第11話:霧島家の食卓
や、やってしまった・・・
どうする、どうするよ?俺。
・・・いや、原因は凪だ。
だがどうやって説明する?
あいにくこの騒動が起きた時の記憶が全く無い。
よって何を言おうが見苦しい言い訳にしか聞こえないだろう。
駄目だ、他の方法を考えよう。
考えろ俺!
何かいい方法が・・・
「ジャーン!!」
「ああああああああ!!!」
俺は急に後ろから押されて大声を上げてしまった。
「あははっまた叫んだー」
そして同じく、後ろから笑い声がする。
この声は間違いない・・・葵だ。
「またお前のせいで大声出しちまったじゃねぇか」
おかげで悩みが吹き飛んだんだがな。
そうだよ、無理に言い訳する必要なんてないんだ。
「葵、ありがとな」
「ほぇ?
なんか短い間に、全く正反対なセリフが聞こえたんだけど・・・」
葵は不思議そうに俺を見た。
まぁ無理もないか。
すると突然、圭吾が肩を組んできた。
「なぁ、亮。
どうせなら俺が一緒にお前の家に行って訳を話してやろうか?」
「え?いいのか?」
「もちろんだ、俺達親友だろ?」
などと言ってるが、圭吾の狙いはわかっている。
どうせ今日の晩飯を食わせろ、だ。
まぁ着いて来てもらえるだけでもまだマシか。
「え?もしかして亮の家に行くの?なら私も行くー」
葵、まさかの霧島家来訪宣言!
「あぁ、来なよ。大歓迎さ」
そして圭吾、あっさり了承。
「ちょっと待て、何で勝手に了承してるんだよ」
「駄目・・・なの?」
葵が潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
やめろ、そんな目で俺を見るな・・・
「わ、わかったわかった、好きにしろ!」
俺、即敗北。
情け無い・・・
だが何故かそんな目をされると断れなかった。
それが男というものなのだろうか・・・
「――さ、決まった所でさっそく向かいますか」
「レッツゴー!」
圭吾と葵の掛け声を合図に俺たちは霧島家へと向かった。
気絶している凪の事はすっかり忘れて・・・
「ただいまー」
俺はやるせない声でドアを開けると
奥の部屋から夢月が駈けて来た。
「お帰りー!――ってあれ?お客さん?」
意外にも、夢月の表情はいつも通りで
怒っている様子などどこにもなかった。
「どもーッス」
「こんばんわー」
俺の後ろから圭吾と葵が顔を出す。
「あ、圭ちゃん、久しぶりー!
それと・・・」
夢月は葵をずっと見つめている。
そういえば二人は初対面だったな。
それに気付いたのか葵は自己紹介を始めた。
「えと、初めまして、篠塚 葵だよ。よろしく!」
「私は亮の妹、夢月だよ、こちらこそよろしくね」
思っていたより自己紹介がスムーズに進んだな。
「さて、自己紹介も済んだ事だし、中に入るか」
とりあえずリビングへと移動しよう。
「おお!すっごーい!」
葵はリビングに入ったとたんに歓声を上げた。
何がすごいんだ?
「夢月ちゃん、今日は晩飯を食って行っていいかな?」
圭吾、ストレートに言ったな。
「もちろんいいよ!食事は人が多い方が楽しいもんね」
さすが夢月、即了承か。
「ちなみに今日はカレーだよ」
「まじか!?」 「まじッスか!?」
俺と圭吾は声をそろえて驚く。
その理由は夢月の作るカレーはすごく美味いからだ。
そういえば昨日はキッチンへの立ち入りが禁止になってたな・・・
「それじゃお兄ちゃん、準備手伝ってね」
「ういー」
俺は軽く返事をして夢月とキッチンへ向かった。
4人分の皿を出していると偶然、夢月の呟きが聞こえた。
「・・本当に来た・・・夢のはず・・なのに・・・」
・・・どういう意味なんだ?
少し考えてみたが結局わかるはずも無く、
かと言って聞くわけにもいかないような気がしたため
とりあえず聞かなかった事にする。
そんな事より今は飯だ。
俺はカレーをお盆に載せてリビングへと向かう。
「夢月特製カレー、おまちどう!」
「待ってましたー!」
圭吾は歓声を上げ、葵は無言で目を輝かせている。
こいつら、エサを待つ動物みたいだな・・・
などと考えて俺は微笑しながらカレーをテーブルに並べて準備完了。
「いっただっきまーす!」
全員が声をそろえて一斉に食べ始める。
「うっめぇー!!」
大声を上げる圭吾。
「おかわりー!」
相変わらず早い葵・・・って
「お前、早すぎだろ!」
「じゃあ少し待っててね」
葵の皿を持って台所へ向かう夢月。
そして心の中で実況しながら、突っ込みを入れる俺。
色んな話で盛り上がる食卓。
やっぱり食事は人が多いと楽しいと思い
同時に、またこうやって食事ができるといいなとも思う俺だった・・・
夕食を食べ終え、しばらくくつろいだ後
時間がやばいという事で圭吾と葵は帰る事となった。
玄関で二人はこちらに向き直す。
「カレー、ごちそうさまっしたー!」
「カレー、おいしかったよ!」
圭吾と葵は元気よく頭を下げる。
「どうせなら泊まっていけばいいだろ?」
時間も時間だし。
「えぇー!?年頃の私を泊めて何を企んでいるの!?」
「やっぱり帰れ」
こいつのテンションに合わせるのには気力が必要だな・・・
「む〜、冗談なのに〜」
何やら葵がブツブツ言っているがあえて無視しておこう。
「それじゃまた明日ねー。
皐月ちゃん、本当にカレーありがとねー」
「えと、皐月じゃなくて夢月だよ・・・
またいつでも食べに来ていいからね」
また名前を間違えてるし・・・
「あ、亮。明日もあのバスかな?」
「亮じゃねぇ、りょ・・・ってあってるか。
あぁ、ここから学校まではあのバスしかないからな」
「わかった、それじゃまた明日ねー。
それと亮、ナイスボケだったよ」
そう言い残して葵は玄関を飛び出して行った。
別にボケたつもりじゃなかったんだがな・・・
などと思っていると葵が引き返してきた。
「――わっすれってたー!はい、プレゼント」
俺にプレゼントと称してシャンプーを手渡し
また飛び出して行った。
なんでシャンプーなんだ?
「そ、それじゃ俺もおさらばするかな、じゃなー」
そう言って圭吾も帰って行った。
急に静になったな。
とりあえず風呂にでも入ろうかなっと思ったその時、
不意に夢月が俺を呼び止めた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
しばらく何も言わずにただ目を合わせてた後
「・・・やっぱり何でもないよ」
っと言って夢月は何事もなかったかの用にリビングへと向かった。
何だったんだ?
てっきり今日の騒動の件に関した事を言ってくるのかと思った・・・
その件の事は忘れたのかな?
「だとしたら好都合だ!」
右手で拳を作り、ガッツポーズ。
・・・さて風呂でも入るか。
ついでに葵に貰ったシャンプーを使う事にしよう。
そう思い、俺は今日一日の疲れを取るために浴室へと向かった。
だが俺は知る由もなかった。
このシャンプーの恐ろしさを、
そしてこれから受ける事となる屈辱の数々を・・・ |