挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

87/122

87:マジ:ふんどし祭に参戦する。

 突然上がった悲鳴は、次第に数を増していく。声は海のほうから聞こえてくるな。
 そう思って海のほうに視線を向けると――
 あー、うん。あれが原因だな。

 プレイヤーよりも圧倒的な大きさを誇るナマコ。

「またナマコかよ!!」

 だが今回は正真正銘、海のナマコだ。
 見た目の大きさはモモコよりも遥かにデカい。

《おいマっちゃん。公式イベント開催中は、突発の方の発生トリガーをオフにしておけと言っただろう!?》
《うぉ! すんません、忘れてました!!》
《そんな事より班長、オープンチャンネルですよ今の!!》
《うわあぁぁぁっ、し、しまっ……えー、皆さん。ここで突撃突発イベントです! 皆で協力して『騒々しい海のキュカンバー』を倒しましょう!》

 なんか運営が焦ってるな。
 うん、想定外の出来事だったんだろう。
 あと、スタッフの何かしらの設定ミス、と。

 まぁ運営スタッフの誤爆アナウンスが入るよりも前に、既に何人ものプレイヤーが巨大ナマコに突撃している。
 そいつらがナマコのヘイトを取り――移動して――

「何故こっちに来る!?」

 ナマコ来たあぁぁっ!
 マズい、マズい、マズい!!

「やだ、気持ち悪いっ」
「え、え、今装備外してるのにっ」

 俺の周囲に居た客達も慌てて浮き足立つ。

 くっ。せっかくいい感じに客が来てたのに。
 俺の客を危険な目に会わせられるか!!

「皆さん、後ろに避難してください!!」
《ぷっぷぅ、ぷぷぷぷぷぅ!》

 ぷぅと一緒に周囲の客を屋台エリア後方に避難誘導する。

 そういやあのキュなんとかっていうナマコ、あの攻撃をするんだろうか。
 ちらりと振り返った先では、ヘイトを取っていた鎧姿の男達が固まっていた。
 うん、やっぱり使うわけね、あのどろどろ液。

 身動きの取れないタンカー達とは違う方角から、サンダー系の魔法が飛んでくる。
 ダメージヘイトでナマコのターゲットが別プレイヤーへと移った。
 ナマコが体の向きを変えた先に居たのは、さっきの王子様スタイルのエルフじゃん。
 あ、別の鎧プレイヤーが出て来てナマコのヘイトを取っていったぞ。
 で、何故こっちに来るし!?

「くっ、俺は客を守らなきゃならないんだっ。こうなったら!!」

 変身!! とうっ。
 半裸からの――

「ふ、ふんどし王子来たわぁぁっ」
「ちょ、なんでふんどし!?」
「放電マジ、覚醒!!」

 ……や、やべぇ。めちゃくちゃ注目の的になってんじゃん。

「み、皆さん、早く逃げてっ」

 と避難誘導しようとするんだが、何故か男達はナマコに突撃したがる。
 んで、ゲロられて固まる。
 くっ、こうなったら!

「『リターンオブテレポート!』――からのぉ、『サンダーフレア!』」

 ごおおおおぉぉぉっっと轟音を鳴らし、大きな火柱がナマコを捕らえる。

「今の内に、逃げるんだっ」

 振り向きながら屋台付近で立ち尽くすお客に声を掛ける。それと同時に頭上からどろどろの液体が落ちてきたが、ダメージは無いので完全スルー。
 しかし、何故誰も逃げようとしない。

「お、おい君」

 その時、固まっていた男性プレイヤーの一人が声を掛けてきた。
 自由にキャラメイクを出来るのに、随分と渋めな中年親父風のキャラメイクだな。

「君は何故動けるのかね? 君も我々同様にあの液体を被っているというのに」

 かちこちに固まって動けない軽装っぽい彼がそう言うと、その仲間らしい鎧姿の戦士が頷く。
 うん、その装備・・が悪いんだよな。

「このどろどろ液が装備に張り付いて、動けなくなってるんだよ。だから液体被っても関係の無い、こういう格好になればいいのさ」

 とドヤ顔で彼等にふんどし姿をアピールする。
 今ほどふんどし姿を誇らしいと思った事は無い。

 ふ、だがしかし、こんな恥ずかしい装備、持ってる奴なんて早々居るわけ無いよな。

「なるほど! 今こそ漢を見せる時!」
「ふんぬうぅぅぅぅぅぅっ、そう、ちゃく!」

 ……おい、嘘だろ。
 この二人、ふんどし持ってるよ。しかも二人とも筋骨逞しくて似合い過ぎてるんですけど?

「おい、ワンマン! ふんどしだっ。ふんどしで戦え!」
「なるほど、そういう事か!」
「俺はどうする?」
「マグナムは遠距離職だからな、まぁ着替えなくても問題ないだろうが、気を引き締めるという意味では矢張りふんどしだな」
「よしきた」
「はっはっは。皆でふんどしか」

 あぁ、あのぉ……他にもパーティーの仲間が居たんですね。そして全員ふんどし、と。
 なんで遠距離から攻撃できる弓使いまでふんどしなんだよ。ゲロ被る訳でもないだろ?
 しかも全員が無駄に濃いし。

 ふんどしの短剣使いが一人。ふんどしの戦士風が二人。ふんどしの弓使いが一人。ふんどしの鈍器――殴り神官風が一人。
 真っ白い歯を光らせ、爽やかな顔をしたふんどし男五人がナマコに襲い掛かる。

 えげつない……

「ノーリス君、さぁ君も!」

 短剣使いの男が振り返り、後ろでがくぶるしている法衣姿の少年に声を掛けていた。
 彼も仲間なのか?
 にしては随分とその、彼らとの共通点が見られない。
 なんせ一人だけも普通な体格だし、濃くない。

「ふえぇー……だって僕は固まっていませんし、このままでも――」
「はぁーっ! とうっ。漢ならふんどしだろう!」
「よ、っと。そうだぞノーリス君!」

 ダメだあいつら。仲間を精神的に殺そうとしてやがる。
 だが……
 俺はぷるぷるしているノーリス君という少年の下へと駆け寄り、彼の肩にぽんっと手を置いた。

「司会者も言っただろう。俺たちは全員で協力・・しなきゃならないんだ」

 さぁ、共に地獄に落ちようぜ。
 このふんどし地獄に。

「ふぇ、ふえぇー」

 ここにまた一人、ふんどしの犠牲者が増えた瞬間だった。





 ワッショイワッショイ! お祭ワッショイ!

 どうやら俺の脳も麻痺してきたようだ。
 気づけば辺りはふんどしだらけ。
 いや、よく見ると普通の海水パンツ姿のプレイヤーもいるが、圧倒的にふんどしが多い。
 そうだよな。一番出易いハズレアバターだったもんな。
 中には勇敢にも、ビキニ姿で戦う女の子プレイヤーの姿もあった。
 だが、ナマコがビジュアル的に気持ち悪いのか、殆どの女の子プレイヤーは後方支援か、応援をしているだけである。

 全長十メートルはあろうかという巨大ナマコに群がる、ふんどしやら水着姿のプレイヤー達。
 シュールだ。
 あまりにもシュール過ぎる。

 途中から俺は戦うのも忘れて、そのシュール過ぎる光景をただじっと見ていた。腹を抱えて。
 時々走って行っては、ヘイトを取っていそうな奴をタッチして『カッチカチ』を付与し、ダメージを食らってる奴の肩に絆創膏『ヒール』を貼っていく。
 尚、そちらも男プレイヤー限定だ。
 水着姿の女の子とか、触れたら即アカバンものだろ。

 何十人ものプレイヤー(ふんどしだったり水着だったり)にボコられ、遂にナマコの巨体が砂浜に横たわる。
 うん。後半はほとんど観戦者に徹したな。腹を抱えて。

 ナマコが光の藻屑となった時、突然ファンファーレが鳴り響く。

《エリアレアボスモンスター『騒々しい海のキュカンバー』が倒されました。この戦闘での貢献度上位十名には、ランダム装備ボックスが贈呈されます》
《『騒々しい海のキュカンバー』が倒された事によって、一部のエリアへの侵入が可能となりました》

 聞こえてくるアナウンスは、司会を務めていた運営スタッフの声ではない。
 どことなく、機械的な印象を受ける女性の声だ。

 しかしエリアレアボスモンスター?
 聞いた事無いけど、かなり珍しいボスなんだろうな。
 こいつが倒されていける場所が増えたらしいけど、そもそもそんな場所を俺は知らない――と。
 だが貢献度上位十名ってのは気になる。ランダム装備ボックスって、なにそれトキメク単語!!

《えーっと、皆さんご無事でしたかー?》

 あ、今度は司会の人の声だな。
 そのアナウンスに返事をするプレイヤー達。
 中には「死んだぞおい!」と怒り交じりの声も聞こえる。
 確かに、ふんどしも水着も持ち合わせていなかったプレイヤーが倒れて光の藻屑になるのは見たな。

《上位十名様には既にメッセージと一緒に装備ボックスが配布されております。是非ご確認ください》
《尚、今回の『騒々しい海のキュカンバー』討伐貢献度上位十名様は――》

 ご、ごくり。
 名前、呼ばれますように!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ