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田中のアトリエ ~年齢イコール彼女いない歴の錬金術師~ 作者:金髪ロリ文庫

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武道会 一

活動報告を更新しました。
 ある日、ドラゴンシティに首都カリスから使者がやって来た。

 どのような人物かと言えば、他の誰でもない、フィッツクラレンスさんちのリチャードさんである。これまでは代理を寄越していた彼である。わざわざ自ら足を運ぶとはどういった用件だろう。

 少なからず身構えたところで、応接室にお話と相成った。

「お久しぶりです、タナカさん」

「わざわざご足労下さりありがとうございます、リチャードさん」

 例によって部屋は醤油顔と彼の二人きり、の予定だったのだけれど、同所には他に若干一名、聞き耳を立てる者の姿がある。我らがドラゴンシティの町長、ロリゴンだ。何故か我々が足を踏み入れる以前より、この場で待ち構えていたのである。

 今も醤油顔の隣に腰掛けて、ドヤ顔でリチャードさんを眺めている。

 最高に得意顔だ。

 これは勝手な想像だけれど、リチャードさん来訪の知らせを耳として、こちらに先回りしたのだろう。思い起こせば以前も、やたらと応接室でのトークを所望していた。その時はエディタ先生とソフィアちゃんが一緒であっただろうか。

「そちらの町長は……」

『なんだよ? 文句あるのか? わ、私は町長なんだぞ? 偉いんだぞ?」

 テーブルの上には湯気を上げるティーカップ、更にはどこから調達したのか、ケーキや焼き菓子の類いが並んでいる。まさかロリゴンが自分で用意したのだろうか。応接室でせこせこと動き回る彼女の姿が想像された。

「私と彼女で伺います。よろしいでしょうか?」

「……まあ、タナカさんがそう仰るのであれば構いませんが」

「ありがとうございます」

 別に一緒でも良いだろう。

 虎視眈々と応接室でそれっぽいお話をする機会を狙っていたのかと思うと、おもむろにディープキスしたい気分に襲われる。人と比較して幾分か長いロリゴンの爬虫類な舌ベラに、激しく咥内レイプ希望。絶対に気持ち良いと思う。

 ブサメンの唾液でロリゴンのヤコプソン器官にダイレクトアタックしたい。

『そ、それで用件はなんなんだ? 用件はっ』

 喜々として尋ねるロリゴン。

 そんな彼女にリチャードさんは平素と変わらず淡々と。

「陛下から言伝を預かって参りました」

「それはまた反応に困るところですね」

「いえ、そこまで身構えるほどのものではありません。我々にとっても益のある話でして、だからこそ私も、タナカさんの下までやって来たのですよ。でなければ、話を受けた段階で適当に断っています」

「なるほど」

 昨今、リチャードさんの立場は陛下に比肩する。

 ようやっと我々にも、断る、という選択肢が生まれた訳だ。

 思い起こせば、ここまで来るのに随分と苦労した。

『伝言ってなんだよ』

 ロリゴンがリチャードさんを急かす。

 相変わらずせっかちなロリータだ。

「先の一件を受けて、我々ペニー帝国は西の勇者様を正当な勇者として担ぐことが決定しました。その事実は既に世間に公表されております。ですが、今のままでは少しばかり、影響力が弱いと陛下は考えているようです」

「確かに仰ることは理解できます」

 聖女様が失われたとはいえ、依然として大聖国は健在である。東の勇者様も同様であるから、今後の衝突は免れまい。そうなったとき有利に事を運ぶ為には、各方面からの支持は必要不可欠である。

「特に心配しているのは諸外国からの認知でしょうか。ペニー帝国の宰相は、あれで伊達に保守派のトップを勤めておりません。非常に用心深い男です。国内の盛り上がりを大々的に各国へ訴えたいようです。当然、ドラゴンシティの影響力も然り」

「なるほど、そういうことですか」

 つまり、ほら、あれだ。何か良い感じでイベントの一つでも開催しなさいよ的な。新しく出来た事業団体やナンチャラ協会が、キレイ目の商業施設を借りて華々しくカンファレンスとか、よくあるパティーンじゃんね。

「タナカさんの方で良い案など、お持ちだったりしますでしょうか?」

「そうですね………」

 そうなると自分たちの売りとなる部分が、率先して露出するような催しが良いよな。我々の売りってなんだろう。ふと疑問に思ったところで、早々に浮かぶのは戦力だろうか。あぁ、それと最近はエディタ先生と魔道貴族が作ったライフポッソンとかあるよな。

 それなりにネタはあるから、大切なのは見せ方か。

『ふぅん? だったら簡単じゃないか』

 ニコニコ笑顔でロリゴンが呟いた。

 以外なところから一番槍が挙がったので、ちょっとドキっとしたぞ。

 どうやら我々のトークを追いかけて来ているようだ。陛下云々に関しては完全に門外漢だろうに、よくまあ理解してくれたものである。やはり、なんだかんだで頭は良いぞクリスティーナ。頭の良いロリータに論破にされたい欲が高まる。

「クリスティーナさん、なにか宛が?」

『決闘だ、決闘するぞ? 誰が一番強いか、知らしめてやれば良いのだ』

「なるほど」

「たしかに……」

 ロリゴンの呟きを受けて、思わず頷いてしまう醤油顔とリチャードさん。

 想像したより、彼女の挙げた案は良い案であった。

 早々にパパさんから確認が入る。

「つまり、腕自慢を集めて競い合わせるよう大会を開く、ということですね」

『ん? あぁ、そ、そうだなっ! それでもいいぞっ!?』

 現代社会の軍隊よろしく、公開演習の類など想像していたブサメンとしては、一枚上手を行かれた感がある。確かにロリゴンの提案する方法の方が、より多くを巻き込んで盛大に行うことができそうだ。これが若く新鮮な意見というやつか。

 会場をドラゴンシティとすることで、街のアピールにもなるし。

「クリスティーナさん、それはなかなか良い案ですね」

『っ!? そ、そうかっ!?」

「はい、私は賛同します。リチャードさんは如何でしょうか?」

「ええ、私も悪くないと思います。参加者は国内のみならず、国外からも募りましょう。優勝者には賞金を用意します。最終的に西の勇者様を優勝させれば、これ以上ないアピールになりますよ。そして、我々にはそれを行えるだけの力がある、ですよね?」

「ええ、任せて下さい」

 リチャードさんと全く同じことを考えていたぜ。

 思わずニヤリとしてしまう。

 醤油顔や金髪ロリムチムチ先生が参加すれば、大会の流れをコントロールすることは容易だろう。そして、大会優勝を飾った西の勇者様は、晴れて世界最強の名を得る。誰もが認める唯一無二の勇者様となる。

 そんな彼を囲うのは、他の誰でもない我らがペニー帝国、といった塩梅だ。

 良いじゃん、良いじゃん。これ以上ない筋書きだ。

『……なんだよ貴様ら、ニヤニヤと気持ち悪い』

「いえいえ、クリスティーナさんの意見が素晴らしかったので」

 両手放しで絶賛してしまうぜ。

「そうですね。流石はドラゴンシティの町長です」

 リチャードさんも機嫌が良さそうだ。

 なんだかんだで種族に分け隔てなく成果を評価する男である。

『そ、そうか? まぁ、私は町長だからなっ! 当然だっ、当然っ!』

「それでは早速ですが、町長の意見に従いまして支度を始めましょう。私は首都カリスに戻ります。陛下に今の話を提案して、開催の概要を決定してまいります。タナカさんはこちらで会場の準備をお願いします」

「ええ、承知しました」

 この公爵様も、段々とロリゴンの使い方が分かってきたじゃないか。

 でもまあ、まだ醤油顔ほどではないけれどな。

 ソファーと背中の間、嬉しそうに揺れているドラゴンしっぽが可愛いぜ。



◇◆◇



 リチャードさんがドラゴンシティを発って早々、我々は作業に移った。

 どのような作業かと言えば、イベントの会場作りである。

 他の誰でもない、あの男が良い案と称したのだ。間違いなく陛下からゴーサインを取ってくることだろう。故にこれを信じて先行するのは、とても理にかなった行いである。というか、ほら、あれだ。次に街を訪れたリチャードさんの驚く顔が見たい。

 仕事のモチベーションって、そんな酷く下らないところから来ること多いよな。

『本当にこの辺でいいのか?』

「ええ、この辺りで大丈夫でしょう。市街地に近い場所ですと、近隣住民から苦情が出るでしょうし、繁華街に近い場所ですと、飲食店で儲けることができません。そして、中央近郊は既に建物で埋まっています」

『でもここ、街から離れてるぞ?』

 ロリゴンの指摘通り、我々が今に立つのはドラゴンシティの最外郭となる壁の外側だ。敷設された門から発って、地肌を晒す草原を徒歩で歩むこと、数分ばかりを要する地点となる。遠く眺める壁が幾分か小さく見える。

「大会に際しては多くの観光客が見込まれます。ゴンザレスさんたちも手一杯となることでしょう。恐らくですが、今ほどの確実に入出管理を行うことは難しくなります。そうなると碌に確認を行わず、大勢の人を街へ受け入れることになります」

『それがどうした?』

「街の治安を考慮すれば、壁の外側に会場を作ることには、クリスティーナさんが指摘する問題点以上の利点があります。街というのは想像した以上に簡単に荒れます。そして、これを元に戻すことは容易ではありません」

『……そうなのか?』

「はい」

『わかった。なら作るぞ、ここに』

「ありがとうございます。一緒に頑張りましょう」

『っ!? そ、そうだなっ! たまには一緒に作るのも悪くないっ!』

 イメージするのは歴史の教科書に眺めたコロッセウム。あんな感じで大会の会場を作ってしまおうという算段だ。今の我々の技術力であれば、決して不可能ではない。観客席が些か大変そうだけれど、たぶん大丈夫だろう。

 併せて参加者や観光客の宿泊施設が必要だろう。飲食店や物販のテナントを受け入れる為の施設も作らなければならない。更にこれらを繋ぐ街道と、その維持を行う為の設備も必要になってくる。当然、お風呂もだ。

 おう、なんだかとても楽しい気分になってきた。

 やっぱりモノ作りって素敵だよな。

 あれこれ考えていると、不意に名前を呼ばれた。

「こんな場所で、なぁにしているのかしらぁ?」

 縦ロールである。

 幾らばかりか離れてはいるが、その特徴的なシルエットは間違いない。相変わらずバッチリと決まっているぞ縦ロール。傍らには彼女に従うよう、キモロンゲの姿もある。恐らく暇をもてあます彼女に補足されて、跡を付けられたのだろう。

 などと考えたのだけれど、傍らにはエステルちゃんの姿もある。

「ちょ、ちょっと! 彼の邪魔をするのは良くないわよっ!」

 もしかして三人でお出かけの最中だっただろうか。

「これはドリスさん、どうされました?」

「あらぁん? なんだか随分と久しぶりに名前を呼ばれたわぁ」

「そうですか?」

「そうよぉ? だって貴方ってば、随分と忙しそうにしているのだものぉ」

 しなをつくって語る縦ロール。やらせだとは理解していても、童貞は反射的に胸キュンしてしまう。だって彼女の下腹部には、未だに新品の証が膜として残っている。そのシールが剥がされないかぎり、醤油顔のサポート対象内でございます。

「私で良ければ、幾らでも呼ばせて頂きますが」

「それで今度は何を始めるつもりかしらぁ? 暇なのだけれどぉ」

 相変わらず時間を持て余しているようだ。

 まあ、そんなこったろうな。

 縦ロールがブサメンの後をストーキングする理由なんて、たかが知れている。

「ちょっとドリスっ! だから邪魔をするのは良くないとっ……」

「リズだって気になっているのでしょう?」

「そ、そんなことないわっ! 私はまるで気にならないわねっ!」

 一方で頑なにツンツンしてくれるのがエステルちゃん。記憶が戻ってから本日まで、碌に話をした覚えがない。寂しくないと言えば嘘になる。けれど、こうして距離感を図っている点からも分かる通り、今の彼女は自身に構ってくれていた彼女とは違う。

 色々あったけれど、アレンと元鞘なロリビッチに落ち着いたのだろう。

「実はお二人にも話しておきたいことがあります」

 つい先刻、リチャードさんと話したことを二人に伝える。今晩にでも人を集めて話そうと考えていたのだけれど、こうして顔を合わせたのであれば、先んじて話しておくのも悪くないだろうと。

 かくかくしかじか、まるまるうまうま。

 ひとしきり語ったところで、早々に縦ロールから返答があった。

「ふぅん? それでぇ?」

 どうしたことだ、思ったより反応が鈍い。

 常日頃から暇を持て余しているから、きっと食いついて来ると思ったのだけれど。もしかして、こういう男臭いイベントは嫌いだったりするのだろうか。いやいや、そういうのキャラじゃないだろ。是非とも食いついて頂きたかった。

「プッシー共和国からも参加者を募ってはもらえませんか?」

「いやよぉ?」

「気になる点などありますか?」

「それってどうせ、西の勇者さまが優勝するのでしょう? わざわざ自国から噛ませ犬を呼び寄せるなんて、そんなのお断りよぉ? 可哀想じゃないのぉ。参加者の身の丈に見合った試合が行われるなんて、まさか言わないわよねぇ?」

「なるほど」

「誰が好んで自国の恥を晒に行くのかしらぁ?」

 くそう。気づかれていたぜ、縦ロール。

 なんだかんだで、ここぞという場面に突っ込んでくれる。

「もしかして、貴方も参加するのかしらぁ? そんなことをしたら興ざめよぉ? 結果の知れた試合ほどつまらないものはないわぁ。まさか市井の者たちが、盲目的に大会の結果を信じるなどとは考えていないわよねぇ?」

「……というと?」

「八百長なんて、その事実に関わらず、噂一つで成り立ってしまうのよぉ?」

「…………」

 確かに縦ロールの言葉は最もだ。

 ドラゴンシティの関係者が入賞上位を占めてしまったら、流石に問題があるだろう。国際大会で開催国が優位になると叩かれるのは、どうやら世界を跨いでも変わらないようである。当然、わざと負けるとか、そういうのも込み込みで。

 そして、今回のイベントで一番大切なのは、国外からの支持である。

 実際に強いのだから仕方がないだろう、という意見はさておいて、民意はそれと別のところにある。イベントを催した結果、逆に不信感を募ってしまったのでは意味がない。そう考えると、ドラゴンシティの面々の参加には一考の余地ありだ。

 参加して圧勝することが問題であると共に、参加して負けてしまっても、それはそれで問題である。ドラゴンシティの売りは他所を圧倒的に上回る戦力だ。これが国外の参加者に負けていては何の為の大会開催なのか。本末転倒である。

 今更ながら、気付かされた感がある。

 ここ最近、伯爵になってみたり、領地を取り戻してみたり、イケイケゴーゴー状態であったから、少しばかり調子に乗っていたかもしれない。少なくとも人外勢の参加は良くないよな。しかし、それでも西の勇者さまを勝たせなければならないという自らの使命。

 既にリチャードさんとは約束してしまったし。

「それで、どうなのかしらぁ?」

 煽るように語ってくれる縦ロール。

 挑むような眼差しがゾクゾクする。やはり自分はマゾの世界に生きているのだと、否応なく理解させられてしまう。心の底から調教されたい。いつか訪れる膜付ご褒美セックスまで全力で駆け抜けたい。

「もちろん、私は参加しません」

「町長はどうなのかしらぁ?」

「そういうことであれば、町長にも参加は遠慮してもらいましょう」

『な、なんだとっ!?』

 速攻でクリスティーナから非難の声が。

 っていうか、参加するつもりだったのかよ。

 流石にそれはアウトだわ。

 絶対に死人がでるじゃん。腹パン一発で死屍累々だってば。

「本当に良いのかしらぁ?」

「ええ、問題ありません」

 大丈夫だ。自分にはステータスウィンドウが付いている。こういうとき、ヤツほど心強い味方はいないだろう。予選が終わった時点で、コイツを駆使して確実に西の勇者様が勝ち残れるルートをコーディネイトしてみせる。

 そうなるとトーナメント形式は譲れないな。

 総当りだと絶対に足が付くし。

「ふぅん? まあ、それなら良いかしらぁ」

『お、おいっ! 私はっ……』

「当然、ゲロスさんも参加出来ませんが、構いませんね?」

「構わないわぁ。そうなっては試合にならないものねぇ」

「ええ、その通りだと思います」

 上等だよ。やってやりましょう。

 絶対に成功させてみせるぞ、このイベント。

「ちょ、ちょっとドリスっ! 彼には彼の思惑があるのよっ!? そういうことを言うのは良くないと思うわっ! きっと彼は私たちが見ている以上に、その先を見据えて行動しているのだからっ!」

「あらぁん? リズ、やけに伯爵をかばうようだけれど、もしかして何か、思うところがあるのかしらぁ? しかも先を見据えて行動しているだなんて、リズにしては滅多でない褒め言葉ではないかしらぁ」

「っ!?」

「どうしたのかしらぁ?」

「そ、そんなことないわっ! ただ私は、常に公平な視点から状況を見て……」

「ふぅん? ふうぅぅぅん?」

「…………」

 心なしか縦ロールとロリビッチの力関係が逆転していやしないだろうか。

 割とどうでも良いのだけれど。



◇◆◇



 その日の晩、執務室に関係者一同を募った。

 昨今のドラゴンシティにおいて、運営側に回って下さっている皆さまだ。街を起こして当初はソフィアちゃんと自分、それにゴンちゃん、ノイマン氏くらいであったメンバーが、今や二桁に及ぶ。

 室内をぐるり見渡すと、なかなか感慨深いものがあるな。

 本日はゴッゴルちゃんの姿もある。部屋の隅で体育座りだ。相変わらず見えそうで見えないスカートの奥が気になって仕方がない。いつか彼女の正面にうつ伏せで寝そべり、チンチンの起き上がる力で床板を穿ちたい。

「それで俺たちに話ってなぁ、どんなもんだ?」

 面々を代表してゴンちゃんが問うてきた。

 相変わらず顔が怖い。

 取り立てて怒っている訳ではないと理解していても怖い。

「実は陛下から直々に依頼を受けました」

 ソフィアちゃんの腰掛けたデスクの傍らに立ち、皆々を見渡しつつのご説明。事前に縦ロールやエステルちゃんに伝えたところをそっくりそのままお届けだろうか。ただ、肝心な日程と規模感に関しては、リチャードさんからの連絡待ちなのだけれど。

 一頻りを説明したところで、早々に疑問の声が挙がった。

「なるほど、それは我々も参加して良いものなのか?」

 案の定というか、例によって魔導貴族である。

 めっちゃ参加したそうな顔をしている。

「そうですね……」

 自分やロリゴン、エディタ先生辺りは駄目だろう。一方で魔導貴族はと言えば、能力的には人類枠である。尚且つ開催国からの選手が西の勇者様を除いてゼロというのも、それはそれで問題なような気がする。

 そう考えた時、ペニー帝国からの代表として、魔導貴族は実に都合が良い。

「全員が全員、というのは難しいですが、大会の流れを加味した上で数名、というのであれば問題ないように思います。例えば町長、エディタさん、それに私などが参加することは控えたいと思います」

「あぁ、たしかに貴様らが参加しては、他の者が付いてこれんだろうな。おそらく全うな大会とはなるまい。無論、それはそれで大会云々を抜きにして、いつか見てみたいところではあるのだがな」

 魔導貴族の視線が醤油顔や町長、金髪ロリムチムチ先生、更にはゴッゴルちゃん、キモロンゲといった辺りで行ったり来たり。言わんとするところは分からないでもない。ただ、個人的にはそういう展開は未来永劫訪れないで欲しい。

 何気ないじゃれ合いが本気の喧嘩になることってあるじゃんね。

「理解して頂けましたでしょうか?」

「そういった理由であれば、私ならば構わないのではなかろうか?」

 キラキラと瞳を輝かせて主張してくれる。

「ええ、そうですね。私としてもペニー帝国の代表として、ファーレンさんの参加は望ましいと考えています。恐らく陛下もまた、ファーレンさんの参加には肯定的な意見を下さるでしょう。開催国代表ということで、一つお願いします」

「うむっ! その大任、しかと任されたぞっ!」

 めっちゃ嬉しそうだ。

 まあ、これくらいなら縦ロールも文句は言うまい。

 勝手な想像だけれど、他所の国で似たような催しが開かれたとしても、多分、この魔法キチガイは自慢の自作飛空艇で颯爽と駆けつけたことだろう。或いは陛下から請われて参加するかもしれない。いずれにせよ、そういう領分だ。

「あの、そ、そういうことであれば、僕も参加させて下さいっ!」

「だったら俺も街の騎士団の代表として、参加しねぇ訳にはいかねぇなぁ?」

「私も参加するです」

「キューンキューン!」

 そうこうしていると、他所からも声が上がり始める。アレンやゴンちゃん辺りは想定していたけれど、ゾフィーちゃんは想定外。っていうか誰だよ、ヌイまで連れ込んだの。気づかなかったし。なんかロリゴンの足元で、うろちょろとしているし。

 他にも若干名、参加したそうな眼差しがひしひしと。

「分かりました。この場でドラゴンシティの代表者を決めましょう」

 下手に個別調整して、後から顰蹙を買うのは嫌だしな。

 こういうのは皆の目があるところで納得のゆく形で進めたい。

 ところで、そうなると気になるのは各人のステータスの値だろうか。ここ最近は碌に確認していなかった。プライベートな活動でレベルが上がっている方々も少なからずいらっしゃることだろう。

 大会前にこれをチェックすることは非常に重要である。

 人外勢はさておいて、参加枠に収まりそうな方々に関しては確認させて頂こう。思い起こせばエステルちゃんや姫ビッチのステータスを拝見するの、随分と久しぶりのような気がする。ドラゴン退治の頃に見て以来だろうか。

 まずはチーム乱交を確認だ。



名前:アレン・アンダーソン
性別:男
種族:人間
レベル:52
ジョブ:騎士
HP:12600/12600
MP:1120/1120
STR:3750
VIT:4002
DEX:2752
AGI:4942
INT:1190
LUC:4839



名前:エリザベス・フィッツクラレンス
性別:女
種族:サキュバスハーフ
レベル:118
ジョブ:魔道士
HP:14230/14230
MP:32100/32100
STR:2500
VIT:6562
DEX:8601
AGI:5134
INT:45190
LUC:1030



名前:シアン・ビッチ
性別:女
種族:人間
レベル:65
ジョブ:地下アイドル
HP:7700/7700
MP:16500/17300
STR:1900
VIT:1662
DEX:4752
AGI:1620
INT:24190
LUC:180



 アレンとゾフィーちゃんは順当にレベルアップを重ねていらっしゃる。出会って間もない頃のメルセデスちゃんが、今の二人と同じくらいのステータスであったような気がする。そう考えると、歳の割にハイスペックだった近衛レズだ。

 一方、エステルちゃん一人が飛び抜けて成長している。多分、ここ数週に渡って繰り返された奇行の数々が、多大な経験を彼女に与えたのだろう。もしかしたら、魔道貴族を超えているのではなかろうか。



名前:グレモリア・ファーレン
性別:男
種族:人間
レベル:131
ジョブ:魔道士
HP:15550/15550
MP:31010/31010
STR:2300
VIT:6058
DEX:10840
AGI:3130
INT:53942
LUC:3991



 危ういところで年配者としての威厳を保った予感。

 レベルが上昇しても、魔力一点豪華主義は相変わらずである。ただ、この点に関しては自分もあまり人のことは言えないので触れずにおこう。人間、何事も得て不手があるのは仕方がないと思うんだ。

 ところで勇者様はどうなのだろう。

 肝心の彼が弱かったら、今後のプランが相当な困難となるのだが。



名前:スター・ザ・エリュシオン
性別:男
種族:人間
レベル:152
ジョブ:勇者
HP:45300/45300
MP:21130/21130
STR:29101
VIT:14750
DEX:23023
AGI:10010
INT:20140
LUC:21490




 レベルの割にステータスが高い。もしかして、勇者補正的な何かが存在しているのだろうか。しかしながら、魔道貴族やロリビッチの突破力を考慮すると、些か防御面に不安の残る値だろうか。器用貧乏な感じがどことなく頼りない。

 トーナメントの組み合わせには十分注意する必要がありそうだ。

 そして残すところ最後に確認させて頂くのは、我らがドラゴンシティの縁の下の力持ち、黄昏の団代表のゴンちゃんである。過去に確認したことはないけれど、現場での戦いっぷりから、なんとなく当たりは付いている。



名前:ゴンザレス
性別:男
種族:人間
レベル:105
ジョブ:騎士団長
HP:29050/29050
MP:1850/1850
STR:22300
VIT:31958
DEX:8821
AGI:9030
INT:942
LUC:9291



 完全に脳筋だよな。でも、実際には知的イケメンなんだよな。

 メガネとか絶対に似合うって。

 バイタリティに関しては随一である。頼れる男を数値化すると、こういうふうになるんだろう。ちゃんと弱点が存在している辺り、愛されポイント高い。あと、ジョブ欄が騎士団長となっているの、個人的に嬉しかったりする。いつもありがとうございます。

「だいたい人数は、どれくらい参加できるんだ?」

「そうですね……」

 国外からの参加規模が見えていないので、どちらにでも転べるようにしておきたい。反響が大きかったら、あまり多く身内から参加者を出す訳にいかない一方、逆に参加者が集まらなかったら、こちらからお声がけすることになるだろう。

 そう考えると、この場で参加表明をした面々には参加をお願いしよう。最悪、予選で数を削るという方法も取れる。ロリゴンではないけれど、今の段階でお断りしてしまうと、イベントそのものに対するモチベーションも下がるだろうし。

「とりあえず、声を挙げて下さった皆さんには参加して頂こうかと」

「本当に構わないです?」

「本戦はトーナメント形式を想定しておりますので、事前に参加者全員に対して予選をお願いすることになります。皆さんにもこちらを勝ち残って頂くことが前提となりますが、大丈夫ですか?」

「問題ないです」

「まあ、当然だわなっ」

 声を挙げた姫ビッチとゴンちゃんの他、皆々からも頷きを得た。

 良かった、どうやら理解して貰えたようだ。

「ただ、すみませんが西の勇者様に限っては、シードということで、本戦からの参加をお願いしたく考えております。こちらの都合で振り回すことになってしまい申し訳ないのですが、参加、ということで大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。それが僕にできることなのだろう。全力で当たらせてもらう」

「助かります」

 無事に西の勇者様からも承諾をゲット。

 これでイベントの体裁は整ったと考えて良いだろう。

『……ふんっ』

 若干一名、酷くつまらなそうに鼻を鳴らすドラゴンがいるけれど気にしない。

 まさか参加させる訳にはいかないからな。

「ではすみませんが、そのような形でお願いします。皆さんには当日に向けて色々とお手伝いを依頼することもあるかと思います。勝手な面倒ばかり大変に申し訳ありませんが、どうぞ、ご協力をよろしくお願い致します」

 そんなこんなで大会出場メンバーが決定である。

 この調子なら、なんとか西の勇者様を優勝へ導けそうである。



◇◆◇



 数日後、首都カリスから手紙が届いた。

 差出人はリチャードさんである。なんでも無事に陛下からゴーサインを頂戴できたようだ。相変わらず仕事の早い男だろう。紙面には併せて予算やら開催時期やら、概要がつらつらと示されていた。ちなみに優勝者には金貨一千枚が用意されるそう。

 どうやら宰相とも一悶着あったらしく、国庫から助成金が得られる旨、記載が為されていた。できればお国に借りは作りたくなかったのだけれど、こればかりは仕方がない。可能であれば使わずにとっておいて欲しいとは彼の弁である。

 その脇には陛下からの発注予算とは別に、フィッツクラレンス公爵として出資する用意があるので、気軽に相談して欲しいとの注釈が見受けられる。以前、こちらで語っていたドラゴンシティの独立云々は、思ったより確度が高い案件なのかもしれない。

 ということで、執務室までやって来た醤油顔はソフィアちゃんとトーク。

「え? あ、あの、これって本当に……」

 リチャードさんから頂戴した手紙をメイドさんにお渡しした。

「はい、些か急な話ではありますが、進めようと思います」

「あの、で、ですが、その、流石にこんな大金はっ……」

 紙面を目の当たりとして、顔を真っ青にするソフィアちゃん可愛い。デスクに腰掛けたまま、ガクガクブルブルし始める。なんせドラゴンシティが普段扱っている予算より、三つほど桁が多い。小さな国であれば、丸っと賄えてしまうのではなかろうか。

 大会優勝者に与えられるペニー金貨一千枚が霞む勢いだ。

「催しに際しては、大変に恐縮ですが、ソフィアさんに財務を担当して頂けないでしょうか? もちろん私もサポートします。ただ、他に全体の進行を見る必要があるので、どうしても細かいところは、信用の出来る方にお願いする必要がありまして」

「えっ……」

 殊更に顔を青くするメイドさん、脇の下がみるみるうちに色づいてゆく。

 このまま放っておいたらプシャーしてしまいそうだ。

「もちろん、仕事に見合った報酬を用意させて頂きます。多少であれば、ソフィアさんの裁量で使って頂ける枠も用立てます。ですからどうか、お願いできませんか? 私には他に宛もありませんでして」

「い、いえいえ、そんなっ! 無理ですよ!? 私はただのメイドですから、そんな、こんな大きなお金なんて、ぜ、絶対に無理ですっ! ノ、ノイマンさんなど、確かな方にお任せしたほうがっ!」

 そうだ、ノイマン氏も首都カリスから戻ってきて貰わないと。

 そうしないと、絶対に回らないと思うんだ。

「責任は全て私が取りますので、どうか帳簿の面倒だけでも、無理でしょうか?」

「その、あ、あの、ですがっ……」

 深々と頭を下げて、どうにか、何卒。

「すみません、ソフィアさん以外に頼れる方がいないのです」

「…………」

 すると、彼女はしばらく考える振りを見せる。

 黙って待つことしばし。

 めっちゃドキドキ。

 まるで愛の告白でもしたみたいだ。

 ややあって、お返事が。

「しょ、承知しました。そういうことであれば、つ、勤めさせて頂きます」

「ありがとうございます。とても助かります」

「ですが、あ、あの、代わりに一つお願いが、あるのですが……」

「なんでしょうか? なんでも仰って下さい」

 おっかなびっくり、上目遣いに尋ねられた。ソフィアちゃんが自発的にお願いとか、これまた珍しい。頼りなさ気な表情に嗜虐心を唆られる。ここは一つ、全力で叶えさせて頂きたく臨む所存にございます。

「タナカさんのお知り合いには、その、す、す、素敵な殿方が多いように思います。もしよろしければ、タナカさんのお知り合いで、私と同世代の男性がいらっしゃいましたら、ご紹介して頂きたいのですが、お、お願いできませんでしょうか?」

「っ……」

 マジかよ。

 そう来るとは思わなかったよ、ソフィアちゃん。

 っていうか、今の絶対に顔の筋肉とか震えてしまっただろ。

「タナカさんにこのようなことをお願いするのは、た、大変に恐縮なのですが、その、私もそろそろ年頃といいますか、意識しなくてはいけないのですが、なかなか出会いがなくて、こ、このままだと、行き遅れてしまいそうというか……」

「な、なるほど」

 たしかにこちらの世界の方々は婚期が早い。

 二十歳を過ぎて独身の女性は、周囲から行き遅れを心配される。二十五を過ぎて独身だと、哀れの目で見られるという。まあ、それもこれも人類の平均寿命を思えば自然な視点だ。ロリコンとしても非常に喜ばしい価値観である。

 けれど、その矛先が自らに向けられるとならば話は別だ。

「やはり、だ、駄目でしょうか?」

 今ならリチャードさんや陛下の親バカを理解できるかもしれない。娘を嫁に出さなければいけない父親の心ってやつを。同時にノイマン氏の娘さんが見せるパパラブこそ、この世で最も尊いものではないかと羨望。

 別にソフィアちゃんの親でもなんでもないけれど。

「……承知いたしました。選りすぐっておこうと思います」

「え、本当ですか?」

「はい。他の誰でもない、ソフィアさんの為ですから」

「あ、ありがとうございますっ!」

「いえいえ、お気になさらず。こういうのは持ちつ持たれつですよ」

 やばい、どうしよう。

 本格的にどうしよう。

 そもそも、ソフィアちゃんと同世代のフリーなイケメンとか、知り合いに一人もいない。フリーか否かは不明だけれど、一番近いところで西の勇者様だろうか。いやいやいや、素直に紹介してどうするのだ。ソフィアちゃんがお嫁に行ってしまうぞ。

 とりあえず、保留だ。保留にしよう。

 今回の一件が片付いてから、改めて考えるのが良いと思うんだ。



◇◆◇



【ソフィアちゃん視点】

 遂にメイドはお願いしてしまいました。

 タナカさんに男性の紹介をお願いしてしまいました。

 耳として当初、彼は酷く驚いた顔をしました。当然といえば当然でしょうか。余りにも突拍子のないお願いであります。ですが、すぐに承諾して下さいました。とても緊張しましたが、無事に頷いて頂けて良かったです。

 これで私の将来も安泰でしょうか。

 行き遅れずに済みそうです。

「……楽しみですね」

 タナカさんが後とされた執務室、一人で書類仕事などしながら、あれこれと妄想してしまいます。どのような方を紹介して下さるのでしょうか。考えただけで、胸がドキドキとしてしまいますね。

「ふふ、ふふふ……」

 もしかして、貴族様とか、紹介されてしまったりするのでしょうか。

 いえいえ、流石にそれはないですね。

 幾らなんでも、貴族様は無理ですよ。

 どれだけ着飾ったところで、私は一介の町娘ですからね。

 でも、妄想するくらいは問題ないと思います。

「ふふっ……ふふふっ……」

 今晩は楽しい夢が見られそうです。



◇◆◇



 リチャードさんに醤油顔がお返事を書いてから更に数日ばかり。

 ペニー帝国から国内外に対して、武道大会のアナウンスが為された。

 ドラゴンシティの醤油顔の下にも手紙がやってきた。蝋で封をされた、とても立派な封筒に包まれての到着である。今まさにこれをソフィアちゃんから受け取ったところ、執務室のソファーに腰掛けては紙面を眺める。

「…………」

 曰く、五百年の年月を経て、遂に魔王が復活した。世界は今、危機的状況におかれている。これを打開する為、今こそ人類が一丸となる時である。腕に自身のある者は、我こそはと思う者は、ペニー帝国に集いたまえ。うんたらかんたら。

 どうやら陛下は対外的にも、大聖国と真っ向から対立することに決めたようだ。

 まあ、単にお尻に火が点いただけとも言えるが。

「…………」

 いずれにせよ、ドラゴンシティはこれからが踏ん張りどころである。

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