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いよいよ、夏ホラーが近づいてきました。本番に備えて実践に近い形で書いて見ました。フー、夏ホラー難しいです(汗)
肝試し
作:カトラス


 僕は、夏休みに入って三週間ばかり経った八月十五日に、学校の理科準備室に来ていた。
 準備室の窓を開けていたので、外の樹木にへばりついてるミンミン蝉が喧しく、短い寿命を謳歌していた。
 僕は高校の心霊研究部なるクラブに入部していて、去年から部長をしている。
 集まったメンバーは五人で、心霊研究部長の僕と、僕の彼女の朱美に、お調子者の真二と、真二の彼女の聡美、そして根暗な遠藤君であった。
「ねぇねぇ、アキラ君…今年もいくんでしょう。肝試しに!」
 そう言って楽しそうに朱美が、僕の名前を呼んだ。
「うん。そうだなぁ〜、去年、中途半端に肝試しが、お開きになってしまったしなぁ〜」
「そうだよ、そうだよ! 去年、あの鍾乳洞の中で物凄い音がしたものだから、
みんな一目散に逃げ帰ったのだったよなぁ」と、お調子者の真二が笑いながら言った。
「でも、去年の肝試し、それなりに面白くて怖かったし、今年も聡美いきたいなぁ〜」
 皆が肝試しの話題で盛り上がってるいるのに、遠藤君だけは、さっきからずっと下を向いて黙り込んでいた。そんな遠藤君に僕は声をかけた。(遠藤君ってのは、最近入部してくれた貴重なメンバーだった)
「遠藤君は、肝試しの事どう思う?」
「お…俺は…あんまり乗り気じゃないなぁ……」
「なぜ、乗り気じゃないの?」 
「うん。俺あんまり怖いの好きじゃないし…それに…まぁ……行ってみたらわかるよ」
 怖いの好きじゃないって、だったら心霊研究部なんかに入部するなよ! と僕は思ったが、ただでさえ、五人しかいないクラブなので、僕は遠藤君に遠慮して聞いてみた。
「僕達は、このあと肝試しに行こうと思うけど、遠藤君はやめとくかい?」
「みんなが行くのだったら、俺もついていくよ」
「じゃぁ、決定ね!」朱美が嬉しそうに言った。
「場所は去年の鍾乳洞でいいかな?」
「うん。そこで、いいよ〜あそこ雰囲気あるし、去年は中途半端だったしね」
そう言って朱美は僕の肩に手を当てた。
「俺もどこでもいいけど賛成」
「私もそこで、いいよ」
 遠藤君だけは、何も言わずに黙っていた。
 相変わらず、乗りの悪い奴だなと僕は思ったが、遠藤君だけ彼女がいないのでテンションが上がらないのも、いたし方ないことかもしれない。
 そうして、僕達五人は鍾乳洞に今年も肝試しに行く事にした。
 
 肝試しの舞台となる鍾乳洞は、僕達の学校の裏手にある山にあって、戦時中には防空壕にも使われていたりもした。現在は一応、立ち入り禁止になっているが、別に入り口が封鎖されてる訳でもなく誰でも自由に出入りできた。鍾乳洞の中はひたすら一本道で、長さは一キロほどであろうか、迷う心配のない洞窟だった。
 ただ……三年ほど前に鍾乳洞の中で、他校の男子生徒がいじめを苦にして自殺した事件があってからとゆうもの、その生徒の幽霊がでると噂になり、ほとんど人がよりつかなくなった場所でもあった。
 
 僕達は肝試しの雰囲気を出す為、怪談話とか体験談などして外が暗くなるのを準備室で待った。
 途中、守衛さんが学校内に誰か残っていないか見回りにきたが、その時は隠れていたので見つからずに暗くなるまで準備室で待つ事が出来た。
 
 そして、僕達は肝試しのため鍾乳洞に向かって、遠藤君を先頭に山道とまではいかないが、起伏のある道を歩いていた。今年は冷夏の為なのか去年この道を歩いた時は、汗がしたたりおちたが、今年は全く汗もかかず、暑さもあまり感じなかった。
 遠藤君はやる気になったのであろうか、黙々と何かに憑りつかれたように一人、先頭をきって鍾乳洞に向かって突き進んでいる。僕達は遠藤君においていかれないように、必死に彼の背中を追って歩いた。
 十分ほど歩いたころ、ようやく前方に鍾乳洞がぽっかり口を開いているのが見えた。
「やっと、ついたね!」と、真二がはしゃいで言った。
「私なんだかぁ、怖くなってきちゃった」真二の恋人の聡美が甘えた声をだした。
「大丈夫だよ!俺がついてるから、手つないでやるからさぁ」真二はそう言って、やけに嬉しそうだ。
「ねぇ、アキラ君……中に入る順番どうするの?」
 朱美が心配そうな表情をして僕に聞いてきた。
「そうだなぁ〜、あいにく懐中電灯は一つしかないし、どうしよっか?」
「それを、あなたに聞いてるんじゃないのよ」
 朱美は少しフクレタ表情をした。正直可愛かった。
「遠藤君〜、悪いのだけど……ここに来たみたいに、また先頭で中に入ってくれないか?」
 遠藤君は少し間をあけてから「あぁ、いいよ」とだけ言った。
「じゃ、決まりだなぁ!」
 真二は早く、聡美と手をつなぎたいみたいで、遠藤君に鍾乳洞の中に入るよう促した。
「じゃ、いくよ」とだけ言って、遠藤君は鍾乳洞の中に入っていった。
 遠藤君の後に、真二と聡美カップルが仲良く手をつないで鍾乳洞に入る。
 そして、しんがりに僕と朱美が続いた。
 鍾乳洞の中は完全に暗がりの密閉型というわけではなく、ところどころ岩の隙間から月明かりが漏れている。月明かりが鍾乳洞の岩石や、岩石についた苔に反射して幻想的空間を創り出していて、綺麗だった。
 遠藤君はそんな景色に気をとられる事もなく、少し早足気味に進んでいく。
「ねぇ〜アキラ君、ここに自殺した学生の霊っているのかしら?」
 そう言って、朱美は僕の手を強く握ってきた。
 僕は、これだから、肝試しは「いいなぁ」と思った。
 僕は、少し朱美を怖がらしてやろうと思って言った。
「朱美には言ってなかったけどなぁ〜、俺って……霊感あるんだよね。それで、この鍾乳洞に入ってから、
並々ならぬ、嫌な霊気を感じているんだよ!」
「アキラ君、やめてよ! 私まじで怖いのだから……」
「アハハ〜冗談だよ、冗談! 幽霊なんかいるわけないよ!」
「もう、アキラのバカァ〜」
 僕は肝試しは実に楽しいと思った。前方にいる真二達カップルもどうやら、いちゃいちゃ楽しんでいるようだった。
 ただ……遠藤君だけは、楽しんでいるのか不明ではあったが……

 そんな時、早足で歩いていた遠藤君の足が止まった。
「どうしたんだい?」
 僕は遠藤君に聞いた。
「シィ〜。前方見てみろよ!」と、遠藤君は言った。
 僕達四人は前方に一斉に視線を向けた。
 前方には、月明かりでない明かりがもれている。
 それは、人工的な明かりで、僕らと同じ、懐中電灯の明かりだった。
 どうやら、鍾乳洞の中には僕達以外の先客がいるようだった。
「どうする?」真二が、僕に聞いてきた。
「ここまできたら、あの明かりを確かめよう!」
 僕は怖さより、好奇心の方が勝っていた為、みんなにそう言っていた。
 その言葉を聞いて、遠藤君はゆっくりと明かりに向かって進む。
 明かりに近づいていくと、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。
「怖いよ、怖いよ! アキラ君もどりましょうよ!」
 朱美の表情はこわばっていて、今にもなきだしそうだった。
「大丈夫。俺がついているから、ここまで来たんだ、あの明かりだけ確かめてから戻ろう」
「うん」朱美は小さく頷いた。
 
 そこから二十メートルほど進んだ時、明かりの全容がわかった。
 明かりは懐中電灯のものでは無かった。鍾乳洞の奥を塞ぐような大きな岩があり、
その岩の周りに何本もの、ろうそくの火が点けられていたのだ。その前に女性が岩に向かって手を合わせていた。よく見ると、その手を合わせている女性は、朱美の母親だった。僕は何べんも合っているので見間違いでは無い、確かに朱美の母親がそこにいた。
「でも、何故? 朱美の母親が……?」
 朱美も母親に気づき声をかけていた。
「お母さん、お母さん!」
「……」朱美の母親からは返事は無い。
 それどころか、私たちの存在に全く気づいていないようなのだ。
 その時、遠藤君が岩の横にある大きな石を見てみろと言った。
 岩の横には、おおよそ自然のものでは無い、綺麗に磨かれた大きな石があった。
 いや、よく見ると石ではなく、石碑だった。石碑には文字が書かれていた。
【不幸にも、この場所にて落盤事故にあった四人の御霊に捧げる】
 その下に落盤事故にあった犠牲者四人の名前が石碑に彫りこまれていた。
 新藤あきら、高山朱美、高橋真二、三村聡美。僕は気づいた。そう、これは慰霊碑なのだ。
 そして、この慰霊碑によると、僕達は死んでいる。
 突然、遠藤が笑い出した。
「アハハハ、アハハ。お前達にいい事を教えてやろうじゃないか! お前達は去年、ここに肝試しにきたのだよ。自殺した俺の幽霊が出る噂を確かめにな! そう、俺は三年前にいじめの為に自殺した者だ! そこで、
お前達は俺の姿を見てしまい、逃げ出したのだよ、その時、偶然にも落盤事故が起こり、お前達はあの岩におしつぶされて死んだのさ。アハハ、ハハ」
 遠藤は続けて言った。
「お前たちは、俺と違って成仏できたみたいで、俺はやっと友達が出来たと喜んでいたのだが、お前達の魂は事故のあと、どこかにいってしまった。でも、なぜだかわからないが、昨日お前達は戻ってきたんだよ。
だから、もう、どこにも俺を一人にしていかないでくれよ! 俺は寂しいのだよ」
 全てを理解した僕は遠藤に言った。
「ごめんよ〜、遠藤君、僕達はきっと明日になれば、たぶん、またいなくなっちゃうよ。今この現世にいられるのは一年に一回のお盆の時だけだよ! でも、来年になったら、また肝試し、しようよね」
 僕の言った事に対して、朱美、真二、聡美は「うんうん」と頷いていた。

 こうして、僕達の怖くて、悲しい肝試しは終わった。 了。














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