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殴りマジ?いいえ、ゼロ距離魔法使いです。 作者:夢・風魔

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5:マジ、上陸(漂着)する。

「羨ましい」

 ピリカを乗せたボートが下りていく間、ずっと隣ではそう呟く奴がいた。
 紅色の髪をなびかせた女剣士だ。

「勇者様とか呼ばれたかったのか?」
「うん。――はっ、そ、そんな事はないっ」

 根は正直者なんだな。
 まぁ彼女が助けに行くぞなんて言わなかったら、俺も駆けつけたりしなかったしな。

「おーい、ピリカー」
「勇者様ばいばーい」
「こっちのお姉さんがなー、真っ先にお前を助けようって走り出したんだぞー」
「ば、馬鹿っ。そんな恥ずかしい事、大きな声で叫ばなくてもっ」
「勇者様ばいばーい」

 無邪気な笑顔でずっと手を振るピリカ。
 いやだから人の話しを聞けよ――げっ。

「おいおい、ハワイアンがうじゃうじゃいるじゃないかっ」
「ハワイアン? うわっ。ブルーコスライムの大群っ」
「だからそう言っただろっ」

 海面に着水しようかというボートの周辺には、未だ船によじ登れずにいるブルーコスライムの群が浮かんでいた。
 あんな所にボートを下ろしたんじゃ、海面に着水した瞬間に襲われるだろっ。
 まさかこのままバッドエンド形式でイベントを終わらせるんじゃないだろうな。

「そ、そうだ殴りマジ君っ。海に落雷すると電流は水面を走るという。潜っていると影響はないようだが、海面に浮いていたりすると感電すると、テレビか何かで見た事がある」
「あぁ、そうらしいな。その程度の話しなら俺も――」
「だから君の魔法を海に向って投げれば、上手くすればブルーコスライムを一網打尽に!?」

 え?
 魔法を……投げる?

「いや、無理だから」
「む。そ、そうか。殴りだから魔法そのものの威力は低いのか。INTは1だろうしな」

 いや、全振りですが何か?

「し、しかし、例えダメージが1だったとしても、一度でも攻撃すればブルーコスライムは君と戦闘状態になる訳だし――」
「いや、無理だから」
「何故ぇ〜っ」

 何故と言われても、俺のコントロールじゃ下手すると救命ボートに命中させて、沈没させる可能性のほうが……。

「当たらないんだよ。俺……絶望的なまでに、その……」

 コントロールが下手過ぎる。
 だからこそゼロ距離で魔法を撃ってるんだし――あ。ゼロ距離!?

「そうか。当たらないなら、当てに行けばいいっ」

 船べりにすっくと立ち上がり、俺は深呼吸をする。
 その間もピリカがこちらに向って手を振るのが見えた。

 今助けるぞ――

「え、ちょっと、殴りマジ君!?」
「行くぞっ。とぅ!」

 船べりを蹴り、右手を海面に向って突き出して頭から飛び込んだ。

「勇者様、ばいばーい」

 微笑みながら手を振るピチカにちらりと視線を送り、彼女の無事を天に祈った。

 俺はプレイヤーだ。死んでもセーブポイントに転送されるだけで済む。
 VRMMOの経験は一度しかないが、死んだNPCってのは生き返らないんだよな。

 だから――
 ここでブルーコスライムのヘイトを俺が溜めまくり、犠牲となっている間にボートが逃れてくれれば。
 俺は死んでも甲板に戻るだけだ。

「一緒に死ねコスライムどもっ。『サンダーッ!!』」

 着水寸前に放った雷は、海面を縦横無尽に駆け抜け辺りを蒼白く光らせた。
 同時に俺は海へどぼん。

「勇者様、ばいばーい」

 あぁ……ピリカの声が聞こえる。あの子は無事だったんだな。
 はは、そんなに俺との別れが寂しいのかな。ずっとばいばい言ってるし。

 ……。

 さ、呼吸しに上に戻るか。

 水を掻き分け海面に頭を出そうと泳いでいく。
 顔を出したら周りはコスライムだらけだろうな。考えただけで背筋に悪寒が――

「殴りマジ君っ、今助けるぞーっ」

 おいおいおいおいーっ。
 なんでここでお前が飛び込んできてんだっ。しかも俺の真上じゃないかっ。
 殺す気かぁーっ!





「ぶわあぁーっ! ……あ?」

 慌てて回避しようと横に泳いだつもりだったんだが、何故か……立っている。
 さっきまで海の中だったはずなのに、いや今もある意味海の中だが、ここは浅瀬だ。目の前には砂浜も見える。
 振り返ってみるが、特に船も見当たらない。
 俺は一瞬にしてどこまで流されたんだ?

「うへ? ここどこ?」

 唐突に男が現れた。
 プレイヤーみたいだな。俺と同じように流されたんだろうか。

「なぁ。あんたどうやってこの海岸まで泳いだんだ?」

 先に訪ねられてしまったか。まぁいい。

「どうやってというか、飛び込んで海面に出ようとしたところで、突然ここに」
「あぁ、やっぱりそうなのか。俺も沈没しかけた船から脱出しようと思って飛び込んだんだ。そしたらここさ」

 沈没?
 そこまでやばそうでもなかったが。
 男は一人納得したように岸へと歩き出すと、きょろきょろしながら何かを見つけたようだ。
 左前方にボートがある。帆船にあった救命ボートだな。
 人影も見えるし、聞けば何か解るだろう。

 そう思って歩き出して気づく。
 よく見たら、浅瀬にも岸にも、たくさんのプレイヤーがいるじゃないか。
 もしかしてプレイヤー=冒険者は全員泳いで上陸するパターンなのか?
 ならあの女剣士も――

 ぶるぶるっ。
 奴が飛び込んでくる姿を思い出したら、急に寒気に襲われた。
 ばったり遭遇する前にさっさと行こう。

 ボートの近くでは、既に上陸したプレイヤーがわらわらと群がっては西へと移動する姿が。
 人影は案の定NPCだな。帆船で見た船員と同じ服装をしている。
 船員の話を聞く為に近づくと、

「おぉ、冒険者さんじゃないか。無事だったんだな。俺らも必死に港町に向ったが、途中でオールが壊れちまってなぁ。ここは港町から東に少し行った海岸さね。町に行くなら、海岸沿いの道を西に進みな」

 船員がそう説明するのと同時に、ピコンという電子音が鳴ってシステムメッセージが視界に浮かぶ。

【開拓民船襲撃イベントをクリアいたしました】
【クリアボーナスとして、120EXPを獲得しました】
【『少女の勇者』の称号を得ました】
【少女救出ボーナスとして、20EXPを獲得いたしました】

 そして光る俺。

 もしかして、あのイベントって……

「なんだ。船から飛び降りた時点でイベントクリアなのかよ」
「なにこのゆるいクリア条件。ウケるー」

 まったくだ。

 他の乗客はどこに行ったのか、船はどうなったのか、それを船員に尋ねてみる。

「おぉ、冒険者さんじゃないか。無事だったんだな。俺らも必死に港町に向ったが、途中でオールが壊れちまってなぁ。ここは港町から東に少し行った海岸さね。町に行くなら、海岸沿いの道を西に進みな」
「いや、それはさっき聞いた。そうじゃなくて俺が聞きたいのは――」

 反応が無い……。
 暫くすると、

「おぉ、冒険者さんじゃないか。無事だったんだな。俺らも必死に港町に向ったが、途中でオールが壊れちまってなぁ。ここは港町から東に少し行った海岸さね。町に行くなら、海岸沿いの道を西に進みな」

 つまりこいつは一定のタイミングで決まったセリフしか喋らない、プレイヤーを誘導する為のオブジェクトタイプのNPCか。
 他のプレイヤーは誰一人として立ち止まらず、NPCが話した海岸沿いの道に向って歩いているだけだ。
 ふぅ。仕方が無い。俺も港町に向うか。

 砂浜をざくざくと歩き始めると海から救命ボートが一隻、それこそ突然現れた。
 乗船していたのはプレイヤーっぽく、全員がきょとんとした顔で岸を見つめている。

「え? 俺たちさっきボートに乗ったばっかだよな?」
「おいおい。海面に降りた瞬間、もう上陸かよ」
「いや、船漕ぐ工程が無かったのはいいんじゃないか?」
「確かに。そこまでリアルに再現されても、上陸に時間が掛かってスタダに乗り遅れるしな」
「私、乗り物酔いし易いから、シーンスキップされてて良かったぁ」

 続々と降りてくるプレイヤー達。
 一人、二人、三人……え? なんであんな小さなボートに五十人近くも乗ってるんだよ。
 そもそも、目視で見えなかった奴までいるし。
 VRMMOの七不思議なのか?

 考えても仕方が無い。今は港町に到着することを優先させよう。
 海岸に到着したプレイヤーがこぞって西へと向っているので、そもそも船員NPCの話しを聞かなくても目的地が丸解りだな。
 俺のようにソロの者もいれば、何人かで揃って移動しているのも居る。
 オープンベータ始まった直後から仲間が居るとは、ちょっと羨ましい。
 そんな羨ましい一団が背後から迫ってくる。

「この称号効果、すげくね?」
「戦闘中、一定確率で効果発動か。ステオール+1なうえに、戦闘状態が解除されるまで続くって、初期の効果としては破格だな」
「ねっねっ。あの子助けて良かったでしょ?」
「優しいマイちゃんのお陰だね〜」

 戦闘中にステがオール+1される?
 お仲間持ちという羨ましい状況に加え、なんて羨まし過ぎる称号を持ってんだ。

 そういやこのゲーム。特定条件をクリアすると称号が付与されるんだっけか。
 その称号にはささやかな効果がもたらす物もあると公式にはあったが。

「それにしたって、俺たちが勇者かぁ」
「なんだか恥ずかしいね」
「まぁイベントでNPC助けたぐらいで『勇者』だから、結構な人数に称号が与えられてるだろ」
「その分、勇者もわんさかいるんでしょうね」

 そうか。NPCを助けて称号を――
 ん? 俺も助けたけど?
 そういやイベントクリアメッセージに、いろいろ出てたな。
 どれどれ――あ、称号、あった。
 なんか新しい技能がセットされてるな……これ、もしかしてブルーコスライムを掴む戦法を取ってたからか?
 ほぉほぉ。こういう感じで技能が増えていくのか。

「でもあの子が乗ってるボートの周りがモンスターだらけだったのは焦っちゃった」
「けど襲われてなかったよな」
「そりゃそうだろ。たぶん船からボートに乗り込んだ時点で、救出成功判定なんだよ」
「っぽいよな。でなきゃ、船から降ろしてる最中のボートとか、攻撃されたらプレイヤーも助けにいけねぇし、速攻でNPC全滅だって」
「あ、そうか〜。私、海に飛び込んで助けにいっちゃおうとか思ってたけど、飛び込まなくてよかった〜」
「「あははははは」」

 ……思いっきり飛び込みましたけど!?


◆◇◆◇

名前:彗星マジック / 種族:ダークエルフ
レベル:3 / 
Ht:177 / Wt:66

HP:370(370) / MP:880(880)
STR:1
VIT:1
DEX:1
AGI:1+1
INT:31+3
LUK:1

SP:10

【セット技能】
『雷属性魔法:LV3』|(2up) / 『神聖魔法:LV1』
『格闘術:LV2』|(1up) / 『敏捷向上:LV2』|(1up)
『魔力向上:LV3』|(2up) / 『鷲掴み:LV2』|(new)

【獲得スキル】
『サンダー:LV2』|(1up) / 『ヒール:LV1』 / 『ライト:LV1』

IMP:8

【称号】
『少女の勇者』|(new)

【装備】
『初心者用ローブ』|(HP+100) / 『初心者用ズボン』|(HP+100)
『初心者用のシューズ』|(HP+20)
『初心者用の杖』


◆◇◆◇
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