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黒の魔王  作者: 菱影代理
第2章:異世界の日常
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第24話 クエストとランク(2)

クエスト・リキセイ草の採取

報酬・一袋5000シルバー

期限・遠雷の月第一週まで

依頼主・イルズ村道具屋店主・キッシュ

依頼内容・妖精の森フェアリーガーデンの奥地に生えるリキセイ草を所定の袋一杯にとってきて欲しい。3袋以上持ち帰ったパーティーにはリキセイ草で調合したポーション1セットを進呈。



クエスト・商隊の護衛募集(クゥアル発~ダイダロス着)

報酬・日給7500シルバー+戦闘手当て

期限・緑風の月20日まで、22日出発

依頼主・行商人代表・モウティ

依頼内容・クゥアル村からダイダロスまで商隊の護衛を募集中。三食支給。一月近い長旅となりますが、ルートは西北街道のみで難所などはありません。



クエスト・『イルズ・ブレイダー』荷物持ち募集

報酬・一日3000シルバー

期限・緑風の月いっぱいまで予定

依頼主・『イルズ・ブレイダー』リーダー・ニーノ

依頼内容・パーティーの荷物持ちを頼む。同行クエストはランク2のモンスター退治がメインだが、オレ達がしっかり守ってやるから安心しな!



クエスト・イルズ村の夜間歩哨

報酬・一日4000シルバー

期限・新陽の月まで募集予定

依頼主・イルズ村自警団団長グリント

依頼内容・近頃ゴブリンやラプター系のモンスターが増えてきている。その為イルズ村の夜間の警備を強化したいので、夜間の歩哨を臨時募集する。都合の良い日のみ、一日単位でも受注可能。



「うーん、所々意味がわからん単語があるな……」

 10ページほどの書類をめくりながら、様々な依頼を読んでいく。

 凡その内容は、字が読める以上理解できるのだが、暦や地名、モンスター名など知らないところが多い。

 受注するのに即断は出来ないな。

「よく分からなくても、ここで紹介するランク1のクエストは問題なくこなせると思いますよ、ほとんど戦闘が起きないようなモノばかりですし」

「いや、それ以前に暦とか地名が分からなくて、地図とかカレンダーとかって売ってる?」

「むむ、クロノさんほど教養ありそうな人が暦をしらないとは、これはかなりのワケアリですね、実は遠い国の王子様だとか!?」

「それは夢見すぎじゃないか?」

「おっとスミマセン、詮索は無しでしたね。

 えーと、地図も暦表カレンダーも道具屋で売っていますよ」

「依頼主にある道具屋店主の店?」

「そうですよ、この村で唯一の道具店ですから、ここの冒険者は皆そこでポーションなどのアイテム類を補充しますね」

「なるほど、リリィが鎧も売ってるって言ってたけど、冒険者向けの店なのか」

「村人も利用しますけど、やっぱり冒険者の方がメインですね。クロノさんもイルズ村で冒険者するなら必ずお世話になりますよ、場所はここを出たら右手に看板が見えるのですぐ分かります」

「ああ、この後行ってみるよ」

「それとクロノさん、これは冒険者稼業とは関係ないですけど、暦や地理歴史、この辺の動植物やモンスターの事は、村長さんの家にある蔵書を見せてもらえば良いと思いますよ。クロノさんは字も読めますし、理解力も記憶力もありそうなので、問題なく本は読めますよね」

「ああ、本は読むのも書くのも大好きだぞ」

「えっ、クロノさんって作家なのですかっ!?」

「あ、いや……趣味で……」

 ヤバい、どんなの書いてるんですか、とか聞かれたら困る。

「おっと、これも余計な詮索になりますね、聞かないでおきますよ」

「助かる、ありがとう」

 言い淀んだ俺の台詞に何やら秘密有りだと勝手に勘違いしてくれたようだが、ここはそう思わせておくことにしよう。

 異世界の人相手に現代日本を舞台にした超能力バトルストーリーとか話してもワケ分からんだろうし、何より痛い人扱いされる危険性もある。

「ともあれ、村長宅には図書室があって自由に閲覧できると?」

「図書室なんて立派なものじゃないですけど、村で本がある場所と言ったらそこかウチ(冒険者ギルド)くらいですね」

 なるほど、現代ほど一般家庭にも本が普及しているわけじゃないんだな。

「そうか、明日にでも行ってみるよ」

 とりあえず、村長宅の蔵書を読めばこの世界の事については色々と知れそうだ。

「それでクロノさん、何かクエストを受注しますか?」

「いや、情報収集と準備をしなきゃいけないから、今日のところは無しで」

「そうですか、クエスト以外にも、フリーで採取した素材や討伐したモンスターに対しても報酬をお支払しますので、そちらを利用しても良いですよ。

 それらの一覧表は向こうの掲示板に張って有ります、素材の買取や討伐報酬は季節などによって変動しますので随時チェックして下さいね。

 ちなみに、今のオススメはゴブリン討伐ですよ! 結構大きな集団が住み着いたみたいで討伐価格が上がっています、近いうちには一斉駆除のクエストが出るかもです」

「それって、フェアリーガーデンの西にある崖の洞窟に住み着いたヤツらのこと?」

「よく知っていますね、リリィさん情報ですか?

 でもいくらリリィさんがいると言っても気をつけて下さいね、住処の近くだと凄い数のゴブリンが集団で襲ってきますから。

 ゴブリン退治は分裂したチームを別個に叩くのが基本戦法ですからね!」

「悪いけどソコのゴブリンは全滅したぞ」

「え?」

「昨日、俺とリリィが駆除してきた」

「ええっ!? そうなんですか!?」

「本当だ、さっき村長から報酬も貰った、昼食の代金に払った1ゴールド金貨がソレだ。まぁ泉の妖精にリリィが退治を押し付けられたから、俺がやろうと思っただけのことなんだけど」

「昨日? たった一日で?」

「ああ、洞窟を直接襲ってまとめて片付けた」

「ク、クロノさんが?」

「大体は、でもリリィが最後に洞窟ごと破壊したから、倒した数じゃ劣るかもしれないなそういえば」

「そ、そんな……クロノさんって何者なんですか?」

「それは聞かない約束だろ、まぁ黒魔法使いなのは確かだ」

「そうですか……そうですね、いえ、クロノさんが何者でも良いのです、多くのクエストをこなして村とギルドに貢献してくれれば。

 一人でゴブリンの大集団を相手にできるほど有能なら尚更です、これから宜しくお願いしますね!」

「こちらこそ」

「あの、そんなに実力があるなら初級講座する意味ってあったんですか? あとランクも1ですけどいいんですか?」

「そこはほら、知識に偏りがあるから、ルールは聞いておかないと。

 ただゴブリンの倒し方はレクチャーされなくても大丈夫だと思う」

「了解です、それでは村やギルドについて分からないことがあったらいつでもワタシに聞いてくださいね」

「ありがとな、アテにするよ」

「あの、それと」

「ん?」

「リリィさんって、本当に強いんですか?」

 ニャレコさんが問いかけるが、リリィに返答は無い、なぜなら、

「あ、寝てる」

 俺の膝の上で安らかな顔で小さな寝息を立てていたのだった。

 お腹一杯の上に退屈な話だったから寝ちゃったんだろうか。

 とりあえず、これを起こすのには結構な抵抗を感じるので、このまま寝かせてあげよう。

「というか、村の人にはリリィは強いって認識なのか? 村長もリリィがいつもモンスター退治していることを知っているような口ぶりだったし」

「光の泉を守るために、昔からフェアリーガーデンのモンスターを退治しているのは有名な話ですよ。

 でも、どうにもこの姿を見ると、ちょっと信じ難いというかなんというか……」

 あまりにあどけない寝顔、これはどうみても戦う者ではなく守られるべき幼子のものだ。

「いや、それはそうだろう、俺も最初はそう思ってた。

 けどな、リリィは強いぞ、少なくとも俺よりかはずっと高度な魔法が使える」

 矢の雨を迎撃した高速追尾光線に、洞窟を崩した光の柱、どちらも今の俺では防ぐことすらできないだろう。

「そ、そうですか、凄いですね」

「まぁ実際に見てみないことには信じられないかもしれないけどな」

「何だか、凄いコンビですね。

 やはりこれは冒険者として期待が持てますよ! 一流冒険者も夢じゃないですねっ!」

「ん、俺はそんなに成り上がるつもりはないんだけど、生活の為に冒険者やるわけだし」

 そもそもリリィは冒険者にはならないし。

「いえいえ、クエストをこなしていく内に、きっと上を目指していきたくなりますよ」

「そうか?」

「そうですよ、冒険者というのはそういうものなのです!」

 根拠は無いが、自信満々にそういい放つニャレコさん。

 今は想像つかないが、いつか俺も夢とロマンを追い求める正統派冒険者になるのだろうか?

 少なくとも、今はリリィと二人で暮らしていけるなら、それだけで未来は明るいと思えるのは確かだった。



 この世界にも身分を証明するものは存在する。

 冒険者であるならば、ギルドが発行する所属証明書、通称ギルドカードがそれである。

 これを出せば、どこのギルドでもすぐに所属が証明でき、クエストの受注や報酬の受け取りなどがスムーズに行える。

 鈍色に光る金属製の小さなプレートは、クロノが見れば「ドッグタグみたいだな」という感想を漏らすことだろう。

「あ、ニャレコ、それってさっき来た黒マントの人のやつ? 新人なの?」

「はい、そうですよー」

 鳥人ハーピィ族の先輩職員ピーネが興味深そうな顔で、ニャレコの手にするギルドカードを覗き込む。

「黒魔法使い? また随分変わったヤツがきたもんだねぇ」

 ギルドカードには、名前とランク、そしてクラスが書かれているので、一目見ればすぐに分かるのだ。

「そうなんですよ、身元不明の謎の人物なんです!」

「身元不明なんてのは珍しくないけど、リリィさんの連れみたいだし、ただのゴロツキってわけじゃなさそうね」

 素性のハッキリしない者でも簡単になれる冒険者は、自然と後ろぐらい事情を抱える犯罪者まがいな者も多く集まってくる。

 特に、頭は悪いが腕自慢のチンピラやゴロツキみたいなのが良い例である。

 勿論、冒険者はそんな者ばかりでは無いが、そういった者が少なく無いのもまた事実である。

「クロノさん顔は怖いですけど、ちゃんと教養があるようですし、魔法の腕もかなりのもののようです。

 もしかしたらどこぞの貴族か高名な魔法使いの弟子かもしれませんね」

「ふーん、魔法の腕って? 黒魔法見たの?」

「いえ、でも最近住み着いたゴブリンをリリィさんと全滅させたらしいですよ、村長から報酬も貰ったと言っていましたので、嘘ではないと思いますよ」

「そりゃまた凄いのが来たわね……これは結構期待のルーキーじゃない?」

「はい! これからが楽しみなんですよっ!」

「でも、この辺じゃ大したランクのクエストは無いんだけどねぇ」

「そーなんですよね」

 しかしながら、腕の良い冒険者が村にいるという事は素直に喜ぶべきことである。

 金はかかるが、モンスターの襲来など有事の際には即座に対応できるし、普段から周辺モンスターの駆除もクエストとして行う、冒険者は村の安全を保障する貴重な戦力なのである。

 それ以外にも、種々のクエストを順当にこなしてくれれば、依頼主をはじめスムーズなビジネスができるようになるのだ。

「それじゃ、ギルドカード渡してきますね」

 かくして、クロノの手にギルドカードが渡り、ギルド所属の正式な冒険者となったのである。


 クロノはギルドカードを手に入れた! 冒険者ギルドにやってきて実に4話もかけて漸くクロノは冒険者になれましたね。クエストは明日から頑張る、と姿勢がやけに後ろ向きな気がしないでもないですが……

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― 新着の感想 ―
[一言] 俺が一番危惧してるのはクロノが居ることによって村に被害が及ぶこと。追われてる身だよ...一応...
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