第539話 プライドジェム討伐
緊急クエスト『プライドジェム討伐』を受注した俺達は、すぐに行動を開始した。なにせ、期間はスパーダ軍の総攻撃が開始されるまでの三日間。準備に現地への移動とで、実質フルに戦えるのは一日といったところだろう。
幸い、サリエルは13日の昼にはクエストから戻り、晴れて冒険者ランク3に昇格。またしても破格の早さである。このままいけば、俺達『エレメントマスター』が打ち立てたランク5アップの最短記録も塗り替えられるだろう。それも、ソロというオマケ付きで。
まぁ、コイツの実力からすれば強くてニューゲームもいいところだから、冒険者のランク分けにあまり意味がないというのは俺自身が一番よく分かっている。
ともかく、ランク3冒険者サリエルを正式に我らが『エレメントマスター』の新メンバーとして加入させる手続きを経て、俺達はスパーダを出立する準備は完了した。
俺はピカピカに磨き上げられた、見事な黒光りが目に眩しい『暴君の鎧』を着込んだ完全武装。フィオナはいつもの魔女ローブに、サリエルも、これまた見慣れた修道服である。ランク3に昇格しても、まだ防具は買わないようだ。縛りプレイでもしているのか。
全員、準備は万端。さぁ、他の冒険者に先を越されないよう全力で行くぞ、と意気込んだものの、その出発は早くも一歩目から躓いた。
「サリエルは走っていけばいいでしょう」
「いや、別に俺のメリーに乗せてもいいだろう」
「サリエルと二人乗りなど、私は許容できません。恋人を差し置いてメイド風情と二人乗りなんて、素敵な身分違いの恋みたいな真似は許すわけにはいきません」
「メイド風情とは聞き捨てならんですぅー! メイドはご主人様と釣り合う最高の立場なのです!」
「仕方ないだろ、他に乗れる馬はないんだから……」
このように、俺達はスパーダの正門前でしょうもない言い争いをしていた。何だか余計な奴まで口を挟んでいるような気もするが、ともかく些細なことで俺達はなかなか出発できずにいる。
「ですから、走ればいいでしょう」
「そりゃあ、サリエルの足なら不可能じゃないかもしれないけど」
流石に可哀想、という感情的な理由が第一。ついでに、土壇場でスタミナ不足になられても困る、というのが第二。
相手は試練のモンスターだから、万全の態勢で挑まなければならない。
「では、私がクロノさんと二人乗りします」
「いや、マリーがめっちゃサリエル乗せるの嫌がってるんだけど」
主に似る、ということなのか、フィオナの愛馬であるマリーはサリエルが近づくだけでブルルと鼻息荒く、蹴飛ばそうと殺気立つのだ。サリエルならば強引にでも乗りこなせるだろうが、まかり間違って暴れ馬になられても困る。
マリーがサリエルを乗せられない以上、フィオナとサリエルが二人乗りする、という最も妥当な案が採用できないのが苦しいところだ。
「フィオナ、そこを何とかならないか?」
「他の誰でもなく、サリエルにだけは、もうその席に座るのを許すわけにはいかないのです」
面倒くさい、と無碍にする気持ちはフィオナに対しては湧かない。彼女にはあらゆる我慢を強いているのだから。
俺としてはせめて、彼女のプライドを出来る限り立たせてやらなければいけないだろう。これでも、俺は恋人だ。
「仕方ない、多少時間は食うかもしれないが、サリエルの馬を買ってくるか」
「そうしましょう。すみません、私の我がままですので、代金は私が出しますから」
「いや、気にするな。俺の方がもっと気を遣ってやるべきだったんだ、すまない、フィオナ」
「クロノさん……」
「マスター、よろしいでしょうか」
無事に和解を果たし、ちょっといい雰囲気になったところで、件の問題人物が声をあげた。
「何だ、サリエル」
「私の騎馬があれば、問題は解決するという認識でよいでしょうか?」
「ああ、だからこれからお前の馬を買おうって話になったんだ」
「その必要はありません」
何で? と問い返す前に、サリエルはおもむろに指先を自分の口元へ持って行き――ピィイイッ! と甲高い鳥の鳴き声のような音を発す。いわゆる一つの、指笛である。
まさか、と思った次の瞬間、馬のいななきと力強い羽ばたきの音が耳に届いた。
「うおっ、マジかよ……コイツ、スパーダまでついて来てたのか」
現れたのは、グラトニーオクトへ乗り込む際に乗り捨てたきりだったペガサスである。見事な体躯に、純白の毛並みと輝かんばかりの色艶は、間違いなく、サリエルの愛馬だ。
「隠してたんですか?」
「私についてきたのは、ペガサスの自由。また、現在の私にはペガサスを所有する権利はないので、放置する他はありませんでした」
「まぁ、聞かなかった俺が悪いということで……」
それにしても、わざわざサリエルについて来て、いつ呼ばれてもすぐに参上できるよう近くで待機していたなんて、馬にしては凄まじい忠誠心である。もしかすれば、サリエルもこの愛馬にだけは心を開いて、大切にしていたのかもしれない。
「ともかく、いい相棒がいて良かったな。そういえばコイツ、名前は?」
「ありません」
ちくしょうめ、第七使徒サリエルに人間らしい心温まる動物触れ合いエピソードを少しでも期待した俺が馬鹿だった。
恐らくサリエルにとって、馬なんて移動に必要なモノで、倒れれば新しいのに変えればいいだけの消耗品みたいに思っているのだろう。
「名前くらいはつけてやれよ」
「それでは、以後この個体を『シロ』と呼称します」
最近、多少はマシになってきたかと思ったが、どうやらサリエルがマトモな人間の感性を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうだとつくづく実感させられた。悪いけど、シロ、お前はもう少し辛抱強く、この無自覚に残酷なサリエルに付き合ってやってくれ。
そうして、俺はちょっと落ち込んだ気分で、スパーダを後にした。
スパーダ軍も拠点にしている、ラティフンディア大森林と最も近いラケル村には出発したその日の内に到着したが、すでに日暮れを迎えていたのでまずは一泊することに。冒険者の中には功を焦って夜間の攻略を敢行する者もそれなりにいたようだが、万全を期して俺達は朝を待つことにする。ランク5モンスターを相手に、わざわざ不利な条件で戦いに行くような真似はしない。
先を越されれば、その時はその時。安全をとった結果なのだから、悔しいが、諦めはつく。
もっとも、幸いなことに明くる14日の朝になっても、プライドジェムが討伐されたという報告はなかった。一晩寝ている間、ラティの森の中では冒険者とスライム軍団との一進一退の攻防が繰り広げられるだけで、これといって戦況に動きはなかったようだ。
「それじゃあ、頼んだぞサリエル」
「はい、マスター」
晴れ渡った青空の下、サリエルは愛馬であるシロに跨り、颯爽とラティの森へと飛んで行く。
思わぬところで飛行ユニットが手に入ったのだ。折角ということで、彼女には空から軽く偵察してもらうことにした。
「作戦を確認しておこう」
村の外れに張ったテントの前で、朝食のサンドイッチを手に座り込むフィオナが、俺の広げるラティフンディア大森林の簡易マップを覗き込む。
「プライドジェムの本体があるのが、ここだな」
すでに赤丸でチェックが入っており、本丸の位置は非常に分かりやすい。
「私達は本体を直接狙えるギリギリの位置に当たる、この、およそ五百メートル離れた地点に陣取る」
フィオナの白い指先が、赤丸から僅かに左方へ移動し、森林内に幾つもある水辺の一つを指す。
「ああ、森に入れば、まずはここを目指す。サリエルの偵察で少しは楽なルートが見つかるといいんだが」
「私達なら、ただのスライムなど物の数ではありませんよ。それに、人型の分裂体も聞いた限りでは、そこまで上等なモノではなさそうですし」
一個の軍団としては、やはりスロウスギルのモンスター軍団が最強か。
「やっぱり、問題は本体か」
「こればかりは、試してみなければ分かりませんからね」
恐らく、チャンスは一度きり。もし本体への襲撃が失敗すれば、俺は即座に撤退するつもりだ。
最悪の場合、体勢を立て直して、スパーダ軍の総攻撃に乗じて横取りを狙ってもいい。試練の達成に必要なのは、討伐を果たした事実ではなく、そのモンスターの特定部位なのだから。
「作戦というよりも、博打ですね」
「それは言うな」
冒険者同士の泥沼の手柄奪い合いに巻き込まれるのは、正直勘弁願いたいところ。情報によれば、鉄鬼団をはじめ、他のランク5冒険者も参加しているという。
強力なライバルを出しぬくには、一発で勝負を決められるような手際が重要だ。博打でも、確実に勝つにはこれしかない。
「それじゃあ、俺達も出発の準備をするか」
言いながら、俺は影空間に沈ませておいた『暴君の鎧』を呼び出す。
真っ黒い底なし沼みたいに不気味は波紋を広げながら、音もなく鎧は俺の背後へと浮かび上がる。
「ご主人様、おはようございまぁーっす!」
「システム・スタンバイ」
禍々しい出現の気配を台無しにする能天気な声が早速、頭の中に響き渡る。しかし、これもまた慣れたもの。今更気にはすまい。おはよう、ヒツギ、ミリア。
俺よりも頭一つ分は超える巨大な鎧が全て現れると共に、ギギギと機械的な音を響かせて、装着モードへと移行する。
まずは胸元、アバラ状の装甲が解放され、そこから順に腹、腰、と開いてゆく。最終的には肘と膝のあたりまで装甲は開き切り、装着者はそのまま後ろ向きに手足を通すだけで鎧の全てを身に纏えるという構造だ。
ちなみに、開かれた鎧の内側が、これから倒すスライムみたいにゼリー状の液体でびっしりと覆われている。それはいっそ本物の肉体であるかのように赤々として、縦横に走る真紅のラインが絶えず脈動を続けている。
正直、最初はコレを見て体をくっつけるのに躊躇したものだが、触れると何故かほとんど感触はせず、全く気にならない。本当に気持ちの悪いゲルが存在しているのかどうか疑わしく思えてくるが、どうやらコレが鎧に魔力を通したり、内部へのショックを吸収したりする機能の秘密であるようだ。これもきっと、古代の凄い技術の結晶なのだろう。
改めて感心しながら、俺は日々の装着練習ですっかり慣れたグロテスクな鎧内部へと躊躇せずにイン。
「王権認証。RX-666・マクシミリアン、起動」
ミリアが毎回、律儀にしてくれるアナウンスと共に、俺の黒色魔力を吸い上げ『暴君の鎧』は目を覚ます。
俺の体は、巨大なモンスターの口中へと飲み込まれるかのように、装甲が閉じて姿を完全に覆い隠していく。一瞬の暗転。その後に、兜のディスプレイと視覚神経がダイレクトに接続され、再び目の前の景色を肉眼と同じ精度で映し出す。
「クロノさん、いつも思うんですけど」
バスケット一杯に詰め込んだサンドイッチを完食したフィオナが、黄金の瞳で真っ直ぐ見つめながら言い放つ。
「その鎧、着るのが楽で良いですね」
この明らかにオーバーテクノロジーな鎧を見て、言うことはそれだけか、フィオナ。
やっぱり女性に、このギミック満載のパワードスーツな鎧のロマンを分かってもらうのは難しいのかな、なんて思いながら、俺はキャンプの後片付けを開始した。
無事に戻ってきたサリエルの索敵結果を下に、最初の目標地点である水辺へと続くルートを決定。昼の少し前といった時刻に、俺達はついにスライムで溢れるラティフンディア大森林へと突入した。
森へ入って数十メートル。異常はすぐに現れる。
木陰や茂みから、出るわ出るわ、スライムばかり。いっそ森全体がスライム化したんじゃないかというほどの量。確かに、こんな数で人里を襲われては、堪ったものじゃない。
「時間も魔力も惜しい、一気に突っ切るぞ!」
鎧の背面に埋め込まれた魔力ブースターを煌々と焚き、先陣を切ってスライムの群れへ俺が突入する。
一拍遅れて、両足に『疾駆』を宿したフィオナとサリエルが続く。
この状況下で必要なのは、大量の敵を一息に薙ぎ払える武装。故に、手にしたのは鉈でも牙でもなく、黒鉄の大砲『ザ・グリード』。
久しぶりに握るグリップは、実に心地よくも頼もしい重量感を与えてくれる。鎧と同じく、新品同様に黒光りをするガトリングガンを、俺は思う様にぶっ放した。
「魔弾・掃射」
視界に映る全てを黒き鋼で塗りつぶすように、バリバリとおびただしい数の魔弾が六本の銃身より吐き出される。黒いマズルフラッシュが明滅する度に、スライムの半液状の肉体は水面を叩くように儚く散ってゆく。
「ヒャッハー! 腸をぶちまけやがれですぅー!」
「敵性判断、ジェム、脅威度、極小」
人の頭の中で、好き勝手にお喋りする二人の呪い。まだ普通のスライムしか出てきてないからか、緊張感がまるでない。
というか、ミリアはスライムのことをジェムって呼ぶのな。
どうやら、昔はスライムのことをジェムと呼んでいたらしい。プライドジェムという名は、古代にも生息していたからこそ、古い呼び名のまま存続したのだろう。
そういえば、ミアちゃんはグラトニーオクトに都市を五つ消滅させられたと言っていた。つまり、その時代に存在していたことを明言している。試練のモンスターとは、かつてミア自身が打ち倒したモンスターだという可能性は、十分に考えられるな。
「火矢」
「黒杭」
機械的にスライムを撃ち砕く俺の背後から、さらに二筋の援護射撃が飛来する。燃え盛る火球はフィオナ、魔弾によく似た鋭い弾丸はサリエル、それぞれが放った遠距離攻撃だ。
フィオナの握る短杖『カスタム・ファイアーボール』改め『スピットファイア』から凄まじい勢いで連発される火球の雨には慣れたものだが、見慣れないサリエルの方は気になって仕方がない。
しょうがないだろう。この『黒杭』、色が白ければ、そっくりそのまま、俺の肉体を貫いた忌まわしき『白杭』と同じモノなのだから。うっかり当たれば、鎧を着こんだ今でも、あっけなく貫通されそうで怖い。
「威力判定。『黒杭』、耐貫通レベル3、防御可能」
「ヒツギだって、今なら防げますよーだ!」
ミリアが安全性に太鼓判を押してくれるが、まぁ、これは俺のトラウマみたいなもんだからな。仕方ない、というか、その内に慣れると思いたい。あとヒツギ、防御力で鎧に張り合うな。
「索敵網ニ感アリ。敵性判断、大型ジェム、脅威度、小」
「フィオナ! 右方40メートル、ジャイアントスライムが来るぞ!」
「撃ちます――『火炎槍』」
サイドステップで射線を開いた矢先、轟々と唸りを上げて炎の竜巻が通り過ぎていく。道中にあるスライムも木々も、何もかも焼き払って、真っ直ぐに森の中を横断するジャアントスライムの巨躯に直撃する。
俺の前へ飛び出すよりも先に、巨大な水色ゼリーの肉体はコアごと焼失した。
改めて思うが、やはり本来のパーティメンバーってのは安定感が違うな。仲間の行動は、まるで自分の手足の延長であるかのように淀みがない。俺の思い描く結果と、仲間の想定する結果が、見事に一致する。
そうして、俺達はほぼ一直線にラティの森を突っ切って行く。
出現するのは、大量のスライムと、そこそこ登場するジャイアントスライムの二種類のみ。鎧にガトリングガンを持つ俺だけでも、余裕をもって突っ切れる程度の包囲網だ。フィオナの火力と、サリエルの未来予知染みた的確な援護があれば、その道行は正に無人の野を進むが如く、である。
「索敵網ニ感ナシ。敵勢力、一時撤退」
そう最初に気づいたのは、デフォルトで優秀な探知能力機能を搭載した兜を持つミリアであった。
それとなく振り向いて、フィオナとサリエルへ視線を送るが、どうも二人とも薄々感づいてはいたようだ。無論、俺だってこうもあからさまに敵の攻勢が弱まれば、気づかざるを得ない。
「これは、いよいよ出てくるかもしれないな」
「ちょうどいいでしょう、もうすぐ目標地点です」
森に入って小一時間。俺達の進撃速度からいけば、それなり以上の距離を踏破してきた。マップを再確認してみても、確かにもうすぐ例の水辺へと到着する。
そのままスライムの消え去った静かな森を駆け抜けて、俺達はほどなくして目的地へと出る。
「――止マレ」
森の中にある、開けた小さな沼地。そこに、一人の人物が待ち構えていた。
「なるほど、お前が人型の分裂体ってヤツか」
沼のど真ん中の水面に立つのは、人ではない。すでにギルドの情報でも出回っていた、プライドジェムが繰り出す、高度な知性を宿すという特殊なスライムの分裂体だ。
その姿と言動から、奴らは冒険者の間ではこう呼ばれる。
「確かに『コピー』だな」
ソイツは、俺と全く同じ姿をしていた。悪魔的な意匠の禍々しい全身鎧の男。しかし、ソレと俺とを見間違えることは決してない。
何故ならば、シルエットこそ同じでも、ヤツは明らかにスケールが違う。そう、デカいのだ。ざっと見て、俺の三倍か四倍ほどはある。
「冒険者の武具を奪って利用する、とも聞いていましたが、なるほど、こういうことなのですね」
基本的にコピーの肉体はスライムと同じゼリー状の液体だが、俺の鎧を形作るのは、数多の剣や盾、あるいは兜や鎧などの防具である。まず間違いなく、この森で倒れた冒険者の装備品であり、ソレらがごみ山のように一塊となって、鎧型のオブジェを形成しているのだ。
「冒険者ダ」
不気味なのは、どこから声を出しているのか知らないが、コイツがほとんど俺と同じような声で喋っていることだ。恐らく、声質は完全に似せているのだろうが、いかんせん感情による抑揚というものが台詞にまるでない。棒読みの発音に、モンスターらしい無機質さを感じる。
「冒険者、来タ、クロノ」
「フィオナ、サリエル」
今度は、少女の声が二人分、聞こえてくる。
「全員、コピー完了ってワケか」
ズブズブと沼そのものが持ちあがるように、俺のコピーと並んで、フィオナとサリエル、二人を模したコピーも現れる。どうやら、こちらの方は用いられている武具はやや少なく、体の半分以上はスライムでできている。
「まずはコイツらを倒して、この場所を確保だ――」
さて、この不気味に不快な物真似ヤロウ共をさっさとぶち壊してやろう、と思いきや、周囲の木々がざわめく。
「冒険者、オトコ、オンナ」
「行クゾ、フィオナ」
「サギタ、サギタ、ガトリング、イグニス」
さらに現れる、巨大なコピー共。
奴らは口々に、俺達がこの森に入ってからの言葉を適当につぶやきながら、ゾロゾロと集まってくる。
三、四、五――ちくしょう、軽く二十は超えているぞ。姿だけはそっくりのコピー巨人が群れをなして、俺達の前へ立ちはだかる。
「結構な兵力ですね。ランク5モンスターの面目躍如、といったところでしょうか」
普通の冒険者ならパニックに陥ってもおかしくないほど悪夢的な光景だが、フィオナはどこまでも涼しい声で目の前の不気味なスライム巨人軍団への感想を漏らす。
そして、『ザ・グリード』を構えた俺の背を追い越して、さらに一歩前へと出た。
「しかし、面倒ですので、一掃しますね――」