3-3
二人は井上宅を目指し、住宅密集地にありがちな一車線の狭い舗装道を歩いている。両脇を幾つもの軒先がひしめいており、ガレージには車が納まっているか、空になっているかだが、行き交う車両はない。
井戸端会議中の主婦がいないのは、夕飯の支度どきだからとしても、下校中の学生も帰宅中のサラリーマンもいないのは妙だったけれども、留意するような事項とは思われず、些事として馨の脳は処理した。
そんなことよりも――、
「きみさ、なんであんなとこで茶々いれたの?」
「仕方がない」嘆息。「お主は解っておらんのか? 私は短気だと言ったであろう? ――お主は、この前、未来が見えないといったな」
「うん」
「《魔界》では姿を偽ると、話したな?」
「うん」
「お主は未来は不確定だと思うか?」
「え?」
「今が明日を決める」
「解ってるよ。そんなこと」
「なら構わぬ。私がこんなことを言うのはお主が未来を奪われたものだからだ」
「え? どういうこと?」
「それは――」
クァーの動きが止まった。
馨は不意の事態に不穏当なものを感じた。傍らのクァーの顔は真剣そのもので、葱を回して喜んでいるときの顔とは全く異なっている。別人のような表情に馨はたじろぐ以外にすることがなかった。
クァーが吠えた。
「どうして霊界人がこんなところにいる!」
オンナノコだった。
暗がりの中にあっても映える紫色のロングスカートのワンピースが最初に目につく。胸元はばっさりと大きく開いているが、そこに膚色のクレバスは皆無。貧乳であることがよく解る。貧乳に相応しく、背格好も小さい。クァーより更にちんこまいだろうか。さすがに幼稚園児よりは大きいが――、しかし子供とは思えないえげつない表情をしていて、口の端っこから牙が剥いている。
彼女は頭に乗っけたぶかぶかのトンガリ帽子を揺らしながら、お辞儀した。腰を落としつつ、足を一歩引くという、優雅な礼だった。
オンナノコを横目にしながらも。馨はクァーに訊ねる。「霊界人? あれが? 魔人と変らないような……」
「そうだ。よく見ろ」
馨は目を凝らす。
逢魔時の暗さで最初こそ解らなかったが、オンナノコの背中には人間の背中には不存在であるべきものが生えていた。
骨の翼だ。
彼女自身の四肢の白さとあいまって、手が六本あるように見える。骨の翼の芯――尺骨から垂れ下がった次列風切も初列風切にも羽らしい部分はなく、羽根の管のみだ。確かに――《人間界》の住人ではないようだった。
コスプレって線も捨てがたいが、クァーの存在と情報存在《第二権能》と遭遇していたことがそういう考え方を否定した。
「私はアジュヴァラン」
「え? 名乗るの!」
馨は目を剥いた。自分から名乗りをあげるだなんて――鎌倉時代の、武士同士の合戦じゃあるまいし……。
アジュヴァランもクァネルハーも馨を無視した。いないものとして扱った。パーペキすぎるまでに彼はアオウトオブ蚊帳だった。蚊帳のホツレを探しては見たものの、入り込める余地はこれっぽちもなかった。
クァーが嘲る。
「わざわざ名乗るとはいい度胸であるな」
「秘密の行動でもなんでもないからねぇ。当然なのよ」
「神を狙うのがか?」
「どうして? あなたに協力しにきた。とは考えられない?」
アジュヴァランの言をクァーは一笑に付す。鼻で笑い、
「《未来の泉》の託宣と食い違うではないか」
「あらあら、末端はご存知ないとばっかり☆」
「それに、おまえの武器はこっちを向いている」
「見えてる?」
「もちろんだ」
「ありゃぁ、暗殺失敗☆」
トンガリ帽子のつばを親指と人差し指で挟むと、アジュヴァランは上下に揺らした。一種の癖のようだった。
「白状するのも早いな」
「戻っておいで。グイナッチョ」
アジュヴァランが指ぱっちんをすると、家屋の軒先から巨大なぬいぐるみが現れた。今まで視界の範疇にいなかったのに。巨大なボタンの両眼が馨たちを見下ろしてくる。ぬいぐるみとはいえ、直截的な恐怖心を感じるほどの巨体。明らかに石垣の中に潜めるサイズではなかった。電柱くらいの高さとタンクローリーくらいの胴周りがあるのだ。
口が耳元まで激しく裂けたクマのぬいぐるみ――グイナッチョはアジュヴァランの呼び声に反応して、彼女の元へひとっ飛びするや、小さくなった。縮小し、瞬く間に胸中に抱きかかえられるほどの大きさになってしまう。
アジュヴァランは大事そうにグイナッチョを両手で包み込むようにして、しっかりとかかえ直してから言った。「てっきり、《人間界》は極端に魔素が薄いから看破の魔法も使えないと思ってたんだけどねぇ。嗚呼、残念☆」
少しも残念そうには見えない。
むしろ、この状況を楽しんでいる愉快犯的な思考すら垣間見える。
「おまえは魔人の流儀に疎いようだな」
クァーがアジュヴァランに杖――イホーツァッターを見せ付ける。
鷲の意匠をアジュヴァランへ向けているのは警官が拳銃を敵対者に向けるのと同じ意味合いを持つのだろう。クァーはやり合う気満々のようだが、アジュヴァランは相変わらず飄々とした態度を一向に崩す気配がない。
「そうねぇ。わざわざ器械や道具を使わないと魔法も使えないような人たちのことは知らないなぁ☆」
嘲笑うトンガリ帽子。
その独特のスタイルはクァネルハーよりも、よっぽど魔女っ子らしさに充ち充ちていて、外見は薄幸そうなオンナノコのアジュヴァランだが――、性格はかなり悪いようだ。喋り方も鼻につく。
しかも、それが明らかにわざとだと解るだけに尚更神経を逆撫でにする。それをアジュヴァランが楽しんでいることも。
「まあ、さ。ところで、未来がどうのって話、聞こえてたけど――あなたたちに未来はあーりません」
「切り拓く」
「そっちこそ、いい度胸だねぇ。魔人がゴーストに勝てるとでも思っているの?」
「私はまだ死ねないんでね!」
「成仏できたら歓迎してあげるよ! ひゃはぃ♪」
爆発した。
上空から隕石が降ってくる。
慌てる馨はクァーに引きづられて、路地にしょっぴかれた。
そのまま誰の家かも解らない民家に入り込む。誰の家か解らないのは勿論、表札を確認している暇も、「失礼します」だの「おこんばんは」だのが言える状況になかったからだ。
背後では爆発が続いている。
アスファルトやコンクリが抉られる音が木霊しているが、妙なことに近隣住民が反応している気配がない。馨は訝ったが、いまはそどころじゃぁなかった。
「さぁさぁ、出ておいで。ネズミさん。猫ちゃんが待ってるよぉ☆」
民家のガレージに隠れる二人。
隕石がガレージの屋根をがんがん叩いている。これでは――アジュヴァランがいうように袋の鼠ではないか。
「魔法使えよ!」
「霊界人は魔素に強いから無理だ」
首を悔しそうに左右に振るクァー。
魔法が通じない?
それで護衛だと?
笑止千万だ!
「じゃあ、どうするのさ!」
「殴る」
「は?」
「聞くんだ」と念押ししてからクァーが言う。「霊界人は不死で、尚且魔法もとんと利かぬが無敵というわけではない。物理的な手段で構成する霊素の結合を崩せるのだよ。そうすれば、斃すことも殺すことも不可能にせよ、少なくとも《霊界》へ強制転送されるはず」
「殴るって! 無理じゃない」
「無理とかいうな!」
「だって」
「だってとかいうな!」
ガレージの壁が軋っている。
あと何分持つ?
いや――何秒のレベルだろうか。どっちにしても長くはないことだけが確かだ。物理的攻撃とはいうものの、隕石をかいくぐってアジュヴァランに一発を与える度量も気迫もセンスも技量も自分にはないと馨は思った。
「はいはい。助けはこないからさー。早く死のうよ。成仏したら歓迎してあげるってばぁ。――ああ、もしかしたらライフストリームへいく価値もないかもだけどね! そしたら、お別れだねぇ♪」
隕石がやんだ。
アジュヴァランの魔素が尽きたのか?
そういえばクァーも杖に魔素を蓄積しているという話をしていた。《人間界》には魔素が少ない。つまり――これは勝機だ。
「だから、助けはこないってばぁ!」
勝機はまやかしだったようだ。
再びガレージは軋みを上げ始めた。
今度の軋みは隕石によるものとは違った。ガレージの側壁に穴が空く。そこから覗くのはでっかいクマの手――グイナッチョだった。
アジュヴァランの魔素は尽きてなどいない。立て篭もった二人に業を煮やして攻撃手段を変更しただけのことだった。
ぐいぐいと、穴をこじ開けようとしているグイナッチョ。
しゅばっと飛び出す鋭利な爪。
爪が迫ってくる。
「二手に分かれるぞ。このぬいぐるみをどうにかせねば、まずい」
「こえええよ!」
「ならば、私がぬいぐるみの相手をする」
「ぼくはあの子?」
「そうだ!」
「いくぞ!」
背中を叩かれたのを合図に、ガレージから飛び出すと、民家の玄関の辺りにアジュヴァランの姿が見えた。背中の骨をはためかせながら、なにやら手をぶんまわしている。未開の土人の雨乞いの踊りのようだった。滑稽だった。
クァーがグイナッチョの方へ駆けるのを確認してから、馨はアジュヴァランに吶喊する。武器は拳のみ。相手は小さなオンナノコだ。どうにかなるはずさ、と彼は多寡を括っているのは当然だった。それに――、
どうなるか解らんが――、
このままでは死ぬ。死んじゃう!
とは頭の片隅でちょっとは思うものの、如何せん相手が魔女っ子とクマのふいぐるみでは臨場感もクソもない。彼らが異世界の存在であることは解るが、死に直面した緊張感はあまりなかった。
相手がカリフォルニア知事だったなら、ガクガクブルブル、主人公にあらざる失禁パレードをご開陳となるだろう。ターミネーターこわいよターミネーター。自分がジョン=コナーでなかったことに安堵する。コナー役の俳優はそりゃぁ、イケメンだけれども……。
チビっ子など一捻り。
馨は両手を突き出した。ショベルカーのように。
が――、
「はい。残念~☆」
二度目だ!
なんで異世界人は触手のようなものが好きなのだ! オトコが触手に絡め取られて、一体誰が喜ぶってんだ! エロゲ的展開で考えれば、絡まるべきは魔女っ子風のアジュヴァランの方ではないか? それなのに……それなのに、こんなのシドイ! 嗚呼、泪が出ちゃう。オトコノコだって。
馨はアスファルトの路面を突き破って現れた包帯に雁字搦めにされた。
本来、包帯は乾いて然るべきもののはずだが、彼を縛る包帯は粘液のようなものが染みていてねちょっと、そしてぬるっとしている。そんなもので全身を拘束されたら気持ち悪い以外のことばなんて出ない。アスカじゃなくたって、全身全霊の力を込めて精一杯に呟きたい。「気持ち悪い」って呟きたい。
けれども馨は呟けない。
口にも轡がされてしまっているからだ。
包帯から染み出す得体の知れない粘液が舌へと落ちてきて、甘酸っぱい。オンナノコの腋をペロペロしたときの味に似ているかもしれないだなんて思うも、馨はなめたことなどない。あくまで想像である。想像力は偉大だ。
「うぐ……」
「痛い? 痛いの? でもねぇ、苦痛って一回死んじゃうと味わえないんだよ? だから、たっぷり味わってねぇ☆」
包帯の締め付けが増す。
肉に食い込む。
筋肉がはち切れそうに感じられる。
意識が朦朧としてくる。
グイナッチョを相手しにいったクァーは何をしているのだろう? 早く助けて欲しいと願うが、顔も動かせず、彼女の姿を確認することすら叶いそうもない。大口叩いておいて、肝心なときには役に立たないヤツめ。
諦めるしかないのか。
こんなところでポックリいくのか!
辞世の句は何がよいだろうか。
朦朧とした脳味噌は打開策を考えるのを完全に放棄していた。
「そこまでですよ」
しかし、ご都合主義は屈さない。
救世主はやってくる。
アジュヴァランが首を回す。「誰?」
「マスクマンです」
馨は見た。
ヘンタイを見た。
タイヘン、ヘンタイであった。
踝まで隠すロングスカートのメイド服に純白のカチューシャ、清楚な手袋。そして、前掛け。ここまではいい。普通だ。メイド喫茶か、もしくはロンドンの地下鉄に乗れば逢える。大して珍しくもないし、好奇の眼差しを送るに値しない。
けれど、彼女は口元にマスクをしていた。
風邪用のマスクではない。工事現場などで使われる防塵マスクでもない。ガスマスクだ。顔をすっぽり隠すカーキ色のガスマスクだ。こんなものを装着している人間がヘンタイではなくてなんであろう? 自衛隊員だ。
「はぁ? バカじゃないの? てか、どうみてもウーマンでしょ。メイド服に覆面とか、頭沸いてるとしか思えないなぁ♪」
「いいですか? ギンガマンもマンといっていますが、戦隊ヒーローには女性が含まれているではありませんか?」なんという正論。「それにですね、ひとのことをとやかく言えますかね? あなた」
「この服、お気に入りなんだけどなぁ。あーあー。私を怒らせたよ。あなた。グイナッチョ!」
アジュヴァランが指パッチン。
がしかし、待てど暮らせどグイナッチョが飛んでくる気配がない。
いままで余裕ぶっこいていた彼女が始めて焦燥を見せた。「って、あれれ? なんで? なんでこないのぉ?」
「霊界人の流儀は気付かれないように、だったな。あのブサイクな気持ち悪いクマならば、あの家の庭で綿屑になっている。気付かれないようにさせてもらったぞ。――そこのヘンタイと、な」
「私はヘンタイではありませんよ」
そこは言い張るんだ。ふーん。
ガスマスク越しで声がくぐもっているが、何処かしらで耳にしたような声だった。(伏線です)
「これで三対一だな。霊界人」
「おかしいなぁ……。結界張ったんだけどなぁ」
「結界の排斥条件に機械は含みましたか?」
「あえ? 何、あなた。機工人? だったら、どうして神を助けるの?」
「是でも否でもないですね」マスクマンは蔑み気味に言う。
「解らないことを言うねぇ。まあいいよ。纏めて相手してやらぁああ!」
アジュヴァランが吠えるや、背中の骨の翼が開く。これから飛び立たんとする雛のように。
マスクマンが動く。馨は捨て置かれている。
「時間稼ぎを」
「了解した。ヘンタイ」
「私は――まあいいです。この際、ヘンタイでも」
時間稼ぎを担ったクァー。
杖を大上段に構える。
「時間稼ぎならば――方法はある」
鷲の意匠、輝く。
「略式詠唱設置。認識番号十七番。格納は翡翠球。対象、一定範囲。記号は十六。外部入力解除。読み取り開始!」
黒い紐出現。馨を緊縛プレイに目覚めさせたアレだ。おぞましくも封印しておきたかった記憶が馨の脳内で展開される。
アジュヴァランは飛翔することで黒い紐を躱す。
「やられますっかってのッ!」
彼女を緊縛するのに躍起な紐。しかし、躱す。躱す。
攻防は膠着状態に突入だ。
びしッ! ばしッ!
躱すことで手一杯というわけではないらしく、アジュヴァランが手をはためかすと、隕石がクァーの頭上へと降り注ぐ。クァーはそれを避けつつ、黒い紐を操る。積極的な攻撃にはでず、時間稼ぎが主目的のクァーが幾分が有利だ。
アジュヴァランは徐々に後退し、隕石の数も減少に転じる。
「くぅ!」
「捕まれ!」
「イヤだ!」
「これならどうかな?」
自分の優位を確信し、クァーは次の手にでる。
「略式詠唱設置。認識番号十七番。格納は翡翠球。対象、一定範囲。記号は十六。外部入力解除。読み取り開始!」
黒い紐の先端が分かれた。樹木の梢のように分岐し、それぞれがアジュヴァランへと一心不乱に突撃する。
手数が増えたことで完全にアジュヴァランは防戦一方になった。
隕石は振ってこない。そうする余力がない。
「クァネルハー伯。準備完了です」
「む? 何故、私の名を? まあそれはよいか……。了解した」
クァーがさがる。
入れ替わって先頭に立つのはマスクマン。
マスクマンの正面には骨でできた球形の檻が浮遊している。
「エミュレーションって知っていますか?」
いまだ黒い紐は健在だ。躱しながらマスクマンのことばにアジュヴァランは応える。律儀だなぁ。アニメなんかの悪役っていつも律儀だよね。「そんなもん、知るかぁぁ!」
「そうですか」嘆息。「スタート!」
檻の格子が散開。
格子ひとつひとつが黒い紐に混じってアジュヴァランを目指す。さしもの彼女も躱せる数をとうに超えてしまっていたのか、あっと言う間に格子に身体を囚われた。格子は彼女をひっぱり、元の球形に戻る。
檻の中にはアジュヴァラン。
籠の中の鳥。
「うぎぃ。何これぇ」
「《人間界》の元素で擬似的に霊素を形取ったものです。霊素結合上でのみ走る《霊魂の檻》のニセモノとでも思ってください」
「外れないぃぃぃ」
必死で格子を外そうとするアジュヴァランだがまるで意味を成していない。格子はぴくりともしない。およそ堅牢とは思えない雑なつくりで、格子と格子のあいだは三十センチ弱はありそうだが、特別な効能でもあるのだろう。
「無理ですよ。《霊魂の檻》の作用をご存知でしょうに。 それでは、《霊界》でテフダロ陛下にでも仕置きされてくださいね」
「これは陛下の命だ!」
「あら、語るに落ちましたか?」
「む。違う、いまのは!」
クァーの援護射撃。「評議会に報告だな」
「くそがああああああ! 覚えとけよぉ……霊界人に死はない。今度あったらタダじゃおかないからね……」
「覚えておいてやろう。その吠え面」
マスクマンが静かに言った。「リコール」
「むきぃ! ぜってー殺すからああああああ」
《霊魂の檻》が収縮を始めた。
ひとひとり入る大きさだったのが、段々小型化していく。しまいには野球ボール大にまでちっさくなってしまった。
「って、うにゃああああ」
アジュヴァランの絶叫を最後に檻は消えた。
最初から存在しなかったように。
戦闘が終結したところで馨は言った。「はやくこれほどいてよ」
「ああ、すまぬ」
包帯は深く肉に食い込んでおり、ほどくのにだいぶ時間を要した。十五分くらいだろうか、唸りながら絡まった電気コードをほどくように怒り半分悔しさ半分状態でクァーが包帯から馨を解放するのにかかった時間は。
ようやく解放されて、馨は一息ついた。
空気が美味しいなぁ。
生まれ変わった気分。
「助かったよ。ありがとう」
「任務だからな。それより――」クァーが辺りをきょろきょろしながら、続ける。「どこへいった?」
「さっきのヘンタイ?」
「そうだ。あやつ、何者だ?」
「――さぁ?」
「まあよい。帰るぞ」
「まあいいんだ……」
「窮地を救ってくれたことには変わりない」
「そういう問題?」
「そういう問題だ」
そういうことになった。