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黒の魔王  作者: 菱影代理
第2章:異世界の日常
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第22話 冒険者ギルドへようこそ!(2)

 ギルドの受付カウンターにやってくると、そこに居たのは、

「あ、さっきのウエイトレスさん」

「ああ、さっきのお客さん!」

 三毛猫柄の猫獣人ワーキャットウエイトレスが受付している、人手が無いせいで兼任しているんだろうか。

「何か依頼をお探しですかー?」

「いえ、冒険者に登録しようと思いまして」

「なるほど、新人さんでしたか!」

「はい、右も左も分からない未熟者ですがよろしくお願いします」

「……随分と礼儀正しい人ですね」

「そうですか?」

「そーですよぅ、ワタシみたいな下っ端職員に敬語を使ってくれる人なんて村長さんくらいしかいませんよ。ただでさえ荒っぽい人が多い冒険者なら尚更ですー」

 そういえば村長は俺みたいな得体の知れない若造にも懇切丁寧に接してくれていたな、アレは誰にでもそうなのか。

 あと冒険者が荒っぽいのは見た目通りってことか、とりあえずロビーに座って何やら話している冒険者グループは揃って皆ガタイが良い。高校じゃあ高身長の強面で通っていた俺も、あの中じゃ普通にみえるだろう。

「それでー、あ、そういえばお名前をまだ聞いていませんでしたね。

 ワタシはニャレコって言います」

「ニャンコ?」

「ニャレコです! やっぱりアナタ失礼ですねっ!」

「えっ、スイマセン、えーと、ニャン……じゃない、ニャレコさん。

 私はクロノと言います」

 どうやら猫獣人ワーキャットに猫扱いは失礼らしい、また一つ常識を覚えたぞ。

「はいはい、クロノさんね、あ、ワタシには敬語じゃなくても良いですよ、疲れるでしょ?」

「あ、やっぱり分かる?」

「分かりますよー。

 でも相手によってキチンと敬語を使い分けられるなんて、それなりの教育を受けていますねクロノさん、どこの学校に通ってたんですかぁ?」

「あはは、あんまり俺の事情については聞かないでくれると助かるんだけど。

 身元不明でも冒険者になれるというからここに来たんだ」

「なるほど、ワケアリなのですね」

「そうなのです」

「分かりました、そういうコトならワタシ個人も当ギルドも追及いたしません。

 それでは、こちらの入会書に書けるところだけ記入して下さい」

 俺の前に一枚の紙とペンが差し出される。

「あ、字が書けなければ200シルバーで代筆できますよ」

 なるほど、学校教育が普及していない以上、当然識字率も低い、よって代筆サービスなんてのが普通にあるんだな。

 幸運にも、今の俺には必要無いが。

「いや、大丈夫」

 このアルファベットみたいな不思議な異世界文字などこれまで一度も書いたことは無いが、すでに知識として俺の頭の中に存在しているので、書くことは可能だ。

 もっとも、スラスラと早くは書けず、思い出しながらゆっくりとしたペースになる。

 これは練習が必要だな、なんて思いながら書類の記入を進める。

 まぁ俺に書けるところなんて名前と年齢と性別くらいのものだが――

「このクラスってのはなに?」

「それはですねぇ、剣士だとか魔術士だとか、自分の戦うスタイルみたいなのですね、これがハッキリしてるとパーティーを組む時の目安になりますし、モンスターとの相性だとか、色々な判断要素になる大事な情報です。

 と言っても、冒険者は軍隊ではないので、正確にクラス分けされていませんし、皆それぞれ勝手に名乗っていますよ。

 クラス名はなるべくその人の戦い方が判るようなのがいいですね、特に思いつかなければ得意な武器の種類だけでもいいですよ」

「なるほど、自称でも構わないわけか、なら――」

 俺は脳内で文字の意味と書き方を思い起こしながら、書類にペンを走らせる。

「黒魔法使い、ですか?」

「ああ、しっくり来るのがコレしか無くて。

 黒色魔力を扱うヤツって珍しいの?」

「珍しいですねぇ、黒魔法は古い秘伝が多いらしいので、冒険者になるような使い手はいないですよ」

「魔法使いというか、魔術士はやっぱり原色魔力で火とか氷とか使うのが多い?」

「多い、というより魔法を使う人はほとんど皆がそうですよ。

 召喚魔法サモンを使う人や回復ヒール専門の人でも一つくらいは原色魔法持っていますよ」

「なるほど、俺は原色魔力扱えないし、そもそも魔法自体あんまり詳しくないから」

「うーん、都市の方まで行けば魔法講座とかやってくれるところもありますけど、ウチは冒険者の基本説明しかやってないんですよね」

 魔法講座か、機会があれば出てみようかな。

 やっぱり自分が使うモノのことは理解しておくに限る。

「冒険者の基本説明って今受けるの?」

「はい、簡単なルールだけは必ず説明します。

 それ以外に聞きたいことがあれば初級講座を申請すればすぐに出来ますよ」

「そっか、あ、ちょっと連れを待たせてるんで、時間かかりそうなら一緒に受けてもいいかな?」

「連れってリリィさんですよね?」

「知ってるのか、ホントにリリィは有名だな」

「知らない人はいませんよ、妖精の霊薬なんて貴重品を超格安で30年も売り続けてくれてるんですから」

「おお、リリィの薬ってそんなにスゴ――って、ちょっと待て、今30年とか言わなかったか?」

「そうですよ、リリィさんは今年で32歳になるはずですよ」

「え……えぇえええ!?」

 思わず絶叫してしまう。

 何事かと周囲の人達の視線が突き刺さるが、衝撃の事実を聞いた俺にとっては正直それどころではない。

「32歳!? マジでっ!?」

「マジですよ」

 俺は今までリリィは5,6歳くらいだと信じて疑わなかった、いや、普通そう思うだろう。

 何だよ32って、ソレって、つまり、どういうことだってばよ……

「そんなに驚かなくても、妖精族ってとても長生きですし、姿も変わりませんから。

 年齢なんてワタシ達と同じような意味はもたないみたいですよ」

「な、なるほど……つまり生まれた時からずっと同じ精神年齢ってコトか」

「そうですね、でも記憶力はいいから色んなこと知ってたりしますよ。

 特にリリィさんなんかは泉の妖精と違って人里まで下りてきてくれますから、この辺一帯のことは大体知っていると思います、クゥアル村の村長さんとも知り合いですし」

「そ、そうなんだ……」

 恐る恐る振り返ると、ロビーで椅子に座っているリリィが目に入る。

 俺に気づいたらしく、手を振ってくれる。

 あ、あの愛らしい生き物が32歳だと……俄かには信じ難いが……いや、ここは魔法のファンタジー世界、そういうこともあるんだろう。

「まぁいいさ、何歳だろうとリリィであることには変わり無い」

「あ、それでリリィさんと一緒に初級講座受けます? ちなみにお値段は一人1000シルバーです、リリィさんの分はまけておきますよ」

「お願いします」

 大銀貨一枚を懐から(正確には影の中から)取り出してニャレコさんに支払う。

「はーい、それじゃ準備するので、クロノさんはリリィさんと一緒にロビーで待っててくださいね」

「分かった」

 そして、実年齢32歳のリリィが待つ席へと戻る。

 いや、歳のコト気にしすぎかな俺……


 リリィまさかのアラサー、ということでロリババアもとい合法ロリだったのです。しかし子供の姿で500歳とかはよくある設定ですけど32歳は恐ろしく中途半端と思うかもしれませんね。でもリリィが500歳だとこの作品が破綻するくらい強くなってしまうので32歳で良いのです、逆に見た目通りの子供でもまた困るのです。ところで、リリィ32歳にしてついに17歳の男の子クロノと同棲を始める――こう書くと全然別の話みたいに聞こえますね。この作品はファンタジーです、お忘れなく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 [一言] リリィがアラサーだったなんて驚きました。アラサーであの精神年齢はやばいと思いました。年齢詐称どころじゃないですね。
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