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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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90/124

90:マジ、バイト店員になる。

 朝から頭を使うのは辛い。
 早朝からログインして、ゲーム内でステータス画面と睨めっこ。

 現在、俺の装備は……
 16上半身防具イン杖。
 16下半身防具。
 16手袋。
 12靴。
 外見としては、上半身裸……。
 思いっきり変態である。

 取り敢えず変態はおいといて、自分のレベルに対して装備が貧弱すぎる。
 まぁ、レベルの上がりやすい時期だし、装備を揃える頃には次のレベルなんだよな。
 今が21だから、いっそ次の24装備を考える方がいいんだろう。

 とは言うものの、レベル12の靴は新調しないとな。
 そうだ!
 いっそ靴と余ってる12上半身装備を合成するか!

《ぷぷぷぅ?》
「おう。俺はやるぜ。技能レベルも上がったんだ。せっかくの技能だしな、自分でやってみたいじゃないか」

 心配そうにぷぅが見つめるなか、システムメニューから合成を開始。

 枠に装備をそれぞれ乗せて――OKボタンをポチリ。
 成功すればピカっと光り、失敗すれば――

 ぐにゃり~♪

 という妙な効果音と共に、煙のようなものが昇ってゴミに……

「うおおぉぉぉぉっ! 靴とコートが融合したゴミになったぁっ」
《ぷぷっ! ぷぷうぷぷぷぅ》

 ダーリン! 裸足になってるわっ――と叫ぶぷぅの声で自分の足を見ると、裸足になっていた。
 おぅ……どんどん俺の露出度が上がっていく。

《ぷぷぅ、ぷぷぷぅぷぅ~ぷ》
「え? 裸足だと怪我をしないか? ど、どうなんだろうな」

 そこまでリアリティに再現するのかな?
 できればしないで欲しい。

「とにかく、靴、探さなきゃな」
《ぷぅ~》





 ファクトにテレポして露店巡りをする。
 足を踏まれないか不安で、つい下を向いて歩いてしまう。
 HPバーは……うん、特に減っていないから、裸足だから怪我ダメージをするという訳ではないようだ。

 ルーン、フラッシュとの待ち合わせ時間もあるし、急がなきゃな。
 まぁ現実時間の朝八時集合なわけだが、俺がログインしたのは七時少し前。
 こっちの時計だと二時少し前だった。
 現実で一時間後ってことは、こっちだと二時間後になる。
 四時に農村集合って事だな。よし、今はまだ二時半だ。なんとかなるなる!
 たぶん。

 ゲーム内では夜が明けたばかり。
 通りを歩くNPCは少ないが、じょじょに活気付いてきていた。

 そうだ。最悪、NPC売りの装備を合成して強化するしかないかもな。
 だってプレイヤーが売りに出してる装備って、軒並み万超えですもん!
 俺の所持金も結構潤ったけど、装備一式買えるほども無い。

 このゲーム。モンスターから装備のドロップが、ネームドだのボスだのからしか出ないもんだから、生産に頼るしかないんだよなぁ。
 でもコストが掛かるのか、簡単に揃えられるような値段じゃない。
 夢乃さんにタダで作って貰ってたけど、実際自分で買おうとしたらとんでもないな。

 せめて手持ちの素材で製造依頼できればいいんだろうけど……。
 だが俺はここで嫌な記憶を思い出した。

 以前プレイしていたVRMMOで、製造依頼請負職人に、装備一式の依頼をした。
 当時は前衛火力職だったからな。
 重装備と軽装を合わせたような胸部ブレストアーマーと、ズボン。篭手、ブーツ。そして両手剣。
 これら全部の材料を持ち込みで依頼をして――

 見事に持ち逃げされた。

 チーン。

《ぷぷぅ?》
「あ? どうしたのかって? いやな、昔の事を思い出してな」

 当時俺は中学生で、初めてのネットゲームという事もあって人を疑い事を知らなかったんだよな。
 そんな訳で、製造請負人は信用しない。

 とにかく安くて性能の良い装備を探すぞ!
 どこかに一桁設定ミスってる露店はないか!!

 きょろきょろしていると、露店に生首発見。
 生首?

「ひっ!!」
《ぷぷぅ?》
「おい見ろぷぅ。生首が売られているぞっ」
《ぷ? ――ぶぶぶぶぶぶぶっ》

 慌ててぷぅが俺の首に縋りつく。
 がくぶるしてるな。

「はっはっは。ぷぅ、冗談だジョーダン。ほらよく見ろ。店主がドワーフなんだよ」

 と、実は最初に見たとき本気で生首だと思った俺が言ってみる。
 ぶるぶる震えるぷぅを撫でながら露天を指差し、ドワーフだから丁度カウンターの棚板に頭が乗っているように見えるだけだと話してやる。
 いやぁ、しかし凄い位置関係だな。

《ぶぶぶぶ……ぷっ》
「ん? どうしたぷぅ」
《ぷぷぷぷぅ》
「何? ザグだと?」

 言われて生首店主をよく見ると、確かに白髪頭のドワーフ、ザグだ。
 ぷぅのやつ、何気に目がいいし、記憶力もあるな。

「よぉ、ザグ。儲かってまっか~?」

 ファクトの町まで道中一緒だったドワーフのザグ。
 思いっきり生産技能オンリーだった彼は、ソロではここまで来れず、だからといって同行してくれる仲間も居なかったのか、コールの町の冒険者ギルドで同行者を探していた。
 で、成り行きで一緒にここまで来たんだが……。

「おぉ、マジックどんではないかもし。もちろん、儲かってなどおらんぞなもし」
「おいおい、随分と景気の悪い返事じゃないか」
「んむ。料理技能を習得し、露店も買って売り出してはおるんだが……客がまったく来る気配が無いぞなもし」

 あー、うん。
 ドワーフの料理だしなぁ。酒でも入っていそうだよな。
 しかもこの露店看板――

【心を込めて作った父の味】

 ――だしな。
 誰だよ父って。

「そう言えばマジックどん。昨夜のイベントに参加していたらしいぞなもし」
「へ? なんで知ってるんだ?」
「んむ。公式の画像掲示板でマジックどんが光っておったぞなもし」

 ぶほっ。
 やっぱ掲示板にアップされてたか。

「それしてもふんどし祭とは……わしも誘って欲しかったぞもし」
「……持ってんのか」
「当然である」

 そう言ってザグが突然ふんどし姿になる。
 おい、それ赤いじゃねえか!!

「レアぞなもし。ノーマルが白で、レアだと赤いのであるぞもし!」
「町中でその姿は、自警団にしょっぴかれるんじゃないか?」

 と本気で心配したくなるほど、ヤバイ。
 焦ったザグも直ぐに元の姿に戻り、辺りをきょろきょろ見渡している。
 誰かに通報されていれば来てたかもな。

「ところでマジックどんよ。こんな朝早くからどうしたぞなもし」
「いや、あんただってこんな朝早くから露店出してるじゃないか」
「んむ。料理技能は昨日取ったばかりなのである。だからして、早く店に並べたくて……」

 でも誰も来ない、と。
 売っているのはクッキーだのカップケーキだのといった、女子に人気そうな菓子類だ。
 看板と店主と、そして並んでいる商品とのギャップがあまりにも激しすぎる。

「はぁ、やはり装備品も並べてみるぞなもしぃ」
「あぁ、そういや料理以外の技能もちゃんと持ってたんだったよな。何があるんだっけ?」
「装備に関係しておるのは鍛冶と裁縫、木工もし」

 裁縫だって!
 レベルを尋ねると、20まで上がっているという。

「鍛冶と裁縫が高く、木工は取ってみたもののあまり作っておらなんだ。まぁ来るべき日の為に取った技能なので、問題はないぞなもし」
「来る日?」
「んむ。この手のネットゲームといえば、自らの家、もしくは店舗を持つハウスシステムぞなもし!」

 こいつ、自分で家を造るつもりで技能を取ったのか。
 俺は――面倒くせーからいいや。

 そうだ、ザグになら……。

「ザグ、頼みがあるんだが――」





「あのぉ、クッキーください」
「は、はい、毎度! ちょ、ちょっと待ってくださいね。あ、そっちのお客さん、取引成立させてくださいね」

 ザグにレベル20装備、ないしは16装備の作成を頼んだ。
 出来れば20がいい。無理なら16でということで。
 ありったけの材料を渡し、彼が工房に行っている間、俺が店番をする。
 さっきまで……ザグが居たついさっきまで閑古鳥が鳴いていたのにっ。

《ぷぷぅ~》
「は? キラッキラしてうちのダーリンステキだわ? お前も手伝え!!」
《ぷぷぅ~ぷぅ~》

 分かったわよぉ。と言いつつ、ぷぅは露店のカウンターで踊り出す。
 手伝っているつもりなのか!?

「わぁ、あの鳥さん可愛い~」
「何なに――やぁ~ん、ちょっと可愛いぃ。え? カップケーキ?」
「わぁ、美味しそう」

 お客が増えました。
 くそぉっ! 手伝うどころか、余計に忙しくなってんじゃねえかっ。

 売っている物が菓子類だからか、NPCの客もばんばん来る。
 やべぇ。称号効果がマジやべぇ。

 ザグ、早く帰ってきてくれぇ~っ。

 心の雄叫びと共に電子音がぴこんとなり、視界にシステムメッセージが浮かび上がった。

【露店『心を込めて作った父の味』内の商品が、全て売り切れました】――と。

 その瞬間、俺のキタッキラも終了する。

「え? 完売しちゃったんですか?」
「えぇ~。欲しかったのにぃ~」
「ど、どうもすみません。あんまり数を用意してなかったようで」

 と表面では誤り、本心はというと――ヒャッホー! これで俺の仕事は終わりだぜぃ。
 もうこんな糞忙しいのは嫌だ。やっぱ自分で店を持つとか、俺には無理。
 合成ペットフードは冒険者ギルドの代行にお願いしておこう。

「な、なんと!? 完売したかなもし!?」
「あ、ザグ。今完売したところだ。今度作るときは、もう少し多めに作ったほうがいいぜ。きっと今日の販売で、リピーターがつくはずだからさ」

 同時に女性客には、こいつが店主である事を伝えた。
 完売した事実に感動をするザグ。
 今購入したばかりの可愛らしくデコレーションされたカップケーキと、ザグを見比べて唖然とする女性客。

「お、王子様の手造り、なんじゃ?」
「いや、俺、料理技能とか持ってないですし」
「ドワーフ、作?」
「そう」

 どことなく足取りの重い彼女等だが、なんか俺、悪い事言っただろうか?
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