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38,アリーと一緒

 自分を抑えて静かな声を出しつつも、憤慨を隠しきれない調子でアリーは『どうして他の人と冒険をして自分には声をかけないのか』と言った。


 言った。

 けど、でも、たしか。


「この前、しばらく自分を鍛えるって言ってなかったっけ。一人でやるって」

「それはその……言いました。言いましたけれど! でも、目の前で楽しそうに冒険してるところ見せられたら羨ましいじゃないですか。あんなに色々な人と冒険するなら、私にも一緒にやろうっておっしゃってくださってもいいじゃないですか」


 なるほど、アリーも冒険したかったわけね。

 黙々と鍛えるのにも飽きてたんだな。


「そういうことか。だったら、もっと早く言ってくれてもよかったのに」

「だって、私から一人でやると啖呵を切ってしまった以上、言い出しづらいじゃありませんか。そろそろ一緒に迷宮に行こう、とか、一緒に依頼でもやらない、と言ってくだされば、私はいつでもはいと返事をするつもりでしたのに、見かけることがあってもいっこうに誘われませんでした」


 アリーは両手を握りしめ、ピンと下に伸ばしている。

 いつも穏やで柔らかい物腰なのに。


「他の皆さんばかりご一緒してずるいです、私も一緒に冒険したいんです、我慢の限界なんです! ……言わせないでください」


 ふいっとそっぽを向くアリー。

 唇を軽く噛むように結んでいる姿は、結構意地っ張りな様子が現れている。


 そうか、実はアリーってこういうところもあったんだな。

 意外だけど、むしろ意外なところが見られて嬉しいかもしれない。


「俺としてもアリーの力は一目置いてるからまた何かしら一緒にやれたらとは思ってたよ。だけど、一人で鍛えるって言ってたから遠慮してたんだ。アリーがもう十分鍛えたって言えばすぐにでも一緒したよ」

「そうなんですか? ……い、いえ、ですが、私にも少しは意地が……でも結局自分から取り消してしまったんですよね。しかも大きな声で文句を言うような態度になってしまって……」


 アリーは急速に顔を赤くし、真っ直ぐにおろしていた手を、決まり悪そうにお腹の前で組み替える。

 そして消え入りそうな声で言った。


「すいません、私、一人で勝手にお恥ずかしい真似を。もう帰ります」

「いやいや待って帰らないでいいから」


 自分のしたことをあらためて意識し、いたたまれなくなったようにギルドの外に向かおうとしたアリーを、俺はなんとか止める。


「別に気にしなくていいから! 恥ずかしくないって、むしろ俺も久しぶりにあの精霊魔法を見たいし、言ってくれて助かったから」

「お優しいのですね、エイシ様は。私のような二言を簡単になしてしまう者にそんな言葉をかけてくださるなんて」

「いや、優しいとかじゃなく本当に思ってるよ、本当に」


 実際、アリーに言った、また何かしら一緒にやれたらという言葉は嘘じゃない。俺の知ってる限り一番力のある冒険者、興味がわかないはずない。


 アリーはまだ顔を赤くしつつも頷く。


「そこまで気をつかっていただいたのに、意固地なのも失礼ですね。エイシ様の厚意に甘えさせていただきます。お詫びに全身全霊でやらせていただきますね!」

「いやそこまで気合い入れなくてもいいけど」


 そんなわけで、俺たちは一緒に依頼をやることになった。

 前は迷宮に行ったので、今度は依頼をしてみようということになったのだ。


 そして受ける依頼を決めようとリストを見ているとき、奇遇なことに、同じ依頼を気にしていたことがわかった。

 それは、スノリ村からの依頼。

 家畜や人間が襲われるから、原因を解明して助けてくれという依頼であり、犠牲者の中には血を吸われて死んでいたものがいたという。


 解決したはずなのに、どうしてまた?

 あれで終わったんじゃないのか?


 俺はそれが気にかかり、もう一度様子を見てみたくなった。

 アリーの方は、血を吸われた死体というワードが気にかかっていたらしい。


 数週間ぶりに、俺は再びスノリ村へと向かうことになった。




 スノリの吸血事件を調べに、俺とアリーは早速向かう。

 前と同じ馬車での旅だ。


 時間もあるし、依頼の前に今回の計画で上昇したステータスを復習しておくことにする。



【名前】エイシ=チョウカイ

【クラス】パラサイト32 マーシナリー16 魔道師17 剣士16 神官21 狩人14 呪術師22 闘士15 鉱員18 シーフ19 精霊使い18 エンチャンター20 ファーマー20

【体力】 221

【攻撃力】 212

【防御力】 204

【魔力】 230

【魔法攻撃力】 229

【魔法防御力】 245

【敏捷】 210

【スキル】 ステルス歩法 器用な指先2 呪術強化 衰弱の呪 諸共の法 不屈 火事場 農具マスタリ 目利き(土) 養分変換 対呪障壁 スピードブースト ステータスドレイン 促成栽培 目利き(植物)ファストアタック 目覚める野性 闇特効 亜竜特効 植物特効 サーヴァントの召喚 石囓り 生命の息吹 エレメントアタック 精霊魔法2 精霊感知 地形適応:畑 地形適応:部屋 パラサイト・インフォ パラサイト・ゴールド 近接武器マスタリ 強撃  魔道具マスタリ……



 初期に比べるとかなり基礎能力も高くなったな。

 クラスのレベルアップではそこまで能力はあがらないのだけれど、数が多いとさすがに結構あがる。


 それにしてもバランスのとれた能力だ。

 クラスがたくさんあるから平均的になってるんだろうな、俺の場合は。普通にクラスが一つだけとかだったら、魔力だけ高いとかになるんだろうけど。


 基礎能力は普通に鍛えても当然上がるので、トレーニングしてもあがるというか、そっちであがる方が普通は多いらしい。

 それに能力値の平均は低くても魔法攻撃力だけ才能か鍛錬かの成果で異常に高い相手とかもいるかもしれない。そういうやつが相手だと、総合力で勝っていてもやられることは十分ありうる。

 かなり強くなったとは思うが、油断は禁物だ。


 そのためにはスキルをちゃんと活用していかないとな。

 結構色々身につけたけど、特に面白そうだなと思っているのは。

 他者に気付かれにくく歩ける【ステルス歩法】。

 呪術の効果が上昇するが自分にも呪いが一部かかるようになる【諸共の法】

 進化した召喚獣がファーマーのクラスだったために手に入れた【目利き(土)】。

 一時的に相手の能力値を奪える【ステータスドレイン】。これは呪術師とエンチャンターの複合スキルだ。

 人工物が周りに少ないほど能力があがる【目覚める野性】。これは三クラスの複合スキル、ファーマー+鉱員+精霊使い。三つだからきっと強い。

 そして、久々にパラサイトで身につけたスキル、【地形適応:部屋】。


 ……おい。

 いくらなんでも酷いと思う。

 部屋がホームグラウンドって、そりゃまあパラサイトらしいけど、なにその内弁慶みたいな微妙に情けないスキル。

 

 ただこのスキル、補正は実際優秀で全能力値が20%もアップし、さらに自然治癒力がアップ、感覚も鋭くなるというガチスキルなのである。

 ただ、発動条件がある程度狭い閉じた空間内にいるときのみなので、モンスターと戦う時になかなか役に立たないのが難点ではあるのだけれど……。


 屋外は問題外だし、洞窟や迷宮も屋内だけど広いからアウト。

 発動するところがあまりなさそうなんだよな。本当に自分の部屋に敵が攻めてきたときは輝くんだろうけど、そんなことないよな普通。

 やっぱりネタスキルか?


 まあ、そんなこんなで色々スキルは増えたけれど、前も思ったけど、本格的にこれ全部使いこなせるんだろうかって感じてきた。

 使い勝手いいのだけを使ってもいいんだろうけどね。

 ドラクエのボミオスとかFFのブライナとかの魔法って多分一回も使わないでクリアしたし、そういうの結構あるよね。


 まあでもせっかくだし一回くらいはどのスキルも使ってみようかなあなどと考えつつ、俺は馬車の外の景色を見る。

 今日は天気もよくて道行き快調。


 スノリまではすぐ着くだろう。


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― 新着の感想 ―
部屋スキルは誰かに狙われて暗殺者とか襲ってきた場合は有利になりそう。
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