37,成長
それからも俺たちは大蜘蛛退治に励んだ。
蜘蛛以外の魔物も当然いるので、それも倒しながら、場所を変えつつ数日にわたり。
初日の反省をいかして、ゲオルグとミミィにまかせる時でもすぐ近くにいて、モンスターの動きを注視することは徹底。
安全第一、やっぱりこれが基本だな。
途中モンスターにパラサイトのスキルが有効かを試してみたけど、やっぱりなんの手応えもなく、光が消えるような感覚とともに不発。召喚獣にできたからもしやと思ったけど、成長していつの間にかできるようになっているという展開は特にないらしい。
強い肉食モンスターにパラサイトしたら結構美味しいかもと思ったんだけど、まあ普通に人間にパラサイトすることにします。
そんなこんなで蜘蛛やモンスターを倒させ続け、ついに依頼を完遂した。
依頼人に報告をしたらあとはローレルの街へと戻るだけだが、その前に、せっかくなので露店でスノリ名物のソーセージを買って食べてからだ。
ここの羊はうまいらしい。
「うわあ、ジューシー! 依頼の後の飯はうまい!」
ミミィが串に刺さった焼きたてのソーセージをはふはふ言いながら頬張っている。
俺も早速食べてみて……おお!
評判通り美味しい。しっかりめの皮が破れる感触は快感で、中の肉にはしっかりうま味が閉じ込められている。ケチャップに似ているけど、甘味が強めのスノリ独特のソースが最高にあっている!
これは依頼がなくてもたまにはこの町に来なきゃだめだな。
名物を満喫すると、俺たちは来たときと同じように馬車で戻りギルドに報告。
俺の分の報酬は魔結晶を探してもらう分の代金ということで固辞した。
だって、【パラサイト・ゴールド】あるしねえ。
むしろ一番たくさんもらっちゃってすいません。
そしてレベルも【シーフ10→18】【鉱員8→18】と大幅アップ。
新スキルとして【スピードブースト】、【目利き(鉱物)】などを身につけた。
上々の成果、計画初陣は成功と言っていいと思う。
「本当にいいのか? 報酬までもらってしまうとは」
ギルドの前で、ゲオルグが髭を触りながら再度確認する。
「うん、それでいいんだ。その代わり、もし頼んでいたものを見つけたら、俺に必ず譲って欲しい。投資みたいなものだよ。まともに買おうと思ったら報酬よりずっと高く付くようなものだから」
「つまり、あたし達に賭けるってことね。見つからなかったら報酬がもらえなかった分の損、見つかったら魔結晶代分の得と。面白いっ、私そういうの好き。エイシ、、ちゃーんと見つけてあげるからね。ゲオルグー、頑張れよっ」
どんどん、とゲオルグの胸を叩くミミィに、ゲオルグが頭を鷲づかみにしてアイアンクローを決める。
「ぬおーっ!」
「ミ・ミ・ィ、お前こそ頑張れよ! 命まで救ってもらったんだからな。――エイシ、任せてくれ。今回の依頼をこなせただけじゃなく、俺たちはエイシのおかげで一気に強くなれた。この力があれば、探索の助けにもなりそうだ」
「うんうん、私もレベルどんどこ上がっちゃってもうびっくり。凄いんだねえ、格上のモンスター倒す効果って。そんなモンスター倒せるエイシも凄い! それに、ありがとね。助けてくれて。超かっこよかったよっ」
頭の手を外しながら、にこりと八重歯をのぞかせて笑いかけてくるミミィ。
おおう。
そんな風にストレートに言われると俺には刺激が強すぎる。
でもさすがに十代半ばはまずいような……いやでも異世界なら関係無いのか?
いやいや、そもそも助けてくれた姿が格好いいってことなんだから、それは漏電したときの電気屋さん的な格好良さだろ。勘違いして舞い上がるなよ。
そういうのモテない男にやると勘違いされちゃうから気をつけないと厄介なことになるよ本当ミミィさん。
なんとか気を落ち着けた俺は、二人にまた何かあったら一緒にやろうと言い、そして解散した。
それにしても二重寄生はうまくいったなあ。
ちょっと危ないところもあったけど、ミミィとゲオルグ、二人とも一気にレベル上がったから俺もばっちりとレベルアップできた。
それに二人のこれからの冒険者活動も強くなった分捗るだろうし、そこに寄生すれば今後も効率いい状態で寄生できるという寸法さ。
これを欲しいクラス分やれば、完璧。
そろそろヴェールに頼んだ調査もできてるだろうし……ふふふ、はーっはっは。
あー楽しみ。
テンション高く久々の宿に戻り依頼を終えたことを告げると、その日の夕食はいつもより豪勢だった。ありがとう、宿親父。
翌日、冒険者ギルドに行きヴェールに声をかける。
ヴェールはしっかり調査を終えてくれていて、リストを渡してくれた。
俺は礼を言って、ヴェールに話を聞きつつ俺の知ってるクラス情報とあわせて狙いの冒険者を定めていく。
そしてミミィ、ゲオルグにやったように、話を持ちかけて強化作戦を実行した。
もちろん断られることもあったけど、ちょっとお金を追加で払ったり、俺と同じように欲しい物がある相手なら、その入手の手伝いをしたりとアレンジを加えて、結構協力してもらうことができた。
第一回目の経験もあり、なかなかにうまく行った。
おかげで協力してもらった人達はレベルがたくさんあがり、俺もそれに比例して成長できた。思った以上にうまくいって、思わずほくそ笑みが漏れそう。
そんなことをしばらく続けて、結構なクラスのレベルを上げることが出来た。
この町で上げられる(と俺が知っている)クラスのうちのだいたいを二重寄生でレベル上げしたと思う。
意外と冒険者ってクラスのバリエーションが少ないんだよね。
いわゆる普通の戦士系や魔道師系のクラスがたくさんいて、非戦闘系やちょっと変わった感じのクラスは少ない。
人間やはり自分にあったことを仕事にするようで、戦いが多い冒険者を鉱員やファーマーのクラス、つまり可能性、を濃く持ってる人はあまりやろうとしないようだ。
そりゃまあ、ファーマーなら農業やるよな、冒険者より。
「お、アリーだ」
ギルドの冒険者を見るでもなく見つつ、これまでの成果のことを考えていると、アリーの姿を見かけた。
たまに冒険者ギルドで見かけたり、依頼の協力をしているときにすれ違ったりしたけど、今でもがんばって鍛えてるのかな。
などと思いつつアリーを見ていると、アリーが振り返り、目があった。
足が止まり、じっとこちらを見つめてくる。
俺は笑顔で手を挙げて挨拶的な動きをしてみる。
すると、アリーが静かな、しかし大きなストライドで向かってきた。
そして俺のすぐ前で立ち止まり、唇をきつく結び鬼気迫る表情で、目を凝視してくる。
え、なになに?
俺なんかやらかした?
めっちゃ怒ってないアリー。
「どうして私を誘ってくださらないんですか」
「……え?」
「他の方と一緒に依頼をこなしたり、迷宮を探索したり、いろんなところで冒険してるのに、どうして私には声をかけてくださらないのですか!?」
戸惑う俺をじっと見つめていたアリーは、息を大きく吸い込み、理性で抑えながらも憤りを隠しきれない激しい声で、そう言った。