ですっ!」

 タナカさんの言葉通り、全身タイツ姿の彼女が、ゴンザレスさんに迫ります。

 駆け足です。

 以前、合戦の最中に垣間見た彼女は、間違いなく魔法使いでした。杖を手にしておりました。それがどうしたことでしょう、今の彼女は杖はおろか短剣すらも携えておりません。にも関わらず真正面から突撃です。

 争いごとに疎いメイドでも理解できます。

 これは危険ですよ。

 ゴンザレスさんはひと目見て戦士な方です。全身を覆うのは、惚れ惚れしてしまうほどに逞しい筋肉。更にその手には、私の身の丈ほどもありそうな、非常に大きな斧を携えていらっしゃいます。

 後方からの魔法による支援を得意とする方が、真正面から攻めて勝てる相手ではありません。しかも彼女は私と大差ない年頃の女性です。斧が少し掠った程度でも、真っ二つにされてしまうことでしょう。

「おいおい、本気かよ」

 ゴンザレスさんもこれには驚いた様子です。

 斧を構えると共に、半歩ばかり身を引かれました。なんて紳士なのでしょう。やっぱり良い男は違いますね。これで未だに独身でいらっしゃるというのですから、メイドは思わず熱い眼差しを送ってしまいます。

 ただ、そんな彼の瞳は次の瞬間、驚愕に見開かれることとなりました。

「っ!?」

 今まさに懐へ飛び込んだ彼女は、駆ける勢いをそのままに、ゴンザレスさんの腹部に抱きついたのです。それはもう力いっぱい、背中に両腕を回してのこと。いいえ、抱きつくというよりは、押し倒さん限りの勢いです。

「なっ、なんだこりゃっ!?」

「あぁん」

 というか、倒れました。

 なんとゴンザレスさん、女性に押し倒されてしまいました。

 これはメイドも驚きです。

 果たして何が起こったのでしょうか。



◇◆◇



 メルセデスちゃんの肉便器からタックルを受けて、ゴンちゃんが倒れた。

 会場からは驚きの声が、今まさに怒涛の勢いで上がっている。誰も彼もが想定外であったのだろう。我が家のメイドさんと大差ない年頃のか細い女の子が、筋肉ダルマのゴンちゃんを一撃で押し倒したのである。

 多分、押し倒された本人が一番に驚いていることだろう。

 なんて羨ましいんだゴンちゃん。

「おぉっと、これはどうしたことでしょう! ゴンザレス選手、トト選手の体当たりを受けて、なんと一撃で倒されてしまいました。両選手の体格を思えば、これは首を傾げたくなる光景ですね!」

 ゴンちゃんを押し倒した彼女は、彼に抱きついたまま姿勢を移した。腕を相手の背中から引き抜き、股間へと突っ込む。同時に身体を九十度捻って自らの胸を相手の胴体に密着させる形だ。柔道で言うところの横四方固めに近しい体勢である。

 しかも両者の体格の違いから、ちょうど彼女の顔の辺りに、ゴンちゃんのマウンテンゴンザレスが触れている。それはもうゴリゴリと音を立てんばかりの勢い。むしろ彼女の方から押し付けている。頬ずりというヤツだ。

 余りにも羨ましい。

 童貞が夢見る理想郷が、ステージの上にはある。

 ロリハーレムも持ってるし、この男は色々と恵まれ過ぎだろう。

「こ、このっ……」

 咄嗟に反応するゴンちゃん。自ずと斧を握る腕が動いた。しかしながら、いざ刃を振り下ろさんとしたところで手が止まった。相手が年下の女性だからだろうか。その脚部を目前にして、薄皮一枚といったところである。

 打ち付けたら切断は必至。

 相変わらず紳士だぜ。

「おぉぉぉぉおおおっほほほほほほほ!」

 ここで縦ロールからおほほの知らせ。

 どうやら何か喋りたいらしい。

 高笑いに応じて、会場の注目が選手二人から彼女に移った。

「その華奢な外見に騙されると、こういうことになるのよぉ? 彼女は自ら開発した独自の魔法により、肉体を強化することに極めて長けているわぁ! その力を持ってすれば、ハイオークの攻撃を自身の身体で受けることも可能となるのよぉ!?」

 そいつは凄い。

 どおりでゴンちゃんが一撃だったわけだ。

 しかし、彼女のマッスル値はそこまで高くなかった筈である。



名前:マーラ・トト
性別:女
種族:人間
レベル:167
ジョブ:肉便器
HP:39002/39002
MP:7020/7020
STR:1300
VIT:30112
DEX:1021
AGI:930
INT:5200
LUC:3054



 いや、ちょっと待て。なんか変わっているぞ。

 これが縦ロールの語ってみせた身体を強化する魔法とやらだろうか。しかし、これまた完全に趣味が出ているステータス配分だ。ただでさえ攻撃力が低いのに、魔法まで弱くなってしまっては、自分から攻める気ゼロじゃないか。

 その特殊な性癖から発生した、これまた特殊な戦場での戦いっぷりが、彼女に新しい可能性を与えたのだろう。肉便器の肩書は伊達じゃない。何事も極めれば、それはそれで一つの芸となって身を助けるということだ。

「ゴンザレス選手、この危機を切り抜けることはできるのかっ!?」

 醤油顔から騎士団長にお問い合わせ。

 すると彼は斧を手放し、同時にメルセデスちゃんの肉便器の両脇へ腕を伸ばした。何をするつもりかと誰もが注目する只中、彼は自らの肉体から、強引に彼女を引っぺがす。むりくり持ち上げた形だろうか。

 そして、そのまま勢い良く、場外へ向けて投げつけた。

「ちょっとぉ! いきなり投げるなんて酷いわぁよぉ!?」

 縦ロールからは文句が。

 大きく弧を描いて飛んでゆくメルセデスちゃんの肉便器。

 行く先には場外が。

「これは場外でしょうかっ!?」

 そのまま落ちてしまうには、惜しい人材である。

 会場からも彼女を応援する声が響く。

 主に野郎たちから響く。

 すると彼女は空宙で一回転、飛行魔法で急制動を掛けると共にステージの縁、ギリギリのところに見事両足から着地してみせた。まるで新体操のような軽やかな身のこなしである。全身タイツ姿と相まって見栄えも然り。

「トト選手、危ういところでステージの上に残りました!」

 当初、魔法使いっぽいステータスだったので、初戦でゴンちゃんにぶつけた。接近戦に持ち込めば一撃だろうという算段であった。

 しかしながら、こうなると彼とは相性が最悪かもしれない。

「おぉっとトト選手、そうこうする間もなく、またもゴンザレス選手に向かい駆け出しましたっ! 両腕を正面に構えた姿勢は、再び体当たりを行うつもりでしょうか!?」

「くっ……」

 迫るメルセデスちゃんの肉便器。

 これにゴンちゃんは申し訳なさそうな表情で拳を打ち込んだ。

 腹パンだ。

 ドスンという低い音がステージの上に響く。

「おぉっと、ゴンザレスさんの拳が綺麗に決まりましたっ!」

「……あぁん」

 彼女は相手の拳が自らの腹を捉えた瞬間、両手でそれを抱きしめた。

 丸太のように厳ついゴンちゃんの腕周りだから、線の細い彼女であれば、すがりつくにも十分な太さであったのだろう。本来であれば後方へ吹っ飛んでもおかしくない一撃を受けて尚も、彼女の身体は密着したままである。

「き、効いておりませんっ! トト選手、顔には余裕の笑みが!」

「なっ……」

 ゴンちゃん絶句である。

 そうこうする間に、メルセデスちゃんの肉便器が動いた。

 その場に飛び上がり、ゴンちゃんの腕を視点として百八十度身体を回転、大股で足を開く。狙いは頭部である。両足で彼の顔面をホールドした。股間が相手の口元に密着する姿勢は、なんてけしからん技なのか。こんなことなら醤油顔も参加すれば良かった。

 なんかもう悔しくて涙が出て来る。

「ぐっ、ぬぅぅぅっ!」

 張り付いた女体を無理やり引き剥がすゴンちゃん。

 応じてタイツが破れた。

 膝から太ももの付け根に向けて、ビビリと裂けた。

 会場からは大喝采。

 どうやらこれといって特別に頑丈だとか、何かしらの加護的な恩恵があるだとか、そういうのは存在していないようだ。見た目通り薄くて破れやすい、ただのタイツであったよう。完全に趣味の産物である。

「これはどうしたことか、トト選手の装備が破損しましたっ!」

 このドキドキ感、圧倒的ではないか。

 この娘さんは、タイツの楽しみ方を十分に理解している。

 公衆の面前。ダメージを受ける度に、少しづつ破けていく装備。

 そこに浪漫を感じる。

「はぁ、はぁ……も、もっと、激しく……激しくして……」

 呼吸も荒く、身悶えしてみせる様子は、非常に艶めかしい。

 会場からのウケも上々だ。

 そこらかしこから、いいぞー! だとか、もっと脱がせー! だとか、ゴンちゃんに指示が飛び交い始める。お股と胸のあたりを豪快に破って頂きたいとは、醤油顔としても切に願うところ。

「嬢ちゃんには悪いが、これ以上は構ってはいられねぇなぁ」

「……まさか、こ、降参を?」

「いいや、それこそまさかだ」

 ゴンちゃんが動いた。

 メルセデスちゃんの肉便器を抱えたまま、ステージの上を駆け出した。一瞬、何事かと疑問に思ったところで、彼の見据える先には場外がある。なるほど、と理解したところで、彼が抱えた彼女にも変化が。

「っ!?」

 どうやらゴンちゃんの意図を理解したらしい。

 これまでの余裕は何処へやら、途端に慌て始める。

「い、嫌っ! 止めてっ!? 離してっ!」

 酷く焦った様子で、拘束を逃れるべく暴れ始めた。

 だが、イケメンの腕から逃れることはできない。

 そうこうする間に、二人の正面には場外が。

「こういうこったっ!」

 嫌がるメルセデスちゃんの肉便器を、彼は無理やり場外に落ちつける。

 必至に身体をくねらせるも、彼女の脚部が地面に触れた。

 うちの騎士団長って、本当に空気読めないよな。せめてオッパイくらいは露出させなければ、収まるものも収まらないだろうに。この高まりに高まった、会場の野郎たちの一体感をどうしてくれるつもりだ。

「トト選手、場外ですっ!」

 ブサメンの判定を受けて、途端に会場からはブーイングの嵐が。

「ふ、ふざけるなぁぁぁあ!!」「おいこらハゲ、どういうつもりだ!」「なにやってんだこの野郎っ!」「金返せっ!」「金玉ついてんのかっ!?」「なぁに腑抜けたことやってんだコラァっ!」「もうちょっと見せろやっ!」「破きが足りねぇんだよっ! 破きがっ!」「肝心なところが何一つ見えてねぇじゃねぇかっ!」

 全くもって同意見だ。

 彼には猛省して頂きたいところである。



◇◆◇



 さて、サクサクと試合を進めていこう。

 次は第十二試合である。

 次なる出場選手はといえば、ゴンちゃんに続いて同じくアウフシュタイナー家からの参加。アシュレイ・アウフシュタイナーことショタチンポ。醤油顔に良いところを見せるのだとか、健気なことを訴えていた。

 これに対するは、学園都市での一件以来だろうか、ピーちゃん登場。エディタ先生やロリゴンと同様、ローブを身にまとい、格好いい感じの仮面で顔を隠している。十中八九で優勝賞金目当ての参加だろう。

 正直、気の乗らない試合だ。

 一つ前の試合の盛り上がりを思えば、殊更しょっぱい気持ちになる。しかし、だからと言って、適当に済ませる訳にもいかない。ショタチンポにとってはお家復興の取っ掛かりとなる重要な試合でもあるのだ。

 本日の試合でリチャードさんを筆頭として、他所の家々に格好良いところを見せることができたのなら、今後の貴族ライフも多少は難易度が下がったりするのではなかろうか。そういった意味でも、勝って欲しいとは切に思う。

「それでは第十二試合を始めたいと思います」

 厳かにもアナウンス。

「タナカ伯爵、ちょっといいかしらぁ?」

 すると、速攻で縦ロールからダメ出しが。

 今度はなんだよって。

「さっきから貴方ばかり喋っていて、隣の子がまったく喋っていないように見えるのだけれどぉ、そこのところ、ねぇ? どうなのかしらぁ? おかしくなぁい?」

 いいじゃん。

 ゴッゴルちゃんは隣に居て下さるだけで十分なんだよ。

 主に醤油顔がセクハラできて幸福なんだよ。

「…………」

 っていうか、観衆の面前で無茶ぶりは止めてあげて。

 ゴッゴルちゃん困ってるじゃん。

 お喋りとか、あんまり上手じゃないんだから。

「……そんなことはない」

 おう、ゴッゴルちゃんから反応があった。

 今の今までテーブルの下、お膝の上で行儀良くしていた左右のお手々。それがスッと天板の上に乗せられる。心なしか表情もまた、キリッとしたような気がしないでもない。まさかのやる気モードがスイッチオンの予感。

「あ、いえ、あまり無茶をされなくても……」

 もしかして、プライドを刺激してしまっただろうか。

 想定外の反論に気が気でないのだけれど。

「喋る」

「そうは言っても、人には向き不向きが……」

「喋る」

「…………」

 むっちゃ焦るわ。

 ゴッゴルちゃんはそこに座っていて下さるだけで十分ですから。

 欲を言えば逆レイプして欲しいけれど。

「……喋る」

「分かりました。そういうことであれば、お願いします」

 こうなってしまうとゴッゴルちゃんは頑なだ。

 意外と頑固な一面も持ち合わせているのだ。

 しかし、ゴッゴルちゃんは今回の試合、選手に関して何にも知らないのではなかろうか。ショタチンポに対しては、多少の面識があるかもしれないけれど、それも片手に数える程だろう。ピーちゃんに至ってはゼロの筈である。

「…………」

 図星である。

 ゴッゴルちゃん、続く言葉が出てこない。

「……貴方が考える。私は喋る」

「それは些かセコくないですかね」

「…………」

 速攻でカンペをお願いされてしまったぜ。

 そうこうしている間に、ドヤ顔となった縦ロールが語る。

「それじゃあ、わたくしの方から試合を進行させてもらおうかしらぁ!」

 声高らかに宣言すると同時、つらつらと選手の紹介を始める。

 既に両名ともにステージに上がっているから、これ以上、ゴッゴルちゃんとのトークに時間を掛ける訳にもいかない。この試合に関しては、縦ロールに譲ることとしよう。

「…………」

 ゴッゴルちゃん、どことなく不服そうだ。

 まあ、そういうこともあるさ。

 どんまいである。

 ただ、ゴッゴルちゃんは口数が少ない方が可愛いと思うよ。

「…………」

「まず最初に紹介するべきは、アシュレイ・アウフシュタイナー選手かしらぁ? ペニー帝国界隈であれば耳にしたこともあるわよねぇ。つい数年前に一族諸共粛清されたアウフシュタイナー一族の末裔にして、つい先月に復興した新生アウフシュタイナー家の当主よぉっ!」

 なんて歯に衣を着せない物言いだろう。

 ただ、紹介された当の本人は、あまり気にした様子もない。

「女装は趣味らしいわぁ! なかなか似合ってると思うわよぉ!」

「っ……」

 ピクリ、その肩が震えたのは、もしかして嬉しかったのだろうか。

 褒められたことが。

 そう言えばヤツのオカマを褒めたの、縦ロールが初めてかもしれない。

 一方で女装という単語を耳として、会場からはざわめきが。

 そりゃそうだろうな。

「そんな彼に対するは、さて、誰なのかしらぁ? 顔が覆面で隠れていて見えないわねぇ? まあ、予選を勝ち抜いてきたのだから、相応の実力は備えているのでしょう。良い試合になることを期待するわぁ!」

 説明の難しいところをさらっと流してくれる縦ロール。

 案外、こういうの向いているのかもな。

「それじゃあ、試合開始よぉっ!」

 彼女のアナウンスに従って、両名の試合が開始された。

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