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黒の魔王  作者: 菱影代理
第2章:異世界の日常
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第21話 冒険者ギルドへようこそ!(1)

 早速ギルドに冒険者として登録だぜっ!

 と、意気込んだはいいが、冒険者ギルドのロビーに広がる美味そうな食事の香りに、俺とリリィのお腹の虫がデュエットを奏でる。

「飯にするかっ!」

「うんっ!」

 こうして、冒険者登録は後回しになり、初めての外食で昼を食べることになった。

 もっとも、場所が場所なだけに、ロビーに座るのは客兼冒険者な面々で、鎧や武器を装備したままの物騒な格好のヤツもちらほら見える。

 そんな完全武装客で一杯じゃないだけ今はマシだろうけど。

「うーん、どれがいいかな」

「どれかなー」

 改造のお陰で言葉だけで無く、文字も読めるようになっているため、メニューを読むに苦労はないが、ちらほらと知らん食材名や料理名があるのですんなり決まらない。

 リリィもこういうところは初めてらしく、あまり料理に詳しく無いので、二人一緒になって頭を悩ませる。

 ただ、注文などのシステムは特別変なものは無いようで、メニューが決まれば店員さんに注文するだけとなるが、あ、そういえばチップはどうなんだろうか?

「すいませーん、注文いいですか?」

「はいはーい、どうぞー」

と言ってパタパタ駆けてくるのはネコミミのウエイトレスだ、というか、ネコそのものなウエイトレスだ。

 頭の先からつま先まで三毛猫柄の毛皮で覆われ、顔も猫そのものに近い造形だが、二足歩行で頭身もほぼ人間と同じ、所謂獣人と呼ばれる種族である。

 しかし人間のように髪の毛があると、顔は猫でも一気に人っぽく見える、淡いブラウンをしたセミロングの髪型を見てそんな感想を抱く。

「えーと――」

 とりあえずじろじろ見るのも失礼なので、さっさと注文。

 そうして滞りなく注文済ませると、

「合計で520シルバーになりまーす」

 ここは前払いシステムなようで、料金を請求される。

 俺は懐から、おもむろに一枚の輝く黄金のコインを取り出す。

「すみません、今持ち合わせが金貨しかないのですが構いませんか?」

「んにゃ! 1ゴールド金貨ですねっ! いいですよ~」

「ではこれで」

 俺は500円玉サイズの金貨を、ネコさんの肉球がある掌へと渡す。

「まいどー、お釣りの9480シルバーでーす」

 ジャラジャラとポケットをまさぐって、俺へと返してくれたのは9枚の大きい銀貨と4枚の小さい銀貨、それと10円玉そっくりな銅貨が8枚だ。

「少々お待ちくださーい」

 来た時と同じように耳と尻尾を振りながらカウンターの奥へとネコウエイトレスは去っていった。

 ふぅ、注文と支払は問題無くやれたぞ、良かった。

「それにしても、凄い金額貰っちゃったな、まぁ無一文の俺には助かったけど」

 俺がどうして金貨なんて上等なモノを持っているのかと言うと、昨日やったゴブリン退治の報酬という名目でシオネ村長から頂いたのだ。

 合わせて金貨20枚、日本円に換算して20万円に相当する。

 財布など当然持ち合わせない俺とリリィは、金貨20枚全部影の中に放り込んである、まぁ保管方法としては絶対確実だ。

 村長からは、この国のお金についても教えてもらった。

 もしかして物々交換の現物経済かも、とは思ったが、しっかりと貨幣は流通しているのに安心した、貨幣が無いと買い物するのも一苦労、なにより俺は慣れていない。

 そして、ここの貨幣は全て秤量貨幣であり、金銀銅の3種で作られている。

 厳密には貨幣単位では無いが、大きな額ではゴールドが使われ、1ゴールド以下の小額には先ほどのようにシルバーを使う。

 俺の持つ金貨は1ゴールド、要するに一万円の価値がある。

 お釣りで貰った大銀貨は千円、小銀貨は百円、銅貨は十円だ。

 1ゴールド=10000シルバーの交換比率なので、シルバーが日本円に相当する単位となる。

 十円以下の単位では銅貨か、小銀という江戸時代の豆板銀のようなモノの二種類がある、どちらも等価値、ギルドでは銅貨が使われているようだ。

 物価に関してもある程度教えてもらったが、相場がどんなものかはやはり実際に買い物しないと分からない感覚である。

 ギルドの食事の値段は基本的に全ギルド共通らしいので、食事の値段の目安にはなると聞いた。

 ランチの値段が二人合わせて520円、じゃない、520シルバーだというなら、日本と比べ物価はかなり安い、少なくとも食事に関しては半分程度といったところか。

 ついでに、20万円もとい20ゴールドは、イルズ村に暮らす農家の一か月分を上回る金額である。

 いきなり一月も遊んで暮らせるほどの大金を貰うことになり若干しり込みしてしまったが、あの規模のゴブリン退治をギルドに依頼、若しくは村人だけで行うと、20ゴールドではとても済まない額になるという。

 ここは俺達も先方も両方得したということで、話は纏まったのだ。

 ついでに、ゴブリン退治達成の証拠はリリィの証言のみだ、妖精は悪い嘘はつかない性質らしいので、妖精の証言は凄い信憑性を持つのだとか、勿論リリィが信頼されている部分もある。

 そんなコトを考えているウチに、注文した料理が届く。

 小難しいお金の話など湯気を上げる熱々の料理の前ではこれ以上考える気など失せる。

 俺とリリィは「いただきます」と同時に目の前の料理に齧り付いた。

 そうそう、「いただきます」「ごちそうさま」の文化は日本とパンドラで共通だ。

「美味いっ! このドルトスとか言う謎の肉美味いぞっ!」

「美味しい!」

 食材不明の料理を躊躇せずに平らげる。

 料理を完食し、これまた茶葉不明のお茶を飲みながら、一息つく。

「ふぅ、美味かった――」

 リリィのお茶は紅茶っぽかったけど、こっちは麦茶っぽいから全然別物だなぁ。

 感想もそこそこにもう少し落ち着いたら冒険者登録をしよう、危うく忘れかけそうだったが。

「そうだリリィ、今日帰ったら、俺の話を聞いてくれよ」

「クロノの話?」

「村長には遠い故郷から事故で来たって誤魔化したけど、リリィにだけは本当の事を聞いてもらいたくてな」

「そっかぁ、うん、いいよっ!」

「ありがとな、リリィとはこれから長い付き合いになりそうだしな。

 さて、それじゃあちょっと冒険者登録とやらに行ってくるよ」

「うん! いってらっしゃい!」

 笑顔のリリィに見送られて、俺は席を立った。


 ついにやってきました冒険者ギルド! これは壮絶な説明回が続く予感!

 猫のウェイトレスはモンスターハンターのアイルーと違ってちゃんと髪が有ります、まぁアイルーの方が可愛いと思うんですけどね。

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