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推理

女刑事な人生

作者: 桂 ヒナギク

探偵と刑事から派生したスピンオフです。時系列的には探偵と刑事の過去になっています。お楽しみ下さい。

 俺の名は黒沢くろさわ さとし。都内で探偵事務所を営んでいる。いや、正確には”いた”だ。

 どういうことか? それは昨日にさかのぼる。

 その日の午前中、いつも通り事務所にやってくると、双子の姉で警視庁捜査一課の敏腕刑事の聡美さとみの姿があった。因に階級は警部。

「姉さん!?」

「おはよう、聡」

「おはよう、じゃねえよ。何でいるんだよ?」

「いやね、ちょっとお互いの人生を交換してみようと思って」

「はあ?」

 姉は懐から片方の先端に青、もう片方の先端に赤の玉がついたロープを取り出した。

「これ、鑑識課の相沢あいざわくんがド○えもんを見てお遊びで作ったんだけどね、これの先端を二人で持つと魂が入れ替わるんだって。青い方が男で、赤い方が女よ」

 相沢のやつ何作ってんだよ? 警官やめて科学者になれよw

「で、これでどうしようっての?」

「だから、私と聡の体を交換するのよ」

「元に戻れるんだろうな?」

「もち」

 何だか面白そうなので付き合ってやることにした。

「で、青い方を持てばいいんだっけ?」

「うん」

 俺がロープの先端についた青の玉を握り、聡美が反対側の赤の玉を握った。すると、お互いの体が入れ替わった。

「ノーベル賞取れるだろ、これ」

「それは同感ね」

「俺のハスキーボイスで女口調はやめろ、きもい」

「お前も私の声で俺とか言わないでくれよ」

「そうですね、はい」

プルルルル──と、聡美の携帯……元い俺の携帯が鳴り響いた。

 俺はポケットから携帯を取り出して応答した。

「はい、黒沢です」

「警部、中野区で殺人です。至急現場まで来てもらえますか?」

「どこかしら?」

 俺は聡美の部下から現場の住所を聞き、彼女の乗ってきた車で現場へと向かった。

 現場は中野の住宅街にある児童公園の公衆トイレだった。

 仏の名は宮島みやじま あきら。年齢は三十歳。性別は男。死亡推定時刻は昨夜の十一時ごろ。第一発見者はこの公園で寝泊まりをしているホームレスの男性で、朝起きてトイレに向かったら遺体を発見したということだった。

 俺は白い手袋をはめ、合掌してから遺体を調べた。

 遺体の胸には鋭利な刃物で刺された痕があり、鑑識の報告で傷の深さは心臓にまで達していることが分かった。

「警部、現場付近のゴミ置き場から凶器を見付けました!」

 そう言ってやってきたのは、部下で新米刑事の荒川あらかわ 洋子ようこ巡査である。その手元には凶器と思われる血塗ちまみれの包丁があった。

「鑑識に回してちょうだい」

「了解です」

 洋子は凶器と思しき包丁を鑑識に回した。

「警部、次は何をしますか?」

「取り敢えず、害者の交友関係洗いましょうか」

 俺と洋子は害者の交遊関係を洗った。その結果、二人の容疑者が浮上した。

 俺と洋子は二人の容疑者を連れて現場へと戻った。

「彰が殺されるなんて……」

「ねえ、刑事さん、俺ら疑われてんの?」

「ええ、まあ……」

「何だよ、それ。俺ら何にもしてねえぞ」

「あなた方が何もしていないか否かはこれから調べます」

「勘弁してよ。俺ら本当に何もしてないっすから」

 俺は容疑者二人から話を聞き、この二人にアリバイがあって犯行が無理だったということが分かったので二人を解放した。

 となると、残るはホームレスの男性……。

 俺と洋子はホームレスの男性と被害者の関係を調べた。

 男性は板倉いたくら たけし、三十歳。害者とは小学校が同じで、仲がよかったという。殺す動機がない。

 捜査は振り出しに戻った。もう一度現場に戻ってみよう。何か見落としてるかも。

 俺と洋子は現場に戻ってきた。

「あれ?」

 トイレの中に防犯カメラがあることに気付いた。

「荒川さん、あれ」

「カメラですね」

 俺と洋子は公園の所有者の下へ伺い、防犯カメラについて話を聞いた。所有者の話では、このトイレで盗撮事件が起き、それ以来、防犯カメラを設置しているそうだ。

 防犯カメラの映像は警備会社が行っているそうなので、俺と洋子は警備会社へ足を運んだ。

「警視庁捜査一課の黒沢です」

「同じく荒川です」

「昨夜十一時前後の中野児童公園の防犯カメラの映像を拝見させていただけないでしょうか?」

「少々お待ち下さい」

 社員が映像を準備する。

「あ、これですね」

 俺と洋子は映像を見た。

 時間が十一時ごろになった時、被害者がやってきて個室に入った。その後に女性が入ってきて、個室の前で立ち止まる。

 このトイレは男女共用である。

 被害者が排便を終え、扉を開けた次の瞬間、女性が被害者の胸を隠し持っていた包丁で一突き。

 被害者は痛そうな顔でその場に崩れた。

 女性は足早にその場を去っていく。

「こいつが犯人……」

「すみませんが、この犯行の瞬間の映像をお借りすることは出来ませんか?」

「いいですよ。今、コピーしますね」

 社員が映像をコピーした。

「これです、どうぞ」

「ありがとうございます」

 俺と洋子は警備会社を後に、警視庁へと向かった。

 警視庁のデータベースで女性が前科がないかを調べる。

「黒沢警部、ありました」

 鑑識がデータベースを操作したところ、前科者リストから防犯カメラの女と一致するデータが見付かった。

 小宮山こみやま 沙織さおり、三十歳。罪状は殺人未遂。被害者は宮島 彰だ。

「服役して反省したかと思ったら、また事件に手を染めてますな」

「それほど被害者に強い恨みを抱えていたんでしょうね」

兎に角──と、続ける俺。「小宮山 沙織の下へ行きましょう」

 俺と洋子は小宮山 沙織の下を訪ねた。

 ピンポン、とインターホンを鳴らすと、小宮山 沙織が出て来た。

 俺は小宮山に警察手帳を見せる。

「宮島 彰殺害の件でお話があります。警視庁まで同行していただきます」

 俺と洋子は小宮山を警視庁に連行し、取り調べを行った。小宮山は取り調べで犯行を認め、俺は殺人容疑で書類送検・起訴を行った。



 翌日、俺は事務所に足を運んだ。そこには見た目が俺の聡美が居る。

「元に戻ろうぜ」

「そうしたいのはやまやまなんだけど、肝心のロープをくしてしまったのよ」

「何──っ!?」

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