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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

バーション1.01【始まり】

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81/125

81:マジ、不審者になる。

『お帰りなさいませ彗星マジック様。大改造劇的計画での紹介動画はどうでしたか?』
「何故あのセリフを使った……」
『インパクトでございます』

 メンテ明け三分前。
 ロビーにログインして『うんピー』の件を尋ねると、俺の言わんとしている事がなんであるか分かっているような返事が返ってきた。
 こいつ、確信犯!!!

 俺が頭を抱えて踞ると、ぷぅが降りてきて靴先に羽を乗せる。
 それはあれか?
 同情してるのか。それとも、諦めろってやつか?

『ですが、少しやり過ぎました。チーフ様からもお叱りを受けましたし、差し替え編集を余儀なくされました』

  当たり前だ……

『でも旧バージョンの時の方が、同一IPからの再生回数は断然多かったのですよ!』

  ……マジかよ。

『差し替え後は普通過ぎて面白くないだとか、インパクトに欠けるだとか、個性が失われたなど、ご意見も頂いております』

 ……このゲームのプレイヤーは……いい意味で馬鹿ばっかりなのか。
 もういいさ。
 これはゲームなんだ。
 MMOで出会い婚した痛々しい両親も言っていた。

 ゲームなんだから楽しんだ者勝ち。――と。

 開き直ると決めただろ!
 俺は超絶イケメンダークエルフのふんどしうんピー炎雷マジ、ばっちこい!

 あ、そういや正式サービス開始で、自称システムできたんだったな。
 なんか気にしてなかったけど、シースターもザグも、自称付けてなかったような?

「シンフォニア」
『はいっ。お呼びしましたか? 呼びましたよね?』
「あーはいはい。呼んだよんだ」

 こいつは名前で呼ばれると、何故こうも喜ぶのか。

「で、だ。シンフォニア。自称システム使ってるプレイヤーって、実は少ないとか?」

 と尋ねると、途端に彼女が肩を落として俯く。

『そうなのです。少ないのですよ。このイマジネーションファンタジアオンラインは、職業概念を無くしたシステムにしております。どの武器を使い、どの戦闘スタイルかで皆様に自由に職業を名乗って貰おうと、そういう意図だったのですが』
「まぁパーティーに入るときなんかに、口で言ってしまったほうが早いしなぁ」
『およよよよよ。せっかく開発スタッフの方が二十四時間頑張ってシステムを組みましたのに。なんて無慈悲な』

 いつの間に出したのか、真っ白いフリル付きのハンカチで涙を拭く仕草をするシンフォニア。
 どこでそんな三文芝居を覚えてくるんだか。

 まぁせっかくのシステムだし、設定してみるか。

「これ、いつでも変更できるんだっけ?」
『はい! 戦闘中は不可能ですが、非戦闘時でしたらいつでも可能です』
「そっか。じゃあ……やっぱ『炎雷マジ』だよな」

 いくら開き直ると言っても、ふんどしだうんピーだのを自称にする気はない。
 が、シンフォニアは納得いかない顔だ。

「何が言いたい?」
『あ、言ってもよろしいのですね。では言わせて頂きます。それだけですと、普通の魔術師だと思われるかと』
「俺のどこが普通じゃないんだ? まぁ土属性とか神聖魔法も使えるけど」
『いえ、そういう意味ではなく……こう……』

 そう言って言葉を濁しながら、ボクシングで言うジャブのような仕草をしてみせる。
 ふむ……あぁ、そうか。

「そうだな、俺は普通の魔術師系と違うんだったな」
『はいっ。左様でございます』
「じゃあこうだ――」


 ◆◇◆◇

 名前:彗星マジック / 種族:ダークエルフ
 レベル:20 / ゼロ距離魔法の炎雷マジ 
 Ht:177 / Wt:66

 ◆◇◆◇


「これでいいだろう」

 どうだ? とシンフォニアを見る。
 うんうん頷く彼女は『これできっと勘違いされずに済みますね』と答えた。
 何をどう勘違いされているんだ?

『あ、彗星マジック様。サーバーが予定通りオープンいたしました』
「お。延長無しか。優秀じゃないか」
『……左様でございますね。ふっ』

 なんだその間は。しかも最後の『ふっ』って笑いはなんなんだよ。
 お前の生みの親でもある開発陣だろ? 褒めてんのに、なんで笑う。

『アップデートがございますが、内容をご確認になりますか?』
「ん? 何かあるのか?」
『はい。些細なものですが、武器技能が数種類追加されます。同様に行動系技能も幾つか』
「おぉ、どんなのだ?」 

 だがシンフォニアは答えようとせず、口元で人差し指を立てるだけだ。
 つまり秘密ってことか。

「分かったよ。探して見つかるものでもないだろうし、習得できたらラッキーなんだろうな」
『ですね』

 じゃあゲーム内に行きますか。





 ログインすると、ゲーム内は夜だった。
 ダークエルフ達に合成屋になって働くよう勧めた後、ファクトに戻ってきてログアウトしたんだっけか。
 開き直る――と決意したものの、いきなり人の多い町でうろうろしたくないな。
 合成剤の材料集めと、ぷぅの飯用素材集めにフィールドにでも行くか。

「うーん、ここか『テレポート』」

 飛んだのは港町から近い海岸だ。
 まだ新規プレイヤーも多いんだなぁ……海からざっぱざっぱ人が出て来ている。
 でもまぁ暗いし、近づかなきゃそうそうバレないだろう。

「毬栗『サンダー!』」

 シェル程度だと魔法使うのも勿体ないな……。
 杖で素殴りしてみるか? 無駄にある手袋の物理ダメージアップもあるし、行けるんじゃないかな。
 そう思ってポクっと叩いてみると、一発でシェルがひっくり返った。

「おぉ! いけるいけるっ。CT待つのも面倒だし、ここいらなら殴ってる方が殲滅早いな」

 ポクポクポクポクとシェルを殴り、シェルマキマキを殴り、イソギンチャックを殴る。

「う、うわぁっ」

 ん? なんか悲鳴が聞こえたぞ。
 あぁ。海から上がったばかりの新規プレイヤーが、夜のモンスターに手を出して、そのレベル差で返り討ちにあってるんだな。
 まぁ可哀相だよなぁ。昼間だともう少しレベルの低いモンスターが配置されてるのに、夜だとレベル7前後だし。
 オープニングイベントの後だと、だいたいレベル3ぐらいだからなぁ。

 そうだ! こ、ここは――

 シェルと交戦中の新規と思われるプレイヤー目掛け、俺は全力で走り寄る。
 ヒールが届く距離へと――

「『ヒール!』」

 突き出した右手から、優しい光に包まれた絆創膏が生み出され、それを――

 ぺたり。

 と交戦中のプレイヤーの背中に貼り付ける。
 よし! ダッシュで逃げるぞ!!
 くっくっく。辻せいこ――

「は? え? 回復した? あ、そこの人、ありがとうっ」

 ……ああぁぁぁっ。
 辻ヒーラーとは、お礼を言われたら負けなんです!
 つ、次こそは!!

 再び苦戦しているっぽいプレイヤーを見つけ、今度はすぐに逃げられるよう先に魔法を唱えてから走った。
 が……絆創膏の持続時間が直前で切れた!?
 や、やばいっ。
 交戦中の女の人の横で呆然と立ち尽くす俺。

「あの、なんですか?」
「……カ……『カチカチ』やぞ!」

 とりあえずカッチカチして逃げた。

「ちょっと、何さり気なくタッチしてんの!? ハラスメントで訴えるわよ!!」
「ひぃー。ごめんなさーい」

 何故か怒られた。
 き、気を取り直して……まず、魔法の持続時間を検証しよう。

「『ヒール』」

 絆創膏が掌から消えるまで……八秒ぐらいあるな。
 砂浜だし、移動速度の低下効果があるようだから五十メートルダッシュじゃあ間に合わなさそう。
 そうだ!
 こんな時にも使えるスキルがあるじゃないか!

 よし、まずはターゲットを探して――いたいた!
 まさにイソギンチャックに悪戦苦闘している人間の男性プレイヤーを発見。
 そ知らぬ顔でじわじわと近づき、そして十五メートルほどの所でヒールを発動。
 絆創膏片手に俺は――

「『リターンオブテレポート!』」

 彼の真横にテレポして、絆創膏をペタリ!
 五秒後には元の場所に戻れるから、そこから全力で逃げ――

「え? ヒール? ど、どうも?」
「……あ、いえ、こちらこそ」

 ぬああぁあぁぁっ。失敗だあぁぁぁ!
 と思ったところで元の位置へと強制帰還させられた。





 こっそり近づき絆創膏ヒールを貼ってから――

「『リターンオブテレポート!』」

 で逃げる作戦だと、五割の確率でお礼を言われる前に逃げ切れる事に成功。
 けどこれ、夜だからまだいいものの、昼間だとこっそり近づくのはまず無理だろうな。
 ふ……俺に辻ヒールなんて無理なんだよ。
 だってヒール掛けるにも、相手に触れる距離まで近づかなきゃダメなんだし。
 やーめた。

 まぁ貝殻類も貯まったし、午前中に集めたジェルと合わせると結構な数の合成剤になるだろう。
 集落に行って合成剤にしてもらうかな。

《ぷぷぅ〜》
「え? 何か忘れてないかって?」
《ぷぷ、ぷぷぅ〜ぷぷ》
「あたちのご飯用の木の実はどうしたのか? あぁ、忘れてた」
《ぷぷぷぷぅ》

 はいはい、集めに行きますよ。
 NPC売りのペットフードだと、空腹度が5しか減らないもんだから、フードの減りそのものは多い。
 しかも空腹度が上昇するタイミングが早くなっている気がするし。
 それを尋ねると

《ぷぷぅ〜ぷぷぷ》
「育ち盛りなのか」
《ぷっ》

 とのことだ。

「早く『成長期』ってのに進化して、サポートして欲しいものだぜ」
《ぷ》

 任せてよ! らしい。
 んじゃあとりあえず、森の方にでも行くか。

 海岸を離れ草原を横断していると、東の空が明るくなってきた。
 夜明けか。
 そういやこの草原……

《ピ》

 あぁやっぱり。ピッピ草原じゃん。
 背の高い草から現れたのは、バレーボール大の真っ青な鳥ピッピだった。
 そのピッピがチョンチョンと雀のように跳ねながらこっちに向って来る!?

 ままままままさか、ぷぅの木の実取りを忘れてたから、怒ってるのか!?
 つ、突かれる。突かれて啄ばまれて、死ぬ!?

 ぼふんっという衝撃と共に、俺は倒れて死を覚悟した。
 ここで死んだら港町かな。それともコール? はたまたファクトだろうか。いや、大穴は農村だな。

 ……あれ。突かれる気配がない。
 体が重い、だけ?

《ピピ》
《ピピピ》
《ピッピピ》

 体の上に、青いボールが三つ?

「うおおぉっ。いつのまに増えた!?」
《ピピ?》
《ピピピッピピッピ》
《ピー》
《ピピーピ》
《ピピピーピピッピ》
「まだ増えるうぅーっ。もががががが」
《ぷぅ〜! ぷぷぷぶぶぅーぷぷ!》

 ちょっとあんたたち! それはあたちのダーリンなのよ!
 とぷぅが言っているが、ピッピ達は気にしていないようだ。
 バッサバッサと集まったピッピが、次から次へと俺に多いかぶさってくる。
 こ、これは……窒息死させる気か!

 バサバサ
 もふもふ
 バサバサ
 もふもふ

 な、なんだこれは……なんだこれは!?
 こいつらのボールのようは体が、もふもふしていて気持ちいいぞぉ。

 おしくらまんじゅうのような状態で、一方的にピッピ達からもふもふされる至福のひと時。
 そんな中、離れた場所から人の声が聞こえてきた。

「ピッピがどこにもいないぞ!?」
「もう陽が上ってしまう……早く見つけよう!」

 ま、まさか……ピッピ狩りのプレイヤー!?
 ダ、ダメだ!
 こんなもふもふ達を狩らせるなんて……

「うおおぉぉぉぉっ。ピッピは俺が守る!!」

 ピッピを押しのけすっくと立ち上がった俺の前に――

「こ、こいつは!?」
「ピッピを独占してやがったのか!!」
「ずるいわ!」
「モンスターの独占行為はノーマナーだって規約にもあっただろ。通報するぞ!」
「私にも一羽頂戴よ!」
「俺も俺も」
「私にも――」

 血眼になってピッピを狙う数十人の男女が立ちはだかっていた。
80話に関してのご意見ご感想ありがとうごさいます。
意外と厳しいご意見が少なかったので、多少の修正のみで続けようと思います。
考えた改稿案のほうも勿体ないので、別の形で後日再利用しようと思います。


修正部分:「動画視聴後にマジックが落ち込む」から「動画視聴後にマジックが運営に報告。掲示板ラストで動画が編集されたと書き込みが入る」となりました。
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