4,寄生レベリング
え?
なにこれ?
なんかレベル上がってる?
俺なんかしたっけ?
慌ててステータスを開いてみると、
【名前】エイシ=チョウカイ
【クラス】パラサイト 2
【体力】 26
【攻撃力】 20
【防御力】 30
【魔力】 41
【魔法攻撃力】 35
【魔法防御力】 41
【敏捷】 40
【スキル】パラサイト
「たしかにレベルが上がって……あ」
【クラス】パラサイト 2→3
何が起きているのかと考えている間にさらにレベルが上がっていた。
本当に俺何もしてないんだけど、何が起きてるんだ。
たしかモンスターとかを倒すとその存在の力が経験となってクラスのレベルがあがるって話だけど、俺はモンスターなんて……。
――まさか!
俺は首をぐるりと回して迷宮入り口の方を向く。
わかっちゃったかもしれない、このスキルの正体。
俺はモンスターを倒してないしモンスターがいる場所にも行ってない。
でも、いるじゃないか。俺と『つながってる』モンスターが出てくる場所にいる人が。
俺は迷宮を見ながら、草の上にあぐらをかいた。
そのままじっと待っていると、再び。
【クラス】パラサイト 3→4
間違いない。
これは、寄生した人が稼いだ経験値をもらえているんだ。レベリングを寄生できるスキルってことだったんだ。
凄い。これがあれば労せずしてクラスをどんどんレベルアップできるじゃないか。
しかも一緒にいるだけどころか、離れたところで寝てるだけでも強くなれるとか。
思わぬ俺好みのスキルにテンション上がりながら、気分よく気持ちのいい草原に横になっていると、再び表示が表われた。
【クラス】パラサイト 4→5
【スキル】ダブルパラサイト 取得
新スキル来た!
これは、名前的にはパラサイト二回できるってことか?
二人に寄生するという発想が今までなかったけど、元々は一人だけ限定だったのかな。それが二人にできるようになったと。
二人になれば当然経験値効率は二倍、これは素晴らしい。
俺は早速ダンジョンの入り口の方へと向かって行った。
そしてダンジョンに向かって行く人がちょうどいたので、すれ違いざまに躓いてこけるふりをして、ぶつかりつつ手の甲で相手に触れる。
「あっと、ごめんなさい」
「はは、迷宮探索で疲れたの? 気をつけなよ」
戦士らしい出で立ちのその人は、軽く言うとダンジョンへと向かって行った。
その背中には、光の印がついている。成功だ。
ダンジョンから少し離れたところで力を入れてみると、俺の手から二本の光の線が出ている。それは少しの長さで溶けるように消えているが、間違いなく二人に寄生できているようだ。
その証拠に、しばらくたつと俺のパラサイトのレベルが6にあがった。レベルがあがるにつれだんだんレベルアップが遅くなっていっている感じがしていたのだが、また早くなったのは二人分の経験値が入っているからだろう。
それにしても、一気にだいぶ早くなったような気がするが、強力なモンスターと戦ったりしているんだろうか。
まあ、中のことはわからない。それより、ちょっと試してみよう。
俺は迷宮に背を向け、ローレルの町へと引き返す。
この際だから実験しておきたいことがあった。自分の持っている最大の強みであるスキルについて知っておいて悪いことはない。
それは、対象から離れていてもスキルが有効かどうかだ。どれだけ離れてもパラサイトし続けられるのか、それともある程度の距離が離れたり、あるいは時間経過などで効果が切れるのか。
まずは距離から、ということで俺は町に向かって引き返すが、一向に消える気配はない。ついにはローレルの町に帰ってくるが、いまだに二人分の寄生が残っている。かなり遠距離まで残るようだ。
これはかなり嬉しい結果だ。
俺が町にいても、迷宮に行った人にかけたスキルは切れないということがわかったのだから。
さあ、もっと調べよう。
空き地を見つけ、そこで暢気に昼寝をしている町人にまぎれてくつろぎつつ、俺はスキルを検証してみた。
その結果、わかったこと。
一つ。誰に寄生したか確認したいと思うと、寄生した時に俺の目に映っていた相手の姿を見ることが出来る。
二つ。寄生をやめようと念じると、解くことが出来る。別にもう一度相手に接触しなければいけないということもなく、いつでも線を切れる。
ただ、もう一度寄生しようと思ってもそれは、その場ですぐというのは無理だった。おそらくもう一度同じように触れる必要があるのだろう。
三つ。寄生できるのは合計二人まで。
二人に寄生している時に、さらに力を使おうとしても使えない。ただ、一人解除すると、また使えるようになるので入れ替えは自由。
他人に寄生してレベルを上げることに特化したスキル、いやクラスだな。
調べてる間にもレベルがあがって、もうレベル7にまでなってしまったし、このまま行くとあっという間に強くなれそうだ。
希望が湧いてきた。
やる気も湧いてきた。
異世界生活、いける気がしてきた。
スキルを気が済むまで調べると、日が暮れかけていたので宿を探した。
迷宮を目指す人がいるからか宿は結構多く、空き部屋がある宿を見つけるのも容易だった。早速俺は七日間の宿泊を申し込む。
案内された部屋は広くはないけれど片付いていて、掃除もキチンとされている様子で清潔だったのは嬉しいね。
世界の転移には疲れが伴うのか、久しぶりにたくさん歩いた疲れからか、俺はベッドに倒れ込むように横になると、すぐに眠りに落ちていった。