浩司は大のヘラブナ釣り好きだった。
「浩司。ヘラブナ釣りに行かんか」。
いつも友人の徳次郎にこういわれて釣りに行った。
「ああ。ええよ」。
決まって浩司はこう答えるのであった。そんな仲の良い浩司と徳次郎だったが、今日は珍しく浩司がヘラブナ釣りに行かないと言っている。
「今日、特番があるから、また明日行かないか」。
「ふーん。分かった。じゃあ明日来るわ」。
「うん。じゃあな」。
そう言って別れを告げた。次の日の朝。
「浩司。ヘラブナ釣りにいこうや」。
そう言って尋ねてきたのは徳次郎だ。
「ごめん。今日は行けれんわ」。
「もういい。一人で行く」。
徳次郎は俺が約束を破ったことに腹を立てているんだ。そんなこと分かってる。
浩司は心の中で思った。
徳次郎は園川のほとりにいた。今日は徳次郎に話す気にならなかった。
もうかなり釣れたらしい。徳次郎のバケツの中には鮠が三匹とヘラブナが二匹いた。
「あ・・・・・・。浩司」。
といいながらも徳次郎はこちらを向いてくれなかった。
しかたなく僕は園川から走り去った。
「ふん。もうあんなやつ知るか」。
意地を張ったものの、やっぱり寂しかった。
「ごめん。許してくれ」。
次の日。学校へ行くと、徳次郎は休みだった。
「浩司君。君、徳次郎君のところにプリントを届けてくれないかなぁ」。
「何もこんなときに」。
浩司は本当はこういいたかった。でも仕方なく、
「はい。分かりました」。
と答えた。
その日。徳次郎の家に行った。
でも、中に入る気分になれなかった。
「ポストに入れとこう」。
結局その日はポストに入れて帰った。
しかし、その夜浩司は眠れなかった。
「うーん」。
考え込んだまま眠ることが出来なかった。
「今日休んだのは、僕のせいかな」。
しかし疲れていつの間にか眠り込んでしまった。
次の朝。学校へ行く気はしないが、しょうがないから行った。
そうしたら、徳次郎はとっくの昔に来ていた。
「おとといはごめん」。
「なに。まだそんなことを気にしていたのか。いいんだよ。だって俺たち友達だろ」。
よかった。こんな友達が欲しかった。僕はそう実感した。
「なあなあ。今度、一緒にヘラブナ釣りに行かないか」。
「ああ。いいよ」。
間を置いていった。
「絶対来いよ」。
「あ〜。行かないかもしれない」。
浩司は冗談めかして言った。
「うそうそ。行くってばぁ」。
「来ないとおまえの家に押しかけるからな」。
「だから行くって」。
友達って大切なものなんだ。浩司は改めて感じた。今日その瞬間に。
ヘラブナ釣り 完
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