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#0.5   とある水曜日の帰りの出来事

朝、少し早めに起きて、朝ご飯とお昼の弁当を作る。

テレビのニュースを眺めながら、作った朝ご飯を食べる ―― 一人で。

制服に着替え、いつもの通学路を通り、一人で学校へ向かう。


いつもの様に、難しそうな話をしている先生達の授業を受ける。

昼休みは、朝に作った弁当を。作って来なかったら、学食で適当な物を買って、食べる ―― また一人で。

昼休みが終われば、残りの授業を受け、全ての授業が終わったら、近所のコンビニで四、五時間のバイトへ。


バイトが終わると、真っ直ぐにアパートへ帰り、夕食の準備。

テレビ番組を眺めながら、バイト帰りに買って来たフライドフーズと、作った夕食を食べる ―― 勿論、一人で。

食べ終えた後は、食器を洗い、授業で出された課題を片付ける。


また週末などの休みの午前中は、溜めた洗濯物を洗い片付けて、部屋を掃除する。

一週間に一回は必ずする ―― 一人暮らしだから。

そして、土曜の正午から深夜までは、生活費に余裕を持つ為、コンビニのバイトに出る。


色々大変だが慣れてしまえば、どうって事もない。

全てが片付いた後の日曜日は、ネットサーフィンに勤しむ。

面白いゲームを見つけたらじっくりやり込むが、直ぐにカンストしちゃうので、他のゲームへ渡る事も多い。

後はベッドの上で座ったり、寝転んだりしながら、有名な著書の小説や漫画を読む位だ。


結構、退屈だ。一人しか居ないのだから。

外へ出る事は、学校と買い物、コンビニでのバイト、市役所や銀行へ、生活する上で必要な手続きに向かう事以外にあまり無い。身体の事もあるから、遠くへは行けない。

いつか誰かと、遠い場所へ行ってみたいな……。



そんな風に、俺の生活はループ ―― というよりは、リピートされる。

またそんな風に、忙しい高校生活を過ごしている俺の名前は、二分野にふの 一差いっさ

都会のとある小さなアパートで一人暮らししている。

両親は俺が凄く小さい頃に病気で他界していて、祖父ちゃんも、祖母ちゃんも居ない。

生まれた時には既に居なかったらしい。同じ病気で亡くなっていたのかもしれない。


そして、俺も生まれてからずっと身体が弱く、病院の一室に籠りきりが続いた。

ただ、勉強の方は、遅れを取る訳にもいかないと必死でやってはいた。

学校へ行けないのに、何の意味があるんだろうと疑問に感じる事もあったが、取敢えず頑張った。

一時的にでも身体が落ち着いている時にやっていて ――



咳がやばい位出始めたら、手術を受ける。


そんな日々が続いた。



一体、どんな病気が俺を苦しめていたのか、医者に何度か訊いてみても分からなかったが、中学に入学してからは何故か落ち着いた。


病気に悩まされる事無く、安心して学校へ通える。

やっと、憧れの学校生活を送れるんだ。

それからいざ、友達をつくろう思ったけど……



……どうやって友達をつくればいいんだ?



そう悶々と思って悩み続けて、気付いたら中学校を卒業していて、もう高校生だ。

こんな事を悩み続けても無駄なんじゃないかと思って、放棄してしまっている。

どれだけ一生懸命頑張っても無駄だと思っていた勉強だけは、中学で身体が落ち着いたお蔭で、無駄になる事は無かった。



一人で寂しくなんかないかって?



友達いない歴は、自分の歳と同じ。

彼女いない歴も、……自分の歳と同じ。



正に“天涯孤独”。



ずっと一人だったから。



一人だったから……。



……寂しくなんかはない。



寂しいと思った、その瞬間に自分が悲しくなるから、そう思わない。

兎に角、死ぬのは怖いと思ってるから、今日も生きる。


しかし、今の環境で生きていく事も、辛い。

俺はこれからも、一人だけの生活に耐えられるのだろうか?






※ ※ ※






それは、とある水曜日の帰りだった。

水曜日はいつもと違い、コンビニのバイトは、お休みだ。

何処にも寄らず、ただ真っ直ぐにアパートへ帰る――つもりだった。


中学の時から毎日の帰りで気になってはいたが、気付いたら立ち寄らずに通り過ぎていた。

いつからあったのかは分からないが、恐らく長い年月掛けて建っているであろう、古めかしいアンティークショップ。

店前の硝子ショーケースの中には、胡散臭そうであり、万以上の額がついてそうな懐中時計や絵画、ティーカップセット等が並べられいた。


幾つかの骨董品達に目に入り、俺はその一つをじっと見つめていた。気になるものがあった。



「……絵? 写真? それとも……鏡か?」


“それ”はとても曖昧なものだった。

写し出されたリアル過ぎる風景は、絵というよりは写真の様で。しかし、“それ”は俺の背後の風景を映している様に見えた。


「……“それ”が気になるかい?」

「わぁっ!?」


突然、背後から話し掛けられ、俺は素っ頓狂な声をあげた。話し掛けられたのは、年齢不詳の老翁……、いや、老婆だろうか? 性別がよく分からない老人だった。


「スマン、スマン……。……中々、店に来る者が居ないので、珍しかったのだ」

「いえ……、突然をスミマセン……。あの、これは?」


俺は改めて、彼に“それ”について訊ねた。


「“それ”は“通仁視つじんしの鏡”というものだ」


聞き慣れない言葉を頭の中で復唱してみる。

つ、じん、……し? 発音し難いな……。一回だけで諦める。


「使ってみれば分かるさ。……折角、来てくれた礼だ。君にタダであげよう」

「え、いや……」


俺は言い訳が直ぐに浮かばず、言葉を詰まらせる。店に飾っているモノ達もそうなのだが、胡散臭そうな感じがする。


「遠慮なく貰って行って欲しい。この店もそろそろ閉店しようと思っているのだ……」

「……」


俺はその鏡を引き取って帰る事にし、アパートへの帰路に急いだ。




この時、俺はいつもの日常が百八十度変わる瞬間になるなんて思いもしなかった。





“お前の身体を ―― 、我の素体として利用させて貰うぞ”



将来の不安を心の何処かに抱えながら、繰り返される毎日に変化が訪れた事に気付いたのは、死神を名乗る少女との青天の霹靂な出会いだった……。




(To be continued......)

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