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ゾンビ少年と楽園生活 作者:田中太郎

一章 始まりの物語

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プロローグ 『化け物と呼ばれた日』

 

 世の中には科学では証明出来ない事が沢山存在する。

 幽霊、UFO、UMA、妖怪、悪魔、天使、神、簡単に上げるとしたらこの辺だろうか。
 しかし、そのどれもが見た事があると言う人間が存在する。
 それにも関わらず、確たる証拠は存在しない。

 でも、もし、そんな異形の存在が当たり前のようにいるとしたら?
 もし、人間と同じように学校に通い、仕事をし、カフェでお茶をしているーーそんな生活をしているとしたら?

 これはそんなもしもの存在が当たり前のように暮らす世界の話。

『海上都市パラダイス』。
 それは人外種と呼ばれる人間とは違う生物が暮らす都市。
 人間と同じように生活をする世界。

 これは、そんな都市に暮らす少年少女のお話。



 ーーーーーーーーーーーーーーー



 十五年前に、少年はこの世に生を受けた。
 極平凡な体重で産まれ、出産の際にもこれといった山も無く、どうしようもなく安産だった。

 それからは元気良く育ち、友達も沢山出来て楽しい生活を送っていた。
 優しい両親に愛情を注がれて育てられ、学校に通えば友達が集まり、少年の周りには絶えず人が集まっていた。

 しかし、そんな少年には他の人間と違う点が一つだけ存在した。
 それは産まれた直後に発覚したのだが、両親の意思とまだ幼いからと言う理由で、当事者である少年には伝えて無かった。

 たがある日、少年は思いがけない出来事でその違う点に気付く事になった。

 ーー五才の時、友達と遊んでいる時に少年は車に引かれた。

 鬼ごっこをしている最中、公園を飛び出した少年を待ち受けていたのは、居眠り運転で時速60キロで走るトラックだった。
 そんな物に引かれれば、勿論少年は身体中の骨が砕け、ほぼ即死に近い状況で命を落とす。
 ーーその筈だった。

 トラックとの衝突の後、十メートル程吹き飛び、体を地面に打ち付け、そのまま転がりコンクリートの電柱に体を打ち付ける事で停止した。
 誰もが死んだと思った、その直後ーー少年は泣きながら立ち上がった。

 地面に転がる際に出来た傷からは、止まる事が無く血が流れている。
 ボロボロに引き裂かれた衣服には、じわりと血が滲む。
 目を擦る左手とは反対の右手は、肘から先があり得ない方向に曲がり、指先が肩に接触している。

 少年自身、自分の身に何が起きたのか分かっていなかった。
 身体中を駆け巡る激痛に堪える事が出来なくなり、溢れ落ちる涙を拭きながらとりあえず友達の所に行かないとーーそう思って立ち上がっただけだった。

 痛みに感情を支配され、その場から逃げたしたくなる少年は、助けを求めようと一歩を踏み出す。

 多分、この時が初めてだった。
 これから歩む人生で少年が幾度と無く投げ付けられる言葉を聞いたのは。

『化け物』

 少年は言葉の意味が分からなかった。
 自分が追いかけていたはずの友達が、恐怖に顔を歪め、涙を溜めながら絶叫した。

 それからの人生はあっという間だった。

 病院に運ばれ、見た事も無い機械に体を弄られ、挙げ句の果てには黒スーツの男に引き取られた。

 ただ一つ分かったのは『そういう人間』が住む所に自分は連れて行かれるのだろうという事だけ。

 両親と引き離され、与えられた住居に住み、毎日知らない大人の質問に答える。
 注射を打たれ、身体中にカラフルな線を貼り付けられた。
 そして、後にも先にも忘れない程の痛みを、心と体に刻まれた。

 この頃からだった。
 自分は普通の人とは違うのだと自覚したのは。

 でも、少年は焦る事も無く、慌てる事も無く、自分と言う存在を素直に受け入れた。
 それはどうしようも無い事実だと受け入れた。


 それから十年、少年は高校生になった。

 友達も出来て、当たり前で楽しく平凡な日々を送っていた。

(あぁ、またかよ)

 少年は宙を浮かび、浮遊感に体を包まれながらそんな事を考えていた。
 自由落下に身を任せ、眼前に迫るコンクリートの地面を見ても少年は落ち着いていた。

 それが少年の『日常』だから。
 トラックに跳ねられ、何メートルも吹っ飛ばされる日常はどうかと思うが、少年はそれを当たり前だと実感している。


 次の瞬間、顔面からコンクリートへとダイブし、首から鳴る筈の無い異様な音を立てて少年の意識は途切れた。


 少年の名前は創秋人(ハジメアキヒト)

 海上都市パラダイスに暮らす人外種。

『ゾンビ』の少年だ。

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