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76,新たなる力

 ひとしきり話してから、俺たちはジャクローサに別れを告げた。今度あったら戦うかもしれないと思いつつ。

 まだ応募期間に余裕があるということで、次元を切り裂く剣とやらが賞品のトーナメントには登録していない。ひとまず様子見だ、そんなにホイホイ凄いものがあるとも実際思えないし、情報収集してからかな。一対一はまあ少なくとも俺はやらない。ルーやリサハルナがやるなら止めはしないけど。


 とりあえず、コロシアムを離れた俺達は、いったん宿に戻りそれから自由行動(今までも自由だったけど)、個別行動をはじめた。


 俺はとりあえず町中をぷらぷら歩くことにしつつ、この街の冒険者ギルドに向かう道すがらで見物をする。

 ローレル以上に大きな町で、白い壁の建物が目についた。コロシアムの壁も白く塗られていたし、この街のカラーってとこだろうか。

 他にコロシアム付近の広場では操人形を使った劇や、バイオリンのような楽器を弾いておひねりをもらっている音楽家などいて、エンタメ要素が発展している印象を受ける。劇場らしきものも町には見受けられた。

 また学校もあった。校庭がかなり広く、プローカイ魔道校という名前らしい。校門の前を通った時に見た生徒は結構年齢が幅広いようだけど、小学校から大学までひとまとまりになったようなものなのかね。


 所変われば風景も変わるということを実感しつつ、俺は冒険者ギルドを見つけた。目的は、以前と同じ。パラサイト相手を探すことだ。

 町が違えば顔ぶれも変わるし、いい感じのものが見つかるかもしれない。


 そんなわけで、ここはローレルとはあまり変わらない冒険者ギルドのドアを開けた。


「おお」


 入った瞬間、俺の耳に音楽が飛び込んできて、俺の目には踊るハルエロの姿が飛び込んできた。

 ギルドの中にスペースを作り、今度はコロシアムでの戦いではなく、本当のダンスを踊っている。

 ギルドの冒険者達の手拍子にあわせてノリノリのステップを踏むハルエロの姿はコンサートで踊るアイドルって感じだ。行ったことないからテレビとかで見たとこからの想像だけど。


 しばらく見とれていると、ダンスが終わった。


「今日もきれてるぜー!」

「次のバトルも応援するよハルエロちゃん!」


 など冒険者達が歓声をあげつつ、テーブルの上に置かれた帽子の上におひねりを入れている。

 ハルエロは「ありがとう! 次も必ず勝ってみせるよ! 冒険者の底力見せてやるんだから!」

 と応えている。


 はー、凄い人気なんだな、ハルエロって。

 コロシアムでも人気だったけど、ここでも凄いファンがいる。踊って戦える闘士、しかも、お腹が見えている短いシャツにだぼんとしたズボン、汗が滲んだ褐色の肌は健康的で色気もあり、笑顔を絶やさず愛嬌もある。うーん、いい。


 踊りが終わると、テーブルを戻しはじめた。

 そして何か見ていた人が踊りに対して意見を言っている。リハーサルというか、練習の一貫みたいなものかな。


 と思いつつ、俺も他の人にパラサイトを試しつつ、一緒に片づける。今のところまだ目新しいのは見あたらないなあ……ん?


 と思っていると、運ぼうとしたテーブルの正面をハルエロが持っていた。目が合うと、にっこりと笑い。


「きみ、コロシアムにいた人だよね。ちょっとお話ししよう?」


 お誘いかかっちゃったよ。




「ふむふむ、そういうわけで。じゃあまだ戦うかはわからないんだ」

「まあ、そういうことだね」


 俺とハルエロは、冒険者ギルドの中でしばらく話し込んでいた。俺がコロシアムの闘士用喫茶室にいたのを、チラッと見かけたらしい。それがちょうど冒険者ギルドに来たから、ちょっと声かけてみようと思ったということだった。


 正面のハルエロは、丸い帽子をかぶり、そして腰には二本の曲刀を下げている。コロシアムで使っていた武器と同じだ。


「踊ってるみたいに戦ってると思ったら、本当にここで踊ってて驚いたよ。納得したともいうけど」

「踊ってるみたいかあ。そう言われると嬉しいな、どうだった?」

「見た目もきれいで、しかも強い。一石二鳥? 二兎を手に入れてる? そんな感じだったな。それに、凄い人気だったね。歓声が大きかった」


 素直に感想を述べると、ハルエロは笑顔をさらに明るくして、俺の手を握ってくる。


「ありがとう! そう言ってもらえると嬉しいな。ついでに私のファンになってくれるとさらに嬉しい!」

「結構ちゃっかりしてるね。そういうの、割と好き」

「へへへ、そうだと見抜いたんだよねえー。じゃあ、また試合観てね?」

「うん、是非。にしても、ダンスもできて強いなんてよくできたね」

「私、元々ダンスやってたんだよね。それで剣を使った舞いってのがあるんだけど、それを踊ってたら剣術道場の師範からスカウトされて、面白そうだからやってみたら、そっちの才能もあったみたいで、結構強くなっちゃったの。ま、そんなわけで、ここじゃコロシアムは有名だし、参加してみようと思って私なりのスタイルを追求したらこんな感じに」


 踊るときのような手つきを見せるハルエロ。

 指先が遊んでいないところに鍛錬を感じる。


「バトルもダンスも体力勝負、結構あってるみたい。皆に見てもらえるのも気持ちいいしね」

「若干飛躍を感じたけど、でも俺もファンになったな。あの戦いっぷりは見てて気持ちよかった、こっちもね」


 ありがとー、と言いながら再び手を握ってくるハルエロ。無邪気な感じが、こう、ぐっとくるじゃないか。へへへ。

 ……って、危ない、油断するとキモイ笑顔になってしまう、引き締め引き締め。


 それからしばらく他愛もないことを話し、俺はギルドを後にした。

 またギルドの他の人の話している内容が耳に入って来たことから、一つ、ケーネという闘士のより詳しい情報を手に入れた。

 数少ないAランク冒険者という噂は耳にしていたが、どうやら魔法使いタイプらしい。魔法の同時使用や連続使用に長けているということだ。俺も魔法は使えるし威力もスキルを重ねることで出せるけど、そういう特殊なことはまだできないんだよなあ。魔道師のレベルもっと上げたいしパラサイト候補だな。

 ローレルには一人もいなかったAランクの実力者、まだ会ってはいないけど気になる存在である。




 俺はそれからちょくちょくギルドやコロシアムに通い闘士やこの町の冒険者のクラスを調べて回った。一度では無理だったので。そして珍しいクラスや、レベルアップの早そうな人にパラサイトをした。


 特にコロシアムには実力者がそろっていて、思わず興奮しちゃうくらいだったよ。 ルーやリサハルナは各々好きに過ごしているようで、たまにルーが部屋でずっとごろごろしている時があるようなのだけど……本質的に俺と似ている気が……。

 さすがずっと神の座にいて外出しなかっただけのことはある。 


 そうして過ごしているうちに、俺のクラス・スキルは第三次成長期を迎えていた。結構新たな力を獲得したし、ここいらでちょっと試し打ちしておきたいなあということで――。


「ここはよさそうだな」


 プローカイの南にある川辺には、広々としていて色々やるにはちょうどいい。植物や大小の岩もあって、何かをやるときのターゲットにも事欠かない。

 それに川のせせらぎがあって涼しいし、まさにぴったり。宿女将からいい場所を教えてもらった。ありがとう宿女将。


「さて、それじゃあ何からやろうかな~っと」


 俺はステータスを表示した。



【名前】エイシ=チョウカイ

【クラス】パラサイト48 マーシナリー21 魔道師25 剣士20 神官28 狩人24 呪術師26 闘士16 鉱員23 シーフ24 精霊使い25 エンチャンター25 ファーマー25 パラディン20 バーサーカー17 木こり14 ダンサー 9

【体力】 312

【攻撃力】 321

【防御力】 290

【魔力】 311

【魔法攻撃力】 303

【魔法防御力】 335

【敏捷】 279

【スキル】 斧マスタリ バーサーク 防御貫通 植物特攻 斧マスタリ 森林適応 山岳適応 サイレントステップ みかわしのステップ 剣の舞 閉ざされたステージ 精霊魔法:樹霊 魔法斧 状態異常耐性 マジカルチャージ ペンタプルパラサイト 盾マスタリ 防具マスタリ リジェネレーション 形質付与 一番槍 ブレイドシールド 魔法障壁 魔力弾 命中強化 呪術強化……




 なかなかいい感じにレベル上がってるね、いいねいいね。

 ルーにはやはりパラサイトできて、ここにもバーサーカーのクラスの人がいたので、それで結構レベルが上げられた。

 ダンサーはハルエロからと、他にも一人いたし、結構かぶってるクラスの人が多かったとはいえ、そこそこ新クラスも増えたし、既存のレベルもあがったし、やはり正解……!


 斧マスタリがかぶっているのは、バーサーカー由来と木こり由来だ。こういう場合両方が効果を発揮して倍率ドン! になるので斧を装備するとかなり強化されるはず。

 でも剣士が死ぬし、使い慣れてる方がやっぱりいいし、もったいないけど剣で行こう。ルーのパワーはこのダブリによるところがあったんだなと納得である。


 防御貫通はバーサーカーのスキル、一部相手の防御力を無視して攻撃出来るという硬い相手に有効なスキル、バーサークは防御力を犠牲に攻撃力をアップする、とバーサーカーは脳筋極まった感じでさすが。

 

 ダンサーはスピードタイプ、木こりは森林関連って感じだな。精霊魔法で樹の精霊をサポートして樹木を操る魔法を使えるようになったのは魅力的。


 色々スキルをゲットしたけれど、数が相変わらず多い。表示がずらずら延々と並んでいて全部再確認する気にならないなあ。というかこれ累計100個以上あるんじゃないか? 数える気にならないけど。


「思えば遠くに来たもんだ……って感じだな。さて、それじゃあやるか。オンディーヌ!」


 新たな精霊で思い出したが、精霊魔法をあまり使っていなかった。せっかくレアっぽいし便利そうだし、川沿いだしちょうどいい、まずはこれからだ。


 スキルを使うと川の水が噴水のように吹き上がり形を変える。

 さて、それじゃあスキルおためし、はじめますか。


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