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いつもの空+時々雨
作:Izumo



第14話:重労働は突然に


「――すまん、不甲斐無い私を許してくれ・・・」

終礼時。

鬼頭は教室に入ってくるなり、教卓の前で突然頭を下げて謝罪した。

教室内の生徒達はその突然の出来事にまったく理解できなかった。

とりあえず俺は圭吾の方を向き
人差し指を上に向けて、次に鬼頭を指した。

すると圭吾はその合図に気付き、立ち上がる。

「先生、とりあえず訳を話してくれませんか?」

圭吾の質問に鬼頭はゆっくりと顔を上げ、答える。

「明々後日、つまり土曜日なのだが、実は我が校で創立記念日なのだ。
そしてその日までに各クラスでやらなくてはいけない作業があるのだが
このクラスは私が忘れていたばっかりに、二日分遅れてしまっている」

教室内は静まり返ってしまった。

そんな中で圭吾だけが唯一、喋る事が出来ている。

「――つまりは俺達が今日
この後から全力で遅れを取り戻さなくちゃいけないって事ですか?」

鬼頭はゆっくりと頷く。

その返事により教室内にブーイングの声が湧き上がった。

そして鬼頭はこのブーイングにより、更に気力が無くなっていく。

その時だ。

「――騒ぐなぁ!!少しは黙らぬか、馬鹿者共が!!」

突然、姉御が叫ぶ。

どうやら我慢の限界がきたようだ。

その一喝により、一瞬で皆が静かになった。

「どれだけ騒ぎ立てようとこれは鬼頭殿の仕事ではない、お主らの仕事じゃ!
つまらぬ言い合いをする前に行動だ!」

姉御が皆に呼びかけるが誰も返事をしなかった。

俺は何か言うべきだろうか・・・

「・・・姉御、もういいだろ。あとはこいつら次第だ。
放課後、残ったやつだけで仕事をする、それでいいだろ」

俺は少し呆れた声で言った。

もちろん呆れたのは他の奴らに対して、だ。

姉御はその提案を聞いて、それに同意した。

終礼が終わった後、残った生徒は
俺、朔夜、圭吾、姉御、他数人だけだった。

「――と、とりあえず仕事の方を始めましょうか。
・・・鬼頭先生、仕事というのは何をするんですか?」

場の空気を換えようと朔夜は必死に話を進めようとする。

「ん?あぁ、そうだな。
今ここにいる皆、残ってくれて本当にありがとう。
仕事というのはいくつかあるのだが、今日は体育館の準備だ」

出た、重労働。

「了解しましたっ!それじゃ早速行くかー!」

威勢のいい圭吾を先頭にして、全員が体育館へと向かった。

俺はため息一つ。

その後、少し遅れて皆の後を追う。







飛翔鷹高から少し離れた所にある体育館は
バスケットコートが6つもあるというほどの大きさを誇っており
俺達はそこで作業を進めていた。

作業というのはいたって単純らしい。

なんでもこの学校の創立記念日は文化祭並みのものなので
体育館でも各部が色々な出し物をするため
観客が座るためのパイプイス運び・・・なのだが、

大昔からの掟となっているのか
男子は力仕事ばかりさせられる事となった。

そんな中、圭吾はステージの方を眺めていた。

「どした、圭吾。何かあったのか?」

俺の問いかけに反応し、圭吾はこちらを向く。

「いやぁ、なんかさ、
文化祭に何かやってみたいなぁっと思ってよ。演劇とかさ」

コイツにしては珍しい発言だった。

正直、驚いた。

「なんでまた急に?」

とりあえず訳を聞こう。

「実はさ、最近昔のアニメを見るのにはまっててな。
その中に、演劇部を作って文化祭に演劇をやった回が――」

「はいストーップ!それ以上は言うな。色んな意味で危ない」

止めてよかった、と心の中で呟いておく。

だが同時にコイツらしいな、とも思った。

「こら貴様ら、手を休めるでないぞ!」

姉御は油断して立ち止まっていた俺達を見つけて一喝してくる。

その声は体育館中に響き、容易に俺達の耳に伝わった。

「すんませーん、すぐに再開しまーっす!」

圭吾が軽く返事をし、俺は返事の代わりに片手を上げておく。

その後、作業を再開する事にした。






数十分後、多数のパイプイスを運び終えて一段落ついた。

鬼頭が言うには、今日はこのへんで終わりだそうだ。

時刻は午後五時を少し過ぎており、圭吾や姉御達は急いで帰って行った。

俺はバスの時間がまだ先なので屋上へと向かう事にした。

その途中の階段で見た事のある生徒が立っている。

その姿は葵だった。

こんな所で何をしているんだろう・・・

「よぉ、葵。どうしたんだ?」

「・・・・・」

話しかけても返事がない。

なんだか葵らしくない感じがする・・・

その目はいつもとは違い、少し虚ろだった。

そしてやっと葵は口を開く。

「・・・もう少し」

え?

「もう少し待ってて。時間で言うと六時まで・・・
でないと、とんでもない事が起きてしまうから」

葵の言ってる事が理解できなかった。

「待っててってどこでだ?」

「この学校で、ね」

そう言って葵は走って階段を下りて行った。

俺はその後ろ姿を見ているしかなかった。

しばらくして自分の目的を思い出し
葵の言ってた事を考えながら屋上へと向かう。







屋上への扉を開けると一気に冷たい風が入ってくる。

「――まだ春だからなぁ・・・寒い」

そう呟きながら、フェンスにもたれかかる。

ここから見える街の景色は何気にお気に入りだ。

そんな訳でしばらく薄暗くなった景色を眺めていると
突然、入口の開く音がした。

その音と同時にきゃっ、という声がした。

どうやら扉を開けた時に、突然冷たい風があたってびっくりしたのだろう。

誰だ?こんな時間に。

などと思いながら入口の方を向くと、そこには朔夜が立っていた。

両手に缶ジュースを持って。

「こんな所にいたんですか」

「ここは俺のお気に入りの場所なんでね。
それよりお前、帰ったんじゃなかったのか?」

朔夜は首を横に振り、缶ジュースを持っている片手を俺の方に差し出す。

「はい、これ。お疲れ様でした」

「俺はコーヒーの方がよかったんだがな」

などと呟き、缶ジュースを受け取る。

「せっかく買ってきたんですから、文句は言わないでくださいよ・・・」

そう言いながら俺の横に並ぶ。

そして缶を開けて一飲み。

俺もそれに続いて一気飲み。

そして一息。

その後、朔夜は急にこちらを向いた。

「あの、お昼の件は本当にありがとうございました」

「ん?あぁ、別に気にする事はないって。
それにしても、いつも一人で食べていたのか?」

俺の問いかけに朔夜は、え?っと言った後

少し迷った様子だったが、すぐに口を開いた。

「中学の頃は真佑さんと一緒に食べていたんですが
真佑さんが卒業した後、3年生になってからはずっと一人でした・・・」

真佑さんっていうのは真佑美先輩の事か。

それより、朔夜は余り言いたくなかった事だったのか
深刻そうな表情になってしまった。

だがその表情はすぐに笑顔に変わる。

「でも、今日からは亮さん達と昼食が出来るので一人じゃありません。
そしてそのきっかけを作ってくれた亮さんには、とても感謝しています」

朔夜は満面の笑みを浮かべながら小さくお辞儀をした。

「そ、そこまで感謝しなくてもいいって。照れるじゃねぇか・・・」

俺はさっと顔をそらす。

その行動に朔夜はニヤニヤしながら顔を見ようと回り込んでくる。

「亮さんが照れる所なんて初めてみました!激レアですよ、激レア!」

「う、うるせぇ!こっち見るなって!」

そうやって俺は顔を見せまいと回り、朔夜は照れた顔を見ようと回るという

他から見れば異様な光景である事は言うまでもないだろう。

そして屋上には笑い声と照れ隠しの大声がしばらくの間、響き渡っていた。



それにしても葵は何故、俺をこの学校に留まらせたのだろう?

それだけが謎だった。

家に帰るまでは・・・








「――続いて、次のニュースです。
今日の午後5時10分頃
飛翔鷹高等学校付近の交差点で大規模な交通事故が発生しました。
幸い、軽傷を負った人だけで済んだため、大惨事にはいたりませんでした。
では、次の――」












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