第12話:忘れたい屈辱
朝。
いつもより目覚めがすっきりしていたため
今日は何となくいい事がある気がした。
そのいい事は何があるのだろうかと考えながら
顔を洗うために洗面所へと向かい鏡を見て、思わず自分の目を疑った。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!!!!」
俺の髪形がとんでもない事になっていた!
そういえばさっきすれ違った夢月が
必死に笑いを堪えているようだったがこれの事だったのか・・・
急いで数多の応急処置を施すが
南無三、ほとんど変わりはしなかった・・・
どれほど酷いのかは
これから出会う奴らの反応で想像してもらう事にしよう・・・
とりあえず学校へ行くためにバス停へと向かった。
バス停へ行くのは少しためらいがあったが。
その理由は簡単だ。
あのバス停にはアイツがいる、確実に。
俺のこの髪を見た時の反応が想像できてしまう・・・
「――あっははははははははははははは!
何、何その髪形!あははははははは!!」
思った通りの反応だ。
「なんで朝っぱらからこんな目にあわなきゃならんのだ・・・」
「あはははっ、効き目はバッチリだぁ――あっ」
葵の小さな失言を、もちろん俺は聞き逃さない。
「ききめとは何の事だ?」
「え?えっと、それは・・・」
葵は後ずさろうとするが丁度バスが来たため、逃げる事ができない。
・・・詳しい事はバスの中で聞く事にする。
しばらくバスに揺られて、目的地に到着した。
そしてバスを降りた後、学校へ向かう途中に
葵から聞いた事をまとめていた。
まずこんな髪形になったのは
昨日、葵が俺に渡したシャンプーが原因だそうだ。
そのシャンプーは、協力者がネットで偶然見つけ
面白そうだから買ったらしい。
その効果は使ってから約15時間程度。
つまりは昼までってことか。
そして一番良い情報は、この計画を立てたやつは圭吾だという事。
つまりは教室に行くまでの間、屈辱に耐える事が出来ればいいのか。
そう思ったのもつかの間
教室へ向かう途中には、何人もの生徒とすれ違ったが
ある者はうつむいたり、ある者は俺に指を指して爆笑するという
とてつもない屈辱を受け続ける事となった。
「待ってろよ、圭吾。
この屈辱は絶対に晴らしてやる・・・!」
復讐に燃えながら教室に入るが、圭吾の姿は見えなかった。
どうやらまだ来ていないようだ。
しかたなくいつも通りの席に座り、後ろの朔夜の方を向く。
「あ、亮さ――っ!?
お、おはよ、うござ、ございます・・・」
朔夜は必死に笑いをこらえて、声を震わせながらあいさつをした。
「いいさ、笑いたければ笑えよ」
「い、いえいえ、別にそんなつもりじゃ・・・
でもほら、その髪形もその、あの」
必死にフォローしようとしているが言葉が見つからない、そんな感じだ。
別に無理してフォローしなくてもいいんだが・・・
すると突然、左側から声が聞こえた。
「ういッス、おはよう朔夜ちゃん、亮」
そのお気楽なあいさつで誰かわかる。
この髪形になった全ての元凶、圭吾がやっと来た。
「って亮・・・お前、その髪・・そんな、まさか・・・」
圭吾は俺の髪形を見るなり目を見開き
一言一言を振り絞ったような声で言う。
「ま、まじかよ・・・本当に・・・」
長いよ。
だが次に出す言葉は簡単に想像できる。
だからこそ、言ってほしくはなかったのだが・・・
「本当に効くんだな!
あっはははははははははははは!!」
やっぱり・・・
圭吾は腹を抱えて大笑いする。
「コレ、使うか〜い?」
声のした方を向くと
真佑美が俺にハリセンを差し出していた。
俺は一礼してハリセンを受け取り
まだ大笑いを続けている圭吾めがけて思いっきり振り下ろす!
圭吾に直撃したハリセンは、快音を教室内に響かせた。
「――ってぇ!!何するんだ!」
「何するんだ、だと?それはこっちのセリフでもあるんだけどなぁ?」
俺は圭吾を力強く睨みつける。
「あ、えと、それはだな」
圭吾は突然、蛇に睨まれた蛙のように固まりだした。
「それは、なんだよ?言ってみ――ッ!?」
瞬間、俺の頭に強い衝撃。
それと同時に教室内に再度、快音が響き渡る。
「いい加減にしないか!」
俺と圭吾は一度顔を見合わせ、怒鳴り声の聞こえた方を向くと
ハリセン片手に、少々キレ気味の鬼頭が立っていた。
「この私が来たというのにいつまでも席に座らないとは・・・
いい度胸だとは思わないか?ん?」
周りを見渡すといつの間にか全員が座っていて
真佑美の姿も消えていた。
そして鬼頭の方へ向き直し、その表情を見て思う。
その作り笑いの表情が
いつとんでもなく恐ろしい表情になってしまうのか、と。
そう考えると自然と恐怖心がわいてきた。
「さて、私の気が変わらない内に席に座った方がいいと思うぞ?」
「はい!!」
俺と圭吾は声を揃えて返事をし、急いで席へと座る。
「まったく、このハリセンもお前達が持ってきたのか?」
真佑美先輩が持ってきたなんて言っても信じてもらえないだろう・・・
「――それにしても霧島、何だその髪は、イメチェンか?」
「すんません、これに関する話題は避けてもらえませんか・・・」
「ん?そうか、残念だな」
本当に残念な顔をするなよ。
無駄に申し訳ない気持ちになるだろうが。
「では出席をとるぞ・・・ん?
そういえば最近出雲の姿を見ないが、誰か欠席の理由を知ってるか?」
鬼頭の問いに圭吾が素早く答える。
「あ、家の用事でしばらく休むそうです」
「そうか、そういう大事な事はもっと早く言え」
「了解しました!!」
圭吾はノリノリで敬礼する。
アイツは毎日テンションが高いんだな・・・
その後鬼頭は、日向は屋上にいると告げて教室を後にした。
・・・そういえば、真佑美先輩はいつの間に来たんだろう?
そんな疑問を持ちつつ、次の授業の準備に取り掛かる。
まぁ、どうせ寝るだけなんだが・・・ |