第123話 突撃部隊VS重騎士部隊(2)
それは正に銀色に輝く鋼鉄の城壁。
大柄な重騎士が大盾を構え、整然と横一列に陣形を組み迫ってくる様は、凄まじい威圧感だ。
「まずは先手必勝、魔弾――」
『装填』済みの弾丸を瞬時に出現させる、その黒い擬似完全被鋼弾の向く先は、勿論この迫り来る銀の壁。
さぁ、俺の弾丸とお前らご自慢の重甲冑、どちらが強いか勝負と行こうか。
「――全弾発射っ!」
『ブラックバリスタ・レプリカ』を振るうと、中空に現れた弾丸は黒いマズルフラッシュを焚きながら、眼前に迫る敵を貫かんと一斉に飛び出す。
「硬身」
俺の攻撃の兆候を鋭く察知した重騎士部隊は、そのまま一斉に防御の武技を発動。
弾丸が届く前に、武技の効果によってただでさえ堅い盾と鎧が魔力によって強化される。
シールドと違って効果は数秒らしいが、その僅かな発動時間の間で受け止める力量があれば攻撃を防ぐに何の問題ないわけだ。
「それにしたって無傷は無ぇだろ――魔剣」
放った千の魔弾はあえなく巨大な大盾によって防がれる。
弾丸と鋼がぶつかり合う甲高い音と火花を散らすも、盾の表面に僅かな傷さえ残らなかった。
効果の無い魔弾と代わり、次に出すのは黒一色の長剣。
『影空間』から出現する10本の剣を、俺の周囲に付き従うように展開させる。
「これで傷一つつかんとなれば、ちょっと拙いかもな――貫けっ!」
イチから魔力で物質化するよりも、本来ある物質に魔力を付加させた方が強度は高い。
サリエルだって魔剣は必ず自らの手で防いでいた、そのまま受け止めるには危険と判断した何よりの証拠。
ならば、この防御力MAXな重騎士共にも、少しは効果があるはずだ。
黒化剣は俺の意思通り、獲物を狙う鷹のような鋭さを持って飛び出す。
「当たりだな」
攻防は一瞬で終わる。
俺の真正面に位置する重騎士が、その鋼の巨体を川へと沈めた。
剣はそれぞれ別々の軌道をとらせて一人の重騎士目掛けて投擲したのだ、いくら盾が大きいといっても360度、全方位を防御する事は不可能。
そして俺の魔剣は見事、重騎士の分厚いフルフェイスのヘルムを貫通し、脳天にその刃を突き立てることに成功したのだ。
「しかし、消費量がヤバいな……」
どうやら10本全てをつぎ込まねば、重騎士一人を一瞬で倒すのは無理らしい。
倒れた重騎士は、頭部に喰らった剣を除き、残りの9本を盾やハルバード、あるいは鎧で受け止め、見事に全てを防ぎきっていた。
胴体の鎧に命中した魔剣は、鋼の表面に傷をつけることはできたが、一発で貫くには至っていない。
盾よりは鎧の方が多少は防御力が低いと思えば、少しはマシか。
「どっちにしろ、厳しい戦いになるには変わりないな」
右手に握る呪鉈、コイツの『黒凪』でも鎧ごと両断はできないだろう。
左手に握るタクト、魔弾の方は、弾丸の数よりも一発あたりの硬度を高めて、3発の重ね当てを狙えば、鎧の薄い部分なら貫けるはず。
そして背後に再び影より呼び出す10本の魔剣、まだ黒化剣に多少のストックがあるといえども多用は禁物。
今使った10本の内、半分近くが硬いガードに阻まれ、刃こぼれを起こし黒化が解けかけている。
剣を覆う黒色魔力が剥がれ落ちれば、当然俺の制御下から離れる、この状況下じゃ再び拾って再黒化というのも中々難しいだろう。
「強敵だな、だが――」
重騎士部隊は、俺が倒した一人分の隙間をうろたえる事無く素早く塞ぎ、ガードを固めたまま、足並みを揃えてゆっくりと前進してくる。
もうすぐ、お互いの手にする刃で切りあう間合いに入る、そうなれば後はもう俺達突撃部隊と重騎士部隊のガチンコ勝負。
「上等だっ! 一歩も退くな、冒険者の意地を、この屑鉄騎士共に見せ付けてやれっ!!」
すみません、重騎士KATEEEEというだけで短い話なので、もう一話更新します。