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黒の魔王  作者: 菱影代理
第20章:色欲の世界
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第394話 雪山反省会

 ラストローズを討伐した直後、その巣である洞窟は突如として崩壊を始め――なんていうことはなく、俺はリリィとフィオナをおんぶにだっこして、そそくさと下山を開始した。

 あの洞窟はもう二度と、入ったら帰れないランク5の危険地帯となることはないだろう。茨の文様は枯れ落ち、催眠効果は消え去った。ついでに、幻術に落ちた相手へのトドメとなる桃色の幻惑強化ガスも、すぐに空気に溶けて消え去るだろう。

 萎れたラストローズの死骸には、ほとんど何も残らない。試練の証として奉げた『色欲の子宮』が、いわばスライムのコア同然の中枢機関であったが故に、他の部位にはほとんど魔力もなく、特殊な素材にもなりえないのだ。

 ある意味、綺麗な死に様ともいえる。自分で手にかけておきながら、安らかに眠ってくれと思わずにはいられなかった。

 洞窟を出た頃にはもう正午を大きく回っていたようで、歩いてほどなくすると、太陽はそびえたつ雄大なアスベルの山の向こうへ落ちていった。

 そうして、駅前に飾られるクリスマスツリーみたいに巨大な針葉樹の根本で野営の準備を一人でこなし、組み上げたテントの中に、未だぐっすりオヤスミ中のリリィとフィオナを寝かせた。

 ラストローズとの戦いは苦戦を極めたが、肉体的な疲労は全く溜まってない。負傷したのは悪食のせいだし、魔力を消費したのも……全部お前のせいじゃねーか。

 まぁ、今回の活躍ぶりを考えれば、極悪食には感謝こそすれ、ケチなんてつけることはとてもできない。

 肩の傷だって、思いのほか早く効き始めた『肉体補填』の効果によって、ほとんど塞がりかけている。明日の朝日を拝む頃には、完治していると思われる回復スピードだ。

 こういう時にこそ、つくづく自分の体が人間離れしていると実感する。

 そんなことを考えながら、俺はぼんやりと不寝番を続けていた。ここには狡猾なプンどもが生息してるからな。しっかり見張ってないと、根こそぎアイテムを奪われそうなのだ。

 何にしろ、イスキア戦ほどの疲労はないし、改造強化によるタフネスのお蔭で、こうして夜通し番をすることに苦労はない。

 だから、うっかり居眠りした――ということは断じてないが、ふと目を閉じた次の瞬間に、ミアちゃんのアヴァロン王城にお呼ばれした今回は驚きだったのだが。もっとも、真の驚きは……いや、それよりも、今はリリィとフィオナのことである。

 俺が番を始めて数時間、すっかり夜も更けた真夜中という時間帯に、二人は同時に目覚めた。

 テントの中で起き上がる気配、というか、明らかに寝袋から抜け出すゴソゴソという音と動きを察知できたのだ。

「二人とも、目が覚めたか」

 異常はないと分かっていながらも、万が一と不安だったからな。二人の無事をすぐにでも確認するべく、俺は自らテントの入り口を開けて中へ入った。

「あ……クロノ」

「クロノ、さん……」

 俺の顔を見るなり、二人ともパっと笑顔の花が咲いた――かと思ったら、一瞬で枯れた。どこか悲しそうに、かつ、申し訳なさそうに、リリィは視線をそらし、フィオナはうつむいた。

「どうした、もしかして体調が優れないのか?」

「ううん、大丈夫」

 姿こそ白プンローブの幼女リリィだが、どうやら意識は元に戻しているようだ。受け答えがはっきりしている。

「私も、問題ありません」

 同じく、フィオナも大丈夫なようだ。いつもの三角帽子を寝かせるにあたって外しておいたので、今はその顔も良く見える。表情こそ沈んでいるが、顔色そのものは良い。

 しかし体に異常がないというのなら、二人がやけに落ち込んだ様子を見せるのは、一体どういう理由なのか――

「ごめんなさい、クロノ」

「今回の戦い、全くお役にたてませんでした」

 二人の口から出たのは、謝罪の言葉。

 ああ、そうか。それが、そんなことが、二人が元気のない理由か。少し、安心する。

「気にするな、俺達はパーティだろ。だったら、仲間を助ける時もあれば、助けられる時だってある」

「ううん、ピンチを招いたのは油断があったから」

「加護を得たことで、どんなモンスターでも倒せるという思い上がりが、無意識の内にあったのでしょう」

 イスキアの激しい戦いを経て、俺は一気に二つの加護を手に入れた。そして、リリィとフィオナも厳しいだろう修行を終え、見事に加護の力を身に着け帰ってきた。

 俺達三人の力が合わさればどれだけ凄いというのかは、リッチ討伐で証明された。ランク5モンスターであるリッチを一蹴、圧倒的な力だった。そう、この三人の加護を組み合わせたフォーメーション『逆十字アンチクロス』は、使徒さえ倒せるというほどに。

 一番思い上がっていたのは、他でもない、俺だろう。言葉にすることも、意識することもなかったはずだが、それでも俺は、心の奥底で「もう試練のモンスターなんて楽勝だ」と思っていたに違いない。

 その結果が、このザマだ。ヒツギに助けられ、悪食に助けられ――俺はただ、剣を一振りしてトドメを刺しただけにすぎない。

 とてもじゃないが、ラストローズを倒したのは俺の実力だと言い張れない。

「それなら、俺も同じだよ。勝てたのは、運が良かったからだ」

 そう、俺は正直に戦いの顛末を二人に語って聞かせた。

「――それでもやっぱり、クロノが助けてくれたんだね」

「それに、ここまでお世話もしてもらうなんて、嬉し――いえ、恥ずかしい限りです」

 サラっと「嬉しい」とか言いそうになったのはきっと、仲間のありがたさを実感したからだろう。俺も同じことされたら、素直に嬉しく思うだろうし。陳腐な表現だが、それでも絆を再確認できたような気がする。

「今回のことは、反省は必要だけど、気に病むことはない。俺も無事に、試練を達成して新しい加護を授かったし、目標を達成できたことを、素直に喜ぼう」

 言ったところで、そうそう簡単に気持ちの切り替えはできないが、それでもリリィとフィオナは理解と納得を示してくれた。

 ありがとう、と微笑んでくれて、俺もホっとする。やっぱり二人が落ち込んでいる姿を見ているのはつらいし――

「ね、クロノの新しい、えーと、第四の加護ということになるのかしら、それってどんな能力なの?」

「効果次第では『逆十字アンチクロス』を強化できますし、詳しく教えてほしいですね」

「そ、それはダメだっ!」

 と、迂闊にも俺は叫んで反応してしまった。

 あからさまに怪しい俺の返事を前に、リリィとフィオナが驚きに目を開いてから、すぐに疑惑の眼差しを向けてきた。

「……なにがダメなの?」

「どうしてダメなのですか?」

 ダメなものはダメなんだよ! で、押し切れるはずもない。この二人を相手に隠し事をするのは……いや、でも、こんな能力を正直に打ち明けるには……そ、そうだ、何も仲間だからといって、包み隠さず全ての秘密を共有する必要はないじゃないか。リリィとフィオナだって、アヴァロンでの修行内容は秘密だし。

 だから俺、頑張って誤魔化せ、何としても、誤魔化すんだ!

「いや、その……ほら、ラストローズは幻術の能力だっただろ、だから、第四の加護も幻術系なんだ」

「それでは、相手に悪夢を見せることができるようになる、だとか?」

「私みたいにテレパシーが使えるようになるとか?」

「それが、よく分からないんだ」

 嘘をつくならもう少しそれらしい言い訳を考えろよ、とツッコまれそうな返答だが、これは事実だったりする。

「とりあえず、氷の疑似属性を扱えるようになったのは間違いない」

 言いながら、俺は手のひらから冷気を放出してみる。氷魔法のように、実際に氷を作り出すことはせず、単純に低温の黒色魔力を手に集めただけで、その余波でヒンヤリと感じられるだけのこと。

「なるほど、確かに冷たいですね」

 俺の手を両手で包み込むようにギュっと握って、フィオナが言う。しょぼい効果だが、冷気が発生したというだけで、氷属性を操れる証明としては十分だ。

「ちょっと、いつまで握ってるのよ。まだ説明の途中でしょ」

 何故か手を離してくれないフィオナのせいで、雰囲気的に手を握ったまま互いに見つめ合うような恰好で硬直してしまっていた。リリィの的確なツッコミのお蔭で、話を元に戻すと同時に、手を離す。

「あ……」

 なんて小さく声をもらして、フィオナは妙に名残惜しそうだった。

 もしかして、テントの中が暑いから、もうちょっと涼んでいたかったのかもしれない。二人が凍えないように、暖房機のように熱を発して温めてくれる魔法具マジックアイテムを使ったからな。一個一万クランもする、結構な高級品だったりする。ちなみに消耗品。

「それでだ、俺のドライブ、ギア、アクセル、はそれぞれの属性を元にした強化ブースト系だから、単純に使いやすいし、イメージもしやすい。さらに現代魔法モデルを学べば、より効果的に扱えるようにもなった」

 ここまでは確認にすぎない。リリィもフィオナも黙ってうなずき、理解を示す。

「けど、氷属性を元に何らかの幻術を作り上げる、というのは、俺もどうすればいいのか分からないんだよ」

 幻術はただでさえ特殊な系統の魔法にある。現代魔法モデルにおいては、混乱パニコス魅了チャーム狂化バサークあたりの魔法術式が、一応は幻術系と呼べるだろう。

 だが、実戦での使用に耐えうるレベルの幻術といえば、どうしても固有魔法エクストラ原初魔法オリジナルの強力なものにかたより、使い手が大きく制限される。教えを乞うことさえ難しい。そもそも、教えられたとしても行使は不可能だ。

「というか、俺には幻術の才能はないから、ラストローズみたいな真似はできないとハッキリ魔王から言われたよ」

 そもそも、加護を与える本人であるミアちゃんが「僕もそんなのできなかったし」と言ってたので、能力の内に入ってないのだろう。ショック、というよりも、そこまでは望みすぎといった感じだし、特にガッカリということもないが。

「それじゃあ、第四の加護は何の役に立つの?」

「メインは精神防御だな。発動させれば、如何なるものにも惑わされることがない……らしい」

 これも本当である。常時発動で幻術から身を守ってくれるってほど便利ではないが、第四の加護を発動させた効果時間内は、かなり強力な精神防護プロテクトがかかるらしい。

 メインでこの能力を使うことになる、という意味であって、「第四の加護のメインとなる能力が精神防御である」ということではないのがミソである。嘘はついてない。

「でも、それだと相手が幻術を使ってくれないと、全く生かせないですよね」

「まぁ、そういうことになるな」

 サリエル戦では出番がないのは確実だ。恐らくアイツのメインは槍による近接攻撃。魔術士クラスではなく、騎士クラスじゃないかと推測される。フィオナが話してくれた、シンクレア共和国で流れる第七使徒の武勇伝を聞く限り、奴はいつも真っ向から敵兵を蹴散らし、敵将を討ち取るというものばかり。

 もし出番があるとすれば、ミサの『聖愛魅了マドンナ・チャーム』か。呪いの武器と化した悪食を黒化させる際に垣間見た、ヴァルカンの記憶にあった悪魔の状態異常バッドステータス能力だ。

「うーん、でも、一つ確かな防御手段を持てるなら、そこまで悪い能力じゃないと思うわよ。何といっても、今回は完全に幻術にハマってしまったわけだしね」

 間違いなく存在する欠点を、確実に埋めてくれるわけなのだから、それは純粋に大きなメリットであると言えるだろう。

 フィオナの目が、暗に「でもやっぱり地味ですね」と語ってるように見えるが、今ばかりは、スルーせざるをえない。

 そう、俺は今、嘘をついているのだから。決して悟られてはならない。

「ともかく、幻術に疎い俺が第四の加護を使ったら、万が一、とんでもない効果が出る危険性があるから、誰かを相手に練習するのはダメってことだ。『強制干渉オーバーフロー』とか起こったら困るだろ、近くにいるだけでも危険なんだ」

「私は別に大丈夫だと思うけど……そこまで言うなら、仕方ないわよね」

「そうですね」

 どうやら、上手く二人を誤魔化すことができたようだ。

 本当に一安心だ。絶対に知られたくない、第四の加護の真の能力を――

「そうだ、フィオナ、貴女と二人で話したいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「奇遇ですね、私もですよリリィさん」

 最大の山場を乗り切ったところで、不意にリリィがそんなことを言いだした、かと思えば、あっさりとフィオナも応じた。

「二人で話って何だ?」

「反省会よ、役立たずの二人きりで、ね」

 そこまで自虐的に言わなくても、しかも幼女の姿で。白プンのウサ耳も心なしか萎れているように見えて、ちょっと哀愁が漂っている。

 でもまぁ、今回の戦いは二人にも思うところが色々とあるのは間違いないだろう。

「それじゃあ、俺は出ていくよ」

「いえ、クロノさんはテントの中でゆっくりと休んでいてください。外で見張りをしながらやりますので」

「いや、でも俺は大丈夫だし、二人の方こそ休んだ方が――」

「これ以上、クロノさんに甘えてしまったら……ダメになるので、私も、リリィさんも」

 それは、何とも立派な心構えである。そこまで言うほど固い覚悟があったとは。

「分かった、それじゃあ後は頼む。日が昇ったら、すぐに出発だ」

「うん」

「了解です」

 そうして、白プンローブのリリィと、帽子を外したままのフィオナはテントを出て行った。

 二人の話を盗み聞きするわけにもいかないので、外から聞こえてくる音は気にしないように意識しつつ、俺は横になった。

 自分の寝袋を『影空間シャドウゲート』から取り出して準備するのも面倒だったから、二人が寝袋の上にかけていた毛布一枚だけを被る。

 この体じゃ特別に寒くも感じないが、それでも毛布をかければ温かいし、寝床に入ったと感じられてリラックスできる。

 だが、毛布からほんのりと漂うリリィとフィオナの香りが鼻をくすぐり、変に意識してしまった。

「ちくしょう……第四の加護のせいだ……」

 ミアちゃんが顔を真っ赤にしてカムアウトした、真の能力であるところの「エッチが凄くなる」という効果。

 あまりの説明に絶句し、三十秒は二の句が継げずにいたのだが、それでも、詳しく聞いておかねばならない。自分の力である、きちんと把握しておきたい。

 そんなワケで、俺は心を鬼にして、恥ずかしがって玉座の裏に逃げようとするミアちゃんのマントを引っ掴んで、更なる説明を求めたのである。今にして思えば、俺が興奮して可愛い子を襲ってるみたいな構図だったが、まぁ、誰も見てないから大丈夫だ。

 ともかく、ミアちゃんの説明という名の釈明は以下のようなものだった。

「ち、違うんだって!」

「何が違うんだよ、こんなエロ能力を加護にして!」

「や、それは、そうだけど……でも、僕だって好きでこんな能力を編み出したんじゃないんだよ!」

「どんな状況になったら編み出すっていうんだよ!?」

「そ、それは……」

「それは?」

「サキュバスの巣に落とされて、淫魔女王サキュバスクイーンと千人の

配下に襲われた時……とか」

 めちゃくちゃ気まずそうに視線を逸らしながら告白するミアちゃんの姿に、俺の溜飲は急激に下がるのだった。

「まさか、あの話が実話だったとは……」

 魔王ミア・エルロードはある時、敵の卑劣な罠にかかり、素っ裸でサキュバスの巣へと落とされてしまう。男の精と魔力に餓えた千のサキュバスと、その姿を一目見ただけで男女問わず絶頂に至らしめるという淫魔女王サキュバスクイーンが、一斉に襲い掛かる。

 だがしかし、そこで魔王に相応しい絶倫と性技を駆使して全員を屈服させ、ミア・エルロードは堂々と正面から帰還していったのだ――という、子供には聞かせられない18禁なエピソードも、魔王伝説の中にはある。

 この男として夢のようなシチュエーションは、いつの時代もパンドラ男児を魅了し続け、現在に至っても、この逸話を元にした創作物(成人男性向け)が作り出されるに至っている。と、ウィルがちょっとやらしい顔をしながら教えてくれた。いつかコレクションを見せてくれると、男と男の約束も交わしたぜ。

 それにしても、あまりに出来すぎた話であるため、魔王伝説を基にした完全な作り話だと俺は思ったし、世間でもそういう認識であったのだが……

「うわ……やっぱり、今でも伝わってるんだ、あの話……」

 本気でショックを受けたという表情の魔王陛下を見れば、紛れもない事実であったと確信できる。

 果たして、こんなミアちゃんがどんな風にサキュバスのお姉さま方とニャンニャンしたのか詳しい話を聞きたい、と真っ先に思ってしまったのはどうしようもない男の性だが、そこは鋼の理性で抑え込んだ。というか、聞いたら色々と後戻りできなくなりそうな気がした。

 ついでに言えば、いよいよ核心となるミアちゃんの性別についても、今はあえて問いただす気も起きなかった。

 サキュバスだって、吸おうと思えば女からでも精力は吸収できるのだ。男でも女でも、そのどちらとも言えない性別が曖昧な人も、サキュバスの危険は等しくある。

「しっかし、本当にどうすんだよ、この能力……」

 半ば羞恥プレイのようにミアちゃんから卑猥な能力説明をさせたお蔭で、凡その効果は判明した。その説明の中で最もマトモだったのが、さっきリリィとフィオナに堂々と語って聞かせた『精神防護プロテクト』なのである。

 そして、最も聞かせられない能力のメイン効果こそが、ミアちゃんの言う「エッチが凄くなる」というものだ。

 最大限、真面目にこの能力を解釈すれば、『房中術』の一種ということになる。

 房中術とは、性交を通して発揮される効果を総称する魔法の一系統だ。サキュバスのように、交わった男から魔力を吸収したり、逆に男の意志で女へ魔力を分け与えたり、というのは最も代表的な例である。

 勿論、単純に肉体的な快楽によって、一種の魅了チャームとして相手を言いなりにさせるハニートラップ的な使い方もある。

 しかしながら、これらの魔法は必ず性行為を前提としたモノであるため、とても公には語れない。ぶっちゃけていうと、違法な魔法術式、禁術や外法といったところだ。真っ当な魔術師ならば、まず習得することはないし、これを使うのは呪術師やら、邪教徒やらといった、魔法的アウトローな者ばかり。何とも怪しげ、かつ危険な魔法なのだ。

 そんなモノを、俺は加護として授かりました。

 魔王曰く、これを使えば、サキュバスと交わろうと氷のように冷たく理性を保ち続け、かつ、自らは相手を快楽地獄に叩き落とせるだけの激しい攻めができるように――いや、ホント、何だよそのとんでもないエロ能力は……

 とりあえず、第四の加護を使う機会が訪れないことを、祈るより他はない。俺が女性と結ばれるその時は、是非とも普通に行為を終えたいのだ。

「ちくしょう……今回ばかりは恨むぜ、ミアちゃん……」

 向こうに悪気がないのは分かっていながらも、俺はそんな複雑な心中のまま、毛布にくるまって眠るのだった。

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