人は誰もが助けてくれたのに、私はいつもその手を振り払っていた…
何故、人は誰かを助ける事が出来るのだろうか。
何故、人は誰かを信じる事が出来るのだろうか。
何故、人は誰かを愛す事が出来るのだろうか。
そして何故、私はこんなにも人を信じる事や愛す事が出来ないのだろうか。
私は誰も信じていない。
友達すら信じていない。
友達などいつでも補充出来る。
要らなくなったら、捨てる。そう、リサイクルなのだ…
手に入らない物など、この世にない。
男、金、そして友情の無ぃ友達。
手に入らない物なんて、無いと思った。
だが、ひとつあったのだ…綾華は…愛という温もりを知らずに育った。
綾華は両親に愛想を尽かされたように育った。
いや、そんな甘い物じゃない。
彼女がまるでそこに存在してはいけないような扱いを受けた。
今、その両親がドコに居るのか知る事はない。
ただ、彼女はある青年に愛という大事な物を教えてもらった。
そして信じる大切さを…
彼女は…この世界に生きる、親に見捨てられた子供達のような被害者だったのでは無いだろうか…
綾華の過去を話そうと思う。
彼女の過ごした数か月の世界は、暗闇の中にずっと居た彼女にとって輝かしい未来に向けてのスタートだった。
彼女が苦しみながらも、輝いた過去を少しだけ聞いてほしい。
ほんの少しだけ…
私には友達という友達は居なかった。
全て上辺だけの仲。
それ以上も以下もない。
それが私の付き合い方。
友達も私を上辺としか付き合う事もなく、距離を置きいつも過ごしていた。
陰口など日常茶飯事。
陰口を叩いてる暇があれば私は自分のスキルをあげる。
綾華は今でいうと、モテていた部類に入るだろう。
容姿も可愛いというより綺麗という18歳にしては、大人な感じだった。
私と居れば友達もスキルがあがったと思い、いつも付いてきた。
あの頃はナンパ等しょっちゅうで、いつも自分の体を弄んでた。
狂ったように毎日弄び続けた…
しかし、綾華は翔平と出会い変わった。
彼は…翔平は私が見てきた男とは違ったのだ。
彼は淀んだ瞳の私と違い純粋な瞳で私と話し、一緒に泣き、怒り、そして笑っていたのだ。
彼とは居る時間が長くなり、私は彼の魅力に引き込まれていた。
そんな彼に私は今までの事を言えずにいた。
男が居た事、金を貢がれ続けた事、上辺だけの友達の事、そして…堕ろした事。
彼を失いたくないあまり、私は絶対にその事だけは話さなかった。
私は良くこう言った。
『友達なんかいつか終わるものなのに、何故一緒に居るの?ほら、友達って英語でfriend…つまりendじゃない。』
彼はクスッと笑い、真面目な顔付きで言ったのだ。
『もし、終わるのなら人は出会っちゃいない。仮にそう取るにしても、終わらないという意味でも取れないかな。人が綾華を裏切り、それで終わると考えるのなら、僕は絶対君との出会いを無駄にしないよ。だって、僕達が同じ時代に生まれたのも、こうして出会ったのも、運命だと思う。』
私はその時久々に心の底カラ大笑いしたの覚えてる。
彼が大真面目に臭いセリフを言ってるのを見て思わず吹いてしまった。
彼も一緒に笑っていた。
ただ、私は感じたのだ。
胸が張り裂けそう…
私はこの人を好きという感情より、愛してるのだ、と。
ただ、私には本気になれない。
そんな感情は私には不似合いだ。
そしてそんな資格も無いのだから…
だが、綾華は初めて愛というのを感じたこの感覚を忘れたくなかった。
夕暮れと綾華と翔平の二人が住む町が一望出来る丘で二人は軽く唇を交わした。
昔の綾華なら有り得ないだろう。
が、その時の綾華にはとてつもなく幸せを感じたに違いない。
この幸せが一生続けば…
この時間が永遠止まって欲しい…
何より、翔平が愛しい…
『大好きだよ…』
しかし、私の感じた幸せは長く続く事は無かった。
そう、皮肉にも私の目の前でその幸せも崩れ去った。
彼は私の前で倒れたのだ。慌てて病院に連れていったが、今夜が峠だと無惨にも医師に伝えられた。
私はそんな現実が耐え切れずその場を逃げるように病院をあとにした。
何故、彼なのか。
何故、私ではなく彼なのか。
何故、神さまは彼をそのような運命にしたのか。
私は都会の真ん中で泣き崩れた。
人の行き交う冷たい都会の中に一人きりになってしまった綾華を助ける者は居なく、綾華はただ声を出して泣く事しか出来なった。
綾華は今までの人生を悔やんだ。
悔やんでも悔やみ切れず、また泣いた。
その時、彼の幻が見えた。居るハズのない翔平が手に取るように、そこに存在するように見えた。
綾華が憧れ、愛した、彼は笑顔で存在していた。そして静かに口を開いた。
『泣くなら、泣くだけ泣いたら良い。泣く事が出来るなんて幸せじゃないか。僕らは感情を表せる事が出来る。そんな幸せを君はとっくに掴んでる。ただ、それに背を向けているだけ。全てに目を向けてみて。少しずつ、少しずつで良いカラ…僕を信じてくれた、君はきっとこの先その幸せを感じて生きていけるさ。』
と、言った。
そして、最後の最後まで彼の幻は悲しみを浮かべる事なく笑顔で消えた。
―for two years―2年後
私は今では20になり成人の年になった。
私は彼のお陰でこんなにも大事な友達が居てくれて幸せに思う。
ただ、私を救ってくれた彼は二度と逢えない。
この幸せを一番に知らせたい人はもう帰ってくる事はない。
あの、笑顔も見れない。
あの、声ももう二度と聞く事が出来ない。
2年前のあの日。最後に彼は医師達が見守る中言ったそうだ。
『彼女に…綾華に伝えてほしい…君は一人じゃない。孤独じゃない。全て君自身だ。僕は君なら、これから背を向けずに生きれると信じてるさ。僕の死はきっかけにすぎない。現に僕は君といつも一緒だった。そして、これカラも一緒だ。僕が見えなくても、必ずいつも見守ってる。君が涙する時は僕が拭ってあげる。君が悲しい時は僕が支えてあげる。約束してくれ…君は決してその笑顔を絶やす事のないように、と。』
なんとも彼らしい最後の言葉なんだろうか…
そして、彼は知っていたのだ。
知っていた…いや、わかっていたのだ。
私の過ごした人生を。
私の過去を…
しかし、彼は私カラ離れていく事なく、近くカラ守っていたのだ。
翔平の死顔は満面の笑顔だったという。
私はその話しを聞くと、目に涙を浮かべながらも笑顔で大きく頷き、
『はい。』
と返事をした。
彼を愛してると気付き、愛されたと感じたカラこそ、私はこんなにも大切な幸せや思いを知る事が出来たのだ。
そして私は彼の願いを消す事のないように生きていこうと思う。
それが彼との最初で最後の約束。
そうすれば、どんな悲しみも乗り越えられるだろう。彼なら今もきっと、見守ってくれてるハズだから…
今日は成人式。
綾華は友達と一緒に来ていた。
『綾華ぁ…そろそろビール飲んでないで、皆で写真撮ろうよ〜。』 『ダ〜メ。ほら、アンタも飲もうよ。』
『もう…綾華はそのままで良いよ。』
ハイ、チーズ。
カメラのシャッター音が鳴る。
2年前の綾華はドコにも居ない。
写真の中に写る彼女の姿は翔平と約束した、笑顔のままだった。
彼女はこの先笑顔を失う事はないだろう。
そして彼女の笑う声は絶えないだろう。
翔平との出会いが、温もりが、綾華を変える事が出来たのだから。
『翔平。私は貴方のお陰でこんなにも大切な人が出来た。大切な気持ちに気付けた。翔平…本当にありがとう。』
今日も心地よい風が私を押すように桜の花びらと共に駆け抜けている。
☆★☆★END★☆★☆ |